東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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51 目覚め

 ディック中佐は仕事場を回っては棚やコンピューターを調べていた。

 

 電子錠付きのロックを解除し開ける。

 

「......こんなに「トランセンダー」が持ち出されているとは、私が許可した量を遥かに超えている。」

 

 ディック中佐は次にポールの机に注目した。

 

「これがポールのパソコンだったか。」

 

 電源ボタンを押し、起動させる。

 

 画面にパスワード入力画面が表示されたが、当然ディック中佐はポールのパソコンのパスワードを知らない。

 

「それにしても今時生体認証を使わないとは……手間が省けるな。」

 

 自身のパソコンも起動し、ポールのパソコンとをコネクターで繋ぐ。

 

「よし、繋がった。それからハッキングできるか......。」

 

 暫くの間部屋にはキーボードを打ち鳴らす音が鳴り響いた。

 

「......ハッキング完了、と、後はデータを調べるだけか。」

 

 再び部屋に静寂が訪れる。

 

 暫くし、ディック中佐は驚いて、それでも部屋の外に漏れ出ない様に出来るだけ抑えて声を上げた。

 

「これは......何だこのプログラムは!」

 

 画面に映っているのは文字の羅列、専門分野である筈のディック中佐はその意味を理解できなかった。

 

「......何故こんなプログラムが「カオス」に?!それと何故ポールが私の許可無しに......」

 

「中佐、何をしているのですか?」

 

 ディック中佐の思考は自分が今まさに考えていた部下の抑揚の無い声によって遮られた。

 

「......いや、何も。」

 

「中佐、何をしているのですか?」

 

 再び、同じ声調で問いかける。

 

「......。」

 

「中佐、何をしているのですか?」

 

 これもまた声調が同じだった。

 

「......お前は何故いつもそんな抑揚の無い声で話すんだ?」

 

「中佐、何をしているのですか?」

 

 またも同じ声調。

 

「私の質問に答えろ!」

 

「中佐、何をしているのですか?」

 

 自分の質問を無視され、同じ声調で同じ質問を5回もされ、諦めたディック中佐は自分のした事を話す事にした。

 

「......お前の事を調べていた。私にとって何か怪しい動きの様に感じたのでな。お前のプライバシーを侵害した事は謝ろう。だが、何故「トランセンダー」をあれ程大量に持ち出した!この「カオス」のプログラムは何だ!私は許可した覚えはないぞ!」

 

 ディック中佐は怒りと疑問を掛け、ポールへ怒鳴り散らした。

 

「上層部からの直接の命令です。」

 

「何?!では何故私にはその事を伝えなかった!」

 

 更に湧き出る疑問を怒りと共に投げ掛ける。

 

「上層部から中佐には話すなと言われました。」

 

「何故だ!少なくとも私の方が階級が上なんだぞ!お前への命令なら私を通して伝えられる筈だ!」

 

「そんな事は知りません。」

 

「......ではこれ程大量の「トランセンダー」を持ち出した理由とこのプログラムの意味を教えろ。」

 

 絶句したディック中佐は質問を変えた。

 

「教えられません。これも上層部から口止めされています。」

 

 が、満足な答えを得る事は出来なかった。

 

「クソッ、何故だ!何故だ!」

 

 ディック中佐は暫くの間机を叩いていたが、ポールは動揺する事も無く部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レミリアは肌を襲う激痛を感じながら目を覚ました。

 

「......い、痛てて......。」

 

 ぼんやりとした目を凝らすと、自分の肌から湯気らしき物が立ち上っていた。

 

「......はっ、急がないと!」

 

 レミリアは自分が置かれている状況を理解し、急いで木陰に入る。

 

 吸血鬼の弱点の一つは太陽光であり、レミリアの場合は1~2時間程度太陽光を浴びると自身が消滅する。

 

「危なかったわね......そうだ、フラン!」

 

 妹の姿が見当たらない事に気付き、慌てて飛び上がろうとするが思い留まる。

 

 これ以上太陽光を浴びる訳にはいかなかったからだ。

 

 よって、レミリアは太陽光からのダメージを回復する為その場で暫く休む事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1秒に満たない時間でリョウは頭に回し蹴りを受け、トレバーは胸にストレートを喰らい、霊夢は背中を手刀に打たれ、永琳は腹に膝蹴りを喰らい、鈴仙は後頭部に裏拳を受けた。

 

 怯み、吹き飛ばされた5人に向かって1秒に200発のペースで銃弾が発射される。

 

 慌てて避ける5人だが、その連射速度について行けず大量に被弾する事となった。

 

 男がリョウに向かって走り出す。

 

 至近距離から繰り出されたストレートを両腕でどうにか受け止め、背後からトレバーが男へと飛び蹴りを仕掛ける。

 

 トレバーの蹴りを掴んだ男はそのままトレバーをリョウへ投げつける。

 

 咄嗟に飛び上がったリョウは飛ばされたトレバーを避け、上空から降下キックを繰り出す。

 

