東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
黒い男はトレバーの連撃を次々と避け、同時に反撃する。
トレバーの黒い手袋で覆われた拳は手袋の機能によって威力を増し、黒い男から繰り出される攻撃を巻き込みながら反撃する。
トレバーからのフックをしゃがんで避け、続けて繰り出されるボディブローを受け止め、更に仕掛けられる裏拳を横に移動して避ける。
裏拳を躱され、距離を離した黒い男から移動速度を上乗せした連続パンチが繰り出される。
後退しながら避けていくトレバーだが反撃する暇が与えられない。
男がトレバーへジャブを繰り出すと見せ掛けて防ごうとするトレバーの腕を掴み、腕を引きながら顔面へと裏拳を繰り出す。
繰り出される裏拳を手首を掴んで受け止め、暫くそのまま対峙し合う。
別の場所ではトランセンデンド・マンが吸血鬼を一方的に痛めつけていた。
吸血鬼の方は自分の持っているポテンシャルをフル活用してとにかく強力な攻撃をとにかく大量に浴びせる。
トランセンデンド・マンの方は最低限の動きで攻撃を躱し最低限の動きで反撃を喰らわない様に攻撃する。
(”今”は無理か。「カオス」の方もかなり危うい。作戦2に移すしか無いな。)
漆黒のローブに包まれた男はそう判断すると何処かへと姿を消したが、それに気付く者は居なかった。
そもそも彼がそこに存在している事に気付く者すら幻想郷内には居ない。
男の上段蹴りがフランを吹き飛ばし、吹き飛ばされたフランに男の踵落としが炸裂する。
霊夢、紫、幽々子、永琳がそれぞれ4方向から男を囲む様にして弾幕を連射する。
対する男は銃を周囲に乱射し弾幕を打ち消し、それでも防げない分は躱して補う。
アダムが2丁とも銃を向けながら男へと走って行く。
次の瞬間、アダムのナイフ2本と男の腕2本が正面衝突した。
ナイフは男の皮膚の表面を引っ掻く程度の傷しか与えず、押す側だったアダムが逆に押され始めた。
ナイフをしまい、男の肩に手を置き、反対側へ回る。
アダムの両足キックと男の片腕がぶつかり合った。
受け止めた反動で男が僅かに後ずさりし、次に後ろを向き胸の前に両腕を交差させる。
男の両腕がリョウの放ったエネリオン塊を防ぎ、続けてリョウから秒間100発の勢いで放たれる銃弾の嵐を自身の放つ銃弾で迎え撃つ。
当然秒間200発を誇る男の銃がリョウの放つ銃弾を圧倒し、リョウへと襲い掛かる。
リョウがその場を離れると次の瞬間、横方向から男へと弾幕の嵐が吹き荒れる。
男は弾幕を被弾しながら前進し、弾幕を放つ張本人であるフランに向かって跳び蹴りを放つ。
フランも真正面から鉤爪を突き出す。
しかし、男の身体はフランに届く前に地面に落下した。
着地し、再び跳び上がり、フランの腹へとジャンプアッパーカットが決まる。
「不味いな、フランドールの戦闘力が下がったぞ。」
「トレバーは向こうで頑張ってくれているが加勢に来てくれる前に俺達がやられるかもな......。」
「不吉な事を言うんじゃないわよ、リョウ。」
「私の「死を操る程度の能力」も効かないし......。」
「何か突破口はある筈よ。生物である以上必ず弱点はある筈だから。」
「私の「あらゆる薬を作る程度の能力」で対生物用の化合物を矢先に含ませた矢も放ってみたのだけど、今の所有効な物質は無いわね......。」
アダム達がそれぞれ思った事を口にする中でフランが苦しそうに起き上がっていた。
湯気の吹き出す勢いが増し、それに容赦無く男の放つ銃弾が次々と命中する。
「......そうだわ、吸血鬼の弱点は日光よ!だからあんなに動きが鈍っているんだわ。日光を遮る事が出来れば優勢になるかも知れないけど。」
霊夢がそう言ったが、暫く男の容赦無い攻撃が続いた。
「不味いな、トレバーは良いが、リョウ達が危ない。せめて向こうが隙を見せてくれれば勝機はあるんだが......。」
「あのカイルさん、私ここで何もしないなんて......せめて加勢して少しでも役に立ちたいです。」
「気持ちは分かるけど、君にはもしもの為にここに居てもらっている......ん?」
カイルがスコープを別の対象に向ける。
背中に羽の生えた少女だった。
