やはり俺の悪魔生活は間違っている。   作:LUCAリオ

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旧校舎のディアボロス1

「うぃーす」

 

そう言って俺は奉仕部のドアを開ける。

1年の時から毎日来てる部室だ。もはやホームのようなものだろう。

だがあくまでここが部室であるからこそ通ずる話であり、もしここが職場ならばそうではないだろう。

そして毎日顔をつきあわせる眷属に目を向ける。

どうやら俺が一番遅い到着だったようだ。

 

「あ、やっはろーヒッキー! 今日遅かったね。どしたん?」

 

「……教室で寝てたんだよ」

 

このいかにもなビッチギャルの少女の名前は由比ヶ浜由依。

俺の下僕悪魔の一人である。

しかしながら主である俺を敬う態度は全くない。

今のやり取りからでも充分にわかるだろう。

 

……いや別にこのままでいいけどな。むしろこいつが俺を敬う態度とったら逆に怖い。

 

ただよく冥界で俺に突っかかってきてた、ら、ら、ライナーくん? だったかは様付けで呼ばしてハーレム形成してたな。

 

……別に羨ましくはないよ? ほんとだよ八幡嘘つかない。

 

「……なぜだか身の危険を感じるわ。由比ヶ浜さん、キモヶ谷くんから離れた方がいいわ」

 

そしてこの顔だけは美人の少女の名前は雪ノ下雪乃。

こいつもまた俺の下僕悪魔の一人である。

ちなみに由比ヶ浜同様に俺を敬う態度などない。というよりかはバカにされている。

 

「ヒッキーマジでキモい!!」

 

「べ、別に変なこと考えてないぞ!」

 

ホントにホントだよ。八幡嘘つかない……。

 

「目が怪しいわね。まるで犯罪者のような目だもの」

 

「雪ノ下さんや、それはもしかして俺の目が腐っていることを指しているのか? これは生まれつきだ。うちの家は代々こうなんだよ」

 

「なんで嘘つくし! 小町ちゃんもヒッキーのお父さんもお母さんもヒッキーみたいに目腐ってないし!」

 

「バッカよく見てみろ。小町とお袋は違うにしても親父とか目腐ってるだろ」

 

むしろ俺と小町に対する態度の差などを考慮にいれると性格も腐っているまである。

あれで冥界の上層部の一人とか冥界は人材不足である。

 

「比企谷君、悲しいかもしれないけれど事実から目を背けていてはいけないわ」

 

「雪ノ下……なぜ俺をそんな憐れみの目で見てくる」

 

というか目の話題を出してきたのは貴女ではないでせうか。

 

「ヒッキー……」

 

由比ヶ浜までもか。

 

「目が腐ってるとこも俺は「せんぱーい!!!」……もういいや」

 

扉が悲鳴を上げて開く。

そこから入ってきたのはあざとさの固まりの少女、一色いろは。

一色はテクテクと効果音が付きそうな可愛らしい歩き方をしながらこちらに近づいてくる。

 

……ていうか距離が近い。なんか良い匂いがする。そしてその萌え袖があざとい。あと雪ノ下に由比ヶ浜、俺をなぜ睨む。

 

「先輩気付いてますよね? アレ」

 

そう言って一色が指を差したのは窓の外だった。

普通の人間ならば見えないだろうが、上級悪魔である俺ならば一色が指し示す遠方がはっきりと見えた。

校門に立っている一人の少女。腰まで届く黒髪を風にさらわれている清楚な美少女だった。

 

ただその正体が人間とは違う。

アレは、俺たちの敵。堕天使だ。

 

「先輩、見とれてるんですか?」

 

「比企谷くん……」

 

「ヒッキー……」

 

一色に冤罪をかけられ、そしてそれを鵜呑みにした雪ノ下と由比ヶ浜の視線が冷たくなる。

 

本当に彼女らには主を少しでも信用してほしいものである。

大体お前らの方が顔だけ見たならかわいいから見とれたりなんかしない。

まぁそんなこと口が裂けても言わないけど。

 

「別に見とれてねーよ。ただ……グレモリー先輩は何してんのかなって思ってさ」

 

