好みの同人小説(未完結)を見つけたが、最終更新日時が1年以上前だった時の感想を400字以内で述べよ。
秋の緩やかな日差しは水面に差し込み、色とりどりの紅葉が流れる。
にとりの家は大きな川のすぐ隣に建っている。河童妖怪にとって、川は命であり、生活する上で無くてはならない存在だ。
時刻は正午を過ぎようとしている。日差しが強くなるに度に、川は輝きを増す。だが反対に、家の中の空気は重く淀んでいた。
チェイス「・・・」
にとり「・・・」
文「・・・」
椅子に座り机を囲む三人。停滞した会話は数秒程度だが、耐えかねた文がなんとか会話を繋ぐ。
文「・・・本当に出たのですね。二体目のロイミュードが・・・。チェイスさんも危なかった、と。」
チェイス「あぁ、複数のロイミュードがこの幻想郷にいる事は間違いないだろう。」
文「現状で、対抗出来るのがチェイスさんだけ・・・これでは対策の立てようがありませんね。」
にとり「人里にいるかもしれないっていうのも問題だよ。人間じゃあんなのに太刀打ちできないし。」
にとりが喋り終わると同時に文が何かを思い出す。
文「人里にいたロイミュード・・・そういえば気になる点がいつくかありますね。」
チェイス「?お前たちの様な妖怪も里に降りてくる事がある、と言っていなかったか?」
文「人里に妖怪はよく現れます。住んでいる者もいますよ。ですがおかしいのはそこではありません。「姿」です。」
にとり「あっ確かに!あんな見た目で人里に入れる訳が無いよ。」
「姿」、という単語に今度はにとりが反応する。チェイスは一人会話に取り残されそうになる。
チェイス「・・・あの見張りか?」
文「はい。この幻想郷で妖怪が人を襲う事は絶対に許されません。ですので明確な用と無害の保証が出来ない者は警備の方に止められます。」
にとり「私たちだって初めはよく呼び止められたもん。あんな見た目でそう簡単には人里を歩けないよ。」
あの見張りに止められたのも自分が見慣れないヤツ、だったからなのか?と、一人考えるチェイス。
文「あのロイミュードがどうやって人間たちに近付けたのかは分かりませんが、私は私の出来る事をします。」
そう言うと文は椅子にから立ち上がり入口の方へ向かった。
チェイス「・・済まない。」
文「?何か勘違いをしていませんか?私は敏腕記者として、自分の足でネタを掴みに行っているだけですよ。」
軽く微笑んだ文は、「何かあれば連絡します。」と言い残し、去って行った。
にとり「・・・チェイス、昨日のことだけど・・」
チェイス「・・・何だ。」
知らぬふりをするが、チェイスには心当たりがある。「アレ」の事だろう。
にとり「あのロイミュードが言ってた「番人」とか「死神」って・・」
チェイス「分からない。だが俺は俺だ。どうする事も出来ない。」
チェイスの返答に対してにとりは何も言えなかった。
にとり「そうだよね・・私、ここで仕事してるから外の空気でも吸ってきたら?」
チェイス「・・・そうさせてもらう。」
にとりからの精一杯の気遣いだと受け取ったチェイスは、変に悟られないよう家を出た。
チェイス「・・・」
歩く。ただ歩く。目的は無い。山を下るように川沿いを歩いて行く。
ロイミュードの番人とは何だ?死神とは?
自分一人で対抗出来るのか?
そもそも自分は敵なのか?味方なのか?
人間を守れ、とはどういう意味なのか?
疑問が疑問を呼ぶ。自分は人間を守る「正義」なのか。それともロイミュードと関係のある「悪」なのか。
自分を支えてくれる者がいる。それだけで迷いは無かったはずだが、もし自分が思っていた存在と違っていたなら、それは周囲を裏切る事になる。
チェイス「俺は・・・このままロイミュードを倒し続けるだけでいいのか?」
一人呟く。するといつのまにか見慣れた光景が見えた。
チェイス「あそこは・・・」
そこは鍵山雛と出会った場所だった。考え事をしているうちに随分と歩いてしまったらしい。
チェイスは川の麓に吸い寄せられるように歩いて行く。
雛「今日は収穫無し、ね。・・・あら?」
「仕事」をしていた雛がふと目線を上げると、視線の先には先日来た男がいた。
同時にチェイスの視界にも、よく目立つ赤いドレスが映る。
雛「あなた昨日の・・ほんとに来てくれるなんて。」
チェイス「あぁ、話し相手になろうと言ったのは俺の方だからな。」
とは言ったものの、ここに来るつもりは無かった。昨日会った不思議な少女の事など、今の頭からは消えていた。
雛「そういえば、まだ名前聞いてなかったわよね?」
チェイスだ。と、素っ気なく言われるも雛は笑顔で返す。
雛「チェイスね。ところであなた・・その、余計かもしれないけど何か悩み事でもある?」
チェイス「悩み事・・?何故そう思う。」
意表を突かれたチェイスは少し口籠る。
雛「私は厄を溜め込む存在。厄が溜まっているところが何となく見えるの。それが人や妖怪でもね。」