(......先程よりも大幅にパワーダウンしている......羽にあんなに尖った爪、そしてあの異様に尖った犬歯......幻想郷には神話や架空の生物が居ると聞いた......。)
「カイルさん、どうかしたんですか?」
早苗の質問は答えられなかったが代わりにカイルからの指示が返ってきた。
「......早苗、外の世界で聞いた事があるんだけど君は守矢神社の風祝だね?」
「え、ええ。」
「噂によれば守矢神社の風祝は奇跡や天候を操ると聞いた事がある。今すぐあそこの戦闘中のエリアを曇りに出来るかい?雨では無く曇りだ。」
「曇りですか?多少時間は掛かると思いますけど、あの辺りだけなら出来ます。」
早苗の頭には疑問が残っているが、カイルの言葉を信じた早苗はその場で正座し、冥想し始めた。
すると、アダム達が戦っている辺りの上空が曇り始めた。
「こんな時に限って曇り始めたなんて不吉ね。」
辺りの雲は短時間でアダム達のいる上空を覆った。
「いや、霊夢、あれを見て。」
紫がそう言い、霊夢が見た先にはフランの姿があった。
湯気の立ちのぼるペースが収まり、やがて湯気は出なくなった。
そして異様に輝いていた目は人間らしさを取り戻し、見た目もある程度脱力した様に見えた。
「......あれ?ここどこ?」
先程までの凶暴さを感じさせない無邪気な台詞だった。
「貴方レミリアの妹だったわよね。」
「フランドールよ。お姉ちゃんは確か......。」
「霊夢よ。貴方のお姉さんが異変を起こした時に来ていたでしょ?それで、今はあの男に全力で攻撃して。」
霊夢が男を指差す。
「え?壊して良いの?」
「そう、思いっきりやりなさい。でも私達は巻き込まないよう......」
霊夢が言い終える前にフランが飛び上がった。
「話ぐらい聞きなさいよ!」
「だが暴走していた時に比べて戦闘力が下がったとはいえこちらが勝てる可能性はあるぞ。」
アダムが霊夢を宥め、2人もそれぞれ銃と札を構えた。
「やったわね。あとリョウ、貴方の2人の仲間は大丈夫なのかしら?」
「トレバーはあんなヤローには負けねえさ。カイルは......あいつの事だから何か考えがあってここに来ていないのかもな。少なくともあの2人を心配する必要はないさ。」
紫の質問の答えは安心できるものだったが、紫は心の何処かに不安を覚えていた。
(何故かしら......。)
少なくとも紫は1つの勘違いをしているがそんな事には気付かなかった。
トレバーの次々と繰り出される攻撃は黒い男の腕によって次々と受け止められる。
トレバーのストレートを1歩下がって避け、1歩踏み出し裏拳を放つ。
体を前進させ同時に傾けながら横に裏拳を避け、黒い男の顔面にパンチを決めた。
黒い男は怯んだ気配を見せず、続けて手刀を連続して繰り出し始めた。
エネリオンで強化された籠手で次々と受け止めるが、その度に鈍い金属音が鳴り響く。
黒い男の手刀が腹を掠めると斬り傷が出来上がった。
それを機に黒い男が攻撃のペースを上げた。
猛烈な連撃を最大のスピードで躱していくが間に合わない。
次の瞬間、黒い男の手刀が空を切った。
黒い男の股を潜り抜け背後を取ったトレバーは勢い良く蹴り飛ばした。
黒い男は成す術も無く吹き飛ばされ、軌道上にあった大木に衝突し、砕く。
大木を折り、地面に倒れた黒い男の胸は次の瞬間、トレバーの籠手の刃が貫いた。
しかし、トレバーは何か違和感を感じ取っていた。
(......妙だ、どんな人間でも殺す時に感じる筈の抵抗が無い......今まであれ程の防御力があったのに何故だ?)
それは彼が自身のその刃で数々の敵を葬った「死神」であるからこそ感じ取れる違和感だった。
突然、トレバーの目には黒い男からエネリオンが発散する光景が映った。
黒い男の姿が消え、刃が地面に突き刺さる。
残ったのは直径10cmの真っ黒な球体だった。
トレバーはある事に気付いた。
エネリオンが球体に向けて吸収されて、いや、球体がエネリオンを吸収している。
通常エネリオンを吸収できるのは生物とユニバーシウムのみである。
更にその球体からは知性の様な物を感じた。
(......待てよ?......光を全く反射させない黒色、エネリオンを吸収し、知能を持つ......まさか!......)
