仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~   作:龍騎鯖威武

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おひさしぶりです。仮面ライダージオウに城戸真司が出演すると知り、失われていた創作欲が再び再燃しました!
私の処女作の蛇足な完結編を描きます!


完結編 風花
前編 「鏡の涙」


かつて雑木林の中で大きな大木が切り倒された。

そんな場所に二人の男女がいた。

「どうしたの?急に此処に来ようだなんて」

一人は栗色のセミロングの髪をした女性。

月宮あゆ。

彼女はかつて14年前に大木から落ち、夢の世界に囚われていた。その彼女との約束を果たし、彼女を夢の世界から解き放ち未来に進めるようにしたのは…。

「此処は、おれ達の色んな始まりがあった場所だから」

龍崎竜也。

彼はかつて、仮面ライダー龍騎として人々を襲う怪人に仲間と共に立ち向かい続け、勝利した青年。

彼は一つの誓いを立てていた。

あゆが夢の世界に囚われていたのは、自分の責任。

転落したその時、彼はその現実から目を背け、記憶と感情を埋めた。それが7年の時を経て脅威となっとこともある。

そしてあゆの時が動き出したのはそれから8年もの歳月が過ぎたあとだった。

彼女は夢で囚われていたが故に、世界から置いていかれていた。

その時間を取り戻すのが、彼女への償い。

知識や教養を身に付け、職を身に付けて行けるように沢山のサポートを行っていた。

本当の学校に通い、人々と触れ合い、社会で生きていけるように…。

「あゆも就職ができて、立派な社会人だね」

「竜也くんのお陰だよ!学校の学費も全部賄ってくれたし、それ以外のいろんなお勉強をさせてくれたもん」

彼女は去年の4月から和菓子職人の弟子として、とある小さな和菓子屋で働くことになった。

「これで、おれの果たさなきゃいけない責任は果たした。あとはあゆの自由にできるはずだから」

「え…?」

彼女が社会でも逞しく生きていけるようになった以上、竜也はあゆを真の意味で救えたと言えるだろう。彼の中での償いは終わったのだ。

あゆがもし望まないのであれば、ここに縛り付けておく必要はないのだ。

「あゆは、これからもっとやりたいこと、見たいモノや知りたいことが沢山あるはず。だからずっとこの街に留まっているおれと無理に一緒に居る必要はないんだ」

「なに…言ってるの?ボク、竜也くんがいない人生なんて、絶対にイヤだよ…」

そういったあゆは、大きな瞳に大粒の涙を溜めていた。きっと別れを告げられると思ったのだろう。

相変わらず、こういうところは幼かったあの頃と全然変わらない。寂しさや悲しいことに遇うと自分の感情を隠すことは絶対にしない。

竜也はそう思うと同時に、あゆが自分の事をかけがえのない存在と認めてくれることが嬉しかった。

 

もしそういった返事をくれた場合、彼はあることをあゆに申し込むつもりであった。

 

「そう言ってくれて、嬉しいよ。おれもあゆのいない人生は…有り得ないと思ってたから」

「竜也くん…もしかして、すごく恥ずかしいこと言ってる?」

泣きながら笑う彼女の笑顔に、竜也は照れ笑いをした。

「あはは、そうだね。でもこれからもっと恥ずかしいことを言わなきゃ」

そう言って、ポケットから小さな黒い箱を取り出す。

高級感のある箱。あゆは一瞬で何が入っているか分かった。

「あ…!」

両手で口を覆うあゆ。お互いに顔の紅潮が最大まで高まった。

「おれがあんなことを聞いたのは、あゆが本当にやりたいことがあるのか聞きたかったから。おれのせいで、それが出来ないようにはしたくなかったから」

そう言いながら箱を開けると、そこには小さな宝石をあしらった指輪があった。

「あゆが、おれのいる人生を認めてくれるなら…ずっと一緒にいてほしい。だから…」

 

 

 

「結婚してください」

 

 

 

「はい…。ボクで良ければ…」

 

 

 

約束の場所でまた新たな約束が交わされた。

あゆは涙を流し、竜也を思い切り抱きしめ、竜也もそれに応える。

二人を祝福するかのように、切り株からは小さな芽が息吹いていた。

 