誰が見ても分かるような酷い顔をしていたわけでは無いと知ると、少し安心した。
チェイス「俺からその厄とやらが見えた、という事か?」
雛「えぇ。そういう人ってこれから悪いことが起こったり、何か困ったことを抱えてる事が多いの。・・・心当たりがあるなら話してみて。私で良ければ相談に乗るわ。」
チェイスの外面と内面を同時に見ているような雛の瞳は、怪しく恐ろしくも純粋な光を潜ませている。
チェイス「(自分から危険な妖怪だと言っていたが、そんな風には見えない。むしろ自然と話を聞いてしまう・・この感覚は?)」
雛の透き通るような視線と声の前に、気がつくと口を開いていた。
チェイス「昨日のことなんだが・・」
昨日の事に加え、この幻想郷に来てから数日の事を全て話した。その上で自分が今どう思っているのかも。
雛「そんなことがあったのね・・・初めて昨日見たときから思ってたけど、やっぱりあなた外の人間なのね。」
チェイス「あぁ、そうらしい。すでに死んでいるからあまり関係無いがな。」
雛「・・今のあなたにとって大事なのは「自分の過去」よりも「これからの自分」ってこと?」
自分が何者だったのか、それはもう変えように無い事実。チェイスにとってはこれからの行いの方が重要なのだ。
チェイス「・・・他人にする話では無かった。悪いがこれは俺の問題だ。」
一通り説明はしたものの、やはりどうにかしていた。人に助言をして貰えるような話では無い。
雛「私が聞きたかったんだから気にしないで。それにしてもあなた・・・」
チェイス「?」
どことなく視線をずらしていたチェイスだったが、雛の方を見てみるとこちらの顔をじっと見つめていた。
雛「私に似てる。」
意外な言葉に、両者の会話が一旦途切れる。
雛「・・・正しいことをしてるつもりだけど、周りから見てみると自分は「良い存在」にも「悪い存在」にも見える。私と同じね。」
まぁ私はもう慣れたけど。と、はにかんだ様子で付け足す雛。
チェイス「同じ・・・」
何故こんなにも前向きに物事が取られられるのか。妖怪は人間と比べ物にならないくらいの長寿らしい。自分と同じような葛藤をずっと続けてきたのではないか?似た境遇の者がいると思うと、少し頭の中が晴れた気がした。
雛「もしもあなたが意図せずに周りを裏切ってしまっても、それまでしてきたことは嘘にならないんじゃない?少なくとも私は今こうして話してる時間が楽しいわ。あなたのおかげでね。」
それまでの行いは消えない。チェイスの中で一つの答えが浮かんだよう気がした。
チェイス「ありがとう雛。かなり参考になった。」
雛「どういたしまして。周りの人もきっと助けてくれる。あなたは出来る範囲で頑張ってね。私はいつでもここにいるから。」
チェイスは軽く相槌を打ち、来た道を戻ろうとする。
雛「あ、ちょっと・・」
歩き出そうとした時、雛に呼び止められた。
チェイス「・・どうした?」
振り返ると少し申し訳なさそうに視線を泳がせている。
雛「・・前にも言ったけど、私に近付いたら厄が降りかかるの。何か悪いことがあったら私のせいにでもしてね・・・?」
チェイス「・・・偶然だった事にでもしておこう」
何とかフォローしたつもりだったが、相手の反応を見る前に歩き出していた。
雛「・・・行っちゃった。不思議な人。」
ふぅ、と大きく息を吐くと胸に手を当ててみる。ここまで心臓が高鳴ったのはいつぶりだろうか。
雛「冷静にしてたつもりだけど・・ばれてないわよね?」
顔が赤くなっていることを感じた雛は、しばらくその場から動く事が出来なかった。
またそこそこの道を歩いて、にとりの家まで帰ってきた。時刻は夕方近く、川の様子は昼間と違い夕陽に照らされ、どこか幻想郷的にも見える。
ガチャッ
ドアを開けると少し驚いた様子のにとりがいた。
にとり「遅かったじゃないか。どこか行ってたの?」
一瞬言葉に返答に困ったが、別に隠すことでもないだろうと思い軽く答えた。
チェイス「雛・・・厄神とやらと話していた。」
にとり「えぇ!?な、何で厄神様のところに!?」
突然、表情が激しくなった。
チェイス「何故と言われてもな。偶然会ったから少し話し込んでいただけだ。」
呆気なく返されて、わなわなと震えるにとり。
にとり「私という相談相手がいながらなんであんな嫌われ者のとこに!!何を話したのさ!」
チェイス「どうしたんだ。おかしいぞ。」
にとり「おかしいのはそっちでしょ!」
チェイスには分からない。彼女がこれほどまでに動揺している理由が。
にとりに圧倒されながらも雛の言葉を思い出した。
チェイス「・・・これが「厄」か?」
にとり「誰が厄だ!こら!!まだ聞きたいことはいっぱいあるんだぞ!」
にとりに溜まっている厄が見えた、ような気がした。
剛、クリム、ジオウへの出演おめでとう。
俺の出番もくれ、剛。