東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
カイル達3人はアダムを視界に捉えた。
離れた所では霊夢と魔理沙が身構え、神奈子と他2人の少女が気絶しており、サムとレックスとトレバーが、いや、そしてアダムが霊夢達を囲んでいる。
「あの倒れているのって神奈子様じゃないですか!あれってトレバーさんじゃないですか?」
「アダムもまるで霊夢達に敵対している様に見えるぞ。」
3人は物陰に隠れ、早苗と慧音はひそひそ声で喋ったつもりだったのだが、霊夢達を囲む4人が一斉に同じ方向を振り向いた。
(そんな、気付かれた?!)
カイルはそう思うと目を瞑った。
中心に霊夢と魔理沙、それを囲むサム、レックス、トレバー、アダム......
突然、カイルは誰も居ない筈の場所からエネリオンが放出されたのを感知した。
放出されたエネリオンは4人へと真っ直ぐに届いている。
(通信か。では発信地点は......)
神経を研ぎ澄まし、エネリオンの放たれる正確な座標を見出した。
(そこだ!)
アダムの後方1mに奴は居た。
カイルは直感を頼りに銃を目標に定め、引き金を引く。
銃弾は”何か”に防がれた。
“何か”はカイルに接近した。
次の瞬間、カイルの両腕が”何か”を防いだ。
しかし、”何か”はカイルの顔面に衝撃を与え、後方に吹き飛ばし岩壁に叩きつけた。
「......トレバー、一体何が......。」
次の瞬間、早苗が突如発生した轟音に吹き飛ばされ、慧音が突如吹き付けた突風に吹き飛ばされた。
そうしてカイル達3人はトレバー達3人に囲まれた。
「トレバーさん一体どうしたんでしょう......。」
「少なくとも私達の味方をしてくれそうでは無いな。」
「しかも以前より実力を増している。応援を......」
カイルはポケットから通信機を取り出し、「応援を呼ぼう」と言い終わる寸前、電光が走った。
電光はカイルが取り出した通信機に命中し、通信機は爆発した。
「......ここからでは地上にテレパシーは通じない......。」
奥を見ると漆黒のローブを着ている男がこちらに手を向けていた。
ローブの男は後ろを振り向くと更に奥へと行き、姿を消した。
一方霊夢と魔理沙は、
「アダム、止めて!」
「何やっているんだよアダム!私達は仲間じゃないか!」
銃を自分達に向けて乱射するアダムへと説得を試みていた。
しかしアダムは銃を霊夢達へ撃ち続ける。
霊夢は10m以下の近距離での戦闘はまだ慣れていないし、魔理沙に至っては霊夢以下だ。
だからこの距離で発射される音速の5倍を誇る銃弾を躱す事は2人にとって1発だけでも苦労する。
その為避けようとしてもどこかしら銃弾がヒットする始末である。
霊夢達も弾幕で応戦するが、近距離戦に慣れているアダムにとっては大量だが音速にも満たない弾幕を立て続けに躱す事など容易かった。
アダムが銃をしまい接近する。
魔理沙はアダムの連続回し蹴りを如何にか避けるが、不意に足元へ衝撃を感じた瞬間地面に倒れた。
魔理沙を下段回し蹴りで転ばしたアダムは更に踵落としを決め、今度は霊夢へと接近する。
次々と繰り出されるジャブを胸の前に腕を掲げ防ぐ霊夢だが、突然頬に強い衝撃を感じた。
霊夢の顔面にフックを決め、倒れた2人へと銃弾を浴びせる。
倒れている2人は慌てて起き上がって避けようとするが数発喰らう。
ダメージを受けながらも距離を取り、得意な遠距離攻撃を仕掛けるがアダムはたちまち距離を詰め、2人は得意なポジションに立てない。
霊夢が札を、魔理沙が八卦炉を取り出し、魔理沙が両手に八卦炉を掲げ、アダムへと大口径低威力のレーザーを大量に放った。
しかし、どうという事無いかの様に避けるアダムだったが、アダムは霊夢が自分へとずっと開いた手を向けている事に気付いた。
何時の間にかアダムの周囲を大量の札が囲んでいた。
霊夢が広げていた手をグッ、と握ると札が全てアダムへ向かって飛んで行った。
アダムはナイフを手にした。
前方へ身を投げ出すと迫り来る札をナイフで一閃し、そこに出来た僅かな隙間を潜って札のドームから抜け出した。
後方では札同士がぶつかり合い爆発した。
魔理沙は一瞬だけその爆発に気を取られていたが、その一瞬にアダムは自分の目の前1mにまで接近していた。