 

 

その世界での竜也とあゆは心から通じ合い、幸せを掴みとることに成功した。

だが…彼らが手に入れた物語…。

『仮面ライダー龍騎の異世界』と『Kanonの世界』が確実な形で融合したが故に…。

 

 

 

『仮面ライダー龍騎とKanonの世界』にもパラレルワールドが生まれた。

 

 

 

そして…。

 

 

 

 

夢…

 

夢から覚めた…。

 

きっと、ボクが今見ているのは夢じゃない…。

 

現実…。

 

でも…。

 

こんな現実なら…

 

夢を見続けていたほうが良かったのかな…

 

 

 

ここは別の世界。

『仮面ライダー龍騎とKanonの異世界』。

この世界では13人の仮面ライダーが、一つの願いのために殺し合っていた。

そしてその戦いに決着がついたのだった。

 

 

 

病室でゆっくりと目を覚ました少女。

「ボク…生きてるの…?」

月宮あゆは7年の眠りから目を覚ました。

それは、冬の街であった小さな奇跡の力…ではない。

 

この世界にそのような奇跡は存在しないのだ。

 

1年ものリハビリを経て、彼女は退院することができた。

しかし、彼女の心は晴れやかではなかった。

目を覚ましたあとも、誰も彼女の見舞いに来ることはなかった。

「竜也くん…みんな…」

あの冬の日、意識だけが彷徨っていた頃…。約束を信じて待ち続けていたために、たくさんの人々と出会った。

 

相沢祐一、川澄舞、倉田佐祐理、北川潤、美坂香里、美坂栞、久瀬、沢渡真琴、天野美汐、水瀬名雪、水瀬秋子、サトル、ミツル。

 

そして龍崎竜也。

 

意識として彷徨っている間、その出会った人々の中には仮面ライダーがいた。

竜也は仮面ライダー龍騎、祐一は仮面ライダーナイト、舞は仮面ライダーファム、潤は仮面ライダーライア、久瀬は仮面ライダーゾルダ、サトルは仮面ライダータイガ、ミツルは仮面ライダーインペラー

彼らは13人の仮面ライダーとして戦いあう運命を背負っていた。

そして、彼女が自分の存在の真実を知り、消え行くまでの間に…身を切られるような別れがあった。

 

久瀬…彼はゾルダとして信じる正義を貫けない世の中を変えたいと願った。だが、仮面ライダーベルデによってその信念を打ち砕かれ鏡の中の世界で消えていった…。

 

潤…彼は栞が不治の病であることを知り、その病から栞を救いたいと願った。だが、仮面ライダー王蛇の前に敗れ、愛する人とその大切な人を救えなかったことを悔やみながらこの世を去った…。

 

そして、それゆえに不治の病に抗う術を失った栞も、潤を道連れにしたことを後悔しながら、息を引き取った。

 

それまでも、それからも、たくさんの仮面ライダーが現れ消えていった。

自分が目を覚ますまでの間…一体どうなったのか。

あゆは確かめたかった。

「みんな…きっと今でも…」

人を守るために鏡の中の怪物と戦っている。あの頃と同じように時には戦いのことを忘れ、楽しい時間を過ごしているはず。そう信じたかった。

気づいてもらえるように、1年前の服装と同じモノに身を包み、歩く。

その足で向かった先は、竜也の家。

意識が彷徨っている間、彼女はここで竜也と、その彼と和解した両親と住んでいた。

 

この世界の竜也には両親が存在している。

竜也は仮面ライダーやモンスターに両親を巻き込まないために、あえて粗暴な態度をとり両親の前から姿を消した。

そしてたどり着いたのが、かつて竜也の遠い親戚が住んでいたこの家。8年前の年末年始も一度だけここに遊びに来たことがあった。そのとき竜也とあゆは出会ったのだ。その親戚は今この世を去っており、空家同然となっていた。

竜也がそこで再び暮らし始めたとき、あゆと再会し、彼は少しずつ記憶を取り戻していった。

そんなとき、竜也の両親…竜郎と彩花がこの家に来た時に、すれ違っていた親子の絆をあゆが引き合わせた。

 

 