この駒王町はグレモリー先輩の管轄下にある町だ。

そのためああいう手合いを片付けるのもまた、グレモリー先輩とその眷属である必要がある。

何ともまぁ面倒な決まりである。

実のところ俺としては中学時代を過ごした千葉の高校に通いたかったのだが、親と魔王がうるさかったのでここにしたのだ。

 

「そうね。どうせ何時も通りまだ気付いていないかもしれないわね。だけど私たちが消してしまう訳にはいかないし……」

 

そうなのである。

俺たちは以前この町に現れたはぐれ悪魔を討伐したことがあった。

グレモリー先輩たちが気付かないままでいて、そしていよいよ被害が出そうだったので俺たちが倒したのである。

 

倒した……までは良かったのだが

 

「その後でめちゃくちゃリアス先輩に怒られちゃったもんね。他の眷属の皆はこっそりその事謝ってくれたけど」

 

俺たちはグレモリー先輩に怒られた……と言うよりも俺が怒られたのだ。

何故管轄者たる私の許可無くそんなことをしたのか、と。

 

思えば昔からグレモリー先輩は俺に対してライナー君同様当たりが強かった。いや、それは間違っている。

ライナー君やグレモリー先輩だけでなく、あらゆる同年代の悪魔は俺に対して当たりが強かった。むしろ俺に対して優しい奴など存在しないまである。

理由はわかっている。

下らないことだ。俺には大したことではないと思えるが、彼ら彼女らにとっては違うのだろう。

 

「私たち皆に対してグレモリー先輩って結構キツいですよねー? 比企谷先輩のせいで」

 

「その比企谷先輩のせいでって言うの止めろ。俺は悪くないぞ。この件に関しては全く」

 

「そうね。今回ばかりは比企谷君の意見に賛成するわ。グレモリー先輩はただ、比企谷君に下らない嫉妬をしているだけだもの。こんな男に嫉妬するくらいなら、もっと腕を磨けばいいのに………。せめてこれだけ近づいて来ている堕天使の存在に気付くくらいに」

 

「引っ掛かる所はあったけど、本当にそうだよな」

 

嫉妬。

そうグレモリー先輩は俺に嫉妬しているようなのだ。

あの人間離れしたプロポーションと美貌を持つ、校内二大お姉さまとも呼ばれるあのグレモリー先輩がである。

それも俺のような嫌われ者に対して。

 

「確かヒッキーが魔王様たちに可愛がられてるからだっけ?」

 

「由比ヶ浜さん。この男は魔王様たちだけではないわ。冥界の上層部にも異常に好かれているもの。それ以外にはとことん嫌われているけれど」

 

雪ノ下の言う通り、俺は冥界の中でも魔王たちと上層部の連中に異常に可愛がられて育った。

………………望んでもいないのに。

そのせいで俺は冥界でとことん同年代からは嫉妬され、嫌われて、虐められて、そして人間界に逃げたのだ。

そのお陰で、到底一人たりとも出来ると思わなかった眷属が駒分全員埋まったことは確かに良かったのだが……。

それでも暗黒の幼少期を過ごしたことに代わりはない。

 

「あれ? あの堕天使さん、誰かに近づいてますよ。………アレって確か兵藤先輩でしたっけ?」

 

冥界での嫌なことを思い出している俺にかかったのは一色のそんな言葉。

 

「あ、本当だ!」

 

「兵藤一誠……確か比企谷君よりも最低な人間だったわね。覗き魔の屑男。………………胸の大きさで女性を計る屑」

 

雪ノ下がボソリと忌々しそうに呟く。

 

あの……雪ノ下さん。俺にバッチリ聞こえちゃってます。

やっぱり気にしてんのね。

 

視線を向けてみると、そこにはバカみたいなにやけ面を隠そうともしない兵藤と照れたような作り物の表情を浮かべた堕天使の少女の姿があった。

 

「面倒なことにならないと良いんだけどな………」

 

まぁ面倒なことになるだろう。

そんな諦めの気持ちを内包させて、俺は室内に響くような声でそう言うのだった。

 

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