やはり俺の悪魔生活は間違っている。   作:LUCAリオ

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旧校舎のディアボロス2

「大変だ大変だ! はっちまーん!」

 

校門付近で堕天使の女の子を見かけてから一週間が過ぎた頃、ソイツはやって来た。

別に誰も呼んでないにも関わらず。

そしてノックもせずに大声で。

 

………………無駄に良い声なのがムカつく。

 

「……何か用かよ材木座。てかなんか久しぶりに見たなお前」

 

見たくはないし、会いたくもない奴だが本当に久しぶりの気がする。

「最近材木座来ないな~」と俺が雪ノ下と由比ヶ浜に言ったら、素で「………………誰?」と言ったくらいだからな。

それくらい影が薄くなるまで、材木座は奉仕部にもそして俺たちの前にも顔を出していなかったのである。

 

「八幡、我は言っておいたではないか! かつての我の力を取り戻すべく、魔界の炎の力を手に入れに行くと! だから一週間学校を休んでいたのだ!」

 

「………………そんなこと言ってたか? て言うか居なかったの一週間だっんだお前。気付かなかったわ二ヶ月くらい居ないんだと思ってた」

 

「ぬるふぉ!」

 

気持ち悪い悲鳴を上げながら気持ち悪く倒れる材木座。

……ちなみに雪ノ下と由比ヶ浜は材木座を完全に無視して各々好きなことをしている。

 

………………君たち俺にこいつの対処を任せる気ですね。

 

「は、八幡なら気付いていたはずでだろう。体育の時に我が居なかったら困っただろう?」

 

「最近体育なかったからな。代わりに保健の授業だったし」

 

「ぐふぉ!」

 

床に転がる材木座。

それを虫を見る眼で見つめる俺たち。

…………なぜだろう。今の材木座を見ていると何か違和感がある。

 

「お前、何か変わってない?」

 

ふと、俺がした質問。

それを材木座が耳にした瞬間。人の身を超えた早さで立ち上がり、鼻息荒くこちらに近付いてきた。

 

………気持ち悪い。ただただ気持ち悪い。

 

「我を覆うオーラが今までとは違うことに気付いたのか八幡! 炎の邪竜から教わった邪王炎殺拳を会得した我の強さに敏感に反応するとは流石は八幡だ」

 

うざぇ。

 

「まぁ強くなってるな。一年前のお前の方がもっと強かったけど」

 

俺が溢したその言葉に、材木座はまるで滝のように額から汗を流す。

まぁ嫌味たっぷり皮肉満載で言ったことだからな。

そもそも材木座は一年前まで、若手悪魔の中では段違いに強いと言われる俺の眷属の中でも二番手を張る程の強者だった。

あくまで過去形の話だがな。

 

材木座は俺たちに何の相談もせずに、あるモノを手に入れる代価としてその力を大幅に失ったのだ。

 

そうそれこそが

 

「その目が無くて、お前がなんたら神拳を手に入れてたら陽乃さんより強くなってたんじゃないかなーって思うわ」

 

第三の目邪眼。

今は前髪に隠れて見えないが、材木座の額にはそれがある。

人探しくらいにしか役に立たないものが。

 

「は、八幡……もしかしてまだ怒って………………?」

 

と材木座が言い掛けた時だった。

またもや奉仕部のドアがノックさえ無しに乱暴に開けられる。

ドア可哀想過ぎぃ。

 

「大変だぞ、比企谷!」

 

「平塚先生。ノックを」

 

そう部屋に入ってきたのは、俺の眷属の一人にして駒王学園

で国語教師をやっている平塚先生である。

 

毎度のことだが、雪ノ下は平塚先生に注意をしている。

先程の材木座には完全無視を貫いていたことから考えると、中々に雪ノ下の平塚先生に対する好感度は高いのだろう。

いや、多分材木座に対する好感度が低いだけか。

 

「平塚先生どうしたんですか」

 

まさか寿命が一万年ある悪魔になれば、アラサーで未婚でもおかしくないからとかいう馬鹿すぎる理由で悪魔に転生した平塚先生にとって大変な事態があるとわな。

ビックリである。

なんて失礼なことを考えている俺の目の前で平塚先生は指をバキバキと鳴らしていた。

 

「比企谷、お前今何か私に対して失礼なことを考えたな」

 

「滅相もございませんです。………………はい」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

材木座も平塚先生も落ち着き、漸くまともに話が出来るような状態になった。

雪ノ下が客用の紙コップに二人の分の紅茶注ぎ、差し出す。

 

「それで? どうしたんですか平塚先生」

 

紅茶の入ったカップを傾けながら、雪ノ下が平塚先生に問う。ナチュラルに材木座を無視している所は流石は雪ノ下雪乃であるが、どうせ材木座の用件は下らないことなので俺でも雪ノ下と同じことをしていただろう。

 

何気ない所作から気品を感じる雪ノ下とは正反対に、平塚先生は豪快に紅茶を飲んでいく。そして白衣の袖で口をガシガシと拭き、口を開いた。

……俺、この人が結婚できない理由がわかる気がする。

 