「竜郎さん、彩花さん…!竜也くんは2人の事を思って、わざと離れたの!」

「あゆちゃん…」

「本当の竜也くんは、寂しがり屋で…ひとりぼっちは大嫌いなの!」

「あの竜也が…俺達の親不孝息子が…」

「失う怖さは…ひとりぼっちの悲しさは…ボクにも痛いほどわかるから…!」

 

 

あゆの心からの叫びを聞き入れた2人は、竜也とお互いに心を曝け出し合い、和解するに至った。

この家にはチャイムがない。ノックで応答を待った。

しかし、その家からは誰も出てくることはなかった。鍵は掛かっていたが、誰もいる気配はなかった。

「竜也くん…!お父さん…!お母さん…!」

竜也と彼の両親は、天涯孤独の身であったあゆを受け入れてくれた。

 

「あゆちゃん、ここに住むと良いわよ。そうしてくれると、私達も嬉しいわ」

「息子の未来のお嫁さんが住んでくれるなんて、父親としてこれ以上の幸せはないさ」

「ちょっと、父さんも母さんも冷やかさないで…!あゆがそう思ってるかなんて…」

「何言ってるんだ竜也!お前の挙動見て、あゆちゃんに彼女になって欲しいことくらい、父親にはお見通しだぞ?」

「良いの…?ボク、また家族と一緒にいられるの…?」

「えぇ、私達がそう言うんだもの。あなたも家族よ」

「もう竜郎さん、彩花さんだなんて他人行儀やめて、お父さん、お母さんでいこう!」

「まったく二人とも…!ま、まぁ、あゆが家に居てくれるなら、おれたちが嬉しいのは事実。もしあゆが良ければ、此処で暮らさない?」

「うぐっ…ぐすっ…はい…!ふつつか者ですが、よろしくお願いします…!」

 

生まれた頃から父は居らず、唯一の肉親だった母親を失い、心から家族のぬくもりを求めていたあゆにとって、そこは本当の母親と同じくらいの温かい家族だった。

その象徴である龍崎家には、竜也はおろか、その両親もいない。

「みんな…どこに行ったの…!?」

不安と恐怖が入り乱れる。彼女は真実を確かめるべく、さらに別の場所へと向かった。

 

水瀬家。ここにはいろんな人が集まっていた。

そして争い合う運命を背負っていながらも時にはそれを忘れ、楽しい時間を過ごした記憶もある。

夕暮れにたどり着いた水瀬家。意を決してチャイムを押すが、反応はない。

ドアに手をかけると鍵は掛かっておらず、すんなりと開いた。

暗い居間で…

 

ひどく痩せた水瀬名雪がいた。

 

「名雪さん…」「あゆちゃん…?」

振り返った名雪の表情は、魂が抜けていると思えるような様子だった。

「そっか…目が覚めたんだね…」

「うん、1年前に目が覚めて…みんなは元気にしてる?」

あゆは不安に押しつぶされそうになりながらも、聞く。

「…あゆちゃんは知らないんだよね」

 

「お母さんやサトちゃんも死んだこと」

 

「え…?」

耳を疑った。その後、彼女に案内された先には…

小さな仏壇と秋子とサトルの遺影があった。

 

 

「ミツル君…僕は英雄になるよ。誰しもが思う英雄じゃない。なゆちゃんだけの英雄に…!」

「そうか…。いつか…こんな日が来ることくらい、分かってたのにな…」

 

 

その仏壇に両手を合わせる名雪。あゆは衝撃ゆえに、その場に立ち尽くしていた。

「お母さん、あのあと交通事故で死んじゃったの。サトちゃんは、お母さんが死ぬ前に救おうと…戦ったの。ミツル君を倒してまで」

「ミツルさんを!?じゃあ、ミツルさんは…?」

 

 

「死んだよ」

 

 