アダムは両足で魔理沙の首を挟み、水平蹴りを放つ様に体を回転させ、魔理沙を投げ飛ばした。
投げる反動で今度は霊夢へと接近する。
霊夢はアダムから繰り出される連続蹴りを躱し、一瞬の隙を狙ってお祓い棒を突き出した。
しかし、霊夢はお祓い棒がアダムへ届く前にアダムのストレートを喰らい、吹き飛ばされた。
「お願いだからやめて......貴方も望んでない筈よ.....。」
次の瞬間、アダムの容赦無い蹴りが霊夢を襲った。
リョウと勇儀の連続攻撃同士がぶつかり合い、互いを打ち消し合う。
1発ごとに衝撃波が発生し、周囲に轟音を響かせる。
リョウのボディブローが勇儀の腹を捉えた。
続けて肘を振り上げる。
リョウからの肘打ちを片手で受け止め、がら空きの腹へもう片方の手でストレートを繰り出す。
勇儀からのパンチを腕で受け止め、上段回し蹴りを繰り出す。
回し蹴りをガードせず首で受け止めた勇儀はリョウの足を掴み、地面へ叩きつける。
倒れたリョウへ更に拳を叩きつけようとする勇儀だが、リョウの下段蹴りが先に決まり、バランスを崩した。
そのままリョウの全体重を込めたタックルが決まり、勇儀は後ろの壁に叩きつけられた。
勇儀は起き上がるとスペルカードを唱えた。
「鬼符「怪力乱神」!」
大型の光弾が出現すると、たちまち大量の小粒弾に分解され、リョウへと向かう。
リョウは反射的に銃を手に取ると銃から1秒に100発のペースで銃弾を吐き出し、向かって来る弾幕をかき消す。
銃はリョウの思念波を受け取ると今度は1秒に4発という遅いが高威力の銃弾を放ち始めた。
勇儀は距離を取り、スペルカードを唱える。
「力業「大江山颪」!」
発射された大量の大玉は速さこそ無いが威力は格別高く、銃弾を巻き込みながらリョウへと襲い掛かる。
リョウは銃の連射速度を1秒に100発に変更し、前進しながら次々と弾幕を避ける。
体を捻り、同時に引き金を引く。
勇儀も銃弾を躱し、後ろへと退く。
しかし、勇儀の弾幕は高威力高連射だが低速な為リョウには簡単に避けられるが、リョウの銃弾は低威力高連射だが高速な為勇儀は避けるのに苦労する。
結果2人の距離は縮まり、リョウの飛び蹴りが勇儀の中段に炸裂した。
吹き飛ばされた勇儀は着地と同時に地面を蹴り、リョウへと突撃しながら拳を放つ。
リョウの上段を狙った駆け込みストレートは、リョウが体を後ろに逸らした事で不発に終わった。
リョウはその体勢のまま地面を蹴り、反動で体を回転させサマーソルトキックを決めた。
勇儀は吹き飛ばされたが綺麗に地面に着地し、リョウは体を1回転させ終えて着地する。
「強いなあんた。少なくとも私はこれ程の実力の奴と戦った事は無いぞ。」
勇儀が感嘆を漏らす。
「そっちこそ、あれだけ攻撃を喰らって全然平気みたいじゃねえか。」
リョウも驚いた様な声で言う。
「凄いなあ、力では私以上の勇儀を押しているなんて。」
萃香も驚きの声を上げる。
「どうだお前ら、これが俺の実力......」
リョウはカイル達に言ったつもりだが、そのカイル達は姿を消していた。
「......カイルの奴無視しやがって。アイツの事だから何か理由があるんだろうが......まあ良い、さっさと続けようぜ!」
「臨む所さ!」
幽々子達の居る白玉楼では穏やかな時が流れていた。
「ついこの前までは命のやりとりをしていたというのに今は何もやる事無くて暇ね~。」
「幽々子、貴方は幽霊だから命なんて関係無いでしょ。でも私はまだ何か気に掛かる事があるのだけど......。」
「考え過ぎよ紫。貴方はもっと気楽に生きた方が良いわよ。何か起こらないかしら。例えば私が悪者に襲われてそれを素敵な人が早撃ちで助けてくれるの。そのあと私とその人は荒野に沈む夕日を見ながら2人きりで......」
「早撃ちとか荒野って西部劇じゃないんだから......しかも安っぽいストーリーね......少なくとも死体が消えた事とあのローブの男に関してはまだ腑に落ちないわ。貴方はもう少し物事を深く考える癖を付けると良いと思うわ。」
白玉楼の縁側ではそんな会話が繰り広げられていた。
そして白玉楼の下界に通じる階段の一番上に立っている妖夢は下から上って来る人影を察知していた。
(......凄い速さでここに来る......一体?)
