東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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高校の文化祭や体育祭で投稿が遅れました...

でも失踪はしませんので...たぶん...


62 感情

「俺はレックスをやるぜ。慧音、手伝ってくれ。」

 

「私達はあのトレバーという男でも相手にするよ。萃香も頼むぞ。」

 

「じゃあ僕達はサムか。早苗、気を付けて。」

 

 レックスがリョウに手を向け、同時にリョウもレックスに手を向ける。

 

 レックスの周辺から熱湯が噴き出してリョウへ向かって行き、リョウの掌からエネリオンのビームが発射された。

 

 ウォータージェットとエネリオンビームが衝突し合い、膨大な量の水蒸気が発生する。

 

 水蒸気の圧力はウォータージェットとエネリオンビームを後方へ吹き飛ばし、2人を怯ませる。

 

 怯んだレックスへ慧音が弾幕を放つが、弾幕は衝撃波に押しのけられ、慧音を吹き飛ばした。

 

 正面からリョウが突進し、ナックルを仕掛ける。

 

 リョウのナックルは腕に阻まれ、レックスからカウンターの突風で加速されたストレートが放たれる。

 

 レックスのストレートを何とか掴み取り、そのまま離さない。

 

 気付けばリョウのパンチを防いだ腕も掴まれていた。

 

 急に焼ける様な痛みを感じると、レックスは両腕を引き離そうとするが離れない。

 

「慧音、俺は構わないからやれ!」

 

「......分かった。葵符「水戸の光圀」!」

 

 慧音は少し躊躇ったがリョウの言われる通りリョウに固定されているレックスに向かってスペルカードを唱える。

 

 レックスは膝蹴りを繰り出し、リョウから無理矢理抜け出す。

 

 2人共弾幕を躱し、リョウの強引な作戦は不発に終わる。

 

 それでもリョウがレックスの腕を掴んだ部分には火傷痕が残っており、幾らかダメージにはなっていた。

 

「俺の能力とは相性があまり良くないな......せめてあのスピードを潰せれば如何にかなるかも知れんが......。」

 

 カイルと早苗はサムを相手に悩まされていた。

 

 カイルは遠距離からの狙撃支援攻撃を得意とするが、狭い地底では距離が上手く取れない。

 

 早苗は速度を犠牲にした高威力の攻撃を得意とするが、サムのスピードに翻弄される。

 

 カイルの音速の10倍を誇る銃弾や早苗の大量の弾幕を躱し、空気や地面を伝う衝撃波で着実にダメージを与える。

 

(なら、専門外だけど......。)

 

 カイルは銃を構えながらサムへと接近し、サムもそれに釣られる様にカイルへと突進する。

 

 カイルが引き金を引いて銃弾を連発し、サムが拳を連続して突き出し衝撃波を放つ。

 

 互いに接近するので体感速度が増し、サムから見た銃弾は音速の12倍、カイルから見た衝撃波は音速の3倍もの速さになっていた。

 

 互いに己の身体を総動員して躱そうとするが、カイルは避け切ったものの、サムは何発も被弾した。

 

 しかし、銃弾のダメージを耐えるサムは自分の放った衝撃波に念を送る様に視線を送った。

 

 衝撃波がカイルを外すルートから突然カイルへとヒットするルートへ変わった。

 

 体を捻って躱そうとするカイルだが避け切れずに吹き飛ばされる。

 

 次の瞬間、サムが後ろを振り向いたと思うと早苗が手を向けていた。

 

 早苗から衝撃波が放たれると同時にサムが手を向ける。

 

 早苗は自分の放った衝撃波によって簡単に弾き飛ばされた。

 

 突然、サムは体を大きく横に動かすと脇腹に強い衝撃を受けた。

 

 見るとカイルが銃口を向けており、更に銃口から大量のエネリオン弾が発射されていた。

 

 更に反対側からも早苗の放った弾幕が襲い掛かる。

 

 サムは双方へと地面を叩き、衝撃波を放ち、そして姿を消した。

 

 方向性を与えられた地面を伝う衝撃波は直撃には至らなかったが2人の動きを抑制し、進行方向へと広がる空気を伝う衝撃波は迫り来る攻撃をかき消した。

 

『上空に逃げるんだ。』

 