「サトちゃん!なんで…なんでこんなことを…!?」

「英雄になるためだよ…。きっと僕が一番倒したくない相手は…ミツル君だから…」

鏡の世界から2人は帰還した。しかし、ミツルの背中には夥しい出血があった。タイガのクリスタルブレイクによるものだった。

「真琴…もう一度だけ…おれを呼んでくれ…」

「あうぅ…!うぅっ…!」

「そうか…無理だよな…。そのために、おれはライダーになったんだ…。勝てなかったおれには…真琴の声を聞く資格なんか…」

ミツルは真琴の記憶と言葉を取り戻したかった。その為にライダーになった。その願いはサトルによって踏みにじられたのだった。

「うぐっ…ぐすっ…」

「ゴメンな…真琴…」

 

 

サトルは秋子と名雪と再び笑顔にしたかった。そのために嘗て共に笑いあった友であったミツルの命を仮面ライダーとして奪ったのだ。

「ミツル君を殺したサトちゃんを許せなかった真琴ちゃんは、ミツル君の遺したデッキでインペラーになって、サトちゃんを…殺したの」

そういった名雪の頬には、一筋の涙が流れていた。

 

 

「うああああああああぁっ!!あああああぁっ!!」

「…僕は…なゆちゃんを…秋子さんを…!」

名雪がその場にたどり着いた時には、2人の戦いには決着がついていた。

インペラー=真琴は、サトルの持つタイガのデッキを破壊し、契約破棄という形を持って、デストワイルダーに捕食されていた時だった。

ボリッ…バリッ…

肉を裂き、骨を砕く音が辺りに響く。

「サトちゃん!」

「ごめんね、なゆちゃん…僕は英雄にはなれなかったよ…」

その言葉を最後に、体の3割を喰らわれていたサトルは、デストワイルダーによって鏡の世界に引きずり込まれていった。

 

 

ミツルを愛した真琴は、言葉もまともに喋ることが出来ないというのにインペラーとなり、サトルを倒し復讐を果たした。自分の愛するミツルを踏みにじったサトルの持つ願いと愛を踏みにじることによって。

そのことにより、秋子は助からず命を落とした。

「真琴ちゃんは…」

「知らないよ…それ以降は…わたし、仮面ライダー達に関わってないもん…」

名雪は顔を伏せた。それ以降あゆの言葉に答えようとはしなかった。

「ごめんなさい、名雪さん…」

なぜ謝ったのかは分からない。

あゆは名雪に頭を下げ、水瀬家を飛び出した。

涙が止まらなかった。

「そんな…秋子さんもサトルくんもミツルさんも…」

どんな時でも笑顔を絶やさなかった秋子。彼女はもうこの世にはいない。

そして彼女の死が、二人のライダーを狂わせた。

…いや、むしろ止まっていた歯車を動かしたのかもしれない。

ライダー同士は戦う運命。ミツルもサトルもそれを受け入れてライダーになっていた。

仲間…そう呼べるのかは疑問だが、あゆはそう呼びたかった人達と出会い心を通わせること自体が間違っていたのかもしれない。

 

次にあゆが向かったのは、百花屋。

喫茶店であり、よく集まって食事を楽しんだりした。誰かいるかもしれない。

 

 

そこには、天野美汐と美坂香里がいた。

 

2人は名雪のように痩せ衰え、生気の無い訳ではなかったが…それでも表情は暗かった。

「香里さん、美汐ちゃん…」

「あゆちゃん、どうして…?」「あゆさん…眠り続けていたのでは?」

香里と美汐は、明らかに苛立ちのある表情に変わった。今のあゆは彼女たちにとって、思い出したくない記憶の象徴なのかもしれない。

「1年前に目を覚まして…やっと今日退院できたの」

「そう、良かったわね」「それでは」

簡単に感想を言うと、二人はレジで支払いを済ませ出て行こうとする。まるで彼女から逃げるように。

「まって!真琴ちゃんのこと…ボクが眠っている間になにが…」

バシッ!!

