仮面ライダー龍騎 ~EPISODE Kanon~   作:龍騎鯖威武

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第7話 「無力という名の屈辱」

食卓に向かう廊下の階段から祐一と名雪が降りてきた。

名雪は一度寝てすっきりした様子だったが、逆に祐一はだるそうにしている。

「おはよ~みんな。竜也くんの隣にいる娘が祐一の言ってた、竜也くんのお友達?」

「うん、月宮あゆ。よろしくね、名雪さん!」

「おい名雪、さっき会っただろう。・・・寝ぼすけ状態の名雪は何も覚えてないのか」

ボソッと毒舌を吐く祐一に、名雪は少し困った顔をする。

「う~、祐一の極悪人・・・」

「祐一、あんまり名雪さんをイジメちゃダメだよ。名雪さん、困ってるじゃん」

「祐一くんって、ちょっと意地悪だね・・・」

「しかたねぇよ、竜也にあゆちゃん。相沢はいつもこんな感じだからな」

「名雪さんをいじめる人なんて嫌いです」

「栞の言葉通りよ。相沢君、わたしの親友をイジメないでくれる?」

「祐一さん、今のは酷すぎますよ~」

「おいおい、そこまで言うかよ。たかが、冗談だろ」

ペシッ

「あいてっ!」

祐一の言動を非難するその他大勢。舞に至っては、祐一にチョップをかます。

これから、祐一はこのメンバーが揃ったときは、人をイジらないようにすると心に決めるのであった。

 

食卓には沢山の料理が並べられてあった。どれも見た目、香りは全て完璧といえる。

「すげぇ・・・こんなに美味そうな料理、見るのも久しぶりだよ。最近じゃ、すぐに済ませられるご飯ばかりだったからなぁ・・・」

「秋子さんの料理の腕はピカイチなんだ。・・・あるものを除いて」

絶賛する竜也に付け加えて、さらに賞賛の言葉を述べる祐一。最後の言葉は良く聞き取れなかったのだが竜也は気にしなかった。

「いただきまぁす!」

席に着くと同時に、真っ先に手をつけたのは竜也。さっきのたい焼きでは空腹を満たせなかったのか、いろんな料理にありつく。

「これめちゃくちゃうまい!」

「おいしい!秋子さん、料理上手なんだね!」

「あらあら、いっぱいありますから、遠慮なくどうぞ」

隣で祐一は竜也とあゆに、ふとこんな言葉をこぼした。他の人には聞こえないように、物凄く小さい声で。

「たしかに、秋子さんの料理は最高だ。でもな、今度オレンジ色のジャムを食ってみろ。この世のものとは思えないぞ・・・」

「へぇ・・・そんなにうまいの?」

「いや、違うんだがな・・・あのジャムは・・・」

祐一の言葉が終わらないうちに、秋子がビン詰めのジャムを持ってきた。中身はオレンジ色。

先程、話題に出たものらしい。

 

「祐一さん。今、このジャムのお話してましたよね?」

 

ジャムという言葉とオレンジ色のジャムに、その場全員の表情が凍りつく(秋子、竜也、あゆを除いて)。

舞の表情は変わってないように見えたが、額に冷汗が一筋。

「あ、秋子さん。おれ、腹いっぱいなんでこれで。ごちそうさま」

「わ、わたしも~」

「おれも・・・!」

料理はまだ少し残っていたが、秋子、竜也、あゆを除いた一同は、我先と食事を切り上げる。

「困りました・・・。誰も、このジャムは食べてくれないんですよ・・・」

「おれ、良かったら頂いてもいいですか?」

「ボクもボクも!」

秋子は二人の言葉にとても喜ぶ。

「嬉しいわ。じゃあ、パンを焼きますね」

数分後、こんがり焼けたパンが皿にならべられた。

その上にはオレンジのジャムがたっぷり。

ドアの向こう側で様子を伺っていた祐一は

(さらば、竜也、あゆ。お前たちのことは忘れんぞ・・・)

そう心で思い、ゆっくりとドアを閉める。

「このジャムって、オレンジジャム?」

「いいえ、違いますよ」

「じゃあこれって、原料は何ですか?」

「企業秘密です」

一切の詳細を明かさない秋子を少し不思議に思う二人だが、そんなことはすぐに頭の隅に追いやり、ジャムが塗られたパンにかじりつく。

 

