守るべきもの<守リ手ノ戦争>   作:裏の傍観者

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皆さん初めまして、裏の傍観者です。
本作品は、小説カキコ<シリアス・ダーク>で連載中の小説になります。
もっともっと、皆さんにこの小説を読んでほしいと思い、小説カキコだけでなくこのサイトにも投稿することを決めました!
小説書きは初心者ですが、読んでいただけると嬉しいです!!
小説カキコの方でオリジナルキャラクター等を募集していますので、ご協力いただけたらなと思います!
では、本日からよろしくお願いいたします!!

By 裏の傍観者


状況.1 桜ノ心ナクシ自衛官、国防官ヘ

時間特定不能、東富士演習場 作美台付近。

 

『サメツ こちら 00!敵を目視!敵は日本国防軍!繰り返す、敵は日本国防軍!!』

これを聞いた時、気づいたら小銃の銃口は味方である戦車長に向けられていた。

初めての実戦が、味方を殺す。

理由なんかどうでもいい。

今までの理不尽とストレスの積み重なりが、怒りに変わり、そして殺意に変わっていた。

何が団結だ。

何が絆だ。

何が守りたい人がいるだ。

今の自衛隊は何も守れない。

ましてや、出来たばかりの日本国防軍におされている。

今まで戦争を経験したことのない自衛隊は、容易く国防軍に片付けられている。

なら・・・。

「結美1士!?何をする気だ!!」

国防軍の手伝いをしてやろう。

「見て分からないですか?田辺2曹。」

89式小銃の切り替えレバーを安全装置から単発に切り替える。

弾はすでに薬室に送り込まれている。

あとは引き金を引くだけだ。

「大人しく拳銃を弾帯ごと渡してください。」

慌てて車長は弾帯ごと拳銃を渡してきた。

それを受け取り、肩にかける。

「やめろ、味方を撃てばお前は自衛官ではなく犯罪者になるぞ!」

犯罪者?

笑えてきた。

「こうした地点で、俺はもう・・・自衛官じゃない。」

「よせッ!?」

引き金を容赦なく引いた。

放たれた弾は、銃口から出た乾いた音と同時に車長の頭を貫いた。

「田辺2曹!結美おまえッ!?」

砲手が砲手席から出ようとする。

銃口を砲手に向けて発砲した。

砲手はそれきり動かなくなった。

「あとは貴方だけだ、犀潟士長。」

手榴弾の安全ピンを抜く。

手をレバーから離せば爆発する。

「畜生!!」

操縦手がハッチをあけて脱出しようとする。

操縦席に手榴弾を投げ込んで戦車から降りる。

3秒後に戦車は火だるまとなり、吹き飛んだ。

奪った拳銃を今つけている弾帯に付け替え、弾を装填した。

この時俺は、心から桜が完全に消えた。

これからどうするか。

「・・・・・。」

一先ず国防軍に接触してみよう。

なぜ自衛隊と戦うのか、興味深い。

自衛官としてではなく、一個人として、理由が知りたい。

 

 

 

「・・・さん?玲兄さん?・・・結美国防2等尉官!」

誰かに呼ばれ、薄れかけていた意識がはっきりと戻る。

薄れていたとしても、まわりから見れば意識が完璧に落ちてしまっていたのかもしれない。

目覚めると大勢の国防官がこちらを覗き込んでいる。

手には、飲んでいた飲み物がこぼれて半分になっていたコップが握られている。

「・・・こぼれたのか。」

コップを机に置き、ポケットからハンカチを取り出しこぼれた飲み物をふき取る。

「大丈夫ですか玲兄さん?」

紺色の戦闘服を着た国防官が心配しながら新しい飲み物を出してくれた。

「・・・どれくらい寝ていた、河瀬2曹官。」

「ざっと30分ってとこですかね。ミーティング中に落ちるなんて珍しいですね。何かありました?」

そうだ、今日は市街地戦闘について部下に事前教育をさせた後ミーティングを行っている最中だった。

こんなことで失敗をしてしまうとは、中隊長として情けない。

「大丈夫かよ玲也。」

「おう、心配してくれてありがとう。」

国防2等士官、貴志川 有。

国防軍に入隊し教育を終えたばかりの19歳の少年。

俺と同い年で、階級は違うが優れた射撃の持ち主で、中隊の狙撃手。

自衛隊にいたら、下っ端の分際で、尉官にため口とはなにごとかといわれそうだ。

だが、ここは自衛隊じゃない。

それに、こいつはおれにとって兄弟であり、敬語など不要だ。

堅苦しすぎても、仕方ないしな。

「兄さん、時間ないですが、どうします?」

曄目3等曹官はミーティングがどこまで進んでいるかを説明しながら、事後の行動を聞いてきた。

現時刻は1700。

あと10分で国旗が降ろされる。

業務はもうすぐ終わろうとしていた。

「俺が寝てしまったばかりに、時間を無駄にしてしまったようだ。すまんな、また明日にしよう。今日はこれで解散、そのあとは一人ジュース1本だ。」

『よっしゃぁ!!』

部下たちが喜びの声をあげる。

そういや、自衛隊にいた時もよく「ジュース1本」という言葉を使っていた。

おもにじゃんけんジュースの時にだが。

席を立ち部下を解散させる。

「今日も1日お疲れさん、終礼は省くぞ。外出する奴や家に帰る奴は事故の無いようにな。」

『オッス!!』

中隊は解散し、業務は終了した。

国防陸軍、第零攻撃戦闘大隊。

その中で、中隊長を務めて指揮っているのは第1中隊。

通称、結美中隊。

国防軍が初めて行った戦闘で、真っ先に前線に送られた大隊であり・・・自衛官だった俺が初めて戦った大隊でもある。

しかし、その戦闘はただのデモンストレーションだったらしく、世間ではあまり知られていない。

よく知られている戦闘は練馬前線。

デモンストレーションとして国防軍が最初に攻撃したのは、陸上自衛隊第1師団に属する戦車大隊。

俺の古巣だ。

東富士演習場で起きた戦闘は、世間からはただの演習だったのだろうと思われたらしく何とも感じなかったらしい。

戦場が練馬駐屯地付近になってからは世間はやっと目が覚めたらしく、練馬が火の海にされた時、日本中の人間はこう呼んだ。

練馬前線。

自衛隊に最初に攻撃したのはこの第零攻撃戦闘大隊だが、世間では第1歩兵戦闘団が攻撃したという認識が多い。

そのせいか、俺のいる大隊は零とつけれられてしまった。

 

 

 

業務を終え、生活隊舎にある部屋に戻った。

そこで私服に着替え、いつも通り外出の準備をする。

自衛隊では、営内者と営外者で分けられていて、営内者は外出するたびに外出申請書という書類を申請しなければ外出できない。

外出するのにそんな面倒なことをする自衛隊と違い、国防軍は身分証さえあればいくらでも外出できる。

門限なんてものは存在しない。

馬鹿みたいに固い自衛隊なんかと比べるまでもない。

平和ボケした自衛隊とは違う。

実戦を経験した国防官は必ずと言っていいほどストレスがたまる。

そのストレスが溜まってしまい、戦闘の士気を少しでも下げまいと考えた国防省は外出を自由にしたらしい。

国防軍に入隊してまだ日が浅い俺は、正直そんなことは関係なかった。

俺の目的は、戦場の中で答えを探すこと。

ただそれだけのことだ。

部屋をでて鍵をかけた俺は、生活隊舎を出る。

「お疲れ様。」

声をかけられ足を止める。

横を振り向くと、そこには同じ中隊の女性国防官が私服で立っていた。

「日暮奈3尉官か。」

すると彼女は頬を膨らます。

「もう、私服では夕美と呼びなさいって言ったじゃない。もう忘れたの?」

「すまん、まだ癖が抜けないんだ。」

「全くよ。・・・自衛官だった時のことを考えてたの?」

「そうかもしれない。」

「どうしようもない男ね。・・・まぁいいわ、少し付き合ってくれないかしら?たまには私の愚痴ぐらい聞いてもいいでしょう?」

彼女がこう誘ってくるときは、2人きりで食事しないかという誘いだ。

夕美と出会ってから、いつもこんな感じだ。

「戦闘では忙しいが、こういう時は常に暇人だ。どこにする?」

「昨日見つけたお店があるの、そこにしましょう。」

国防3等尉官、日暮奈 夕美。

尉官試験を一発で合格した成績優秀国防官で、4カ月前に部隊に配属されたばかりの女性国防官だ。

そして結美中隊の副中隊長でもある。

歳は俺と一緒で、美女であるため中隊では大人気らしい。

クールな性格ではあるが、結構気の強い女だ。

「貴志川から聞いたわ、ミーティング中に寝込んだんですって?」

「あぁ。侘びとして皆にジュースを奢った。」

部下全員に奢ったせいで、軽く数千円は消費した。

「ちゃんと休んでるの?休む時はしっかり休まないと倒れるわよ。今回はミーティング中だったからよかったけど。」

「なんか説教を受けてる感じがするな、次からは気を付ける。」

「別に説教してるわけじゃないわ。・・・心配してるんだから。」

「何か言ったか?」

「なんでもないわよ、早く行きましょう。お腹空いたわ。」

基地の門へ向かい、警衛をしている国防官に身分証を提示する。

「いつもお疲れ様です、結美2尉官。ミーティングでの噂、こっちまで流れてきましたよ。」

「佐竹先士官、その情報は誰からだ?」

なんとなく誰だかわかってきた。

きっと貴志川に違いない。

「貴志川2士官からですよ。あまり無理せず、ゆっくりとお休みください。」

佐竹先士官は敬礼をしてきた。

答礼をすると警衛所から一人顔を出してくる。

「よう結美2尉官。また日暮奈3尉官とデートかい?」

慶田先曹官はそういって敬礼をしてきた。

俺と夕美はそれに対し答礼をする。

「慶田先曹官、ただ食事に行くだけです。」

「それをデートって言うんじゃねぇか。」

そういって彼は笑い出す。

まったく、愉快なおっさんだな。

「結美、毎度言うがお前さんは自衛隊の特殊作戦群では抹消対象にされとるんだ。気をつけろよ。」

慶田先曹官はそういって、俺の脇にあるホルスターに指をさす。

ショルダーホルスターにはシグザウエルP226が入っている。

防衛省で俺は要注意人物と指定されていて、厄介なことに特殊作戦群では抹消対象者に指定されてしまっている。

そのせいか、自衛隊につけ回されるときが多々ある。

国防官は武器の携行を許可されているため、護身用として所持している国防官が多い。

現に夕美も・・・。

「特に日暮奈、お前さんのは流れ弾で民間人にあてないようにな。」

「分かってるわよ。」

手荷物の中に3点射が可能なM93Rを所持している。

「そうかい、んじゃ気を付けて楽しんで来い!後でラブホ行くなら写真よろしく!・・・なんちって。」

「「このエロ先曹官!!」」

2人で慶田先曹官に突っ込みを入れた後、警衛をしている国防官達に見送られて赤羽基地を後にした。

 