言い終わる前に、美汐があゆを平手打ちした。

「え…?」

突然のことにあゆは困惑する。対照的に美汐は怒りと悲しみが込められた表情だった。その証拠に顔は赤く眉は吊り上り、その瞳からは涙が浮かんでいる。

「二度と…わたしの前で真琴の名前を出さないでください」

そう言い捨て、彼女は歩き去って行った。かつて、彼女とも心を通わせたと思っていたのに…もうその心は離れきっていたように感じた。

その場にいた香里は、あゆの横について外に出た。

「知りたいの?あなたが姿を消してから目覚めるまでの間…何があったのか」

「うん…」

心に陰を落としながらあゆは頷く。だがそれは紛れもない本心だ。

「その真実が、あなたを苦しめるかもしれないわよ」

「それでも…ボクは知りたい。知らなきゃいけないと思う…」

意を決してあゆは香里の顔を見た。それを見た香里はため息をつきながら問いについての答えを述べた

 

「真琴ちゃんは…あの後死んだわ」

 

「真琴ちゃんまで…!」

「までってことは…サトル君やミツル君、秋子さんが死んだことも知ってるのね…」

「…名雪さんから」

名雪という言葉を聞いた香里は、隠していた苛立ちの表情がさらに浮き彫りになった。

彼女は香里の親友。母親と大切だった人を失って苦しんでいる現状をそっとしておいてほしかったのだ。それを掘り起こすあゆを良い気持ちで受け入れることはできない。

さらに深いため息をつき、香里は続きを述べた

 

「真琴ちゃんはサトル君を倒して、そのまま浅田…王蛇に立ち向かっていった。龍崎君や相沢君が止めようとしたけど聞く耳は持たず。結果的に王蛇に殺されて、鏡の中で消えていったそうよ…」

 

 

「手応えが無さ過ぎる。以前のインペラーの方がよっぽど強かったぞ」

「あうぅ…!」

真琴はインペラーとして浅田=王蛇に戦いを挑んだ。彼女は王蛇を恐れていた。

その中にある温かい感情は皆無。闘争心と苛立ちだけが王蛇を突き動かすモノであった。

言葉に出さなかった…いや、出せなかったが、真琴は戦いに勝ち残るには、一番恐れているものを乗りこる必要があると感じていた。

だが…彼女にも奇跡など起きない。

<FINAL VENT>

「もう良い…消えろ」

王蛇のベノクラッシュ。溶解液の波に乗った蹴りは容赦なくインペラーを破壊した。

 

 

「うそ…なんで…あんなにみんなで笑いあえたのに…」

「あなたがそう思えていても、あの人達…仮面ライダー達はそうじゃなかった。サトル君もミツル君も真琴ちゃんも…最後はあなたの知っている穏やかな姿ではなかった…」

いつしか香里は頭を抱え、しゃがみこんでいた。

「結局何も変わらなかったのなら…仮面ライダーなんかに関わらなければ良かったのよ…!」

きっと何もしなくても、彼女の最愛の妹である栞は命を落としていた。しかし、仮面ライダーの叶えられる願いという掴める可能性の低い僅かな希望に出会ったために、香里のももうひとりの大切な人である北川潤を失う末路になった。

「まだ真実を求めるの…?結局あなたに待つのは、悲しい現実しかないのかもしれないわよ」

「そうだとはまだ決まってない…!まだ…ボクの大切な人達が…生きていてくれるはずだから…」

「奇跡でも起こってたのならね。でも…」

 

「起こらないから奇跡と言うらしいわよ」

 

かつて、栞が発した言葉だった。

彼女は諦めつつも、心の何処かで奇跡に縋った。その奇跡が起こらなかったからこそ、潤は栞の回復を願い、止めようとしたライダー同士の戦いに参加したのだ。そして敗北し、栞も潤もこの世から居なくなった。

起こらなかった奇跡の犠牲者を間近で見守っていた香里の言葉は、重くあゆに伸し掛った。

その重みに耐えきれなかったのか、あゆは座り込んだ。

「…もう、わたしが話してあげられる事は無いわ」

そう言って、香里もその場を立ち去った。

大切な人達の死。それが容赦なくあゆに襲いかかってきた。

だが、だからこそあゆは全てを知らなければならなかった。大切な人達がどうなったのか…。

あゆ自身がいまだ知らないライダー達の消息。

 

 

 

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

相沢祐一=仮面ライダーナイト

川澄舞=仮面ライダーファム

浅田=仮面ライダー王蛇

ライダー同士の戦いを始めた影の男の傀儡であり、13人目=仮面ライダーオーディン

 

そして、彼女がまだ見たことすらない、12人目の仮面ライダー。

 

 

 