 カイルからの警告を聞いた早苗は言われた通りに上空へ飛び上がり、突如自分の立っていた地面が陥没した。

 

 早苗が上空から弾幕の雨を降らし、後方からカイルから銃弾が襲い掛かる。

 

 すると地面を叩く衝撃が2回鳴った。

 

『しまった、壁から来る!』

 

 1回目の衝撃で発生した衝撃波が壁の様に地面から吹き上がり、銃弾を防いだ。

 

 2回目の衝撃で早苗が浮遊している横の壁がめくれ上がり、衝撃に早苗は吹き飛ばされた。

 

 突然、カイルは銃をしまい腕を胸の前に掲げた。

 

 見えないが、誰かが殴った手応え。

 

 素早く腕を上下左右に動かしては腕に押される衝撃を感じる。

 

 急にカイルが後方へ跳び上がったと思うと地鳴りが起こり、カイルが立っていた場所が衝撃で吹き荒れた。

 

「これでは得意な戦況が作れないな......太陽光が無いのがせめてもの救いだけど、別の方法を探そうか。」

 

 一方、トレバーは勇儀と萃香を相手にする中で確実に追い詰めていた。

 

 トレバーの左右から繰り出される強い拳の嵐。

 

 それをトレバーは最低限の力と最低限の動きで全てを躱し、2人に「当たらない」というプレッシャーを与える。

 

 今度はトレバーの連続拳撃が左右へと放たれる。

 

 腕を揺らして防御する2人だが数発避け切れずに当たった。

 

 反撃に萃香がストレートを勇儀が上段蹴りを放つが、トレバーは動きを知っているかのように体勢を低くして避ける。

 

 トレバーはそのまま腕で体を支え、両足を伸ばし、両足下段回転蹴りを2人に決めた。

 

 そのまま立ち上がったトレバーは軽く跳び上がり、バランスを崩した2人に旋風脚を決めた。

 

 互いに反対方向へ吹き飛ばされた2人はスペルカードを唱える。

 

「光鬼「金剛螺旋」!」

 

「鬼火「超高密度燐禍術」!」

 

 しかし、トレバーは避ける動作も見せずその場に立っていた”様に見えた”。

 

 左右からの弾幕に被弾したかと思うとトレバーの姿は周囲に拡散するように消えた。

 

 不意に勇儀の目の前にトレバーが現れたかと思うと勇儀にナックル、跳び蹴りを決め、蹴りの反動で萃香へと接近する。

 

 萃香は霧状になって回避して背後を取り、パンチを繰り出す。

 

 トレバーが振り返って力とエネリオンを込めたパンチを繰り出す。

 

 2人のパンチがぶつかり合った。

 

 萃香は骨が砕ける様な痛みを”感じ”、怯んだ瞬間、トレバーの蹴りが側頭部に炸裂していた。

 

 吹き飛ばされる萃香の背後から勇儀が飛び出したかと思うと連続攻撃を掛ける。

 

 対するトレバーは無表情で攻撃を捌き続け、同時に一瞬の接触時間に合わせて勇儀へとエネリオンを送り込む。

 

 勇儀は自分の攻撃のスピードが落ちている事にふと気付いた。

 

 何時の間にか疲労を”感じ”、力が入らなくなっていた。

 

 トレバーのアッパーが勇儀の顎に炸裂し、背後から跳び蹴りを繰り出す最中の萃香に向かって蹴りを放つ。

 

 トレバーと萃香が接触しようという直前、萃香が霧状に拡散し、同時にトレバーの着地した地面が消えた”様に見えた”。

 

 不意の出来事にトレバーはバランスを崩す。

 

「私の能力に引っかかったね!今だ!」

 

「分かってるよ!」

 

 バランスを崩したトレバーに接近する2体の鬼は打撃の嵐を放つ。

 

 それでもトレバーは確実に攻撃を防ぎ、勇儀の踵落としを左腕で掴み、反対側からパンチを仕掛けている最中の萃香へと投げ飛ばす。

 

 ぶつかって怯んだ2人へと駆け込みストレートが決まり、エネリオン塊を2発放つ。

 