 

 

夕美が紹介してくれた店に到着した。

驚いたことに、その店はつい最近テレビで紹介されていた有名な和食店だった。

ある番組で紹介されていた時に気になってテレビに夢中になっていた。

そのとき紹介された和食メニューの中に、日本全国の新鮮な魚介類を集めた全国海鮮祭セットという商品が紹介された。

あれを見てからこの和食が食べてみたくて、部下に調べさせてもらっているが今のところ発見したという情報はなかった。

「驚いたかしら?」

夕美が自慢げに言う。

その笑顔が時々、可愛く見えてしまうのはあえて伏せておく。

「あぁ、かなり気になっていた店だったんだ。でもなぜ?」

部下には頼んだが、夕美に頼んではいない。

「河瀬2曹官から聞いたのよ。食べたくて仕方ないくらい本気で探している店があるらしいって。」

そういえば、あの時かなり熱くなってつい本気で探してくれと頼んだ記憶がある。

全然情報が来ないから、見つからずに落ち込んでいた。

ここでご対面するとは思ってもいなかった。

「玲也ってば、意外と食いしん坊なのね。また1つ、貴方のことが知れたわ。」

最近よく思うことがある。

なぜ皆は俺の事を知りたがっているのだろうか。

知ってくれる分には何も問題はないが、1つだけ知られたくない事がある。

元自衛官だったことではない。

俺が自衛官だったとき、味方であった自衛官を手にしていた小銃で殺したことだ。

どうぜ皆は知っているかと思うが、だとしてもそれだけは話題にされたくはない。

ふと、彼女が背中をこちらに向けて何かをしている。

一瞬だけ見えたが、手にしていたのはメモ帳だった。

「・・・何をメモに書き留めている?」

「え?あ~・・・お店の場所を書き留めているのよ!ほら!皆知りたがってたし、宴会とかで記録しておくと便利かなぁって・・・。」

俺が見たときは「結美2等尉官の記録帳」という怪しげなものに見えたが、気にしないでおく。

店に入り、店員に席を案内される。

早速テレビで気になっていた商品を注文する。

夕美は女性で人気が高いという噂のカニ飯セットを注文していた。

全国海鮮祭セットも気になるが、夕美の注文した商品にも少し興味がある。

「さてと、来るまでしばらく時間はかかるわ。のんびり話さない?」

「確か、夕美の愚痴を聞くお願いだったな。」

すると彼女は急に笑いだす。

「なにかおかしいこといったか?」

「いえ、ただちょっと意外だと思っただけよ。」

夕美は注文した後に店員が用意してくれたお茶をすする。

「その愚痴なんだけど、玲也の古巣に関係するの。」

話題にされたくないことが出てくる可能性がある。

がだ、今回は彼女の愚痴を聞いてあげることになっている。

夕美からの頼みなら、断る必要も無いので続ける。

「嫌がらせを受けたのか?」

「そのようなものよ。広報勤務だったの。事務室で書類まとめてたんだけど、その時に電話がかかってきたのよ。」

その電話は、防衛省からかけてきたらしく、面白いことに俺を探しているらしい。

理由はいくらでもある。

自衛官を殺害した罪を償わせるか、あのとき使っていた小銃や拳銃をそのまま国防軍に持ち込んできたからか。

そして俺はいつの間にか、特殊作戦軍では抹消対象者に指定されてしまっていた。

「防衛省ったらしつこかったわ。なぜか私のことも聞いてきたのよ。」

「それまたどうして?」

「こっちが知りたいわ。適当に流してたけど、最後は自衛隊へ来ないかって馬鹿げた事をぬかしてたわ。」

ヘッドハンティングか。

防衛省も、やり方が汚くなったもんだ。

それだけじゃない、全国に自衛隊の出張所が存在する。

要は、自衛官になるための窓口だ。

そこで、入隊希望者が手続きをし試験を受けて合格すれば晴れて自衛官となる。

だが、入隊前は必ずと言っていいほど不安なことがたくさんある。

どんな訓練をするのか、休みはあるのか。

どんな職種があるのかなどなど。

まぁ広報官は優しく教えてくれるだろう。

と思ったら大間違いだ。

広報官の中には、ありもしない充実した生活を語りだし騙して入隊させるという連中がいる。

入隊したらすぐに免許が取れるというのが、最近の口癖らしい。

金がすぐに溜まり、任期満了すれば任満金が貰え、その後どうするかは自由だと宣伝している奴もいるらしい。

その言葉に騙され憧れてしまう、高校を卒業したばかりの少年少女たちは入隊してしまう。

入隊し教育を終えて部隊に配属されると、話が違うじゃないかと誰もが言う。

結果、広報官に騙された。

これが自衛隊の広報官の汚いやり口だ。

俺の経験では、貯金がたまると言われて入隊したが、職種が機甲科に決まり、戦車大隊に配属されすぐに金を食われた。

演習で戦車乗員に出すためのコーヒーセットとやらで軽く3万円は消えて、それに菓子類を加えて+1万円。

演習に行く度に、毎回金を消費する。

菓子を食った分、乗員に請求をするが、どんなに計算しても赤字になるばかり。

1師団の戦車大隊は、俺から見ればただの金喰い虫だ。

実戦を想定した訓練だと言うのに、のんびりコーヒーなんか飲むのは恐らく自衛隊だけだ。

他にもたくさんあるが、これが自衛隊の裏の世界であり、真実だ。

入隊するときは冷静になって考えて、それでも入隊したいという奴がいるなら止めはしない。

俺に殺されるだけだけどな。

まぁ、実際国防軍と戦闘になった自衛隊はのんびりしていられないとは思うが。

 

 

 

「貴方の言ってた通りだわ。私も一時期自衛隊に入隊しようって考えてたけど、もし騙されるってことを知らずに入隊してたら・・・想像したくないわ。」

「そうだな。」

頭がよくて成績優秀な夕美が自衛隊に入るのは、正直勿体ない。

彼女に軍というものは似合わないが、自分の意志となれば何も言うことはない。

「ごめんなさい、経験した玲也の前で言うことではなかったわ。」

「気にするな、今の俺は国防官だ。それに、夕美のいっていることは間違っていない。」

「そういって貰えると助かるわ。」

「話したかったらまた俺を誘えばいい。・・・お、来たみたいだぞ。」

店員が大きな箱を持ってきた。

机に置き、蓋を開けると中は全国海鮮祭セットだった。

そしてもう1つの箱が置かれ、蓋を開けるとカニ飯セットが入っていた。

「すごい迫力ね・・・。」

「テレビで見たときは小さく感じたが・・・、ここまでデカいとは思わなかった。」

俺が注文した商品は、この量からして恐らく4人分はある。

「夕美、最悪食いきれないから一緒に食べてくれ。」

「いいわよ、カニ飯セット食べてみたいでしょ?」

「気づかれたか。」

「分かるわよ、さっきからチラ見してたんだから。」

その後、約1時間かけて夕美と食事をした。

注文した品の旨さと量で俺は大満足だった。

夕美から少しもらって食べたカニ飯もかなり旨かった。

 

 

 

食事を終えて店を後にした俺と夕美はしばらく都内を歩き回った。

時間は2100。

遅い時間だというのに、未だに都内は慌ただしい人達で騒がしい。

「不思議ね。」

夕美が突然そんな事を言い出した。

「なにがだ?」

「昼は車がたくさん走ってて、人がたくさんいて、慌ただしい所だって思うのに、どうして夜になるとこんなにも美しくなるのかしら。」

「なるほど、夜景か。」

夜になると、色々なものが光を発する。

高層ビル、東京タワーにスカイツリー。

道路を走る車、道路の脇に設置されている街灯など。

店の看板も邪魔くさいと思うときはあるが、なぜこうも美しく見えてしまうのだろうか。

「確かに不思議だな、俺でも分からない。」

「あら、珍しく意見が一致したわね。」

「言われてみれば確かに。他の人間はどう思っているんだかな。」

「きっとバラバラよ。戦闘でもそう、自衛官や国防官の中にいろんな考えを持った人は沢山いるわ。」

夕美の言う通りだ。

誰もがなにも考えずに戦っている訳ではない。

何故日本人同士戦っているのかと思っているはずだ。

恐らく、自衛隊に残っている俺の同期も考えているはずだ。

自衛隊を裏切った俺を撃てるのか、殺せるのか。

だが俺は違う。

俺は戦場でしか出ない答えを探し続けるだけだ。

俺達国防官として、一個人として守るべきものはなんなのかを。

きっと夕美もそんな事を考えているのだろうか。

全く、いいことを考えるものだ。

自然と、俺の手は夕美の頭を撫でていた。

「ちょっ・・・いきなりなにするのよ。」

彼女は顔を真っ赤にして、なぜか嬉しそうな顔をしていた。

「すまん、つい癖でな。」

「玲也は癖が多いわね・・・。今のはいいけど!」

彼女は突然走り出す。

「お、おい!どこにいくんだ?」

彼女は足を止めて振り向く。

「帰りましょ、私達の居場所へ!」

そういって、夕美は笑顔で手を差し伸べる。

時々思うことがある。

夕美はクールで頭のいい奴だが、実際は純粋な女子なんだと。

「おう、帰ろうか!」

考えるのはやめた俺は、はっきりと返事をした。

差し伸ばされた手をとり、俺は夕美と赤羽基地へと帰隊した。

 

 

 

現時刻、0600。

目覚まし時計で目が覚めた俺は、いつものように起床して朝飯を食べに行く。

向かう先は赤羽基地の食堂。

1日に3食出る飯はこの食堂で作られ、国防官はここで食事をする。

業務開始が9時なので、起床する時間は人によって違う。

俺みたいに6時に起床するか、ギリギリまで寝て8時に起床するか。

業務開始まで間に合えば何時でもいい。

6時に起床するのは、自衛隊にいたときに嫌でも聞いた起床ラッパのせいだ。

ラッパがならなくても、体内時計が強制的に6時で起床するようになってしまったため、毎日ほとんどが6時起きだ。

「今日の朝飯は・・・と。」

食堂入り口に展示されている今日のメニューを見る。

ご飯・納豆・魚・サラダ・味噌汁・ヨーグルト。

そして・・・卵。

「・・・・・!」

ついその場でガッツポーズをしてしまう。

これさえあれば、卵かけご飯通称「TKG」があれば戦える!

