東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
地霊殿と繋がったストーリーになるのでとても大掛かりと思っていいです
それと日常編を見ていない方は設定とか大事な事が色々あるので見る事をお勧めします
40 攻撃
アダムの両手にはナイフが、目先には目標がある。
目標目掛けて駆け込む。
目標は風によって僅かに動くのみだが、範囲が小さい。
目標に正確にナイフを当て、目標を正確に切った事を確認し、次の目標目掛けて駆け込む。
ナイフを一振りし、一気に目標を3連続で切る。
体の向きを変え、ナイフをジグザグに振り、目標を5連続で切る。
右と左のナイフを交互に連続で振り、次々と目標を切り落としていく。
1分後、アダムがナイフを振り回し終えた跡には茎をしっかり切り落とされたトウモロコシが所々に落ちていた。
「後は拾うだけで終わりで楽チンね。今度は何の訓練?」
「攻撃の正確さを鍛える。実には傷を付けず、茎をしっかり切り落とす。それも出来るだけ速くだ。」
「中々豊作かしら。あの秋の神は来なかったけど。」
「大した灌漑システムも付けず殆ど放置状態だったが、この量は中々だな。今度は風車でも使って灌漑システムでも作るか。ところで、その秋の神とは誰だ?」
「秋穣子っていう豊作の神様よ。収穫前に畑に来てくれると豊作になるそうよ。あと姉に秋静葉というのも居たけど、それは紅葉の神様だったかしら。」
「植物の光合成を急激に活性化させるとでも言うのか?」
「さ、さあ......どうやっているのかは分からないけど。」
「それと、最近リョウから聞いたんだが、管理軍が侵入を計画していると聞いた。」
「私もリョウから聞いたわ。あの時よりも大きな勢力で攻めて来るって。準備出来てる?」
「もう出来ているが、問題は何が起こるかだ......。」
リョウがリフォームして新しく出来たカフェ「ザイオン」では90年代のロックとラップを組み合わせたと思われるBGMが流れていた。
そして、慧音が店内に入って来る
「よし、来たか。」
「リョウ、話って何だ?それとどうでも良いが、私はイマイチお前の好きな音楽の良さが分からないんだが......。」
「それはこっちの台詞だ、慧音。どうして良さが分からないんだ?レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンってグループさ。ロックとラップを組み合わせた様な音楽、更に弱者を搾り取る様な社会を批判する歌詞が特徴的だな。」
「成程、お前達みたいな反乱軍にピッタリな曲という訳か。」
「まっ、そういう事。というか来たんならコーヒーでも飲めよ。今あんまし客来てないんだ。」
「そんな音楽かけているから客が来ないんじゃないのか?」
「これだから素人は何も価値が分かってないからそう言う......まあそれは置いといて、本題に入るか。チョット悪いニュース、いや、噂がある。」
リョウがわざとらしく間を置き、話し始める。
「友達から聞いたんだが、管理軍の奴らがこちらへ”侵入”では無く”攻撃”を計画しているとの事だ。つまりこの前幻想郷に来た奴らよりも強い野郎が倍以上の人数で攻めて来るって訳。で、お前にコイツを渡しとく。」
懐からトランシーバーらしき物を取りだす。
「通信機だ。このツマミを回し、ここに合わせると俺の通信機に繋がる。このボタンを押せばこの画面に自分や他の奴の位置が映る。真ん中が自分で他に名前が書かれている所はそいつだ。一応この前の異変に関わった奴らには渡している。そうそう、他の奴らのツマミの番号はこの紙に書いておいた。」
「お前がこれだけ準備しているという事はとんでも無い事になりそうだな。」
「まあな。あと、お前は里の住人達を避難させてやってくれ。それと俺の仲間が2名来る予定だ。そいつの位置もその通信機に示される様にはなっている。つまり通信機に示されない奴は敵だ。分かったな。」
「分かった。どうか無事に済むと良いな。」
外界のとある研究施設。
「「破壊神」の調整が終わりました。あと「コントローラー」も準備完了です。」
「分かった。では後は”待つだけ”だな。そして、今回もエネルギーの無駄遣いにならなければ良いが......少なくとも色々と対策はしてあるがな。」
