私の[ダンナ様/先輩]   作:おかぴ1129

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6.私の妹 〜秦野〜

 学校の授業が終わり、私は一目散に先輩の家に向かった。今日は部活は休む。部活よりも大切なことが私にはある。

 

――シュウ先輩が目を覚ましました

 

 朝潮からメールをもらった瞬間は、授業中にも関わらず声を上げて喜んでしまった。その後の授業も胸が高鳴って授業に集中出来ず、放課後になるのを待ちきれなかった。先輩と話が出来る。あの人ではなく、先輩に本当の話を聞くことが出来る。

 

 本当は授業なんか全部投げ捨てて、すぐにでも先輩の家に行きたかった。だけど学校をそう簡単に休むわけにも行かないし、何より先輩はやはり疲労が激しく、再び眠ってしまったという話だし……放課後になったらすぐに先輩の家に行こうと心に決めた。早く先輩に会いたい。先輩の声を聞きたい。放課後になり先輩の家に向かう途中は、逸る気持ちを抑えられず、自然と足早になっていき、最後は全速力で走っていた。

 

 先輩の家に到着するやいなや、私は先輩の部屋に直行する。ドアを開くと、ベッドから上体を起こし、上半身裸になって怪我の具合を医者に診てもらっている先輩の姿があった。

 

「……ぁあ、秦野、久しぶり」

「一ヶ月ぶりに会ったのに、相変わらずそっけない返事しかしてくれないんですね……さすが、超絶鈍感クソ野郎です」

「そのセリフ……秦野も相変わらずだね」

「おかえりなさい、先輩」

「うん。ただいま」

 

 先輩を抱きしめたい気持ちをグッとこらえ、私は診察の邪魔にならないよう、一度部屋から出た。先輩の声が聞けた。久しぶりに先輩の声が聞けた。先輩の声は、こんなにも耳に心地いい声だったっけ……久しぶりに声が聞けた喜びで胸が一杯になる。

 

「姉さん、おかえりなさい」

「あ、朝潮ちゃん。今日はありがとう。お疲れさま」

 

 私に近づいてくる朝潮の頭を自然と撫でてしまう。そういえば昨日、『ちゃん付けはやめて欲しい』と言われていたことを彼女の頭を撫でている最中に思い出したのだが、本人は頭を撫でられてご満悦になっているようだから、そんなに気にしなくても良さそうだ。

 

「秦野さんおかえり」

「はいお母様」

 

 出迎えてくれた先輩のお母様からも『おかえり』の言葉をもらえた。なんだかこの一ヶ月の間に、私も先輩の家族の一員になれたようでうれしい。その上先輩まで帰ってきてくれたのだから喜びもひとしおで、これ以上ないほど幸せだ。ただ……

 

「お母様ー。洗濯物はこちらに置いておけばいいですかー?」

 

 奥の居間から聞こえた声の主……比叡さんがいなければ。

 

 私は居間に行き、洗濯物を両手いっぱいに抱える比叡さんのもとに来た。彼女は私を見るなり顔色が変わる。どうやら苦手意識を持たれたようだが、一向に構わない。

 

「あ、秦野さん。学校終わったんですね。おかえりなさい!」

「まだいたんですか?」

「はい。昨晩からお世話になってます」

「先輩をあそこまで傷だらけにした張本人なのに?」

「……」

「もう向こうの世界とやらに帰ったらどうですか?」

「帰れるのなら、そうしたいです。早く無事を伝えないと……」

「その時はもちろん、先輩はここに残して一人で帰ってくださいね」

 

 私の挑発を受けた途端比叡さんはなにか言いたそうな険しい顔をしたが、すぐに持ち直して自分を抑えたようだ。

 

 私に遅れてお母様と朝潮が居間に来た。お母様はこういった場の空気に疎い。私たちの間に流れる尖った空気に気づくことなく、気さくに私たちに話しかけてきた。

 

