東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
胸に穴の開いたサムは銃弾の影響で後方に吹き飛び、力無く地面に倒れた。
カイルは一息つき、早苗は死体を見た事で罪悪感と不快感を覚えていた。
「......ふう、やっと1段落か。それと刺激が強かったかい?」
「......いえ、大丈夫です。それと今のは一体どうやって勝ったんですか?さっき相手がレーザーを放つからこそ勝てるとか言ってましたが。」
早苗が疑問に思った事を質問する。
「ああ、光という物は透明で密度の高い物質に対して屈折する。衝撃波でほんの一瞬だが光を屈折させ、軌道を逸らしたという訳さ。ただしこの作戦は相手がレーザー以外の攻撃方法を使わないか、そして君が衝撃波を放てなかったら成功しなかったけどね。後は彼の乗り気な性格も無ければ駄目だっただろう。一か八かの作戦だったけどなんとか上手くいったね。」
質問の答えを聞き、納得した早苗はまた別の質問を訊く
「......あの、カイルさん、貴方達反乱軍と、そして地球管理組織の目的は一体何なんですか?」
「そうだよ、目的があるからこそ管理軍は幻想郷に来るし、それを阻止しようと僕達が来る。この話は実を言うとまず一般人は耳にもしない重要機密になるが君には必要な事だ、教えよう。それと話は歩きながらで良いかい?仲間の所へ行く必要がある。」
「あ、良いですよ。」
カイルはポケットから端末を取り出し、操作し、画面に表示されたレーダーを見る。
カイルはその中の1点を確認するとその方向へ歩き出し、早苗がそれについて行く。
「では話そうか。」
カイルが真剣な顔になり、早苗もそれに釣られて同じ表情になる。
「まず、この世界にはエネリオンという素粒子がある。それはあらゆるエネルギーに変換できるいわゆる万能エネルギーだ。それは目に見えないが宇宙空間の何処にでも存在している。あの時目を瞑った時に不思議光の様な物を感じただろう?あれがそうだ。」
早苗は目を瞑った時に見えた不思議な光の事を思い出し、納得した。
「エネリオンは人類の殆どは感じる事も出来ないし、使えもしない。だが稀にそれが使える人間がいる。それこそ僕や君、先程戦ったサムがそうだ。トランセンデンド・マンと呼ばれている。管理軍はそれを利用し、反乱軍もそれに同じもので対抗する。」
「......なんだかまだ話がかみ合わないんですが......。」
「ああ、これから知る為に必要な事を最低限教えているだけさ。いきなり理解しようとしても基礎知識が無ければ混乱するからね。そして、管理軍はある物質を発見した。厳密に言えば中物質と呼ばれる物質の一種で一般に知られている元素周期表には存在しないけどね。それがユニバーシウムと呼ばれている物だ。それはトランセンデンド・マン無しで空間中のエネリオンを吸収する。そのエネリオンはユニバーシウムにプログラムを刻む事によって自由にあらゆるエネルギーへ変換できる。」
「つまりそのユニバーシウムという物があればエネルギーが......。」
「そうさ、永久機関も同然の技術だよ。平和利用も出来るが戦争にも利用されるだろう。管理軍の最初の目的はまず反乱分子を壊滅させる事だからね。話はここからだ。外の世界ではユニバーシウムは殆ど存在しない物質だが、幻想郷には大量に含まれている。理由は解明されていないけどね。」
「だから管理軍がわざわざ幻想郷に来たという訳ですね。そして、それを阻止しようと貴方達が......。」
「ああ、管理軍は理論で動くが、人間の感情では全く動かない。それが彼らのやり方の特徴であり、利点であり、欠点でもある。人類の完全管理が目的の彼らは人類の短所である感情を抑えようとしている。だが感情は人類が成長する為の長所でもある。実際人類は己の願望によってこれまでにあらゆる物を発明してきた。人類共和軍の最終的な目的は理論と感情を両立する社会を作る事なんだ。」
「確かに管理軍のやり方は酷いと思います。ある所では人民支配の為に制御チップを埋め込んだとか聞きました。でも貴方達の事をニュースで良く聞いた事があるんですが、平和を乱す悪者みたいな酷い言われ様ですよ。」
「情報そのものは簡単に変えられる物では無いが、認識を変える事は出来る。メディアを上手く利用しているんだろうね。管理軍が人民支配する事で世界が平和になり、社会や環境、経済が向上した事は確かだから管理軍に反対する者もそういない。ただ大事なのは何が大切かを見極める事だ。」
「見極め、ですか......まるで力の使い方と同じですね。」
カイルは自分の知識を話す為、早苗はカイルの話を理解する為に意識を使っていた。
その為、サムの死体を1匹の黒猫が何処かへ運んで行った事など知らなかった。
黒い男は一直線に何処かへと飛行中だった。
その後ろの少し離れた所には紫達が黒い男を追っている。
「待て!このっ!」
妖夢が黒い男へ弾幕を放つ。
男は見向きもせず後ろから迫る弾幕を体を戦闘機の様に捻って避けるだけだ。