「「うぐっ・・・!!」」

二人は先程の一同よろしく、一気に表情が凍りつく。

偶然か必然か分からないが、二人のリアクションは、全く同じものであった。

 

何とかジャムとの格闘を切り抜けた竜也とあゆは、秋子に礼を言い、栞たちと帰り路に着くことにした。舞と佐祐理はすでに別の道に分かれたので、現在は二人を加え、栞、北川、香里の5人である。

「うぐぅ・・・まだ、ジャムの味が口の中に残ってるよぉ・・・」

「あのジャム、どんな原料使ってるんだ・・・?」

「おれ達も知らない。わかるのは、おれ達が知ってる食べ物とは領域が違うことだけだ」

秋子のジャムを酷評する3人。特に竜也とあゆは、秋子の他の料理がとても美味しかったために、悪い印象はさらに大きかった。

「北川さん、そこまで言うことは無いのでは・・・」

「栞、あなたもあのジャムに良い印象は持ってないでしょ」

「うぅ~・・・」

秋子を擁護する栞だが、香里の一言に言い返せずに黙り込んでしまった。

こんな穏やかな時間がいつまでも続けばよかったのだが、現実はそうはいかなかった。

 

キィィン・・・キィィン・・・

 

「・・・!?」

モンスターの接近音に竜也の表情は一気に険しくなる。あゆはいち早くそれに気付き、その様子に栞も感づくが、潤と香里は気付かなかった。

「竜也くん、もしかして・・・」

あゆに相槌を打った竜也は、他の人々の安全確保をあゆと栞に頼んだ

「来る・・・。あゆ、栞ちゃん、みんなを連れて安全なところへ」

「うん、わかった・・・」

「おい竜也、どうしたんだよ?」

「みんな走っ・・・」

 

「グゥオオ!」

 

間に合わなかった。

シマウマ型のモンスター「ゼブラスカルアイアン」が現れた。ゼブラスカルアイアンは破壊活動を始めた。雄叫びをあげながら、建物を破壊していく。

「「「うわああああああああぁ!!」」」

突然の異形の出現にパニックを起こし、一目散に逃げる人々。

逃げ遅れた少年が餌食になろうとしていた。

「あ、あぁ・・・」

「させるか!てあっ!」

ドカッ!

「グキィ!?」

竜也はゼブラスカルアイアンにドラゴンライダーキックの如く、とび蹴りを食らわせ、近くで襲われた少年を助け出す。

「走って、早く!あゆ達も!」

竜也の言葉に、あゆと栞は潤と香里の手をとり、走り去ろうとする。

しかし、竜也がその場から離れようとしないことに焦りを感じた潤と香里は竜也を連れて行こうとする。

「何やってるのよ!?早くしないと!」

「竜也、あの怪物に殺されるぞ!」

「いいから、早く!」

あゆ達は二人を引っ張ろうとするが、潤たちも負けておらず、その手を振りほどく。

このままでは、彼らの安全は保障できない。

「仕方ない・・・。変身っ!」

竜也は先程、少年を助け出したときにあらかじめコートの下に装着していた白銀のベルトにカードデッキを差し込む。

竜也は仮面ライダー龍騎へと変身した。

「しゃあっ!」

「あれは・・・最近噂の、赤い騎士!?」

「・・・」

潤は驚愕し、香里は言葉を失った。

あっけにとられている潤と香里を、あゆたちは急いで近くの物陰へと連れて行く。

「あのモンスターはゼブラスカルアイアン・・・真司さんから聞いただけで、初めて見るモンスターだけど勝負あるのみ。だあっ!」

龍騎はゼブラスカルアイアンに殴りかかる。その強烈な右ストレートはゼブラスカルアイアンに炸裂した。

・・・筈だった。

「え・・・!?」

なんと、ゼブラスカルアイアンは筋肉を縦に引き伸ばし、龍騎のこぶしを避けたのだ。モンスター自体、常識の存在ではないものの、あまりにも常識離れした行動に龍騎は唖然とする。

「そんな・・・」

ガキィ!