「何ガッツポーズなんかしてるのよ。」

後ろから声をかけられて振り向く。

起きたばかりの夕美だった。

「おはよう、ゆっくり寝れた?」

「お、おう・・・日暮奈3尉官。」

さっきのポーズ、完全に見られてしまった。

「それで、何でガッツポーズなんかしてたの?」

「そりゃ言うまでもねぇよ、玲也はTKGの信者なんだからさ。」

戦闘服姿の貴志川が笑顔で登場。

戦闘服でいるということは、4時くらいに起床して2時間もランニングと筋トレをやっていたに違いない。

「あぁ、納得だわ。」

「遅くなったが、おっす2人とも。」

「おはよう貴志川2等士官。また筋トレか?」

「おう!目指すはボディービルダー!!」

「「気持ち悪ッ!!」」

こいつは筋肉バカの狙撃手といっていいかもしれない。

朝飯を済まし、国防軍では普段着と呼ばれている紺色の作業服を着る。

これは基地内だけでの格好で、戦闘が発生した場合は戦闘服を着る。

自衛隊迷彩と呼ばれるものはなく、単純に市街地戦闘では真っ黒の戦闘服、森林戦では新型迷彩の戦闘服を着る。

ここ最近では、陸自の駐屯地を狙うことが多くほとんどが市街地戦闘だ。

そろそろ森林戦が来てもおかしくはないかもしれない。

支度を済ませ、登庁する。

 

 

 

0900時、業務開始。

「それじゃ、今日も1日頑張ろう。ミーティングはさっき示した時間に行うから、遅れないように。以上、業務開始。」

『オッス!!』

敬礼をした後、皆一斉に仕事に取り掛かった。

「WAPCの修理、昨日4両終わったってよ!」

「まじ?早いな!丁度いい、操縦訓練に回してくれ!」

「へいよ!」

事務室では色々なやり取りが聞こえてくる。

96式装輪装甲車、通称WAPC。

陸自が所持している装甲車だが、国防軍でも所有している。

ただ違う所がいくつかあり、装甲は勿論搭載する重火器も変更された。

12.7mm重機関銃は2つ合体させた2連装12.7mm重機関銃で、同時に国内初の遠隔操作射撃システムを搭載した。そして米軍が使用するジャべリンATGMが積載されている。

自衛隊のものと比べ、国防軍のは本格的な戦闘能力を得た攻撃戦闘装甲車だ。

先の戦闘で、陸自のWAPCと国防軍のWAPCが激突した。

その際、陸自隊員は同じ車両だとなめてかかっていたらしく、隊員を降ろして捕獲しようとしたところを2連装12.7mm重機関銃で粉々にされた。

装甲車本体は、ジャべリンATGMで吹っ飛ばされた。

その後、陸自の10式戦車の120mm滑空砲で攻撃され、当たりはしなかったものの爆風で中破した 。

それがたったの1週間で修理が終わるとは、国防軍の整備大隊は優秀だ。

「結美2尉官、現在の装備一覧表の確認をお願い。」

夕美が中隊で保有している装備の状況をまとめた資料を渡してきた。

「まかせろ。」

「それじゃ、操縦訓練の現場見に行ってくるわね。」

「おう、監督よろしく。」

夕美は戦闘帽をかぶり、現場へ向かった。

さて、渡された資料を確認するか。

この資料には、主に戦闘車両がまとめられていた。

WAPCについては先程偶然聞いたから把握した。

目を通した俺は、確認したことを証明するため印鑑を押した。

 

 

 

1030時、東京中央国防基地。

 

「鍛島総将官、つい先程空軍から緊急連絡がありました。」

三日月総補将官が書類と写真を持ってくる。

「空軍?何があった。」

「イーグルアイで監視中、陸上自衛隊が動いているところを発見したとのことです。また、海上自衛隊のヘリ空母からアパッチが全出撃したとの報告もあります。」

いつもは我々国防軍が攻撃を仕掛けてきたが、今度は自衛隊から動いたと言うのか。

「自衛隊の狙いは?」

「恐らく、国防省だと思われます。」

「頭から先に潰す腹か。」

国防省は神奈川県横浜市に存在する。

そこに基地はない。

基地があれば基地内での戦闘が可能だが、無ければ民間人を巻き込むことになる。

民間人を巻き込まないのは自衛隊も同じのはずだ。

だとしたらどうやって攻撃をする気だ。

「なお、アパッチは地上部隊を支援するものと思われます。」

アパッチを撃墜すれば民家に落ち、市内に被害を与えてしまう。

下手に戦闘機や攻撃ヘリは出せない。

「だとすれば敵は普通科連隊か。」

「それなんですが・・・、出現したところが静岡の御殿場市で、駒門との報告です。」

「戦車大隊だと!?自衛隊はいったい何を考えている!民間人を殺すというならば容赦はしない、それ相応の戦力で叩く!」

自衛隊め・・・、戦車を市街に出すということは、どういうことかを知っていてのことか・・・!

「いかがなさいますか?」

どうする、国防軍でいち早く動ける部隊はいるのか・・・?

相手は戦車大隊。

いや待て、戦車大隊?

「三日月総補将官、たしか陸自の戦車大隊出身の国防官がいたな。」

「結美2等尉官ですか?例の元自衛官である・・・。」

「思い出した、結美君だ!彼なら戦車大隊の動きを少しでも知っているはずだ、第零攻撃戦闘大隊に出撃命令を出してくれ。国防省をやらせるわけにはいかん。」

まだなにかあるはずだ、市街地には沢山の国民がいる。

そのまま攻撃するわけではあるまい。

結美君、君ならやってくれるだろうか。

 

 

 

1040時、赤羽基地に突然出撃警報がなる。

<報告、報告!レッド発令、レッド発令!各部隊の指揮官は大隊作戦室に集合せよ!繰り返す、各部隊の指揮官は大隊作戦室に集合せよ!>

基地内でサイレンが鳴り響く。

「尉官は直ちに情報収集!曹官及び士官は出撃準備!車両は念のため全て準備させろ!あと日暮奈3尉官を大隊作戦室に呼び出してくれ!」

『了解!!』

部下達は迅速に動き出す。

メモ帳とペンをもって大隊作戦室へと走る。

それにしても珍しい。

この様子だと、自衛隊が先に動いたと見ていいだろう。

「自衛隊自らお出ましとはな、やりがいがある!」

 

 

 

大隊作戦室。

「諸君、つい先程中央国防基地から出撃命令が発令された。状況を説明したのち、直ちに出撃する。では、状況を説明する。」

プロジェクターがスクリーンに地図を映す。

しかも最悪なことにその地図は・・・神奈川を映していた。

「ヤジさん、もしや敵の狙いは国防省ということか。」

俺は大隊長である相模1佐官に聞いた。

神奈川に国防軍の関連施設があるとしたら、横浜市にある国防省だけだ。

「その通りだ、結美の言う通り、敵の狙いは国防省と思われる。」

すると指揮官達が騒ぎ始める。

「あいつら正気か!?」

「国民に被害が出たら、自衛隊だけじゃなく国防軍の存在すら問われるぞ!」

「これじゃ出撃すらできないじゃねぇか!」

色々な考えが飛び交う。

確かに、国民に被害がでれば、自衛隊だけじゃなく国防軍までもが責任を問われる。

元は自衛隊や国防軍も日本の領土と国民を守るために存在している。

その守り手が、国民を攻撃してしまえば、存在の意味がなくなる。

「静かに!」

相模1佐官が皆を黙らせる。

「敵の勢力なんだが、イーグルアイで記録された写真を分析した結果、敵戦力は戦車大隊と自衛隊で数少ないアパッチを全て投入したらしい。」

攻撃ヘリか。

対地戦闘能力だけでなく、対空戦闘能力をも兼ね備えたヘリコプター。

そいつが搭載しているミサイルは、戦闘機をも落とすことができるAIMー9とAIMー92がある。

その他にも、AGMー114ヘルファイヤやM230 30mmチェーンガンなどを装備している。

敵に回したくはない攻撃ヘリだ。

それが市街地に来るとなると、もっと最悪だ。

「市街地にあんなデカ物を投入するなんて、どうかしてるわ。」

「いや、可能だ。」

『??』

全員が俺に注目する。

市街地に適した戦車ならあいつがいる。

「陸自の誇る新型戦車、10式戦車だ。あれは元々市街地での戦闘を想定して作られたやつだ。小さく、そして恐ろしく速い。市街地での機動性は、おそらく10式戦車が圧倒的に有利だ。」