そして上り来る姿がはっきりと見え出した。
2人共迷彩柄の軍服に身を包んでいるが武器を持っていない。
胸にはEMOの文字だ。
(敵?)
妖夢が反射的に2本の刀を持つ。
すると2人の内片方の金髪の男が妖夢へと手を向けた。
その掌から何かが放出された、様に妖夢には見えた。
何かが妖夢へ向かってくる前にもう片方の黒髪の男が妖夢の前にまで距離を縮め、片腕を振り出している最中だった。
反射的に刀を目の前に翳す妖夢。
ガキン!
黒髪の男の腕と妖夢の刀が衝突し合った音だ。
男の腕は鋭い刀に触れても切られず、それどころか妖夢を押していた。
1歩引いて地面を蹴り、勢い良く刀を突き出す。
男が横へと体を動かし、避ける。
その瞬間、妖夢は何かに引っ張られる感覚を覚えた。
(あの時の!)
金髪の男が最初に妖夢へ向けた掌からはエネリオンが放たれ、そのエネリオンは当たった対象物へ力学エネルギーを与えたのだ。
妖夢は前方へと身を投げ出そうとしており、衝突したエネリオンは発射方向に対して後ろ、つまり妖夢に対して前方向に加速させる為、結果前に跳び過ぎた妖夢は反対側へと吹き飛ばされた。
「うわあああああ!!!!!」
妖夢から間抜けな悲鳴が聞こえてくるが男達は気にも留めない。
2人の男は難無く門と見張りを突破した。
妖夢の間抜けた声が外から聞こえた2人はその方向を見る。
「妖夢?一体どうしたのかしら?」
「藍、橙、出て来なさい。」
幽々子の素朴な疑問に対して、紫は真剣な顔つきで部下を呼ぶと何処からか藍と橙が現れた。
紫は立ち上がると幽々子も釣られる様にして立ち上がった。
「何が起こったというの?」
「分からない。でも不吉な予感がするわ。」
その時だった。
突如後ろにある桜の大木が輝き始めたと思うと何かを吸収し始めた。
「西行妖が!まさか、勝手に春を吸い取っている?!」
「違うわ。吸い取っているのは......恐らくエネリオンそのものね。」
「でも何故......」
「危ないっ!伏せて下さい!」
不意に藍が叫ぶと他の3人はそれに従って伏せた。
突如壁に細いが強い剣で斬った様な斬撃線が現れたかと思うと白玉楼が崩れ出した。
慌てて外に出た紫達は埋まってしまう事から逃れられたが、
「......藍、橙、お客さんが来たわ。思い切り歓迎してあげなさい......。」
外に出て確認した2人の男の胸に書かれたEMOの文字を見るなり顔を顰めた。
男達の内金髪の男は地面に手を向け、もう片方の黒髪の男は腕を居合斬りの様に体の後ろに回した。
金髪の男が向けた地面から突然石畳が砕け剥がれたと思うと、その破片は紫達へ一直線に向かって行った。
腕を目の前に掲げて破片を防ごうとする紫達だったが、黒髪の男が後ろに回した腕を勢い良く前に薙いだ。
紫は黒髪の男が薙いだ指先からエネリオンが放出されている事に気付き、
「かがんで!」
皆へ警告すると同時にしゃがむ。
他の皆もエネリオンを躱す事は出来たが、
「......うそ......。」
細い桜の若木が数本切り落ちていた。
「あの黒髪の男は切断、金髪の男は念動力ね。」
幽々子が西行妖を見ると、人の形をした物があった。
それは手の形をした物を西行妖に当てており、まるで西行妖を操っている様に見える。
「あれってあの時のローブの男から変化した奴じゃない?」
「いや、そもそも人じゃないわ。どうやら私達は勘違いしていたみたいね。」
紫は呆気無く幽々子の考えを否定した。
「どういう事?」
「あの男、いや、”あれ”は......」
紫は納得したかの様に言った。
「エネリオンよ。ローブの男はあの時変身に見せ掛けてこれを置いて逃げたのよ。」
地霊殿始まって初っ端から情報量が多くて混乱している方も多いと思いますが、じき分かるのでご安心を