「ぐあっ!」

ゼブラスカルアイアンは即座に龍騎に鋭い角を模した腕で龍騎を殴りつける。

しかし、龍騎も負けてはいない。すぐさま立ち上がり、ゼブラスカルアイアンへ蹴りを食らわすが、やはり、筋肉を縦に引き伸ばして避ける。

「縦にしか伸びないなら・・・!」

<SWORD VENT>

「だあっ!」

龍騎はドラグセイバーを呼び出し、ゼブラスカルアイアンを縦に斬る。

ザンッ!

「ギイィ!」

ゼブラスカルアイアンは縦の攻撃には対応できないらしく、ダメージを受ける。

「よっし!」

ガッツポーズを取り、さらに畳み掛けようとする龍騎。

だが・・・

ガスッ!

「うあっ!?」

突然の奇襲。あまりのことに龍騎はまったく対応できなかった。

後ろを振り向くと、ゼブラスカルアイアンに良く似た亜種「ゼブラスカルブロンズ」がいた。

「ゼブラスカルブロンズ・・・!もう1体いたのか!?」

2対1。

今まで龍騎は「シアゴースト」「レイドラグーン」などの大量発生型モンスターとの戦い以外は、タイマン勝負が多かったので、一度に複数の一個体型モンスターを相手にしたことは少なかった。

 

遠くで見ていた潤たちにも龍騎の危機がはっきりと分かった。

「おいおい、ありゃピンチじゃないのか!?」

「でも潤くん、ボクたちには何も・・・」

「そうよ、今助けに行っても、あたし達じゃ何も出来ないし、無力なあたし達が行っても彼の足手まといに・・・」

香里は冷静に判断するが、潤は黙って見ていられなかった。

「うおりゃあああ!」

「き、北川さん!?」

突然、そばに落ちていた棒状の鉄の瓦礫を拾い、背後からゼブラスカルブロンズに殴りかかった。

カァン!

しかし、全くといっていい程、効き目はなかった。

ゼブラスカルブロンズはお返しとばかりに、潤を殴り飛ばした。

バキィ!

「うわぁ!」

「潤!」

堪らず吹き飛ぶ潤を、龍騎は見事にキャッチする。

「大丈夫!?」

「お、おう、平気だ。あ・・・!」

潤があせって向こうを見る。龍騎もそちらを見ると、先程から相手のいなかったゼブラスカルアイアンがあゆたちをターゲットにして迫ってきていた。

「グオオオオ!」

「「き、きゃあああ!」」

「香里、みんな!!」

「くそっ!間に合え!」

龍騎はあゆたちを救うべく、あゆたちの下へ駆け寄ろうとするが・・・

ガキィ!

「がはぁっ!」

ゼブラスカルブロンズに攻撃され、近づくことすらままならない。

攻撃の際、龍騎の変身が解除し、竜也の懐からエイのレリーフが刻まれたカードデッキが飛び出した。それは、潤のすぐそばに落ちた。

「これは・・・」

「潤、それはダメだ、返して!」

竜也はすぐさま、潤からデッキを取り戻そうとする。

「・・・これを使えば、お前と同じようなヤツになれるのか?」

「それはそうだけど、一度仮面ライダーになったら、どれほど苦しいか・・・」

「じゃあ、このまま香里たちを見捨てろって言うのか!?」

「そ、それは・・・」

「おれは、チャンスがあるのに無力で何も出来ないってのが絶対嫌なんだよ!」

潤は、無力というものが大嫌いだった。ここで香里を助けられないこともまた無力。

竜也は、昔のことを思い出した。

竜也の両親はモンスターに殺されたのだ。そのとき、怯えて何も出来なかった自分が許せなかった。今思えば、自分が龍騎として戦い続けるのも、潤と同じように無力であることが嫌だったからなのかもしれない。