だが戦車が横浜市内に前進するには無理が多すぎる。

すでに戦闘態勢なら、トレーラーは使うはずがない。

かといって、そのまま自力で走ってくれば、燃料もそこを尽きるはずだ。

「結美、今回の作戦はお前さんに一任すると、鍛島総将官から伝えられている。」

「鍛島総将官が?」

「お前さんは元自衛官で、機甲科にいたんだ。何か知っていると言っていた。大隊の指揮官は結美2尉官に一任するが、反対の者はいるか?」

『なし!!』

即決された。

「では結美、頼む。」

「分かりました。」

相模1佐官に席を譲り、俺は前にでる。

パソコンを夕美から受け取り、彼女を補佐役に任命する。

この状況、どう解決するか。

考えはすぐにまとまった。

自衛隊がその気なら、俺が叩きのめす。

時間がないが、まずは情報収集だ。

戦車が直接来るには無理がある。

だとすればやつらがどう来るかだ。

10分おきに更新される衛星写真を見返す。

その写真は、起動したプロジェクターがスクリーンに映している。

「結美、この写真は?」

相模1佐が説明を求める。

「10分おきに撮影された衛星写真です。リアルタイムでとれているので、戦車がどれくらい出撃しているかを見ています。」

「なるほど、お前さんならではのやり方だな。」

自衛官だった頃、俺はその戦車大隊にいた。

駐屯地のパークと呼ばれる所に戦車は止めてある。

その数を今でも覚えている。

元自衛官で、その戦車大隊にいた奴でなければできないことだ。

調べている途中、ふと気づいた。

戦車が未だに止まっている。

それも全部だ。

距離もあるし、すぐにたどり着く訳でもない。

「ねぇ玲也。」

夕美が俺を呼ぶと、画面に指を指す。

「ここ・・・、隙間があるにしても広すぎない?」

「なんだと?」

夕美が示した場所を拡大する。

確かに隙間があるにしても広すぎる。

いや待て、確かここに置いてあったのは・・・。

「3トン半とWAPCか!!」

自衛隊の大型トラック、3トン半。

人員や、機材などを運ぶために使われている。

そのトラックとWAPCがないということは・・・。

「戦車は来ない。」

「なんですって?」

なるほど、やつらは装甲車を基準とした戦闘をお望みか。

なら話は早い。

俺はすぐに作戦を皆に伝えた。

戦車が来ないと言ったときは皆驚いていたが、反対の声はなかった。

作戦は簡単だ。

今まで行ってきた攻撃戦闘から、防御戦闘に変えればいい。

ヘリで人員と車両を国防省に輸送し、自衛隊が到着するまでの間にできるだけ多くの防御陣地を構築させる。

国防省の建物の中に侵入されても押さえられるよう、中にも防御陣地を構築させる。

屋上など、狙撃できるポイントには狙撃手を配置させ、敵を足止めする。

これが今回の作戦だ。

今回は本格的な防御戦闘になる。

皆士気を高めて、すぐに出撃の準備を終えた。

状況開始だ。

 

 

 

1200時、神奈川県 横浜市 国防省。

作戦通り、数十機の輸送ヘリ、チヌークをフル稼働させ人員と車両を輸送する。

作戦会議中に、部下達には使えるWAPC全てを先に国防省に向かわせ、準備させておいた。

大隊のWAPCを全て戦闘に回したことは、今までなかったので今回が初めてになる。

予想では、またいくつか壊しそうだ。

・・・整備大隊には申し訳ない。

<零ー1、こちらブルー8。目標地点に到着、人員をどこに降下させればよいか送れ。>

「ブルー8、こちら零ー1。国防省第3駐車場へ降下させよ、送れ。」

<ブルー8了解。>

上空で待機していたチヌークは第3駐車場へと向かった。

「WAPCの配置、終わりました。正面ゲートに6両です。」

河瀬2曹官はメモをとりながら報告をしてきた。

いつもWAPCの管理は河瀬2曹官が担当している。

「他は?」

「作戦通り、草木を被せて小さな山に。配置は正面ゲートのある南口にゲートにある奴を含めて12両。北口の裏門には8両、東と西に4両ずつ隠して配置してます。」

「国防省の回りはなんで小さな森林で囲まれてるかね。」

国防省は小さな森林で囲まれていて、自衛隊が隠れ放題となっている。

「見た目ってやつじゃないですか?さすがに植物が何一つないと、目に悪いですから。」

「そうなんだけどな。河瀬2曹官、火焔放射機で焦がしてくれないか?」

「それやるくらいなら、自衛隊ごと丸焦げにしたいですな。」

俺はつい笑ってしまう。

それもいいかもしれない。

ただ焼けるだけだし、血を見なくてすむからな。

<トランシーバーから貴方達の嫌な笑いが聞こえてくるわよ、結美2尉官。>

無線から夕美の声が聞こえてきた。

しまった、トランシーバーのPTTスイッチを押しっぱなしにしていた。

さっきの会話も駄々漏れだった。

「貴志川2士官をつかって覗きか?」

<んな訳ないでしょ!?報告よ、狙撃班の配置が完了したわ。>

国防省の屋上を見上げる。

かなり小さいが、屋上に夕美と貴志川がいるのを確認した。

「おう、作戦まで休んでてくれ。狙撃班の指揮は頼むぞ。」

<分かったわ。あ、こっちまで飲み物持ってきてくれないかしら?>

「分かった。」

トランシーバーをポーチに入れた。

こちらの戦力は、第零攻撃戦闘大隊の全中隊のみ。

だが、切り札がある。

いざアパッチを落とさなければいけなくなったとき、ジャべリン対ヘリ迎撃部隊を臨時編成した。

ジャべリンATGMを積載したWAPCや、第5中隊の人員にジャべリンを2人1組に分けて1つずつ持たせて潜伏させている。

これが放たれたとき、アパッチはミサイル祭りできれいに踊ったあと地面に激突することになる。

第1から第4中隊は土嚢を積み重ねて防御陣地を構築させ、そこで敵を足止めする。

第2中隊は北を担当。

俺の中隊は南の正面ゲート、第3中隊は東、第4中隊は西と、4方向に守りを固めた。

第5中隊はジャべリンをもって潜伏中だ。

また、車両が容易く侵入しないよう、WAPCの前方70メートル先には、スクラップにされる予定だったトラックを解体業者から借りてバリケードにしている。

勿論、チヌークで吊り下げて14台持ち出してきた。

解体業者の社長が優しい人でよかった。

あのときの会話をまだ覚えている。

「(いやぁ、これだけあっても解体しきれないんで、正直助かります。)」

「(これを解体するのが、貴殿方の仕事ではないんですか?)」

「(そうなんですけどね。実はこの車両、震災でつぶれてるんですよ。売れるパーツもなくて、正直どうしようかって考えててね。)」

商品にならないから持ってってもいいといってくれた社長さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

後でお礼にでもいかないとな。

「兄さん、救急搬送用のヘリを、第4駐車場に配置しました。もう1機は屋上に。」

華目3曹官はそういって屋上に指を指す。

ここからだとチヌークのローターしか見えない。

「了解、これで俺の中隊は準備完了だな。」

あとは他の中隊が完了するのは待つだけだ。

 

 

 

1215時、東名高速道路 海老名サービスエリア。

 

完全フル装備で出撃を命じられた戦車大隊は、作戦変更により海老名サービスエリアで一時待機となった。

戦車を使わず、WAPCを基準とした戦闘は、戦車大隊では異例のことらしい。

結美が国防軍に入隊してから、この大隊の今いる中隊の空気は悪くなった。

もとから結美に敵対していた波森も、あいつへの敵対心を大きく膨らましていた。

実弾が込められた89式小銃が、いつもより2倍重い。

人の命を絶つ重さなんだろうか。

「神野。」

ふと呼ばれて横を向く。

波森だった。

「何さ?」

「結美をみたら俺に言ってくれ。代わりに俺が殺してやるよ。」

そういって、波森は89式小銃をちらつかせる。

あいつに対する殺意が大きくなっている。

「よせ波森、俺達は殺しにいくんじゃない。国防軍を止めるためにいくんだ。・・・殺せと言われたら、仕方がないけどさ。」

吉川はそういって携帯を操作する。

「どうしてこんなことになったんだかな。」

結美、会えたら教えてほしい。

どうして味方を殺してまで、国防軍に入隊したのかを。

自衛隊のやり方が間違えているのか?

かといって、国防軍は正解なのか?

どっちも俺には分からなかった。

 

 

 

1410時、神奈川県 横浜市 国防省。

全ての防御陣地の構築が終わり、あとは自衛隊が攻めてくるのを待っている。

皆急ピッチで防御陣地を構築したせいか、疲れて仮眠をとっている。

「貴方も仮眠とらないの?」

心配そうな顔をした夕美は飲み物を差し出してくれた。

それを受け取る。

「ありがとう。俺は大丈夫だ、今回は皆に動いてもらうから、手の空いた国防官から休ませている。」

「そう。」

夕美は俺の隣に座った。

操作しているパソコンには、空軍から送られてくる情報が常に更新されている。

つい先程までは、海老名サービスエリアで止まっていたが、30分前に動き出した。

アパッチは練馬駐屯地のグラウンドで待機している。

「どんな感じなの?」

「30分前に海老名サービスエリアを出た。あと1時間半でこっちに来るだろう。仮眠をとる前に、個人火器に弾を装填するよう伝えておいたから準備は万全だ。」

「そう。」

気づけば夕美は眠そうな顔をしていた。

彼女まで倒れてもらっては困る。

「お前も寝ておけ。」

「大丈夫よ・・・。」

「いいから。」

彼女に膝枕で寝かせる。

「むぅ、これも癖なの?」

「心配しているんだ。ゆっくり休め、何かあればすぐに起こす。」

「ん、ありがとう・・・。」

彼女は眠りに落ちた。

再びパソコンに向き合う。

未だに市民は避難していない。

国防軍が押し掛けた時は皆不安そうな顔でこっちを見ていた。

中にはマスコミがこっちにカメラを向けて何かを報道している。

国民に被害がでなければいいが・・・。

 