「ぁあ、あとで畳んじゃうからその辺に置いといて」

「いいですよ。私畳みますよお母様ー」

「なんだか夏の時に戻ったみたいね」

「そうですね。あの時はお世話になりました」

「いいのよ。私達だって比叡ちゃんのお世話になったんだし」

 

 お母様と比叡さんの間に、家族の間にだけ流れる朗らかな空気を感じた。この空気の中に私が入れないこと、そして私が入れない先輩の家族という輪の中に比叡さんがいることが悔しい。

 

 戸棚の中にある写真立ての写真が目に入った。野球のユニフォームを着た比叡さんと大滝川テレタビーズの人たち、そして先輩が満面の笑みで写っている。私の大切な人たちの輪の中に、この比叡という人が想像以上に食い込んでいることが、如実に映しだされた写真だ。

 

「お母様、私も何かお手伝いさせて下さい」

 

 気がつくと、私は自分の荷物を床に起き、お母様にお手伝いを申し出ていた。お母様は私の気持ちを知ってか知らずか、私の申し出に気さくに応えてくれた。

 

「あらそお? じゃあ夕飯の準備のお手伝いお願いしようかしら」

「分かりましたお母様。朝潮ちゃん、いっしょにやろう」

「了解です姉さん!」

 

 負けてられない。私にとってもこの人たちは大切な人たちだ。こんな得体のしれない人から、大切な先輩の家族を遠ざけないと……気持ちだけが焦ってしまう。私は髪をしばり、腕まくりをして台所に入らせてもらった。キッチンにはまだ準備されただけで下準備が何もされてない食材が並んでいる。じゃがいも、人参、玉ねぎ、鶏のもも肉……

 

「お母様、今晩はカレーですか?」

「そうよ。シュウに聞いたら母さんのカレーが食べたいって」

 

 そっか。先輩のリクエストか……だったら私は下準備だけ手伝って味付けはお母様に任せよう。先輩もお母様のカレーが食べたいはずだから。

 

「前に作ってくれたお母様のカレー、とても美味しかったですもんねー」

 

 比叡さんの言葉がいちいち私の心を苛立たせる。この人は私の神経を逆なでしている自覚があるのだろうか……あったらあったで腹立たしいし、なければないでタチが悪い……

 

「一緒に作ったあの時ね。比叡ちゃんあんなもの入れようとするからびっくりしたわよ」

「ひぇええええ?! まだ覚えてらっしゃったんですかお母様?!」

 

 じゃがいもの皮を剥こうと手に取ったピューラーを握る手に力が入る。先輩を危険な目に遭わせ、お母様にウソをついて惑わせているくせに……私の前でお母様と親しくしないで欲しい。

 

「姉さん?」

 

 私の真似をして同じくポニーテールに髪を縛った朝潮が、私の横で、心配そうな眼差しで私を見ていた。

 

「あ……ごめんね朝潮ちゃん」

「ちゃん付けはやめてください。私は何をすればいいですか?」

「ぁあ、ごめんね。じゃあ私は包丁でじゃがいもの皮を向くから、朝潮はこのピューラー使って人参の皮を剥いてくれる?」

「了解です!」

 

 一度ついた癖というのは中々取れない。またしても朝潮をちゃん付けで呼んでしまった。朝潮も別に怒っている様ではないが、朝潮を呼び捨てで呼ぶのもちゃんと慣れていかないと……

 

 そんなことを考えながら、私は手に持ったピューラーを朝潮に渡し、朝潮はピューラーを受け取ると、人参の皮を必死な顔で剥き始めた。手の動きがたどたどしい。苦戦しているのがなんとなくわかる。確かに剥けているが、皮がぷつぷつ切れてしまい、綺麗に剥けていない。

 

「……! ……ッ!!」

「朝潮ちゃん……ピューラー使ったことなかったっけ?」

「は、はい……」

「そっか。えっとね。こうやって使うんだよ」

 