 男の腕に蹴りを受け止められたリョウはその位置から次々と連続蹴りを繰り出す。

 

 不意に男の上昇アッパーがリョウの頭に決まった。

 

 上昇中の男へとトレバーが跳び上がり、連続パンチを繰り出す。

 

 腕でトレバーの攻撃を受け止め、逸らし、躱し、遂にはトレバーの目の前から男が消えた。

 

 次の瞬間、トレバーは背中に強い衝撃を受け、吹き飛ばされる。

 

「今だ!」

 

 リョウが叫ぶと、リョウ、霊夢、永琳、鈴仙が男を取り囲む4方向から己の全力の弾幕(リョウは銃弾)をありったけ発射した。

 

 男は次々と被弾するも攻撃を耐え、4人に向けて銃を構えた。

 

 引き金を引こうとした寸前、トレバーが籠手の刃を出した状態で拳を上から殴り付けようとしている最中だという事に気付いた。

 

 トレバーの籠手の刃と男の腕がぶつかり合った。

 

 刃は男の腕を斬り裂けず跳ね返されたが、男の腕には大きな切り傷があった。

 

 男から繰り出される上段蹴りをどうにかしゃがんで避け、男の腹へ刃付きの籠手を突き出す。

 

 刃は男の腕に浅く突き刺さり跳ね返され、次の瞬間、トレバーの頭にナックルが決まった。

 

 トレバーを吹き飛ばした男はリョウが自分に向けてエネリオン塊を放っているのに気付き、体ごと避ける。

 

 エネリオン塊は地面へ衝突し、放たれた熱エネルギーは地面の土を爆発によって舞い上げさせ、土煙を作る。

 

 再びトレバーを除く4人が男を囲むようにして全方位から弾幕や銃弾を放つ。

 

 牽制された男の背後から再びトレバーが刃の突き出た籠手でパンチを繰り出す。

 

 男が突然振り向き、トレバーの突き出される腕を掴み取ろうとする。

 

 対するトレバーは腕を引き込め、ローキックを繰り出す。

 

 男は前に宙返りしてキックを躱し、同時に回転を利用して踵落としを繰り出す。

 

 トレバーは男の蹴りが繰り出される前に男の背後に回り、刃の付いた左腕を薙ぐ。

 

 しかし、トレバーの振った刃は男の手に握られ、そのまま動かない。

 

 男は刃を握る手に更に力を込める。

 

 手から血が出て来たがそんな事は男にとってどうでも良い。

 

 バキン!

 

 次の瞬間、乾いた甲高い音と共に刃が折れた。

 

 男は千切り取った刃をトレバーへと叩きつけようとする。

 

 その途中、男は別な方向からリョウが駆け込みながら蹴りを放とうとしているのを確認した。

 

 男がそれに気を取られている隙にトレバーが男の刃を握る腕を掴む。

 

 男はそんな事を気にせずトレバーごと腕を振り回し、リョウへと投げ飛ばす。

 

 リョウはすかさず自分へ飛んで来た刃を躱すが続けて飛んで来るトレバーは避けられず、2人共そのまま地面へ崩れる。

 

「回霊「夢想封印 侘」!」

 

「秘術「天文密葬法」!」

 

「散符「ルナメガロポリス」!」

 

 3方向から男へと向かって発射される弾幕。

 

 しかし、突然吹きつけた衝撃波がそれを一瞬にして打ち消した。

 

 衝撃波は弾幕の無効化だけに留まらず、霊夢達3人と男を一瞬怯ませた。

 

 突然現れたレックスは自身の移動速度に衝撃波を逆噴射させて更にスピードを得て男へと飛び込む。

 

 更にパンチを繰り出す瞬間に拳自体をジェット噴射で加速させる。

 

 男からの相対速度マッハ3を得た拳は男の体の中心に決まり、吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされ、倒れた男は起き上がろうとするも、突如降り出したエネリオン塊の雨に身を打ち付けられた。

 

 上空からエネリオン塊を放った黒い男はそのままエネリオン塊を降らしながら自身も降下し、男へと拳を突き出す。

 

 拳は男の腹に深く決まり、黒い男は距離を取る。

 

 次の瞬間、男が腕を振り上げたかと思うとその腕にカミソリが突き刺さった。

 

 カミソリを突き出したガミジンはカミソリを引き抜き、背後からの追って来たアダムの跳び蹴りを受け止める。

 

 更にはレックスの背中が突然爆発し、黒い男の側頭部にトレバーの蹴りが決まる。

 

 吹き飛ばされた2人はどちらも体勢を整え着地した。

 

「お前らが何を企んでいるかは知らないが、お前の相手は俺だ、「サーファー」。」

 

「良いだろう、「灼熱」よ。」

 

「......お前は誰だ......。」

 

「......。」

 