 

 

1時間後・・・。

事態は大きく動いた。

横浜市内に、大きな爆発音がした後、避難警告のサイレンが一斉に鳴り出したのだ。

「皆を起こせ、すぐに戦闘態勢がとれるよう持ち場に向かえ!やつらが来るぞ!」

<結美!何があった!>

国防省の長官室で待機していた相模1佐官が無線で連絡してきた。

「ヤジさん、今横浜市内で爆発音の後に避難警告のサイレンが一斉に鳴った!恐らく、あの爆発音は国防軍が攻撃をしたと国民に認識させて国民を味方につける作戦だ、奴等に踊らされたらしい!」

大きな爆発音も、自衛隊の仕業だ。

貴志川が屋上で確認したところ、爆発音がした後に煙が上がったらしい。

発生源は、国防省の正面ゲートからみて2時方向、約1キロメートル。

もうそこまで近づいてきたか。

<こっちでも確認した、だが今テレビで自衛隊が国民を救出していると報道されているぞ。>

やられた、国防軍を悪者扱いする気だ。

「それは後だ、今の状況に対処する!」

無線を大隊のチャンネルに切り替える。

「バリアー、こちら零ーHQ!状況を開始する。ただし、事情により発砲は攻撃を受けてからとする!民間人が残っている可能性がある、目撃したら報告しただちに攻撃を中止せよ送れ!」

<零ー1りょ!>

<零ー3了解!>

<零ー4了解!>

<零ー5ラジャー!>

「夕美!狙撃班スタンバイだ!」

<了解!狙撃手、指定された方向を警戒。射撃用意!>

「河瀬2曹官、来るぞ!」

「よし!結美中隊、射撃用意!!」

部下は一斉に89式小銃2型の貢幹を引き、弾を薬室に送り込んだ。

国防省へは、一歩も入れさせない。

そしてついに・・・、自衛隊車両がスクラップされるトラックに突っ込みバリケードを破った。

その後にWAPCが数両侵入し、後部から自衛官が発砲しながら出てきた。

「各自、発砲!片付けろ!」

そう指示すると、夕美が射撃号令を出す。

<敵確認!ッてぇ!!>

一斉に銃声が鳴り響く。

<零ーW1、射撃開始!!>

正面ゲートで配置していたWAPCからも、2連装12.7mm重機関銃が自衛隊のWAPCに向けられて発砲された。

 

 

 

2連装12.7mm重機関銃から放たれた50口径の弾は、自衛隊の装甲車に連続で当たる。

大量の弾を浴びた装甲車は、エンジンに当たったのかその場で吹っ飛んだ。

大きな爆発音とともに、焼けた車体から黒煙が上がる。

自衛隊の装甲車からも12.7mm重機関銃が放たれ、その銃弾は国防軍の装甲高機動車に当たる。

容易く貫通した車両は、その場で爆発する。

<装甲高機動車1両大破!負傷者5名!>

早速負傷者を出してしまった。

「すぐに手当てさせろ!重傷者はヘリに!」

衛生小隊が負傷者をヘリまで運ぶ。

自衛隊も本気ということか。

キャリバー50と呼ばれる12.7mm重機関銃で実弾を撃つ所を始めてみた。

普段は滅多に使われていない。

使われたとしても、空砲装置を取り付けて射撃をするくらいだ。

他の中隊からも、攻撃を盛大に受けていると報告してきた。

WAPCだけじゃ少し厳しいかもしれない。

こっちの戦力は、装甲車と歩兵、そして救助用のチヌークだけだ。

<結美2尉官、11時の方向にヤバいヘリのお出ましよ。>

「もうアパッチが来たか!」

小さくて見辛いが、確かにアパッチだ。

奴等は攻撃のタイミングをうかがっているのか、その場から動かない。

武装はやはり、チェーンガンとヘルファイヤ、そしてAIMー9か。

<玲也!さらに追加だ!6時の方向にヘリ、ブラックホーク!>

貴志川の焦りが分かるほど声が大きい報告だった。

「ブラックホーク?」

なぜブラックホークが飛んでいる?

ふと慶田千曹官の言葉を思い出す。

「(気を付けろよ、お前さんは特戦群に抹消対象者に指定されとるんだ。)」

「特戦群か?」

だとしたらまずい、全方向から攻め込まれている。

これでは袋のネズミだ。

<零ーW5!遠隔操作射撃システム及び装輪2ヶ所破損!戦闘続行不能!>

ついにWAPCがやられてしまった。

「零ーW5は下車戦闘用意!装甲車を盾に使え、ジャべリンをやられるな!」

<了解!>

未だに市民は避難が完了していない。

それに攻めてきているのは本隊ではなく斥候だ。

本隊は今ごろ市民の避難誘導をしているだろう。

そいつらが攻めてきたらさらに状況は悪化する。

「がぁッ!?」

隣にいた河瀬2曹官が銃弾を受けてその場に倒れた。

「河瀬2曹官!」

撃たれた所は右肩だ。

かすっただけだが、念の為下がらせる。

89式小銃2型を手にして構える。

照準を自衛官に狙いを定めて発砲する。

3点射を浴びた自衛官はその場に倒れた。

「俺が直接指揮をとる!賀沢千士官、機関銃をこの方向に向けて撃て!」

「はい!」

彼は指示した方向に弾をまく。

「零ーW1から4!正面ゲートの中まで後退、84mm無反動砲で攻撃!」

<了解!!>

WAPCから人員が降り、バリケードの前に集まっている自衛官をトラックもろとも84mm無反動砲で容赦なく攻撃する。

爆風により数人の自衛官が飛んだ。

「お見事です兄さん!」

華目3曹官が射撃しながら誉めてきた。

「俺は指示を出しただけだ、誉めるならWAPCの乗員を誉めてやれ!」

全く、どんなに撃ち倒しても自衛官の数は減らない。

おそらく本隊から増援がきているのかもしれない。

「味方だと頼りないのに、敵に回ると面倒だな!」

 

 

 

国防省北口裏ゲート。

2中隊は北口から侵入し、建物を制圧するのが任務だ。

そして、結美を目撃した場合は捕獲かそれができなければ射殺も含まれている。

3トン半から降りて下車戦闘を始めると、相手もすぐに撃ち返してきた。

俺達が到着するまでの間に、完璧な防御陣地が作られていた。

「糞ッ!!防御陣地かよ!結美はどこだ!」

波森が小銃を連射する。

「落ち着け波森!連射は避けろ、ただでさえ自衛隊は金がないんだぞ!」

「必ず殺してやるからな!」

駄目だ、結美を殺すことに熱くなりすぎている。

それにしても国防官は準備が万全だ。

国防軍ならではの戦方か、色々な重火器が出てくる。

WAPCには驚いたが。

どっちが正しくて、どっちが間違っているのか。

俺達自衛官は勿論、国防官も必死だ。

互いに何を求めて戦っているのか分からなくなる。

「神野士長!岸根間3曹の指揮下に入れ!」

「了解!」

保田1曹に命令された俺は、すぐに移動した。

 

 

 

1530時、国防省 庁内。

負傷した国防官を屋上にいるチヌークに搬送した後夕美と合流する。

北口から西に移動する部隊がいるらしい。

「階級が見えたんだけど、言ったほうがいいかしら?」

「階級?」

陸自が戦闘服に付けている階級章の位置は陸士は右腕、陸曹や、幹部は左右の襟に付けている。

防弾チョッキを付けている場合、陸士はそのままだがそれ以外は防弾チョッキの真ん中にひとつだけ付けている。

「えぇ、見てみたんだけど。・・・3人が陸士長よ。2人は北口に、1人は西に移動したわ。」

「陸士長・・・。」

心当たりがある。

恐らく、神野達だ。

「貴方の同期なんでしょ?撃たないよう呼び掛けるわよ。」

「必要ない。」

呼び掛けても奴等からの攻撃は続く。

何よりも、波森は俺を殺したがっているはずだ。

元から仲が悪く、敵対心もあった。

奴等が来ているなら、望み通り撃つだけだ。

「そう、玲也がそう言うならいいけど・・・。」

「心配してくれてありがとう。俺が対処する、日暮奈3尉官は市民が避難を終えたか調べてくれ。」

「了解よ。」

市民の避難が終わらなければ、いい加減うるさいアパッチをその場でハエ叩きにできるんだが。

そろそろ本隊も流れ込んでくるはずだ。

 

 

 

1500時、横浜市役所 会議室。

パソコンに繋がれたプロジェクターが国防省での戦闘をスクリーンに映し出している。

アパッチは未だ待機中で、ブラックホークは国防省から200メートル先に離れた駐車場で隊員を降下させた。

自衛隊員で「S」と呼ばれる彼らは、元自衛官であり、国防軍に属した国防2等尉官、結美 玲也を抹消する任務を与えられて今回の作戦に参加している。

陸上自衛隊、特戦作戦群。

中央即応集団の隷下部隊であり、日本初にして唯一の特殊部隊。

彼らの持つ力は一般隊員とは比べ物にならないほど。

89式小銃という概念に捕らわれず、自らあらゆる手段で入手した小銃を駆使して戦う。

中には、ドイツのH&kが製造した最新の小銃、Hk416・417を使う隊員がいた。

他にも、M82A2バレットと呼ばれる50口径対物ライフルも使用しているらしい。

とんだいかれた連中だ。

そんな奴等がムキになって結美陸士長を消す理由がわからない。

自衛官を殺しただけで特戦群は出てくるのだろうか?

