スーパーロボット大戦マブラブα   作:ニラ

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02話

 

 

 ザインが再度ヴァヴを運び始めてから程なくして、目標地点として定めていた格納庫に二人は到着していた。

 ヘルモーズ自体が大きいせいか、この格納庫も非常に大きい。

 天井までの高さはざっと百m以上は有るだろう。

 こんな格納庫が幾つもあるのだから、ヘルモーズという戦艦の大きさには驚くばかりだ。

 もっとも、それももうすぐ撃沈されるのだが。

 

「ヴァヴ、大丈夫か?」

「えぇ、もう平気よ。落ち着いてきたわ」

 

 表情は然程変わらないが、一応は心配そうに聞いているのであろうザインに、ヴァヴは簡単な返事を返して言った。

 格納庫に到着したところで、ヴァヴは自分の脚で歩くと言ってザインの背中から降りている。

 もっとも、実際に先程よりもその表情から辛そうな雰囲気は少なくなってきているのも本当だ。

 感覚的な問題だろうが、心なしか先程よりも表情に張りが出ており、オドオドとした様子が減っていた。

 

「ここまで来れば、後はそれ程大変ではない。此処に在る機動兵器に乗って脱出をするだけだが……」

 

 と、ザインはそこで言葉を区切ってヴァヴに視線を向けた。

 視線の先に居るヴァヴは、確かに平静に見えはする。

 だがザインは『未だ機動兵器の操縦は無理ではないだろうか?』 と、そう思ったのだ。

 

 ザインは格納庫内をグルッと見てまわる。

 

 無人偵察機メギロード、汎用量産機ゼカリア、砲撃量産機ハバクク、上級汎用量産機エゼキエル。

 それらはゼ・バルマリィ帝国軍の機動兵器達だ。

 

「この中ならエゼキエルか?」

 

 ザインは言いながら上級汎用量産機エゼキエルを見つめた。

 『上級』と名前に付くだけあって、エゼキエルのその性能はかなりの物である。

 帝国は他の星系を攻略する際、先ずはメギロードを使ってその文明レベルを調べ、その上で侵攻を開始する。

 もっとも、その侵攻も大抵の場合はメギロードだけで事足りるのだが、それだけでは対処しきれ無い場合にゼカリア等を使用するようになるのだ。

 

 とはいえだ、ザインはその機体で外に出ることに、少しばかり難色を示している。

 まぁ、それもそうだろう。

 仮にもヘルモーズ(27,800m)を撃墜しようという連中が居る中に、たかだか20数mの機体で飛び出して無事で済むか?

 そう思っても仕方がない。

 しかし、それでも目の前に在る量産機の中ではそれが一番高性能であるのも事実。

 他の機体に乗るよりは、遥かにマシと言うものだろう。

 

「ヴァヴ、取り敢えずエゼキエルに――」

 

 ザインはヴァヴに視線を向け、機体に乗るように促そうとする。

 だがその当のヴァヴは、ある機体を見つめていて動こうとはしなかった。

 

 ヴァヴの視線の先に有るモノ。

 

 それは、白黒の巨大な機体。

 非人型のフォルムをもっていて、先のゼカリア、ハバクク、エゼキエル等を遥かに超える火力を有する巨体。

 

 名前は

 

「アンティノラ……か」

 

 ザインはその機体の方へと視線を向けて、小さく名前を呟いた。

 

 第七艦隊にだけ少数配備されている高性能機で、

 その構成素材に『ズフィルード・クリスタル』という自律・自覚型金属細胞を使用している特別機である。

 主に上級士官用の機体ではあるのだが、どうやら乗る者が居らず捨て置かれているらしい。

 

「ねぇ、コレは使えないのかしら?」

 

 ヴァヴは確認するようにして、ザインに聞いてきた。

 その問いかけに、ザインは口元へ手を当てると

 

「使える……だろう。他の機体とは違い操作方法は解からんが、コイツには『カルケリア・パルス増幅装置』が積んであるはずだ。

 システムに俺か、若しくはお前の『念』の波長を合わせれば操作方法は嫌でも理解できる」

 

 ザインは知識の中からそう言うと、機体――アンティノラを見上げた。

 『意図して無視』するようにしていたが、実際いま現在、この場にある機体の中でその性能は群を抜いている。

 少なくとも他の機動兵器で出るよりは、ずっと自身の生存確率が高くなるであろう。

 それに操作方法に関してもザインが口にしたとおり、

 『カルケリア・パルス増幅装置』を使うことで自身の脳に直接刻むことが出来る筈である。

 

 因みに、カルケリア・パルス増幅装置(正確にはカルケリア・パルス・ティルゲム)とは何かと言うと、

 簡単に言えば、人の持つ『念動力(超能力の類)』を増幅させ、機械との相互間方向に情報をダイレクトに伝える装置である。

 地球側には同じような機能を持つ装置として、T-LINKシステム(Telekinesis-LINK System)と言うものが存在しているが、

 こうして同じ様な物が存在しているのは偶々……偶然であるらしい。

 

 さて、とりわけ性能が高く、その上操作に問題は無いと言っている機体があるにも関わらず、

 何故ザインはその機体を無視していたのか?

