東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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永夜抄はもう正直言って別の作品です。
特に後半は...


21 動き出す者達

 春雪異変から3か月後。

 

 空には普段よりも一際大きな満月が昇っていた。

 

 幻想郷の何処かの竹林にて。

 

「な!美味いだろ?」

 

「美味しいけど、アンタ、これを利用して何か企んでるんじゃないでしょうね。」

 

「そ、そんなまさか......料理が好きなもので店を出してるまでですよ。」

 

「......本当かしら?」

 

「声の微妙な変化によれば本当だ。」

 

「お前、そんな事も分かるのかよ。スゲーなぁ!」

 

「フォ、フォローありがとうございます。」

 

「しかし、この、八目鰻というのか、その旨味とタレの甘味が見事に効いているな。」

 

「だろ?しかしお前感情とか滅多に見せないくせに食い物はやたら美味そうに食うよなあ。」

 

 アダム達は魔理沙に紹介された鰻屋(屋台)に来ていた。

 

 店主はミスティア・ローレライという妖怪だ。

 

「しかし、今日は一段と月が輝いているな。」

 

「スーパームーンだ。月は地球を公転しているが、その軌道は完璧な円では無い。周期的に僅かに近づいたり離れたりする。今日はその最も近づいている時だ。」

 

「そんな事がよく分かるわね。」

 

「鈴奈庵に外の世界の本も置かれていてな、良く読んでいる。」

 

「あそこは私も行っているが、科学に関する本は正直難しいな......。」

 

「科学と言うのは不可解な物を理解する為に必要な過程の学問だ。知識そのものよりも考え方が重要だ。」

 

「ふ~ん。」

 

 正直言って、霊夢、魔理沙、ミスティアはアダムの話をいまいち理解していなかったが。

 

 不意にアダムが黙り込んだ。

 

「......。」

 

「どうしたの、アダム?」

 

「もしや異変か?」

 

「多分な。この竹林の奥でエネルギーを察知した。」

 

「でもどんな影響が出るのかしら?」

 

「分からないが、幻想郷中に影響が出ない内に防ぐのが一番だ。霊夢、ついて来てくれ。魔理沙、君はこの事を皆に伝えるんだ。分かったか。」

 

「ええ。でももう行くの?」

 

「分かった、すぐに伝えて来る。」

 

 魔理沙が咄嗟に箒に乗り、里の方角へと飛んで行った。

 

「武器は常に用意してある。早く行くぞ。」

 

「分かったわ。」

 

「あの、代金......。」

 

 ミスティアが控えめに言った。

 

「ああ、これで。釣りは要らないよ。」

 

 アダムが幾らかお札を出す。

 

 霊夢は何か後悔する様な眼差しでそれを見ていたが、アダムへついて行くのを優先した。

 

 二人はそのまま竹林の奥へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「管理軍」の侵攻を確認!至急総員迎撃準備せよ!」

 

「ロウ、この侵攻をどう思う?」

 

「......まるで奴らがこの時を待っていたかの様な感じがします。」

 

「カイル、お前はどうだ?」

 

「そうですね......「管理軍」の侵攻はまるで只の時間稼ぎ、あるいは注意を引き付けるかの様な......。」

 

「ロウ、他に分かった事は無いか?」

 

「他は......相手はこちらの防衛力ギリギリの戦力の様です。それ位しか......。」

 

「ロウ、お前は氷山の山の部分しか見ていないぞ。氷山の大部分は海の中に隠れているんだ。」

 

「つまり、ドニーさんが言いたいのは、カイルの言う通り奴らは本当の目的を隠す為に、攻めて来たという訳ですね。」

 

「そういう事だ。他のレーダーも調べてくれ。」

 

 ロウは前方180度に広げられているモニターや計器類を見回したり操作したりした。

 

 そして、一画面のディスプレイに目を付けた。

 

「これは......結界が異常に不安定になっている。カイル、どう思う?」

 

「月が満月あるいは新月の場合、結界が不安定化する傾向が高い事が確認されている。今日はスーパームーンだが、予測データよりも結界が大きく乱れているな。これは同時に幻想郷で異変が起きているのだろうね。そして「管理軍」はこれを利用して幻想入りするつもりの様だな。」

 

「またしても異変と「管理軍」の計画の同時進行か......早くリョウに伝えましょう。」

 

「しかし、こちらの防衛で精一杯な故、またしても人員が送れなくなってしまうな。リョウには幻想郷の住民にはばれても良いから「管理軍」の計画を阻止するように伝えろ。」

 

「了解......リョウの奴、また超過労働手当くれ、って愚痴るだろうなぁ......。」

 

 ロウは通信ユニットを起動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「予定通りに精神制御に成功しましたな。しかも同時に幻想郷で異変が起こるとは、何たる偶然。今度こそ「バースト」が成功すると良いですね。」