トレバーの推測が結論を生み出す前にその思考は背中に衝撃を感じた事によって中断された。
吹き飛ばされ、倒れた所で振り向くと友人の姿を認めた。
「いちち......よお、奴の姿が見当たらないって事は片付けた様だな。」
「......リョウ、奴は......」
頭上から降り注ぐ銃弾によって会話が中止された。
落下して蹴りを仕掛けて来る男を躱し、リョウは上段へ蹴りを、トレバーは下段へ手刀を繰り出す。
両方とも男の身体を捉えたがダメージを与えた手応えが無い。
次の瞬間、男の胴体に先端にナイフの付いたロープが巻き付き、リョウ達は後方へ退く。
霊夢達の弾幕が前方180度から襲い掛かり、アダムは男の体に巻き付いたロープを引っ張った。
引っ張った反動で自分が突撃するが、跳び蹴りは男の腕に阻まれた。
アダムが男の腕を蹴り、反動で離れると同時にロープを巻き戻す。
リョウとトレバーの滅多打ちが両側面から次々と浴びせれる。
「結界「生と死の境界」!」
「桜花「未練未酌宴」!」
続けて紫と幽々子の弾幕が男の周囲360度を埋め尽くす。
牽制された男は霊夢と永琳が仕掛けて来る行動に気付かなかった。
霊夢が目を瞑り、永琳が弓を引く。
永琳の引っ張る矢が放たれたと同時に霊夢が目を見開く。
霊夢の繰り出した結界は男を1秒に満たない間にしか行動不能に追い込めなかったが、その間に矢は男の左肩に突き刺さった。
(毒が駄目なら細菌よ。)
先端に付いているのは有機物を分解する細菌と最近の活動を異常に活性化させる薬剤。
結界を破り、男は矢を取ろうとするが、男の足元に巻き付いたロープが引っ張られてバランスを崩し、結果矢は更に深く突き刺さった。
男の肩に深く突き刺さった細菌は薬剤により活性化され、男を構成するたんぱく質、炭水化物、脂質、等次々と水、二酸化炭素、アンモニアへと変えていく。
男の免疫機能が高かったのか細菌の活動はすぐに収まったが男を弱体化させるには十分だった。
ロープを引っ張ったアダムは反動で突進し、男の肩へとナイフを突き出す。
男が振り向き、ナイフを正面から受け止める。
それでも後方からのトレバーの刃を防ぐ事は出来ず、刃は右腕に深く突き刺さる。
だが、男は痛みなど無いかの様に刃ごとトレバーを持ち上げる。
アダムが阻止しようとするも男の左腕に阻まれ、吹き飛ばされた。
(......左腕?)
男の壊死同然だった左肩は何時の間にか治っていた。
「禁忌「レーヴァテイン」!」
フランの両手に握られた大剣は男を斬り裂くつもりだった。
が、男がトレバーを盾代わりにして大剣を防いだ。
フランの脳裏には味方に当ててしまったという罪悪感。
その隙に男が銃弾を大量にヒットさせる。
トレバーは力を振り絞り刃を引き抜き、今度は頭に向けて突き出す。
次の瞬間、刃が砕け散った。
男の拳は刃を粉砕するに留まらずトレバーを気絶させた。
力無く倒れたトレバーを片手で持ち上げ、拳を握る。
不意にトレバーから男へ腕が伸びた。
しかしトレバーの拳は男に何も与えず、代わりに男の拳はトレバーの腹に衝突し大きなダメージを与えた。
その時だった。
男が突然横に大きく動いた。
男に蹴り飛ばされたトレバーの腹を1発の銃弾が貫いた。
男は銃弾の来た方向を即座に判断し、そこへと駆け込んで行った。
(......皆に伝えなくては......。)
トレバーは一人そんな事を考えていた。
カイルはまだスコープから目を離していない。
(やはりあの少女は吸血鬼だったというのは正しかったか。だが判断は良かったがまだまだ倒せない......。)
そして、カイルはスコープ越しに友人が持ち上げられ、男から容赦無い一撃が襲ったのを見た。
(トレバー!仕方ない、今だ。)
照準を男に合わせ、引き金を引く。
銃口から自身のエネリオン吸収量10秒分の銃弾が音速の10倍で発射された。
不意にスコープ越しに見える男の身体が横に動いた。
トレバーは蹴り飛ばされ、銃弾の軌道上に吹き飛ばされた。
(しまった!)
カイルの後悔と同時に銃弾がトレバーの腹部を貫通する。
男はカイルの方へと駆け込んで行く。
「不味い、相手がこちらに気付いて向かって来た!」
早苗にそう伝えると同時にエネリオンを銃に溜め始める。
「大奇跡「八坂の神風」!」
早苗がスペルカードを唱えると迫り来る男へと向かい風が吹き荒れ、同時に弾幕も襲い掛かる。
男は冷静に銃で弾幕を打ち消しながらペースを変えずに2kmの距離を縮めていく。
(リョウ達も向かってきているが間に合わない......僕が仕留めるしかないが上手くいくか......。)