 それはアンティノラの制作者が『ユーゼス・ゴッツォ』という男だったからである。

 

 ユーゼス・ゴッツォについては機会があれば述べるが、

 ザインは自身の中にあるイングラム・プリスケンの記憶から、ユーゼス・ゴッツォという人物を酷く嫌悪していた。

 その為、そのユーゼス・ゴッツォに関係が深いモノには関わりたくはないと思っていたのだが……。

 

「性能的には、そこのエゼキエルよりも数段上でしょ?」

 

 ザインは眉間に皺を寄せて表情を崩しているが、どうやらヴァヴはそうではないらしい。

 もっとも、生きるか死ぬかの状態で、好き嫌いを考慮に入れること自体間違っているのだが。

 

 ザインはヴァヴの言葉に観念したように、大きく息を吐いた。

 

「あぁ、そうだな……操縦は俺がやろう。お前はコックピット内で衝撃に備えていろ」

「解ったわ」

 

 二人はそう短く会話を交わすと、アンティノラのコックピットに入り込んでいった。

 

 機体自体が大型であるためか、コックピットの中は十分に広さがあり、喩え2人どころか3~4人でも問題がないほどの空間である。

 ザインはそのまま中央の席に座ると、次々とコンソールを操作して機体の立ち上げを行っていく。

 

「――いいぞ、初期起動は他の機体と大差ないようだな。問題は機体動作の方法だが……」

 

 言いながら、ザインはアンティノラに搭載されているはずのシステム――カルケリア・パルス増幅装置のコマンドを調べはじめた。

 目まぐるしく変わっていくモニターの表示に、ザインは忙しなく視線を這わせていく。

 すると、程なくしてそのコマンドをザインは発見してそれを実行に移す。

 だが――

 

 ビーッ!

 

「システムエラー?」

 

 実行に移した結果、正面モニターに大きく『System Error』と表示がされた。

 

「馬鹿な!? 何故エラーが出る? 俺やヴァヴの念に反応しない筈が無いのに!!」

 

 言いながら、ザインは再度実行コマンドを入力するが、モニターに出てくるのは『System Error』の文字だけである。

 何度かコマンド実行を繰り返したザインだが、変わること無く現れる『System Error』の文字に苛立ちを覚え、

 

 ガンッ!!

 

 と、強くコンソールを叩いた。

 

「クソッ! 一体どういう事だ? ……まさかこのシステムは――」

 

 数度のエラーがでた後、ザインはその理由にふと納得がいった。

 ほんのちょっと冷静になってみれば、至極簡単な事。

 

 この機体――アンティノラは、ユーゼス・ゴッツォによって開発され、少数が製造された機体である。

 本来ならば、念動力を持つ人間が操作することを前提に造られているのだが、

 二人の乗っているこの機体は、どうやら『念動力を持たない者が動かす様に』調整がされているようだ。

 

 詰まりは、

 

「システム自体が未調整……と言うことか」

 

 苦々しく言うザインの言葉に、ヴァヴも意味を理解したらしく「そんな……」と言葉を漏らした。

 とは言えだ、こうしている間にも艦の破壊は着々と進んでいて、

 既に格納庫にまでその被害が現れている事がモニターからも確認ができる。

 

 とてもでは無いが、今から悠長に他の機体に乗り換えている暇はない。

 かと言って、システムの調整をするのも時間的には難しいだろう。

 

 ザインは苦々しそうに下唇を噛んだが、直ぐにその表情を正して頭を振った。

 

「このシステムが使えなくとも、機体が動くことには変わりはない。手探りになるが……このまま出るぞ」

「操作方法もよく解らないで、本当に大丈夫なの?」

「詳しく調べている暇はないからな。他に何か、操作を補助する物があれば良いんだが……」

「……ねぇ、これは?」

 

 ヴァヴは何か他に助けになるようなモノは無いだろうかと、ザインに変わってコンソールを操作し始めた。

 そして、どうやらその中に一つ気になるものを見つけたらしい。

 画面には『Cross Gate Paradigm system』とあった。

 

「これは……ッ!? 成程、確かにこれなら!」

「クロスゲート・パラダイム……? ……これって一体――」

 