 私は朝潮からピューラーと人参を受け取り、使い方を教えてあげるべく、人参の皮を剥いてみせた。朝潮は興味津々といった感じで目を輝かせて、人参の皮が剥けていく様子を食い入るように見つめている。

 

「わかった?」

「はい! ありがとうございます姉さん!!」

「じゃあやってみて」

 

 私から人参とピューラーを受け取った朝潮は、さっきの私がやったように人参の皮を剥いてみせた。端から端まで綺麗に皮が向け、朝潮の顔は途端に笑顔になった。

 

「姉さん! やりました!! 私も姉さんみたいに綺麗に皮が剥けました!」

「よかった。じゃあその調子で全部剥いてね」

「はい! 了解です!! 朝潮、人参の皮むきを完遂します!!」

 

 ピューラーを持った右手の方で笑顔で敬礼をした朝潮は、その後も嬉しそうに人参の皮を剥いていく。この子は、こんなに嬉しそうな顔が出来る子だったんだなぁと、少し意外に思って朝潮の様子を眺めていた。

 

「クスクス……」

「ふふっ……」

 

 フと、お母様と比叡さんがこちらを見てクスクス笑っていることに気がついた。朝潮もそれに気がついたようで、朝潮も不思議そうな顔で二人を見る。

 

「どうかしました?」

「私達がどうかしたんですか?」

 

 私と朝潮が同時に声を発してそう言ってしまい、その様子を見ていたお母様と比叡さんの笑みにさらに拍車がかかった。

 

「ごめんなさい……二人とも、そっくりだなぁと思って。ホントの姉妹みたいだねってお母様と話してたの」

 

 比叡さんがおかしそうにそう言った。私と朝潮は確かに見た目が似てる。特に今は同じ髪型をしてるし、似てるのにさらに拍車がかかった感じだ。

 

「それにほら、秦野さん、朝潮さんに皮の剥き方教えてたでしょ? 教えてる秦野さんはお姉さんみたいだったし、朝潮さんは妹みたいに真剣に聞いてて……事情は聞いてるけど、ホントの姉妹みたいだねってお母様と話してたんです」

 

 比叡さんのそんな言葉を受け、私は朝潮の顔を見る。朝潮も同じく私の顔を見た。朝潮は、私と目が合った途端に顔を真っ赤にし、恥ずかしそうに顔をそむけ、そっぽを向いた。

 

「た……確かに……姉さんは……色々と教えてくれますし……ホントの姉みたいに……」

 

 顔を真っ赤にして恥ずかしそうにそう言う朝潮が本当に可愛かった。うん。本当の姉妹か。悪くない。私と朝潮が本当の姉妹になるのは、悪くない。

 

「ほら。照れてる間があったら早く人参剥いちゃって」

「はい! 姉さん!!」

 

 朝潮の返事が本当に嬉しそうだ。こんなにかわいい妹なら、私も大歓迎だ。これから色々と教えてあげよう。私が知っていることを、この子に教えていこう。

 

 その後はすべての食材の下処理を、朝潮への料理教室を兼ねて行っていった。途中、玉ねぎを切るときに朝潮が号泣しながら

 

「ねえざーん……なみだが……どまりまぜーん……なにが手はないんでずがー……」

 

 と普段の朝潮にあるまじき醜態を見せてくれ、私は比叡さんと顔を見合わせて笑ってしまった。私と比叡さんの間の空気が、ほんの少しだけ和らいだ。不覚だとも思ったが、その反面、どこかホッとした自分もいた。朝潮、ありがとう。

 

 すべての食材の下処理を終え、バトンタッチしたお母様がカレーの仕上げに入った頃、お医者さんの診察が終わり、居間に先輩が来た。さっきと比べて包帯が真新しくなっており、血や汚れが無くなって綺麗な包帯が頭に巻かれていた。痛々しいのは変わりないが、それでも昨夜と比べるとまだ悲壮感はない。

 