「・・・潤、仮面ライダーになったらモンスターとの戦いからは逃げられなくなるよ。それでも戦える?」

「ああ、おれも仮面ライダーってやつになって、守れるモノを守る!」

竜也は、潤の覚悟を信じた。

「わかった。そのカードデッキは潤にあげる。一緒に戦ってくれ!」

「おう!」

竜也は傷ついた身体を酷使して立ち上がり、潤と共にカードデッキを構える。

2人の腰に白銀のベルトが現れた。

「「変身っ!」」

竜也は仮面ライダー龍騎に、潤は後頭部にあるエイの尾を模した弁髪が特徴の石竹色の仮面ライダーに変身した。

あゆたちもさすがに驚きを隠せない。

「潤くんも仮面ライダーに・・・」

「北川君が・・・」

ライアは自らの身体を凝視する。

「これが、仮面ライダー・・・」

「それは仮面ライダーライア。潤、あゆたちを助けて。おれはこいつの時間稼ぎをする!」

「ああ、任せろ!」

龍騎はゼブラスカルブロンズに掴みかかり、ライアはあゆたちの元へと駆けつけた。

「とあっ!」

ガッ!

「グオォ!」

ライアはゼブラスカルアイアンにタックルをお見舞いする。

「香里、みんな、大丈夫か!?」

「え、えぇ、あたし達は平気よ」

「OK、いっちょやってやるぜ!」

ライアは気合をいれ、ゼブラスカルアイアンと対峙する。先手はゼブラスカルアイアン。

ライアめがけて襲い掛かる。

「うおりゃあ!」

ドゴォ!

ライアはヤケクソ気味にゼブラスカルアイアンとぶつかり合う。しかし、パワーはゼブラスカルアイアンのほうが上だった。

「ぐわっ!?」

もんどりうって転げるライア。

「潤くん!」

「北川さん、大丈夫ですか!?」

「いてて・・・アイツなんて馬鹿力だ!」

「アドベントカードを使って!そうすれば、なにか突破口が開けるはずだから!」

ゼブラスカルブロンズに応戦していた龍騎はライアに指示を送る。

1対1の戦いなので、戦闘経験も高い龍騎は圧倒的にゼブラスカルブロンズに勝っていた。

「アドベントカード?これか・・・?」

ライアはデッキからアドベントカードを引く。左腕に装甲されていた召還機「エビルバイザー」が自動的に開く。そこにあった隙間にアドベントカードをセットする。

<SWING VENT>

ライアの右手にムチ状の武器「エビルウイップ」が装備された。

「よし、これで・・・たあっ!」

バチィン!

「グギィ!」

エビルウイップには電流が走っており、ゼブラスカルアイアンは身体を引き伸ばしても避けることは出来なかった。

「す、すげぇ・・・」

「潤、ファイナルベントを使ってトドメを刺すよ!」

龍騎の言葉に従い、ライアはアドベントカードを引き、2人同時にベントインを行った。

<FINAL VENT><FINAL VENT>

龍騎の下にドラグレッダーが、ライアの下にエイ型のモンスター「エビルダイバー」が現れた。

「ふんっ!はああああああああああぁ!」

「とおっ!」

龍騎は力いっぱい叫びポーズを取り、勢いよくジャンプし、ライアはエビルダイバーの背中の上に乗る。

「だあああああああああっ!」

「ぅりゃあああ!」

ズガアアァ!

ドラゴンライダーキックと「ハイドベノン」が炸裂した2体のモンスターは跡形もなく消し飛んだ。

炎の中から現れる2人の仮面ライダー。

「また・・・巻き込んじゃった・・・」

龍騎の仮面の奥の竜也の表情は、後悔に満ちていた。

しかし、変身を解いた潤は、

「巻き込まれたんじゃねぇよ。こっちから飛び込んでいったんだ」

同じく変身を解いた竜也の方に手を置き、歯を出して笑う潤。

竜也は彼の笑顔に少し救われた気がした。

 

 

 

続く・・・。

 

 

 

 

次回!

 

          君を見過ごすわけにはいかないな

 

久瀬さん、あまり酷いこといわないでくださいよ~

 

          祐一の学校の生徒会長さん・・・

 

竜也くんは、今日はヒマなの?

 

          映画?

 

 

 

第8話「目の前の現実」

 






キャスト

龍崎竜也=仮面ライダー龍騎

月宮あゆ

相沢祐一=仮面ライダーナイト
川澄舞=仮面ライダーファム

北川潤=仮面ライダーライア
美坂香里
美坂栞

倉田佐祐理
水瀬名雪

水瀬秋子
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