 問い掛けるようにして聞いてくるヴァヴに、ザインは手をかざして『待て』とのジェスチャーをした。

 そしてコンソールを再び操作していき、システムの機動を行う。

 

「行けるぞ、こっちのシステムは動く!」

 

 システムの立ち上げをしながら、ザインは内心『運が良いのか悪いのか……正直解からんな』と呟いた。 

 

 『クロスゲートパラダイムシステム』……簡単に言えば、因果律に干渉して限定空間内に置いて神の如き力を発揮するシステムである。

 だがそれ故に、世界の意志――所謂『修正力』によって弾かれ、予期せぬ出来事に巻き込まれる可能性が高い。

 要は諸刃の剣とも言える装置なのだ。

 

 とは言え、それも余程の事をしなければ問題ないレベルのことである。

 

「クロスゲート・パラダイム・システムを使って、無理矢理『カルケリア・パルス・増幅装置を調整済み』にする。

 後は上手く機体を動かせば――」

「――クロスゲート・パラダイム・システム……か」

「? ……どうしたヴァヴ?」

 

 ボソリと、呟くように言ったヴァヴにザインは視線をモニターに向けたまま尋ねる。

 

「いや、何かを思い出しそうなんだ。……さっき、私は自分のことを――そうだ、確か『三村』と言ったな?」

「……確かに言ったな。だが、それとクロスゲート・パラダイム・システムにどんな関係がある?」

 

 ヴァヴの問に答えながらも、ザインの手は休まることはない。

 モニターに映る表示は次々とその項目を変えていき、目まぐるしく変わる表示にザインは忙しなく視線を這わせている。

 

「私は、クロスゲート・パラダイム・システムについて知らないんだ。――いや、知ってはいるのだが……何かが違う気がする」

 

 ヴァヴの何とも要領を得ない言葉に、ザインは首を傾げる。

 

 『知っているのに知らない』

 

 そんな事を言われれば、誰だって妙に思うに決まっている。

 

 ザインはクロスゲート・パラダイム・システムの事を、イングラムの記憶から知っていた。

 だからこそシステムを利用しようとも思ったのだが、どうやらヴァヴの場合はザインのそれとは違うらしい。

 

 もっとも、それに付いて今の段階で詳しく問答をしてる暇もない。

 今の状態でザインに言えることは精々

 

「ヴァヴ……どうやらお前には俺とは違い、イングラム・プリスケンの記憶が無いようだな」

 

 といった程度の事だ。

 

 クロスゲート・パラダイム・システムについて、ザインも知識としては知らない、

 あるのは自身に植え付けられた、イングラム・プリスケンの記憶の中に触り程度入っているだけである。

 それに、ヴァヴにはイングラム・プリスケンの記憶が無い……そう考えれば、

 ヴァヴの言葉の端々に現れる未熟さや迂闊さも理解はできるからだ。

 

「イングラム・プリスケン? ……アウレフの?」

「そうだ。いや、その事でお前を攻める気は無い。これは俺達にはどうする事も出来ないことだからな。

 だが……おそらくイングラム以外の誰かの記憶を、お前はその身に宿しているのだろう」

「それがこの、奇妙な感覚の正体?」

「あぁ……だがそれも、いづれはもっとハッキリとするだろう」

 

 ザインの言葉に、ヴァヴは「そう……なのかも知れないな」と返した。

 一応の納得はしたのだろう。

 もっともそれは『今は悩んでいる場合ではない』といった、少しばかり無理矢理気味な納得のしかただったが。

 

 さて、そんな風にヴァヴが納得をしたのとほぼ同時、

 コンソールを操作し続けていたザインの手の動きがピタリと止んだ。

 

 ザインはモニターに向けていた表情を軽く緩め、「フッ」と小さく笑みを漏らす。

 

「――調整終了だ。若干手間取ったが、基本はティプラー・シリンダーを操作するのと変わらんな」

 

 言って、ザインはコンソールのキーを『カチッ』と叩いた。

 瞬間、今までモニターにエラー表示で出ていた『カルケリア・パルス増幅装置』が、

 そのエラー表示を無くして起動を開始する。

 

「よし……システムとのLinkは完璧だ。今なら、このアンティノラの操作方法が手に取るように解るぞ」

 

 ザインはそう言うと、操縦桿を握り締めて機体を動かすのだった。

 軽い操作でアンティノラを動かすと、機体を固定していた固定具を無理矢理に引き剥がして破壊する。

 

「アンティノラ、出るぞ。衝撃に気をつけろ」

「了解」

 

 ザインの言葉にヴァヴが軽く返事を返すと、アンティノラは背部のブーストを吹かして格納庫を飛び出していくのであった。

 

 

 

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