「診察終わったよー。……ぁあ、カレーのいい匂い」

「今晩はシュウのリクエストに応えてカレーよ。じゃあお母さん、先生にお代を払ってくるから。朝潮ちゃん」

「はい! なんでしょうかお母様!!」

「私ちょっと離れるから、お鍋見といてくれる?」

「はい! 了解です!!」

 

 ご指名を受けた朝潮は嬉しそうに敬礼をした後、カレーが入った鍋の前まで来て真剣な顔でお玉でカレーをかき混ぜ始めた。別にずっとかき混ぜなくてもいいんだけど……まぁいいか。ご指名されたことが朝潮は嬉しくて仕方ないだろうし。

 

 先輩は片目が包帯でふさがっているためか少し歩き方が危なっかしい。フラフラと歩く先輩は、洗濯物をたたむ比叡さんのそばにたどり着いたところで、よろっと体勢を崩した。

 

「あれっ……」

「おっと……シュウくん大丈夫?」

「うーん……やっぱり片目だけだとバランス取れないのかな?」

 

 倒れそうになる先輩をとっさに受け止めた比叡さんは、そのまま先輩を自身の隣に座らせた。しかも二人は相当くっついていて、密着しているといってもいい。

 

「はだのー。カレー作るの手伝ってくれたの?」

「はい。せっかくですからお手伝いしようと思いまして」

「朝潮ちゃんもかな。手伝ってくれてありがとう」

 

 先輩は朝潮にも朗らかに話しかけてくれたが、当の朝潮は現在、目の前のカレー鍋をかき混ぜることに全神経を集中させており、先輩の声は耳に全く届いていない。

 

「……」

「?」

「シュウくん、朝潮さんはカレーの火加減見るのに忙しいんだよ」

「そっか。邪魔しちゃ悪かったね」

 

 比叡さんが先輩に耳打ちをし、先輩はそれを聞いて苦笑いを浮かべた。

 

「ところで姉ちゃんは手伝ったの?」

「秦野さんと朝潮さんが手伝ってたから、お姉ちゃんは洗濯物をたたんでたよ」

「安心した。姉ちゃん、カレーにアレいれようとしたことあるしね」

「ひぇええええ?!! シュウくんまでそんなこと!!」

 

 先輩がクスクスと意地悪な笑みを浮かべ、比叡さんがわちゃわちゃと恥ずかしそうに両手を振る。そんな二人の仲睦まじい様子を傍で見ているのが、本当に辛い。

 

「比叡さん、カレーに何を入れようとしたんですか?」

 

 なんとか話に入りたくて、無理矢理に二人の会話に入り込む。お母様と先輩がドン引きする食材が何なのか……純粋にそれが気になったってこともあるけど。

 

「え……」

 

 先輩の表情が一瞬で深刻なものになった。

 

「秦野、聞かない方がいい……マジでおぞましいから……」

 

 怪我の痛みからではない脂汗が先輩の顔からにじみ出ているのが分かった。

 

「ひぇええええ?!! は、秦野さん! 忘れて下さい!!」

 

 ほんと、この人何を入れようとしたんだろう……

 

 その後はお母様も戻ってきて、しばらくみんなで話をした後に夕食となった。

 

「せっかくお手伝いしてくれたんだし、二人も食べていって!」

 

 とお母様からありがたいお言葉をかけもらい、私と朝潮もご相伴させてもらうことになった。食べている最中、片目が包帯でふさがっている先輩は遠近感がおかしくなっていてうまくカレーを食べることが出来ず、当然のように先輩の隣に座っていた比叡さんが時々先輩を手助けしていたことが、私にはちょっと羨ましかった。

 

 一方で朝潮を見ると……

 

「姉さん! 美味しいです!! このカレー、本当に美味しいですね!!」

 

 と目を輝かせ満面の笑みを浮かべながら、バクバクとカレーを平らげていた。確かにこのカレーは本当に美味しいが、初めて自分で作ったカレーというのもあるのだろう。こんな朝潮を見たのは初めてだ。今日は妹の色々な顔が見ることが出来てうれしい。