「大隊長、市民の避難が90%完了しています。」

隣で小森谷准陸尉が市民の状況を報告してきた。

彼は今どんな事を考えているのか気になった。

「小森谷准尉、今回の任務についてどう思っている?」

「浜田2佐?」

「聞かせてほしい。」

彼はなにやら戸惑っていたが、暫くして口を開けた。

「正直、納得していません。特戦群まで参加する必要があるのか考えていました。」

成る程、彼もそう考えていたか。

「私もだ。理由が知りたいが、これは上からの命令だ。本隊を全て前進させよ。アパッチについては、攻撃準備を実施させよ。」

「了解しました。」

悪くは思わないでほしい。

国防官も一緒なはずだ。

君や私も国の命令で戦っている。

君にもわかるだろうか、結美士長・・・いや、結美2尉官。

 

 

 

アパッチがついに動き出した。

だが、未だに奴等は攻撃してこない。

多分、攻撃準備に入ったのだろうか。

「・・・貴志川2士官。」

「どうした?」

「ヘリを墜落させず、故障させるにはどうしたらいい?」

撃墜はしなくても、故障だとパイロットが判断したら引き返すはずだ。

米軍のヘリパイロットみたいなやつでなければの話だが。

「ヘリは詳しく知っちゃいないが、エンジンを片方潰してみるか?」

「・・・墜落したらどうする?」

「したら責任取れんわ。パイロットを直接やるか?」

パイロット?

確かアパッチは複座式だった。

前部座席はガンナーで、後部座席がドライバー。

攻撃をするのはガンナー。

そいつをやれば行けるかもしれない。

「それだ!貴志川、夕美を連れてきてくれ。狙撃位置を変える。」

「ヘリパイロットを直接か、面白い!」

だが問題がある。

貴志川が使用している狙撃銃は7.62mm弾を発射するM24。

自衛隊でも対人狙撃銃として使われ続けている狙撃銃だ。

問題は口径。

7.62mm弾でパイロットを覆っているキャノピーを貫通させることができるか。

恐らく無理だろう。

50口径でなければ難しい。

だが、こちらが持っているなかで唯一その弾を撃ち出せるのが2連装12.7mm重機関銃のみだ。

下手に連射して機体ごとズタズタにしてしまえば墜落してしまう。

危険性が高いが、今の状況ではやはりエンジンを狙うしかないのか。

考え込んでいたら貴志川と夕美が二人して大きな荷物を持ってきた。

「何だそれは?」

「庁内の展示室にあったものよ。弾も数発だけど持ってきたわ。」

「見て驚くなよ!」

貴志川のテンションが高い。

夕美が大きい袋を開けると、中から銃身を取り出す。

「銃身?」

そしてそいつの正体が明らかになる。

「フランス軍御用達のへカートⅡだ!」

「まじか!?」

フランス軍で使用されている対物ライフル。

NATO基準の重機関銃弾薬を発射する、ボルトアクション対物ライフルだ。

弾倉を確認する。

確かに少ないが、こいつなら2連装12.7mm重機関銃の弾で代用できる。

「にしてもすげぇな!まさか庁内にあるなんてよ。」

「全くよ、お陰で重かったし手が痛いわ。」

「良くやってくれた、後でマッサージでもしてやる。」

へカートⅡを装甲高機動車に積載する。

「あら、女の肌をただで触るつもり?」

「なんだ日暮奈、今日はやけに色っぽいな!」

「おかしいわねぇ、何か聞こえたんだけど、この口かしらぁ?」

「いでててててっ痛ぇよ!?」

全く、こんな状況でも夕美と貴志川は変わらないな。

一先ず移動だ。

夕美と貴志川が乗車する。

運転席に座り、エンジンを始動させる。

「玲也の運転なんて久しぶりだな。」

「そうね。でも今は状況中、派手に飛ばすみたいよ。」

「その通りだ、捕まってろ!」

アクセル全開。

後輪が滑ると暫くして前へ進む。

全速力で狙撃位置へと向かった。

 

 

1520時、場所特定不能。

俺達の任務は、自衛官を殺害し国防軍に寝返ったある人物を抹消すること。

目標は元陸士長である国防2等尉官、結美 玲也。

自衛官を殺しただけで俺達が出る必要があるのか。

理由は分からないが、任務を遂行する。

「三溝1曹、準備完了しました。」

俺の背後には、黒色のバラクラバで顔を隠した部下が自費で入手したさまざまな小銃をてにしている。

「よし、作戦通り行くぞ。2手に別れる、アルファーは俺についてこい、ブラボーは国防省だ。」

『ラジャー。』

結美は防衛省で最高レベルの要注意人物だ。

手強い相手に違いない、人を平然と殺せる人間だからだ。

俺達にもそれができる。

そのために訓練をしてきた。

確実に抹消対象者を執行してやる。

 

 

 

1535時、横浜市内建造物 狙撃位置。

目的地にたどり着き、建物内に自衛官がいないかをクリアリングしながら確認していく。

結果的にはいなかった。

屋上へ上がり、貴志川がへカートⅡを準備させた。

「弾は中破したWAPCから一箱持ってきたわ。」

「サンキュー、繋がっているリンクをはずして弾を単体にしてくれ。」

「分かったわ。」

重機関銃に装填する際、弾はリンクという金具で繋がれている。

戦争映画で良く出るのが、繋がれた弾を体に巻き付けて機関銃を連射するシーンが良い例だ。

アパッチは国防省に釘付けだ。

やるなら今しかない。

「貴志川、やれそうか?」

「任せな。ガンナーを直接やらなくても、機材を破壊するれば攻撃はできなくなる。」

「なんだ貴志川、人をやるんじゃなかったか?」

「さすがにスコープを赤で染めたくはないからさ。」

要は血を見たくないということだろう。

今まで自衛官を狙撃してきた貴志川だが、狙っている所が防弾チョッキで弾を当てて脅すだけの戦い方をしていた。

発砲して相手の流す血を見たことがないのだろう。

「分かった、だがヘリだけは落とすなよ。」

「了解。」

貴志川が狙撃態勢に入った。

夕美は屋上に敵が入ってこないよう扉の近くで見張りをしている。

アパッチのチェーンガンが動き出した。

照準先は国防省正面ゲートのバリケードだ。

「させるかよ!」

貴志川が引き金を引いた。

大きな銃声が鳴り響き、へカートⅡから弾が放たれた。

弾の速度が速すぎて見えなかったが、数秒後にアパッチに弾が命中した音が聞こえた。

双眼鏡で覗いてみると、弾は見事ガンナーの機材に命中していた。

だが、機材が破損した際に飛び散った破片がガンナーの体に突き刺さっていた。

軽傷で済んだのか、ガンナーは破片を引き抜き応急処置をしていた。

それ以降チェーンガンは動かない。

やったのか?

「目標に命中、ガンナー軽傷。ドライバーは・・・、ヘルメットが破損しただけだ。」

ドライバーのヘルメットが割れているのが確認できた。

「計算してな、念の為ドライバーのヘルメットも破壊しておいた。」

「良い腕だな。」

これで1機目のアパッチは戦闘が出来なくなった。

アパッチは機体を旋回させて飛び去っていく。

「目標の後退を確認。次やるか?」

貴志川はへカートⅡのボルトを操作して次弾を装填した。

攻撃を受けたアパッチは他の機に報告をしただろう。

場所を変えないといずれ気づかれる。

ふと気づく。

下でなにやら人が集団で動いている。

市民にしては動きがぴったり過ぎる。

手には・・・様々な小銃が握られている。

戦闘服の迷彩柄はどっからどうみても陸自迷彩だった。

「貴志川、夕美!急いで撤収だ。」

89式小銃2型に弾倉を差し込む。

「え、まだアパッチが残ってるぞ。」

「下に敵だ、さっきの銃声で気づかれたらしい。」

「待ちなさい、市民じゃないの?陸自がここまで展開しているというの?」

市民にしては動きが良すぎる。

一般の隊員ではない。

だとしたら・・・。

「運の悪いことに、特戦群だ。」

「おいおい、冗談だろ・・・?」

「まさか、玲也を・・・!」

「話は後だ、追い付かれる前に退避だ。」

撤収をすぐに完了させて下に降りる。

止めてあった装甲高機動車に2人を乗せる。

運転席には夕美を乗せた。

「玲也、貴方まさか!」

「安心しろ、こんな所で死ぬつもりはない。命令だ、直ちに国防省に戻れ。その場で大隊の指揮をとり、防御陣地を立て直せ。俺はここで特戦群を足止めする。俺の部下にこいつらの相手は無理だ。貴志川は当初の持ち場に行け。いいな2人とも。」

「分かった、死ぬんじゃねぇぞ。」

夕美はまだ納得していないのか、心配しながら俺を見ている。

そんな彼女の頭を撫でる。

「玲也・・・?」

「そんな顔をするな、いつものように帰ってくる。そしていつも通り外出して、一緒に飯食いに行こう。いいな?」

夕美は泣くのを我慢しているが、目からは涙が溜まっている。

「いいな?夕美。」

「・・・分かったわ。」

彼女は目を擦る。

「日暮奈3等尉官、行動を開始せよ!」

「了解!・・・必ず帰って来なさいよ、バカ!」

夕美はアクセルを限界まで踏むと、装甲高機動車は全速力で国防省へと走っていった。

「久しぶりに、直接自衛官と戦闘か。」

今まではほとんどが指揮で前線には出ていなかった。

今回やりあうのは一般の連中じゃなく、手強い特戦群だがそんな事は関係ない。

あいつらを国防省へは絶対に入れさせない。

「特戦群の1人や2人は殺ってやる。」

俺はもう、自衛官だった頃の平和ボケした人間じゃない。

それを奴等に刻み付けてやる。

 

 

 