 

「ああ、私はさっき気が付いたんだが………………この学校に悪魔が一人増えているぞ。二年の兵藤だ! 私聞いていないぞ」

 

 

室内が凍る。

 

 

「そうである八幡よ! 我も一週間振りに学校に来て驚いたぞ。まさか悪魔が増えているとは!」

 

 

黙る俺たち奉仕部組とは違い、二人のテンションはヒートアップしていく。

一通り吐き出し終わった所で雪ノ下が一言。

 

「材津くんは居なかったから言っていないけれど、平塚先生には言いましたよね? 兵藤一誠はグレモリー先輩の眷属になったって」

 

「「へ?」」

 

そうなのである。

一応俺たちは堕天使の存在をきちんとオカルト研究部の連中に伝えていたのだ。グレモリー先輩とか目をひんむいていた。「貴方たちの出る幕ではないわ。この土地の管理者は私よ」と大層なことを言っていたが、結局兵藤一誠は堕天使に殺されてしまったらしい。しかも堕天使はまだ殺せてないらしいし。

そして兵藤一誠はグレモリー先輩の眷属にしてもらったそうなのである。本人の許可無しに。

普通ならば怒る所だけれども、兵藤自身が悪魔に転生して喜んでいるので特に俺たちから言うことはない。

まぁグレモリー先輩に対する俺たちの評価はさらに下がった訳だが。

 

「そんなこと言ってたか? 私は聞いた覚えがないぞ!」

 

聞いた覚えが無くても、気配でわかれよ。

なんてことを思う人もいるかもしれないが、考えてみてほしい。

この人は平塚先生なのである。感知タイプではなく、バリバリの脳筋戦闘タイプなのだ。それ故に、たった一週間で兵藤が悪魔であることに気付けただけで大金星なのである。

………………材木座? アイツは感知タイプだ。元々はガチガチの戦闘タイプだったけど、額に邪眼入れてそうなった。

 

まぁともあれ、俺は確信していた。

雪ノ下は平塚先生に兵藤の一件を伝えていたことを。

眷属皆で暮らしてる家のリビングで雪ノ下が全員に言っていた時に、平塚先生もそこにいた筈なのである。

 

「そう言えば平塚先生、あの時ベロンベロンに酔っぱらってたよね」

 

由比ヶ浜の言葉に納得したように、俺と雪ノ下は頷く。

まさかお馬鹿な由比ヶ浜がそんなことを覚えていたとは。

どうでもいい記憶過ぎて俺と雪ノ下はすっかり忘れていたぞ。

否。どうでもいいことばかりを覚えていて、大切なことを覚えていないからこその由比ヶ浜なのだろう。

 

 

 

 

「………………なるほどな。兵藤一誠はこの土地に侵入してきた堕天使に殺されてしまったのか。それで悪魔になっていたのか。しっかし堕天使が駒王に来ていたことも、兵藤が悪魔になっていたことも全然気付かなかったぞ」

 

「ふむぅ。我はここ一週間居なかったからなぁ。久しぶりにここに帰ってきて驚いたぞ」

 

改めて事情を説明すると、二人の反応はこんな感じだった。

特にグレモリー先輩の仕事のできなさとかについては話題にはならない。

もう皆知っているからだ。

グレモリー先輩は普段はそれなりに優秀で何よりもカリスマ性があり、矢面に立つタイプである。だがいざと言う時の仕事の対応などの能力が低いことをだ。

まさにグレモリー先輩は傀儡に使われたりするタイプの人である。まぁ悪魔だけど。

悪口に聞こえるかもしれないが、俺はこれでも彼女のことを高く評価していたりもする。

内面の良さ、つまり困っている者ならば手を差し伸べてしまう優しさと何者でも懐に入れてしまおうとする器が大きいことだ。

 

それが俺にだけは向けられることはないのだが。

……昔は、それこそまだ未就学児だった頃はそれなりに仲良くやっていた気もする。覚えてないけど。

 

 

「それで? 私たちの王様はどうするつもりなんだ?」

 

「それは私たちも気になってるわ。グレモリー先輩や兵藤一誠にも入り込んでいる堕天使たちは襲ってきたみたいだし。私たちにも攻撃を仕掛けてくる可能性も捨てきれないわ。こんな行動をしている以上はぐれの堕天使でしょうし、倒しても問題無さそうよ」

 

「それならこっちから攻めちゃった方が良さそうだもんねゆきのん!」

 

「我は新技を披露したいぞ八幡よ!」

 

グレモリー先輩について思いを馳せていると、四人がどこかワクワクした様子で話してくる。

…………戦闘狂どもめ。

 

 

「まぁもう何日かだけ待とうぜ。襲撃されたら迷わず殺せ。そうじゃないならグレモリー先輩たちの動きを待とう。数日後まだ堕天使たちが生きていたら………………その時は俺たちが片付ける」

 

 





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