雪の街をひたすらに歩き、真実を求めた。

その6人とその者達を取り巻く人々がどうなったのか…。もしかしたら、竜也達は戦いを止めることに成功していて、また昔のように手を取り合うことができるかも知れない。

そんな小さな希望にすがりながら、彼女は彷徨い続けた。

「あゆさん?」

 

その言葉に顔を上げると、そこには倉田佐祐理が立っていた。

 

「佐祐理さん!みんなは…みんなは…!?」

彼女の肩を掴み揺すり、聞く。その様子に佐祐理は悲しい笑顔をたたえ、口を開いた。

「安心してください。もう終わったんです」

「終わったって…なにが?」

 

「舞は…母親の仇を討てたんです」

 

舞の仇とは、彼女の母親を理由もなく奪った浅田=王蛇。

つまり、王蛇は舞に倒されたのだ。

「じゃあ…王蛇は死んじゃったの…?」

「はい。舞は命懸けで王蛇を倒しました。でも…その時の傷は深くて…」

 

 

ミラーワールドから帰還した舞は、体中が血塗れだった。きっと王蛇に傷つけられたのだろう。3体もモンスターを使役する彼に勝てたのが奇跡に等しかった。

それ以上の奇跡を起こす力を…彼女は持ち合わせていなかった。

「佐祐…理…」

「舞っ!…お願い…!死なないで…もうこれ以上、失いたくない…!」

佐祐理は弟を失い、彼女は心を閉ざしかけていた。そんな時、舞に出会うことで再び世界と向き合う勇気を持てた。佐祐理にとって舞は、かけがえのない親友だった。

そんな舞を失えば、佐祐理は今度こそ世界と向き合うことはできなくなる。

それを舞も察したのか、消え行く意識の中で佐祐理を奮い立たせた。

「佐祐理…強く…生きて…」

「舞…!」

「この世界、素晴らしいと思えたから…。もうわたしは…」

続きの言葉を言う前に、舞は事切れた。

醜い戦いがあり、それに翻弄された舞。だが、彼女はそれでも佐祐理や祐一達のいる世界を素晴らしいと思えた。だからこそ佐祐理には生きていて欲しかったのだ。

その素晴らしいと思える世界を、佐祐理に見ていて欲しかった。

 

 

佐祐理は自ら命を絶とうという考えが何度も頭をよぎった。それでも舞の言葉が、佐祐理をこの世界に留めていた。

この先、彼女には幸せが待っているのだろうか。弟も親友も失った少女に…。

それでも…。

「佐祐理さん…ずっと生きていてください…!」

「はい…佐祐理は強く生きるって、舞と約束しましたから…」

あゆも佐祐理に生きていて欲しかった。その願いを佐祐理本人に伝え、あゆは再び歩き出した。

 

あゆは夕暮れの中、約束の場所に向かって歩いていた。

幼い日、竜也と共に過ごした思い出の場所。

夕闇に染まりかけてた時間に、そこにたどり着いた。

雑木林の中に巨大な大木の切り株があったはず。

そこには何もなかった。

切り株は切り倒された跡だけでなく、黒ずみ枯れ果てていた。

きっと、ここで戦いがあったのだろう。

切り株にそっと手を触れるあゆ。切り株にウロがあることに初めて気づく。

その中にカギがあった。

 

 

 

ボロボロのプレートに「あゆへ」と書かれていた。

 

 

 

「これって…竜也くんが…!?」

その鍵を握り締め、彼女は竜也の家へと向かった。

 

再び戻った龍崎家。

鍵を回すと、その扉は開いた。

意を決して入るあゆ。

家には沢山の新聞紙や雑誌が貼られていた。鏡を恐れているように…。

キッチンには後ろを向く竜也の父と母がいた。

「お父さん、お母さん!」

あゆを家族と受け入れてくれた人々。いないと思っていたが、ちゃんとそこにいたのだ。

だが…二人共返事をしようとしない。

「お父さん、お母さん、あゆだよ!?…目が覚めたの!」

そう言って近づく。しかし、それは…。

 

 

 

亡骸であった。

 

 

 