10分後、横浜市内 交差点。

奴等が向かってくる方向に持ち合わせていたC4爆弾すべてを設置した。

作戦はない。

だが、特戦群の隊員がどんな奴か気になり、ちょっとした賭けにでる。

C4爆弾に囲まれた道路のど真ん中で待ち伏せをする。

奴等は必ず俺を円になって囲むはずだ。

囲んできたらそこで爆弾を起爆させる。

危険な行為だが、気になる。

小銃と拳銃はすでに準備が整っている。

手にはいつでも押せるよう、起爆スイッチを隠し持つ。

後は奴等が来るのを待つだけだ。

そしてついに、奴が姿を現した。

「良い動きだな。・・・そこにいるのは分かっている、来るなら来い。」

さて、この挑発に乗るだろうか。

奴等はすでに起爆範囲内にいる。

「良し、囲め!」

乗って来た。

隊長らしき隊員が部下に囲めと指示させると、そいつらは俺を囲んだ。

鈍く光る銃口が全て俺に向けられている。

「いい動きだな、流石は特戦群だ。使用している武器も、使い勝手が良さそうだ。」

「そういう貴様こそ、よく特戦群と見抜いたな。結美元陸士長。」

隊長自らお出ましとはな。

「桜の心をなくした俺は自衛官じゃない。今は国防2等尉官の結美 玲也だ。」

「そうか、結美2等尉官。俺は1等陸曹の三溝 信三だ。覚えられんだろうからここまでだ。貴様は今日づけで執行されるからだ。」

三溝1曹は9㎜拳銃の銃口を俺に向ける。

「執行か、俺が抹消対象者にされているらしいな。・・・理由は?」

「俺は知らん、ただ国の命令なんでな。理由なんて関係ない、ただ任務を遂行するだけだ。」

「そうか。」

「執行前に3分間待ってやる。3分間好きにしろ。懺悔でもすればいい、その後に執行する。」

「3分間か、分かった。3分間でなにが出来るかね、森3曹。」

横にいる奴に聞いてみる。

なんて返ってくるか。

「知るか裏切り者!」

「なら教えてやる。・・・貴様らを殺すことだ!」

起爆スイッチを押す。

俺を囲んでいた自衛官が爆風により吹っ飛ぶ。

車のある位置まで走り、車を盾にする。

小銃の切換レバーを「レ」にし、態勢を崩した自衛官に連射した。

蜂の巣にされたそいつはその場から動かない。

今のでざっと5人は始末した。

「奴を撃て!」

向こうも発砲してきた。

車に大量の弾が撃ち込まれる。

奴等の戦法を確認すると、撃っては移動の繰り返しだった。

しかもその動作がやたらと素早い。

一般隊員ならついていけないだろう。

俺ならそれを覆す。

仕掛けたのはC4爆弾だけじゃない。

クレイモアもそこら中に設置した。

すでにそれに引っ掛かり体を粉砕した自衛官もいる。

かなりの人数を始末できた。

残りは人数的に2つの小隊くらいだろう。

思ったよりもあっけない。

が、隊長さんである三溝1曹はまだ生きている。

「やるな結美2等尉官!」

「デカい図体して、よく動き回るな。邪魔くさい!」

弾はさっき貴志川と夕美から全弾受け取っている。

今は弾に困ることはないだろう。

問題は、1対数人でどこまで持つかだ。

「貴様らを国防省にいかせない、状況がおわるまではここで踊ってもらう!」

なんとか足止めは出来ている。

後は任せたぞ、夕美!

 

 

 

1600時、正面ゲート。

国防省から離れた所に、連続して鳴り響く爆発音と、黒煙が空に舞い上がっていた。

その前は、アパッチが機材の破損と人員負傷の報告をしてきて後退した。

場所は特定できず、狙撃を受けたらしい。

国防省の守りが完全武装のWAPCと必死な国防官でかなり頑丈だった。

一度は西から攻めようと前進したが、そこにも偽装したWAPCからの待ち伏せで、正面ゲートを突破するしかなくなった。

アパッチが攻撃をしてくれれば一発だが、未だに住民の避難が終わっていないらしく、下手に攻撃出来ないらしい。

俺の隣には、小銃を連射する波森と弾倉を交換する吉川がいる。

未だに結美を発見できず、波森は苛立ちを大きくする一方だ。

「糞が!連中、防弾チョッキが固すぎるぞ!」

波森はそういいながら撃ち尽くした弾倉を交換する。

「あいつらが着けてるのは防弾チョッキ3型の改良型だ、手足を撃てば足止めにはなる!」

吉川が単発で発砲すると、見事国防官の腕に命中した。

撃たれた国防官は、数人の国防官に囲まれ援護射撃を受けながら後退した。

「国防軍の連中、相当な訓練を受けたな。負傷者の回収も素早い。」

吉川が国防官を誉めながら笑う。

「何がおかしいんだよ吉川。」

こんな状況なのに、よく笑っていられる。

でも確かに吉川の言う通りだ。

自衛隊でののんびりとした訓練を受けた俺たちと違い、向こうは実戦といっていいほどの訓練を受けている。

彼らが訓練で使用している弾はゴム弾。

それを躊躇いなく撃ち合う奴等は、本当にいかなるときでも躊躇いなく人を撃てる訓練をしてきただろう。

テレビの番組で国防軍の訓練風景が放送されていた事があり、俺はたまたまそれを見ていたから知っている。

結美もあれから平気で人を撃てるようになったのも、その訓練のせいかもしれない。

小銃を構え、バリケードに隠れる国防官に発砲する。

その弾は当たることなく終わり、反撃を受ける。

撃っては撃たれるの繰り返しだ。

すると、携帯無線機から大隊の呼び出しが鳴った。

<イシガキ、こちら00。放送連絡、住民の避難が完了!これより、航空機による対地攻撃を実施する。地上で戦闘中の隊員は誤射に注意されたい、終わり。>

「アパッチが動くぞ!!」

味方に伝令し、誤射を受けないよう態勢を取り直す。

上空ではアパッチが国防省に急接近する。

この戦闘、こっちの勝利だ。

 

 

 

同時刻、国防省 指揮所。

玲也に命令された通りに防御陣地を建て直し、貴志川は当初の狙撃位置である屋上に戻った。

防御は完璧だと思っていたその時、伝令からの報告で事態は一変する。

「日暮奈3尉官!狙撃班から報告、アパッチが動き出したとのことです!」

「なんですって!?」

上空を確認する。

アパッチ全機が急速でこちらに接近してくる。

「また、住民の避難が完了した模様!」

やっと住民の避難が完了したようだ。

これで玲也が残してくれた切り札が使える。

「最悪な状況だけど、こっちにはまだ切り札があるわ。ジャベリン迎撃部隊を展開!!」

「了解!」

伝令は無線でジャベリン迎撃部隊を展開するよう呼び掛ける。

すぐに各車両からジャベリンATGMが出される。

潜伏していた第5中隊も、屋上に展開し迎撃態勢に入った。

「アパッチを絶対に寄せ付けさせないで!各人の判断で発射を許可!」

『了解!!』

アパッチが国防省に墜落するのは避けなければいけない。

接近してくる前に攻撃だ。

早速、屋上に展開した第5中隊がミサイルを発射した。

そのミサイルは先頭のアパッチに向かって高速で飛んでいく。

しかし、アパッチから放出されたフレアによってミサイルは外された。

「まだよ!アパッチに照準を合わせ続けて!ロック検知されただけでも、相手に脅威を与えられるわ!」

「了解!」

アパッチ部隊は編成を組んで接近していたが、ミサイルを放たれてから編成が崩れた。

これも想定済みだ。

編成を崩したアパッチは散開して国防省を囲み集中攻撃をする。

その対策として、玲也は全方向にジャベリン迎撃部隊を配置した。

これなら、アパッチといえど下手に近づくことはできない。

相当な腕前をもつパイロットだったら話は別だが。

アパッチがチェーンガンで西で待機していたWAPCを攻撃した。

<零ーHQ、こちら零ーW10!攻撃を受けた!WAPC大破、負傷者15名!そのうち2名は重傷、戦闘続行不能!送れ!>

アパッチの攻撃により、大きな被害を受けてしまった。

「零ーW10、こちら零ーHQ!下車戦闘用意!負傷者は直ちに搬送!送れ!」

<零ーW10了解!>

「これ以上負傷者を出させないわ!ジャベリン迎撃部隊、一斉射撃よ!」

『了解!!』

地上や空中からも攻め込まれている。

これではここも長くは持たなくなる。

「玲也・・・どうしたらいいのよ!」

ここから先の策は尽きかけていた。

 

 

 

