東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
少年が長い廊下を歩いていた。
隣には青い髪で赤い目をした40代の男性が立っていた。
「よしアダム、「スペースボム」と起爆の仕方は覚えただろうな。」
「はい。それから質問が有りますが、「バーストポイント」はどうやって?」
「おっと、私とした事が、言い忘れていたな。起爆装置同様、この端末に「バーストポイント」を示すマップを搭載している。ちなみに他にも色々機能はあるが説明する必要は無い。」
年配の軍人は思い出した様にそう言うとポケットから携帯端末らしき物を取り出し、もう一人の軍人に手渡した。
「ありがとうございます。必ずや、地球文明の発展と我らが「地球軍」の勝利の為に、任務を成功させます。」
「その意気だ。私はお前に期待しているぞ。」
「はい。」
話しながら歩いていく内に何処か広い部屋へと着いた。
部屋の中央には核反応炉や量子加速器を思わせる装置があった。
「テレポートの際は乗り物酔いに似た症状が現れるそうだが、短時間で治る。計画の二段階目の「バースト」の成功を祈るぞ、アダム。」
「勿論です。失敗なんてしませんよ。」
少年はそう言い返すと装置の人が何とか入れる位のスペースに入った。
そして、重く大きな機械音が鳴り出した。
自身が白い閃光に包まれたと同時に、体重を奪われるような、重力の無くなる感覚を覚えた。
何の前触れも無くアダムの瞼が開いた。
「アダム!」
「......霊夢、此処は?」
「心配したのよ!大丈夫なの?」
「体は如何という事は無いが、また変な夢を見た。」
「どんな?」
「自分が原子炉や量子加速器みたいな装置に入る夢だ。詳しい事は分からないが......とにかく不明だった。」
アダムは体を起こしながら額に1滴の冷汗が滴るのを覚えた。
街の表通りに対峙する二人の男とそれに注目している観衆。
左側に居るのは、デッキブラシの様に逆立った金髪が特徴の、上半身タンクトップで下半身迷彩柄のズボンの軍人らしき男。
右側に居るのは、長い茶髪を後ろで三つ編みにまとめ、顔面を覆う白い仮面と右腕に鉤爪を付けた、上半身裸の男。
金髪の男が勢い良く腕を突き出す。
その勢いによって衝撃波が発生し、衝撃波は仮面の男へと向かっていく。
衝撃波一発だけではなく、何発も次々と繰り出していく。
対する仮面の男は引き締まった身体に見合う動きで避けていくが、金髪の男に接近できない。
不意に仮面の男が跳び上がり、金髪の男へと降下キックを繰り出す。
同時に金髪の男が跳び上がり、仮面の男へとサマーソルトキックを繰り出す。
結果は、金髪の男のサマーソルトキックが打ち勝ち、仮面の男を吹き飛ばした。
金髪の男は空中で1回転し終えて着地し、仮面の男は地面に倒れる。
金髪の男が仮面の男の起き上がるタイミングを狙って衝撃波を放つ。
仮面の男が起き上がると同時に、目の前に迫っていた衝撃波を咄嗟にガードする。
同じように衝撃波を連発し、相手を有効に牽制する。
仮面の男は負けじと衝撃波を避けていく。
遂に、仮面の男が衝撃波の放たれる合間を狙ってローキックを決めた。
続けて顔面に2回パンチを決め、そのままローリングによる鉤爪連撃を決めた。
仮面の男は後ろへ跳び上がり、金髪の男はすぐさま起き上がる。
仮面の男は背後にあった壁を蹴り、その反動で跳び、相手へ斬り裂き攻撃を決めた。
そのままストレートで怯ませ、再びローリング攻撃を決める。
金髪の男は受け身を取って起き上がり、相手へと連続攻撃を掛ける。
次々と出される拳と蹴りの嵐だが、全て相手に吸収される様に受け止められる。
最後に2連続サマーソルトキックを放ったが、呆気なく避けられる。
仮面の男が相手の着地する隙を突いて駆け込み、すれ違いながら爪で斬り裂く。
すり抜けの勢いを残したまま宙を舞い続け、進行方向にあった壁を蹴り、反対側へと跳んで行く。
怯んだままの男へ跳び蹴りを決め、進行方向にある壁を蹴る。
上に吹き飛んだ相手を掴み、落下速度を活かしたバックドロップを決めた。
ブラウン管の画面の中では、今まさにそんな戦いが繰り広げられている最中だった。
「あーっ!また負けたー!」
「待ちガイルとはいい戦法だが、読み合いがまだまだだ。そんな実力ではバルログマスターの俺には勝てねぇぜ。」
「大体何で殆どの攻撃をジャスガ出来たのよ!」
「俺にはフレーム一つ一つがはっきりと見えるのさ。」
「くぅー!今度はダルシムでリベンジよ!」
「ほぅ、じゃあ待ちガイルで挑んでやろうか?」
「むー!また馬鹿にした!」
「か、輝夜、ゲーム如きでそんなムキにならないでも......。」
「まあ、永琳さんよ、これは俺達にしか分からない領域だ。素人が口を割るもんじゃ無いぜ。しかし、アダムは全然起きないな。大丈夫なのか?」
「もう12時間も目を閉じたまま全く動いていないし、そして何といってもあの子の回復力は全く凄いわね。もう骨折が殆ど治っている。」
「それから、奴らに注射された奴らの方はどうだ?」
「何とか中和薬を作れたのは良いけど、記憶はぼんやりとしか覚えていないかも知れないわ。もうそろそろ目を覚ますと思うけど、記憶が曖昧になっているかも知れないわね。しかし、あんな薬があるとは......投与した者を12時間失神させ、記憶を24時間分消す薬なんて。」
その時、丁度永琳の台詞の終わりと同時に障子が開いた。
「アダムが起きたわよ。」