 

「さあな、私には何故か失敗する予感がする。根拠が有る訳では無いが、そう思うのだ。」

 

「ディック中佐は考え過ぎですよ。今回は「文化軍」への侵攻によって幻想郷へ人員を送る暇すら与えないという作戦ですからね。」

 

「何と言うか、何かを見落としている気がするのだ......。」

 

 二人は4人の人物がスペースマシンに入ったのを見て確認した。

 

 ポールは自信ありげな眼差しであるのに対し、ディック中佐はどこか腑に落ちない表情でそれを見ていた。

 

(一体何だ?以前何かを見落としている筈だ......まさか、いや、"あれ"は"失敗作"だ。今も"生きている"筈が無い。)

 

 技術者が操作パネルにある【テレポート開始】と書かれたパネルを押した。

 

 そして、スペースマシンに入った4人が目の前から閃光が放たれると同時に消えたのを確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リョウは一人ですっかり暗くなった里を歩いていた。

 

「よう、慧音。今日も月みたいに綺麗だな。今度一緒にコーヒーでもどうだ?」

 

「その言葉聞き飽きたぞリョウ......悪いがお前みたいな男は正直タイプじゃ無いんだ。」

 

「酷いねぇ......。」

 

 そして慧音が去って行くと、通りには誰も居なくなった。

 

「それにしても、また一人か......奴らに対する総力での防衛って事なら仕方ないが......。」

 

 リョウは立ち止まり、深呼吸した。

 

(異変は......あっちか。)

 

 リョウは一人で竹林へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢はアダムに対して複雑な感情を抱いている。

 

 親近感や好意はあるが、それと同時に恐怖すらある。

 

 アダムは霊夢にとっては謎である。

 

 人間の筈の彼は妖怪ですら手におえない力を持っている。

 

 いかなる状況でも冷静で、すぐに理解する程の頭脳を持っている。

 

 彼が笑うのを見たことが無い。

 

 彼が泣くのを見たことが無い。

 

 彼が喜ぶのを見たことが無い。

 

 霊夢はアダムの「怒り」以外の感情を見たことが無い。

 

 そして、その怒りが徐々に高まり、いつか爆発したら......。

 

「霊夢、どうした?」

 

 霊夢の思考はアダムの一言によって遮られた。

 

「......えっ?いや、何でもないわ。」

 

「早く行くぞ。異変はもう起こっている。」

 

 アダムが空を見上げた。

 

 霊夢がアダムの視線を辿って見えたのは、先程とは違った満月だった。

 

 ただでさえ大きかった満月が、さっきよりも大きく見える。

 

 色も何だか違う気がした。

 

「......誰か近くに居るな......。」

 

「......え?」

 

 霊夢も精神を集中させた。

 

「......確かに前に誰か居るみたいね。」

 

 突然、アダムが何も言わずに疾走を始めた。

 

 それと同時に、前方からアダム目掛けて大量の虫が襲い掛かる。

 

 だがアダムは武器を手に取る事も無く、虫の大群目掛けて駆け込んでいく。

 

 アダムが何も無い虚空へ拳を突き出した。

 

 正確に表現すれば、”空気のある”空間へ拳を突き出した。

 

 音速を超えた拳が衝撃波を生み出す。

 

 衝撃波は小さな虫の大群の一部を吹き飛ばし、一部を失神させ、一部を錯乱させた。

 

 今度は左右から虫の大群が襲い掛かって来た。

 

 地面を踏ん張る足に力を込め、地面を思い切り蹴り込む。

 

 アダムは音速を超えるスピードで虫の大群を躱し、この虫達を操る張本人へ駆け込んで行った。

 

 0.3秒後、目の前には緑髪でショートヘアーの、暗い茶のマントが特徴的な少女がいた。

 

 アダムの裏拳が少女の側頭部を勢い良く、そっと打ち込んだ。

 

 少女は成す術も無く倒れた。

 

「アダム、大丈夫?」

 

 霊夢がアダムの戦闘が終わったのを見て、駆け寄った。

 

「如何という事は無い。」

 

「この子、虫使いの妖怪ね。どうやら満月で活性化したみたいだけど、今は急ぎましょう。」

 

 二人は更に竹林の奥へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......という訳なんだ。」

 

 魔理沙は紫にアダムと霊夢が異変解決に行った事を話した。

 

「あの二人、随分無茶をするわね......異変が起こっているのは私たちも分かっているわ。ただ、今回の異変はいつもより厄介そうだから私の方でも協力者を集めといたわ。既に紅魔館の主とその従者、幽々子と妖夢の二組には頼んでおいたわ。私は藍と行くつもりだけど、貴方はどうする?今回一人だけでの行動は危険と見たわ。」

 

「そうだな......アリスの奴と行くかな。」

 

 魔理沙は箒に跨り、魔法の森へと向かった。

 

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