「死符「ギャストリドリーム」!」
幽々子の放った弾幕は量、密度共に妖夢の放った弾幕を凌駕していた。
対する黒い男は体を捻り、後ろに伸ばした両手からエネリオンの弾丸を放ち、戦闘機のフレアの様に迫り来る弾幕を防ぐ。
「結界「光と闇の網目」!」
黒い男の周囲を紫の弾幕が覆い尽くす。
黒い男は相変わらず前進しながら弾幕を避けていくが、動きに余裕が無かった。
どうにか弾幕の嵐を抜け出した黒い男だったが、頭上から妖夢が刀を両手に斬り掛かっている最中だという事に慌てて気付いた。
黒い男は咄嗟に腕を頭上に振りかざし、鈍い金属音が鳴り響く。
妖夢との競り合い中、幽々子が後方から妖夢に当たらない軌道で黒い男へ弾幕を放つ。
前方の弾幕に対し、妖夢を蹴り飛ばし反動で後方に飛び、相対速度を少しでも減速させて避ける。
しかし、黒い男は後方から来る紫の弾幕に気付かなかった。
それにようやく気付いた黒い男は避けようとせず、腕を体の前に掲げ、防御体勢を取る。
次の瞬間、紫の背中へ衝撃波が吹き付け、衝撃波は更に黒い男へ飛ぶ弾幕をかき消す。
続けて幽々子と妖夢にも衝撃波が吹き付け、こうして3人は吹き飛ばされると同時に怯んだ。
地上からその様子を見ている衝撃波を放った張本人であるレックスは地上から紫達のいる所へと上昇気流を吹かせる。
更に上昇気流が発生している所へ横方向から突風を吹かす事によって小規模ながら竜巻を起こした。
大した大きさでは無いものの紫達を足止めするには十分だった。
その隙に黒い男は飛行を再開し、レックスも同じ方向へと飛び始める。
竜巻が収まり、紫達が動けるようになった時は黒い男の姿を視界に確認する事は出来なかった。
「見失ってしまいましたね......。」
「紫、何か良い考えは無い?」
「......そうだ、リョウから貰った通信機に位置を知らせるレーダーがあったわね。」
通信機を取り出し、操作し、画面を見る。
「この辺りに皆が集まっているわね。行きましょう。」
そして、3人の辿る方向もまた黒い男と同じ方向である。
ガミジンは後方からの銃弾を体を捻り、カミソリで防ぎ、前方へと進んで行く。
アダムは前方へ銃弾を浴びせ、ガミジンの後を追う。
急にガミジンが動きを止めた。
ガミジンに合わせようとアダムも止まろうとする。
次の瞬間、ガミジンの足はさっきとは反対の方向へ地面を蹴った。
慌てて止まり、ガミジンに動きを合わせるべく後方へと駆け出すアダムだが、ガミジンは目の前に迫っていた。
ガミジンから突き出されるカミソリをナイフで逸らし、蹴りをもう片方の腕で受け止める。
続けて出された下段回し蹴りを後方に宙返りして避けながら距離を取る。
跳び上がったアダムへと自身も跳び上がり、跳び膝蹴りを繰り出す。
蹴りを両腕で受け止め、下へ逸らす。
下へ逸らされた反動を利用し、前方へ宙返りしながら蹴りを繰り出す。
下へ動かした腕を上に掲げ、蹴りを受け止める。
受け止められた蹴りを戻し、結果、体の回転も後ろ向きになった事で今度はサマーソルトキックを繰り出す。
同時にアダムもガミジンへ両足蹴りを繰り出す。
アダムの蹴りはガミジンの頭に、ガミジンの蹴りはアダムの脇腹にヒットした。
互いに吹き飛ばされ、着地する。
ガミジンが左手に銃を握り、アダムもナイフをしまい両手に銃を握る。
ガミジンがアダムへと突進し始め、アダムもそれを真似する。
互いの銃弾を避け、掻い潜りながらついに互いの距離が1mとなった。
ガミジンは右手に握るカミソリを、アダムは右足で飛び蹴りを仕掛ける。
体格はガミジンの方が大きいがリーチは殆ど同じだった。
するとアダムが動きを変え、蹴りをガミジンの右手へと回し始める。
対するガミジンは右腕を引き戻す代わりに左腕でアダムからの蹴りを受け止め、もう一度右腕を突き出す。
蹴りを受け止められたアダムは右足を引き戻し、突き出されるカミソリを体を捻って避け、同時に左足で回し蹴りを繰り出す。
アダムの回し蹴りを右腕を引き戻して防ぎ、左手に持つ銃を向ける。
それに対し、アダムは両手に握る銃2丁を向ける。
3丁の銃から同時にエネリオンの銃弾が3発放たれた。
アダムは1発を体を捻って躱し、ガミジンは2発をカミソリでかき消した。
着地したアダムは2丁の銃をナイフにし、ガミジンは銃をしまい、相手へと連続攻撃の嵐を仕掛ける。
次の瞬間、2人の蹴りが正面からぶつかり合った。
互いに後方へと吹き飛ばされ、着地する。
すると、ガミジンが後ろを向いたかと思うとその方向へ駆け出した。
アダムもそれを追う。
「何処へ行く。」
「貴様は知る必要が無い。」
黒いローブに身を纏った男は視界に「破壊神」の姿を確認した。
「破壊神」と戦っているのは5名、内2名はHPFの「エクストラ」。
他の仲間は全員そこへ向かっている事も彼自身の能力によって既に知っている。
ただし、ローブの男はただその場で戦闘を傍観しているだけだ。
【スタンバイ中】
一方でローブの男の存在に気付く者は誰一人として居なかった。