「リョウ、昨日の奴らの事を教えてくれ。知っているんだろ?」
「ん?ああ。だがもう少し待ってくれ、他の奴らが全員起きたら話す。」
暫く、1時間以内に、注射を打たれて気絶していた咲夜、レミリア、妖夢、幽々子、魔理沙、アリスが起き出した。
そして、昨日のリョウを除く異変の関係者、つまり、アダム、霊夢、魔理沙、咲夜、レミリア、アリス、妖夢、幽々子、紫、藍、慧音、てゐ、鈴仙、輝夜、永琳、妹紅、この16人がそろった。
「よし、それじゃあ......どこから話すべきか......まずは”俺達”と”奴ら”の事だ。」
アダム達はリョウに注目した。
「俺は「人類共和軍」の諜報部に所属する者だ。」
「その「人類共和軍」って何だ?」
魔理沙が訊いた。
「略称「HPF」(Human Republic Force)。「文化軍」、「反乱軍」とも呼ばれる。「地球管理組織」に対抗する組織だ。こいつは昨日の奴らが所属している組織で「EMO」(Earth Management Organization)。とか「地球軍」とか呼ばれている。こいつらは人類に平和と繁栄をもたらすのが目的らしいが、そのやり方が非人道的でな、例えば人民に一切の感情を持たせる事を禁じたり、マイクロチップを埋めて番号で管理したり、俺達がそれを阻止しているって事だ。」
「EMO......という事は、僕は元々その地球管理組織に所属していたという訳か。とすれば、僕が此処にきた理由もそれに関係しているのか?」
「それで、その組織は何が目的で此処へ来ているの?」
アダムと紫が続けざまに質問する。
「奴らの目的は分かっている。此処へ人員を送り込み、何らかの方法で幻想郷を覆う結界を破壊し、此処を制圧し、「ユニバーシウム」を採掘する事が奴らの目的だ。そして、それを阻止する為に俺が此処へ来た。しかし、どうやって結界を破壊するかは分かっていないが。お前もこの計画で送られたんだろうな。」
「そんな事が......でも今の僕は幻想郷を敵にするなんて出来ない。僕はこれを知っても幻想郷の味方だ。」
「その「ユニバーシウム」とは?私も以前外界へ来た時に調べた事があるけど、大した事は分からなかったわ。」
再び紫が質問する。
「それは安心だアダム。それで「ユニバーシウム」ってのはな、詳しくは解明されてないが、物質と反物質の丁度中間に当たる「中物質」の一種で、「エネリオン」や「インフォーミオン」を内部に引き寄せる効果がある。これが何故か外界には殆ど存在しなくて、何故か幻想郷の地中に大量に含まれている事が分かっている。」
「全く次から次へと疑問点が湧くわね。その「エネリオン」と「インフォーミオン」って何かしら?」
永琳が呟く。
「そりゃあ、お前達が一切知らなかった事だからな。「エネリオン」ってのは宇宙空間の何処でも存在する素粒子の一種だ。ダークマターみたいなもんかな?これを構造する「インフォーミオン」を組み替える事によって熱、光、力学、音、要するに全てのエネルギーに変換出来る。それと「インフォーミオン」はエネリオンを構造する以外に他の素粒子やエネルギーを構成する最小単位でもある。そして、何故かエネリオンやエネルギー以外のインフォーミオンは確変出来ないが、逆にエネリオンやエネルギーの奴であれば確変可能だ。それから、これらを利用できる人類、つまり俺やアダム、昨日の奴らみたいな奴らの事を「トランセンデンド・マン」と呼ぶ。並外れた身体能力とかはその所為だ。」
「凄いな。外の世界ではこんなに詳しい事が分かっているのか。私が聞いた事ある以上に文明が進歩しているんだな。」
慧音が感心した様に言う。
「話はまだあるぞ。そのユニバーシウムのエネリオンを吸い寄せる性質を利用して永久機関を作り、俺達反乱軍に対抗しようというのが管理軍の目的だ。ついでに、幻想郷で言う霊力、魔力といった類の力はこのエネリオンが元になっているという説もある。」
「そういえば、どうやってこの幻想郷に入るわけ?現にアダムやあなたも此処にいる訳だけど。」
霊夢が言った。
「それは「スペースマシン」って装置を使う。”本来は”莫大なエネリオンを利用して空間に僅かに開いているワームホールを拡大してワープを行うという装置だ。この莫大なエネリオンを利用して結界を破壊するまでの性能は無いが、結界に僅かな穴を開けたり、結界を安定化・不安定化させたりも出来る。此処へ来たのはその中の穴を開ける機能による物だ。」
「僕が夢で見た装置はそれだったのか。それで、何故それを早く言わなかったんだ?」
アダムが質問した。
「そりゃあ何も起きていないのにこんな事を聞いて信じるか?下手したら幻想郷中が大混乱になるしな。特に新聞屋とかに聞かれでもしてみろ。だからこのタイミングで言った。」
リョウ以外の全員は呆然として黙り込んだ。
「他にも、結界は幻想郷内の異変によっても不安定になる事が分かっている。だから異変は起こさないでくれ。そして起こる前に防ぐことだ。」
少し喋りを止め考えを整理する。
「まだ何か質問があれば後で教えるぜ。それから、この事は他の奴らには内密にしていてくれ。さっき言った通り混乱を招いてしまう。特に天狗とかのメディアには注意してくれ。全く、アイツには苦労してるんだ。」
最後は冗談を効かせながら言い終える。
アダム達は頷き、リョウは疲れたのかため息をついた。
設定集をまだ読んでない方はもうそろそろ読んでも良い頃です(キャラ設定もあるので)