1635時、交差点。

空が暗くなり始めてきた。

このまま夜戦に持ち込まれそうだ。

ひとまず、暗視装置JGVSーV8を被っているヘルメットのマウントアームに取り付けた。

米軍で使用されている暗視装置を、日本がライセンス生産した暗視装置。

自衛隊でも使用されていて、隊員からは「V8」と呼ばれている。

特戦群と戦闘をはじめてから約1時間。

敵戦力は残り5人。

その中に、まだ三溝1曹が含まれている。

他の連中は、C4爆弾やクレイモア、貴志川が残していったへカートⅡで体を粉々にして天に送ってやった。

正直、特戦群相手によく1人で戦えたものだ。

戦闘が終わり、無事生還できたら、自分にご褒美をくれてやりたい。

「ぐッ!?」

撃たれた右腕から再び激痛が走る。

先の銃撃戦で、三溝1曹に撃たれてしまった。

奴も、俺が放った拳銃の弾が命中し、足を負傷している。

命中したのは足の大動脈付近。

もしかしたら出血したままかもしれない。

にも関わらず、平然と動ける奴は一体何なのだろうか。

化け物としか言いようがない。

生憎、俺は小銃を撃つ際は左利きなので射撃に支障はない。

残弾は、弾倉5つで150発。

そのうち弾が尽きて拳銃だけで戦う羽目になる。

足音が聞こえてきた。

「もう接近してきたか・・・。」

国防省に近づかせることを避けるため、市役所方向へと向かい特戦群を誘き寄せている。

これだけ離れれば十分かもしれない。

だが、三溝1曹は俺が市役所方向へ走り出した時表情を変えていたのを覚えている。

俺はその時、攻撃してきている自衛隊の作戦本部はおそらく市役所だと気づいた。

それから特戦群からの銃撃が激しくなり、負傷してしまった。

「結美2尉官、そこまでだ!大人しく武器をおろし、執行されろ!」

三溝1曹だ。

「冗談じゃない、誰が自分から執行されに行くか!馬鹿か貴様は。」

「どうやら、本当に死にたいらしいな。」

「本音が出たな、三溝1曹。」

弾を装填し、小銃を構える。

「来るがいい三溝1曹、天を拝ませてやる!」

「面白い!」

互いに一斉射撃をする。

三溝1曹を囲んでいる隊員がうるさい。

手榴弾を2つ投げる。

それに気づいた三溝1曹は隊員に退避を指示するが、間に合うはずもなかった。

三溝1曹以外の隊員は爆発に巻き込まれて吹っ飛んだ。

あとは奴のみだ。

「結美2尉いぃ!!」

「三溝1曹おぉ!!」

小銃で正確に狙いを定め、発砲しては全力で走る。

かわした弾が商店の窓ガラスを割る。

俺が放った弾は、かわされてガソリンが漏れた車に命中し爆発した。

互いに距離を縮めて接近する。

そして・・・。

「チッ!」

「ッ!!」

0距離となり、その場で互いに小銃を向け合った。

炎上している車の炎で、今立っている場所が照らされる。

「貴様、左利きだったか。通りで右腕を撃ち抜いても、射撃出来るわけだ。」

「そういう三溝1曹こそ、足撃たれて出血しているのに平然と動けてる貴様は化け物だな。」

お互い引き金は引かなかった。

向け合っている小銃は、弾がなくなり貢幹が後ろで止まっていた。

引き金をいくら引いても弾が出るわけがなかった。

すると横浜市内にサイレンが鳴り響いた。

携行している無線機からは・・・。

<戦闘中の国防官に告ぐ。現時刻をもって戦闘を停止せよ。繰り返す・・・。>

相模1佐官の声だ。

三溝1曹が携行している無線機からも、戦闘終了の放送が流れていた。

「残念だったな、執行できなくて。」

互いに向け合っていた小銃を下ろす。

「失敗ではない。」

「ほう?」

「貴様のような戦闘慣れしている奴と戦ったのは初めてだ。前までは海外派遣でテロリストと戦ってきたが、一方的で終わってきた。」

「・・・戦いを楽しんでいるのか。」

こいつ、とんだ戦闘凶だな。

「本性はそんなものだ。」

「強い訳だ、そういう奴ほど馬鹿みたいに力がある。」

さてこれからどうするか。

このまま一人で国防省に戻るのも寂しい。

なら、話し相手で三溝1曹も連れていこうか。

「プライベートでも、敵同士である貴様とは仲良くするつもりはないが少し話さないか。」

「いいだろう。」

国防省に向かって、俺と三溝1曹は話をしながら歩いた。

 

 

 

1740時、国防省 正面ゲート。

話をしながら歩き続け、気づけば国防省にたどり着いていた。

三溝1曹は国防省にたどり着く前に、バラクラバを被り顔を隠した。

「結美2尉官を確認!無事だ!!」

『おぉツ!!』

大勢の国防官が喜びの声をあげた。

貴志川が全力でこちらに走ってくる。

「この馬鹿野郎!やっと戻って来やがったか!!」

「やめろ貴志川!痛いだろうが!」

貴志川の腕が俺の首にかけられ、絞め技を決めてきた。

「やめねぇよ!夕美を泣かした罰ゲームだ!」

「駄目じゃないですか兄さん、日暮奈3尉官泣かしちゃ。」

華目3曹官が笑顔で出迎えてくれた。

「華目3曹官、河瀬2曹官は?」

「俺なら無事ですよ!まぁ、車両がいくつかぶっ飛んじまいましたけど!」

「忙しくなるな、早くその腕直して処理してくれ。」

「もちろんですよ!」

河瀬2曹官はそういって愉快に笑い出す。

相変わらずのテンションだな。

「玲也!!」

声のした方向を見る。

そこには夕美が立っていた。

その背後に、大勢の国防官がカメラや携帯を手にしている。

「さ、感動の再開だな。」

そういって貴志川達は俺から離れた。

三溝1曹は無言でその場に立っている。

にやけているのがバレバレだぞおっさん。

夕美には結構心配をかけてしまったに違いない。

「・・・ただいま、夕美。」

「この・・・バカ!」

夕美は俺に向かって走り、飛び付いてきた。

俺はそれをしっかりと受け止めた。

「1人で戦おうとしないでよ!どれだけ心配したと思ってるの!?」

夕美は泣いていた。

「悪かったよ、だから泣くな。約束通り、俺は帰ってきたぞ。」

俺は彼女の頭を撫でる。

夕美のやつ、クールな性格なのに寂しがり屋だな。

時々甘えん坊だが。

「その腕どうしたの・・・?」

「これか?」

撃たれた右腕に巻いていた包帯が真っ赤に染まっていた。

「撃たれた腕か。」

「撃たれたの!?」

「心配するな、かすった程度だ。一番ヤバイのは後ろにいる化け物だよ。」

俺は三溝1曹に顔を向ける。

貴志川達は警戒をする。

「な、何だお前は!」

貴志川が驚いて奴から離れた。

「まさか特戦群なの!?」

皆は武器を手にし始めるが俺はそれを止める。

「やめろ、戦闘はもう終わってる。・・・足は大丈夫か?」

「たいしたことではない、手術は受けるかもしれないが、その内治る。」

華目3曹官は三溝1曹の足を見る。

「足の大動脈付近に貫通銃槍・・・!なんで立っていられるんだ!?」

そういって彼は包帯を新しく巻き直した。

「そういう貴様こそ、腕は大丈夫なのか?かすったとは言っていたが、実際は貫通したのだろう?」

「アンタよりはマシな方だ。・・・さっさと手術しろよ。」

すると、三溝1曹は俺にメモ紙を渡してきた。

俺はそれを受けとる。

「何だこれは。」

「会えたらまた会おう。良い話が聞けてよかった、礼として奢ってやる。」

そういって奴は黙って自衛隊と合流した。

ふと気づく。

正面ゲートに止まっている自衛隊車両に、神野達がいた。

神野は心配した顔で俺を見ている。

吉川は俺に軽く手を振っていて、波森は俺に向けて中指を立てていた。

今は敵同士だが、いずれまたどこかであいつらと遊びたい。

メモ紙には、三溝1曹の連絡先が書かれていた。

「貴方腕貫通したの!?もう無茶ばっかりして!」

「兄さん、今日は大人しくしていてください、搬送します。・・・衛生班、担架を持ってきてくれ!」

衛生班が担架を持って来た。

「玲也、後は任せてその腕どうにかしてこい。」

「分かった、夕美は同行してくれ。」

「言われなくても行くわよ、看病してあげるわ。」

「大袈裟だな・・・。」

俺はチヌークまで運ばれる。

途中、相模1佐官に呼ばれる。

「よくやった結美2尉官。」

「ヤジさん。」

「ゆっくり休んで、怪我を治してこい!後は俺に任せろ。」

「そうさせてもらうよ。」

さっきの戦闘で疲れたのだろうか、眠気が襲ってきた。

チヌークはエンジンを始動させ、空に飛び立つ。

空は暗くて星しか見えないが、下は町の光で綺麗な夜景になっていた。

「眠いの?」

「あぁ、しばらく寝る。」

「分かったわ。」

夕美は俺の頭を膝の上に乗せる。

膝枕ってやつか。

そういや、昼間夕美に膝枕をさせた記憶がある。

次は夕美の番ということか。

「お休み、玲也。」

俺は目を閉じて眠りに落ちた。

 

 

 

ここは・・・どこだ?

視界がやけに白い。

何かが散っている。

これは桜・・・?

目の前には大きな樹があり、桜はそこから散っている。

桜か。

その樹の前に誰かが立っている。

そいつは陸自迷彩の戦闘服を着ている。

敵だ。

拳銃を引き抜き、銃口を向ける。

「貴様は誰だ!」

奴に呼び掛ける。

反応したのか、そいつが俺に顔を向けた。

あまりにも驚いた俺は体が震える。

なぜなら前にいるのは・・・。

「陸上自衛隊、戦車大隊 陸士長の結美 玲也だ。貴様こそ誰だ?」

自衛官だった頃の俺だった。

「日本国防陸軍、第零攻撃戦闘大隊 国防2等尉官 結美 玲也だ。」

あり得ない、なぜ自衛官だった頃の俺がいる?

「国防官・・・。」

「なぜ自衛官として生きている!俺はもう国防官なんだ!」

「自衛官だった頃の俺が嫌いか?」

何を言っているんだこいつは。

「桜の心をなくしたお前は、何を心に持つ?」

「何も持ちやしない、ただ守るべきものが何なのかを探すだけだ!自衛官だった頃の俺はもう必要ない!!」

躊躇いなく引き金を引いた。

銃声が鳴り響き、気づけば奴はいなかった。

同時に桜が一斉に散っていく。

まるで、奴自身が桜の花びらだったかのように見えた。

それから視界がさらに眩しくなる。

そして視界が真っ白になり、何も見えなくなった・・・。

 

 

 

ーあれから4日後。

国防衛生中央病院に搬送され直ぐに手術を受けた。

それから夕美の看病付きで3日間入院し、今日・・・。

「よっしゃ退院じゃあ!!」

「はしゃぐんじゃないわよ、まだ完治してないんだからね!」

べシッ!!

「痛でぇ!」

夕美に弾を食らった腕を叩かれながらやっとの事で退院した。

「・・・玲也。」

「何だ?」

すると夕美が俺の左腕を優しく抱き締めてきた。

「もう無茶はしないで。」

彼女はなにやら寂しげな顔をしている。

こういう時、どうすればいいか困る時がある。

夕美の頭を右手で優しく撫でる。

「分かった。・・・腹減ったな、食べにいくか!約束もあるしな。」

「そうね、なら貴志川も呼びましょ?ドライバーで迎えに来てくれてるから。」

「ちょっと待て、貴志川の分までもか!?」

「当たり前じゃない!せっかく迎えに来てくれてるんだから礼ぐらいはしなさい!」

「・・・・お、おう!」

まぁ、金には困ってないし余裕はあるから良しとしよう。

今日からまた、国防官としての仕事を再開する。




というわけで、状況.1はこれで終了!
状況.2をお楽しみに!!
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