 

「? 姉さん? どうしたんですか?」

「んーん。なんでもないよ」

 

 複雑な感情を抱えたまま夕食を終える。朝潮と比叡さんはそれぞれ信じられない量のカレーを食べていた、朝潮もその体格や年齢に似合わずよく食べる方だが、比叡さんに至ってはカレー大盛りで6杯という、もはや人外としか思えない量を食べていた。

 

「やっぱり比叡ちゃんの食べっぷり……気持ちいいわね〜……」

 

 とはお母様の弁。私に言わせると、もはや気持ちいいレベルを通り越しているのだが……

 

 それはそうと、夕食中に気になったことがある。

 

「姉ちゃん……」

「ん……」

 

 先輩と比叡さんの間で、時々妙なアイコンタクトがあったことだ。その時の両者の眼差しは真剣そのもので、とてもじゃないが生活の中での親しい者同士の阿吽の呼吸というよりは……お互いのことを理解し合った者同士の、言葉を介さない意思疎通というか……何か固い決意の確認のようにも見える眼差しだった。

 

――やっぱり私には横顔しか見せてくれないんですか……

 

 そんな感覚に時折襲われたが、気持ちを切り替えていくしかない。今私の隣で、楽しそうに皿洗いのお手伝いをしてくれている私の妹、朝潮のためにも。

 

「? 姉さん? どうかしました?」

「え? なんで?」

「さっきから、私の顔じっと見てます」

 

 ぁあ、そういえば、朝潮に聞きたいことがあったんだ。

 

「ねえ朝潮」

「はい。なんでしょう?」

「先輩と比叡さん、何か内緒話したりしてなかった?」

「お二人の内緒話……ですか……」

「うん」

「シュウ先輩が午前中に一度目を覚まされた時、比叡さんとお二人でお部屋に戻って、二人だけで何かお話をされてましたけど……具体的に何を話していたかは……」

 

 やっぱり二人は……比叡さんは何かを企んでいる。彼女は私の『帰って下さい』という言葉に対して『出来るなら帰りたい』と言っていた。ならば今晩、ひょっとすると彼女はまた先輩を連れて行方をくらませるつもりなのかもしれない。

 

「お母様!」

「ん? 秦野さん? どうしたの?」

 

 念には念を入れる。今度はもう、先輩を遠くへ連れて行かせはしない。

 

「今晩私と朝潮も泊まっていいですか?」

「へ? あなたも? 朝潮ちゃんと?」

「ん?」

「ひええ?」

「姉さん?」

 

 今晩、比叡さんは何かをするつもりだ。それは先輩には関係ないことなのかもしれない。でも、先輩にも関係あることなのかもしれない。ならば私は、比叡さんの好きにさせるわけにはいかない。私と朝潮も泊まって、二人を監視する。

 

「別にいいけど……お布団足りるかしら……」

「私たち二人で一緒に寝ますから。朝潮、今晩一緒の布団で寝ようね」

「はい姉さん!」

 

 朝潮は素直だ。私と一緒の布団で眠れることがとてもうれしいみたいだ。そして……

 

「比叡さん、今晩一緒の部屋で寝ませんか? あなたとも話をしたいです」

「へ? わ、私も?」

 

 突然の私の提案に、比叡さんは目を丸くして驚いていた。『鳩が豆鉄砲を食らった時の顔』ってこういう顔のことを言うんだろうなぁ……。

 

「わ、私は別に構わないですけど……」

「ありがとうございます。じゃあそういうことで。お皿を洗い終わったら、一度家に電話をかけさせてください」

 

 これでいい。これで一晩中監視が出来る。たとえ私が眠さに負けて眠ってしまっていたとしても、同じ部屋で眠っていれば、仮に彼女が部屋を出ようとしても、その異変には気づくだろう。

 

 先輩は、どこにも連れて行かせはしない。

 

 

 

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