「あぁ…!あ…!」

2人は鏡の中のモンスターに襲われ、引きずり込まれることはなかったものの、それ以来、姿が映り込むものを恐れ、家の中に閉じこもっていた。

外に出ることもなく、2人は緩やかな死を迎えたのだ。

母親の手には手紙があった。

それを手に取り、開く。

 

 

 

『あゆちゃんへ

きっと、貴方は目を覚ますでしょう。竜也の未来のお嫁さんですものね。でもごめんなさい、あの子は貴方を待つことが出来なかったみたい。ミラーワールドと仮面ライダーの事は、あゆちゃんが行方をくらましてすぐに聞きました。私達の息子がなぜ、私達から離れていったのか、それで全てが納得できたわ。竜也の為に沢山悩んで苦しんで、そして支えてくれてありがとう。

竜也は祐一君とオーディンだけになっても戦いを止めることをやめなかった。でも祐一君はオーディンに敗れて亡くなりました。結局戦いを止められなかった竜也は、そのあとも苦しみ続けた。そして私達に言いました。「あゆに未来を与えたい」と。きっとその答えを出すのにもっと苦しんだはずです。戦いを受け入れるってことだから。もし、あゆちゃんがこの手紙を読んで絶望しちゃうかも知れない。でも前を向いて生きて。貴方のその命は…きっと竜也が悩んで苦しんで手に入れた答えなのだから。貴方と竜也をずっと愛しています。

                           あゆちゃんと竜也の母より』

 

 

 

「お母さんっ…お父さんっ…」

涙が止まらなかった。

あゆが目を覚ましたのは、奇跡でも何でもない。

 

 

 

彼女を心から愛した竜也が与えた「新しい命」だったのだ。

 

 

 

父親も何も残してはいなかったが、母親に寄り添うようにして事切れているところから、気持ちはきっと同じなのだろう。

悲しさで渦巻きながらも…一つの疑問が浮かび上がった。

きっと最後に生き残ったのは、龍崎竜也=仮面ライダー龍騎。

 

 

 

ならば彼は何処にいるのか。

 

 

 

最後に生き残っている竜也は、おそらくだがオーディンを倒している。

誰も寄せ付けない最強のライダーだった仮面ライダーオーディン。仮面ライダーとその戦いを仕組んだ影の男が操る傀儡。

竜也も決して弱いわけではなかったが、彼は一度もオーディンに勝利したことはなかった。いや、誰もオーディンに勝てたものはいない。それでもあゆが目を覚まして生きていることは、竜也が最後の仮面ライダーとして生き残った、何よりの証拠だ。

「竜也くん…何処にいるの…?」

零れおちそうな涙を瞳に溜め、あゆは彷徨い歩く。

その足は、雪の街の病院で止まった。

その理由はただ一つ。

 

 

 

透明なガラスの自動ドアの先に、ストレッチャーで運ばれる竜也を見たからだ。

 

 

 

その姿を見たあゆは病院に駆け込み、そのストレッチャーに走り寄った。

「竜也くんっ!!!」

「なんですか貴方は!?…って、月宮さん!?」

看護師があゆを引き離す。その腕を振り払い、再びあゆは竜也に寄り添った。

「竜也くんっ!竜也くんっ!」

「君は、龍崎竜也君の家族かい?」

「先生…!」

再びあゆを引き離した医師が問う。なんの偶然か、彼は眠り続けるあゆの担当医だったのだ。

 

 

 

「そうか…目覚める3ヶ月くらい前から月宮さんに面会に来ていた人がいるのは知っていたが、それが龍崎君だったとはね」

竜也の病室で、向い合わせに椅子に座って話すあゆと医師。

「竜也くん…一体何があったんですか?」

「ちょうど君が目を覚ます前日だよ。彼はこの町の駅前のベンチで発見された。体中に酷い傷を負っていただけではなく、脳に強い衝撃を受けたせいで…」

あゆは言葉を失った。

 

竜也はオーディンとの戦いに勝利し願いを叶えた代償として、今度は自分自身が眠り続ける運命となったのだ。

 

「ボクみたいに…回復することはあるんですよね…?」

自分も目を覚ました。竜也もその可能性はゼロではないはず。僅かな希望を胸に聞くも、医師は硬い表情で伝えた。

「君の場合は植物状態。脳の機能が全て失われたわけではなかった。それに目覚めて健康な状態に戻れたのは例の少ない奇跡とも言えるモノだ」

 