「それと中佐、上からの案で「カオス」も出撃させて欲しいとの事ですが、どうしますか?」
「「カオス」を?まだ未完成の筈だが、実践でのデータを取るのが目的なのか......良いだろう。しかし、これに対して奴らはどう出向くか、それが問題だ。しかし、今回は中々大掛かりだな......ノースアメリカやサウスアジアの防衛ラインの戦力まで削るとは。」
「ですね。」
抑揚の無い声でポールは言った。
外界で別の研究施設。
「ロウ、奴らの動きはどうだ?」
「どうやら準備は完了しているらしいですね。しかし、奴らが侵入してくるのを待つなんて......あまり頼り無い作戦ですね......。」
「結界が不安定になった後でなければエネルギー消費が大変ですからね。奴らが侵入する事は分かっていてもどのようにして結界が不安定になる事が分かるのか、疑問ですね。」
「それにしても、エネルギー不足が痛いな......核融合発電プラントが有っても結界に穴を開けるだけで大変だからな。それとカイル、お前は準備は出来ているか?」
「僕は出来ていますよ。それとトレバーさんはどうですか?」
「準備は出来てるらしいが、相変わらず無口な奴でろくに会話も出来てない。今日までで7日も部屋から出て来てないそうだ。冥想でもしているのか......。」
「アイツらしいなあ......それとも何かを感じているのか......トレバーは無口だが部屋に閉じ籠る様な奴じゃない。少なくとも俺には何かに怯えている様に見える......。」
ロウが疑問を抱えた声で言った。
そして、外界のとある盆地地帯、その中にポツリと建っている神社。
「二人とも準備出来ましたか?」
「私達はもう出来ているが、早苗はどうだ?もうこの世界への未練は無いかい?」
「別に行くのは今すぐじゃなくても何時でも良いんだけどね。決めるのは早苗だよ。」
早苗と言われた少女の脳内にはある思い出がよぎった。
十数秒間彼女は黙り込み、ようやく口を開いた。
「......一つだけ心残りな事が有りますけど、私は前に進みます。」
「そうか。では諏訪子、やるぞ。」
「分かってるわよ、神奈子。」
そして、3人は白い閃光に包まれ、何処かへと消えた。
その様子を見ている者が居るとは知らずに。
いや、観測、とでも言った方が正確だろう。
「結界が急激に不安定になりました。」
「よし、では始めろ。」
スペースマシーンに乗り込む2人の者達。
「自分のやるべき事を忘れるな、二人とも。信じているぞ。」
「分かってますよ。リョウによろしく言っておきます。」
「......では行って来る......。」
そして、二人も白い閃光に包まれ、ドニーやロウ、技師たちの目の前から姿を消した。
「結界が急激に不安定になりました。」
「よし、では始めろ。」
スペースマシーンに乗り込む9人の者達。
「ポール、今回はいけると思うか?」
「私は何とも思えませんが。中佐はどう考えているのですか?」
「私にも分からん。少なくとも私達の予想外の出来事が起こるかも知れない。」
そして、彼らも白い閃光に包まれ、ディック中佐やポール、技師達の目の前から姿を消した。
リョウの携帯端末が鳴り出した。
「遂に来たのか?」
『ああ、予定通りカイルとトレバーも行かせた。それと、カイルからの伝言だが、あのアダムという少年が持っていたあの立方体は覚えているか?』
「勿論だ。それが何だって言うんだ?」
『簡単に言えば奴らはそれを狙っている可能性が高い。俺が出来るのはここまでだ。幸運を祈る。』
「オッケー。それとちゃんと超過労働手当出せよ。」
『強要かよ......それじゃあまた。』
通信を切り、端末をしまう。
「慧音、村人達は任せたぞ。」
「ああ、お前こそ無事でな。」
「全く、フラグ立てるんじゃねえよ。」
「ハハハ、空気を和ませるな。それより早く行こう。」
「ああ。」
二人はザイオンを出て行った。
アダムの携帯端末が鳴り出した。
「来たんだな。」
『ああ。ところで作戦だが、一旦全員で博麗神社に集まる。詳しくは知らないが、お前が持っているあの立方体が奴らの目的らしい。』
「成程、分散させるんだな。分かった。」
通信を切り、端末をしまう。
「一旦全員ここに集合らしい。どうやらあの立方体が目的との事だ。」
「あの立方体が......一体何なのかしらね......。」
「カオス」は「複雑不規則性」という意味の方ではありません