 次の瞬間、リョウの放ったエネリオン塊とレックスの放った衝撃波が衝突し、トレバーの放った裏拳と黒い男の放った回し蹴りが衝突した。

 

 リョウの上昇アッパーとレックスの降下キックがぶつかり合い、黒い男の放ったエネリオン塊をトレバーの籠手の刃が弾いた。

 

「貴方達は無事だったみたいね。」

 

「そう言うアンタこそ。」

 

 丁度紫達が霊夢達の元へ到着した。

 

「アダム、そっちは大丈夫なの?」

 

 霊夢がガミジンと戦闘中のアダムに声を掛ける。

 

「一人で大丈夫だ。そちらの状況は......」

 

「他人よりも自分の心配をしたらどうだ。」

 

 ガミジンによってアダムの質問が遮られる。

 

 すかさず繰り出されたカミソリをナイフで受け止める。

 

「霊夢、こちらは任せるから向こうを相手してくれ。倒すまで食い止めるだけで良い。」

 

「分かったわ。そちらも気を付けてね。」

 

「敵に隙を見せるとはな。」

 

 ガミジンの上段回し蹴りがアダムの頭に向かって繰り出された。

 

 それをアダムはしゃがみ、同時にガミジンへ下段回し蹴りを繰り出す。

 

 対するガミジンはジャンプして躱し、アダムへカミソリを振り下ろす。

 

 カミソリを左のナイフで受け止め、右のナイフをガミジンの腹へ薙ぐ。

 

 突き出されたナイフを持つ腕を足で受け止め、もう片方の足を頭へ突き出す。

 

 腕で蹴りを受け止め、そのまま次々と繰り出される蹴りを左右に払い除ける。

 

 そして、ガミジンの肘打ちとアダムの膝蹴りが空中で衝突した。

 

 互いに吹き飛ばされ、距離を取る。

 

「で、私達の相手は......。」

 

 来たばかりの紫達は辺りに倒れている魔理沙とアリスを見るなり、身構えた。

 

「相手は威力、速さ、防御全てを兼ね備えているけど、どちらかと言えば近距離戦が主力みたいよ。」

 

「それはどうも。結界「魅力的な四重結界」!」

 

「「反魂蝶 ‐八分咲‐」!」

 

 2人の弾幕が男の周囲を埋め尽くす。

 

 弾幕を難無く避け、上空から降りて来る妖夢に気付き、アッパーカットを決めた。

 

 更に空中から周囲に銃弾をばら撒く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの方向へ3kmだ。分かるかい?」

 

「......いえ、何も......。」

 

 次の瞬間、爆炎が見えたかと思えば爆音が聞こえた。

 

「ひゃあ!」

 

「まあこの距離から認識するには相当な処理能力が必要だからね。僕でも意識を拡散させたままだと感知できない。」

 

 爆音に驚いた早苗と冷静さを保つカイル。

 

 カイルは背負っているライフル型の銃を持ち、スコープを覗く。

 

「どれ......あそこに居るので全員ならあと4人か......あの2人は誰だろう?......少なくともリョウとトレバーとアダムは心配しなくて良さそうだな......ただあの男は......」

 

「あの、一体どんな状況なんですか?」

 

「ああ、ごめんね。簡単に言えば......」

 

 早苗を意識から外していたカイルは早苗に説明し出す。

 

「相手は4人、不確定要素が2人、相手の内3人は問題は無いと思われるが問題は残りの1人だ。見てみるかい?」

 

「あ、はい。」

 

 そう言った早苗はカイルの持つ銃のスコープを覗く。

 

「あの一番背の高い男がそれだ。あの攻撃、スピード、防御、どれも異常なレベルだ。あとの3人は今戦っている僕の仲間で如何にか出来るレベルだから大丈夫だと思うけど......。」

 

「あっ!」

 

 早苗の目に映ったのは男が少女一人をもの凄い勢いで殴り飛ばす光景だ。

 

「僕はこの辺で待って狙撃を試みる事にする。」

 

 カイルはそう言うと再びスコープを覗き直す。

 

「このまま無事に終わってくれると良いんですがね......。」

 

「ああ。」

 

 短く言い返したカイルの右眼はずっと一番問題と言い放った男を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フランは肌を襲う激痛を気にせず起き上がった。

 

「......う、うう......。」

 

 目を開けると少しの間はぼんやりとしていたが、やがて慣れてきた。

 

 しかし、はっきりと見える筈の目は自分の肌から立ち上る湯気らしき物を認識しなかった。

 

 太陽光を浴びすぎて死ぬ事を分かっている筈のフランは立ち上がっても日の光を避けようともしなかった。

 

「......ウ、ウウウ、ウグググ......。」

 

 フランは自分の命が危険に晒されている事も気にせず、空中に飛び上がった。

 

 そして、フランは僅かに残っている理性を総動員し、何処かへと向かって行った。

 




今回一番注目すべきなのはディック中佐とポールのやりとりです。

今後につながるので良く覚えておきましょう。
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