 

 

「龍崎君の場合は脳死。脳の機能が全て失われてしまっている。もはや目覚めることはないだろう」

 

 

 

それ以降の言葉は、あゆの耳には入ってこなかった。

 

 

 

あたりは暗くなり、寒さで体が凍えそうだった。

退院したての体で歩き続けたあゆは疲れ果て、いつしか8年前によく竜也と約束をしたベンチに座り込んでいた。

「えぐっ…ぐすっ…」

凍りつきそうなのは身体だけではなかった。

 

 

 

みんな変わり果て、いなくなってしまった。

 

 

 

「うぐ…うああああああああああぁ!!!!!!!」

悲しみを吐き出す。

あの日の楽しかった日々。暖かかった第2の家族。鮮やかな思い出。

もうそれは二度とやって来ない、悲しい思い出になってしまった。

しんしんと降り積もる雪だけが、彼女の周りで舞い落ちる。

 

 

 

ふと、その雪が停止した。

 

 

 

時が止まったように。

「ここに…深い絶望を抱えた仮面ライダーがいる」

唸るような声とともに現れたのはひとりの青年。

あゆは涙を拭って前を見る。

「だれ…?」

 

「タイムジャッカー…ティードだ」

 

ティードは、澱んだ瞳であゆを見据える。あゆは涙で視界が歪んでいたため、その澱んだ瞳も…その奥に宿る闇にも気付けなかった。

「月宮あゆ、俺と契約しろ。そうすれば…失った総てを取り戻せるぞ」

深い絶望の中にいたあゆに向けられた甘い誘惑。その誘惑に抗う術は、今の彼女にはない。いや、あったとしても彼女は拒まなかっただろう。

「ホントに…?竜也くんも、祐一君も、舞さんも、潤くんも、栞ちゃんも、久瀬さんも、サトルくんも、秋子さんも、ミツルさんも、真琴ちゃんも…みんなみんな、取り戻せる?」

「今からオマエが手に入れる力は…そういう力だ」

ニヤリと笑うティードが取り出した黒い時計。それは光輝き、銀色の仮面を着けた異形の顔を映し出す。

 

 

 

<RYUKI>

 

 

 

「うぐっ…!?」

その時計をあゆの体の中に押し込んだ。その姿はみるみる変わっていった。

赤い皮膚に銀の鎧をまとった異形。左手には龍の頭、右手には巨大な青竜刀を持っていた。

歪であり、醜かったが…その姿は、あゆが愛した少年の勇姿によく似ていた。

「オマエは今日から…仮面ライダー龍騎だ」

「ボクが…龍騎…」

 

 

 

 

 

続く…

 

 

 

 

次回

 

                           羨ましいな…

 

あれは…龍騎…!?

 

                           キミはボクが失ったすべてを持ってる…!

 

彼女はオマエ達が物語を手に入れた為に生み出された

 

                           なんでキミばかりが…!?

 

中編「オリジナルの罪と平行世界の闇」

 

 

 

 

 




キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

月宮あゆ

月宮あゆ=アナザー龍騎

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎
龍崎竜郎
龍崎彩花

水瀬名雪
美坂香里

倉田佐祐理
天野美汐

サトル=仮面ライダータイガ
ミツル=仮面ライダーインペラー
沢渡真琴=仮面ライダーインペラー

浅田=仮面ライダー王蛇

ティード




あとがき
今回の話は以前、とある方に送っていた最後の龍騎を大幅にアレンジしたモノです!
未完ですが今でも掲載している作品「仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Another~」は大方、こんな結末をたどる予定でした。コンセプトとしては…
以前私が書いていた「仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~」は「Kanonの物語」が「龍騎の物語」を救うというイメージでしたが、仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon Another~」は鏡写しとして「龍騎の物語」が「Kanonの物語」を苦しめる。といった話になります。
そして取り残されたあゆがアナザー龍騎として、本編の竜也とあゆの前に立ちふさがります。私が書いていた作品の中でも飛び切りダークな作風になるかもです。
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