 慌てて避けようとする2人だが、勇儀は右肩に、萃香は左足に被弾し、それぞれ被弾部分に穴が穿つ様な激痛のあまり倒れ込んだ。

 

「凄い速さだなあ、私の「密度を操る程度の能力」で地面を拡散させても効かなかったし。」

 

「幻痛や幻覚も厄介だね......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少年の目の前には何らかの観測装置の様な物がある。

 

 隣にはもう1人の少年。

 

 部屋のガラス窓からこちらを見ている観測機器らしき物を操作している大人達。

 

 少年はそれに手を置いた。

 

 やりたいからでは無い。

 

 少年はガラス越しに見ている中の1人の大人に強制されたのだ。

 

 本当はこんな訳の分からない事をされるよりも自分で勝手に気ままに生きたい。

 

 安全で狭い檻の中よりも危険で広い自然に居たい。

 

 少年はそんな野生動物が無理矢理人間に連れて行かれたのと同じ様な心境だった。

 

 このままではいずれ動物と同じ様に飼い慣らされてしまう。

 

 そんな強い意志が少年の才能を開花させた。

 

「ほう、凄い数値だ。」

 

「ですね。後は彼が反抗しなければ文句は無いのですが......。」

 

「次はマルクだな。」

 

 隣に居た少年が装置に手を置いた。

 

 彼は少年を敵を見る様な目付きで睨むと手に力を込めた。

 

「凄い、アダムと同等だ。2人共これ程の力があるとは予想外だ。」

 

 少年達と観測者達を阻むガラスは特殊強化されていて防弾・防刃・防音機能があるといっても音波を完全にシャットアウトする事は出来ない。

 

 隣の少年はその言葉が聞こえるなり顔を顰めた。

 

「2人共この年齢にしてこの数値があるからにはエクストラになる可能性もありますね。」

 

「惜しいのは、アダムは命令に従わないのと、マルクは感情を爆発させやすい事だ。それに2人の仲も悪い様だしな。」

 

 マルクと言われた少年は隣のアダムと言われた少年を敵意丸出しの目で睨み、地面を蹴った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界に居たくない。

 

 消えたい。

 

 誰も僕に構わないでくれ。

 

 才能なんか欲しくなかった。

 

 命令も欲しくない。

 

 誰かに愛された事など無かった。

 

 常に誰かに利用され、騙され、憎まれ続けてきた。

 

 人が嫌いになった。

 

 逃げたい。

 

 自殺しようとも思った事もあった。

 

 でも逃げられない。

 

 自殺させられない。

 

 操り人形にされた。

 

 気が付いたら何時の間にか異世界に居た。

 

 ある少女と出会った。

 

 彼女は僕を受け入れてくれた。

 

 彼女と居ると幸せだった。

 

 彼女も同じ様に幸せそうだった。

 

 初めて愛されたと感じた。

 

 誰も僕を利用せず、騙さず、憎まれなかった。

 

 その内、僕は何か不安定な感情を感じる様になった。

 

 僕はその感情が何なのかは良く分からないけど、少し分かる部分はある。

 

 彼女を守りたいと思った。

 

「霊夢!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アダムの目の前には少女が倒れており、自分はそれに向かってナイフを高々と上げている状況だった。

 

 離れた所では別の少女が横たわっている。

 

 信頼していた者に裏切られた様な表情を浮かべた、今にも泣きそうな少女の顔を見ると、手の力が抜け、ナイフを地面へ落とした。

 

「......戻って来た。」

 

「......遅いわよ!心配したじゃないの!」

 

「......遅いじゃないかアダム......アクション漫画の主人公じゃないんだからさ......。」

 

 霊夢はとうとう涙を流し出した。

 

 魔理沙も嬉しそうに笑みを浮かべている。

 

「ありがとう、霊夢。君が居なかったら僕は戻れなかったかも知れない。感情はやはり人類に必要だ。不安定だからこそ必要なんだ。」

 

 そう言ったアダムは横を振り向く。

 

 霊夢がその視線を辿っても何も見えなかった。

 

『つまりお前は破滅を選ぶつもりか。』

 

「破滅なんかじゃない。僕がやるべきだと思った事だ。」

 

『だがお前にはチップが埋められているし、私の能力もある。』

 

 突然、アダムは頭痛に襲われた。

 

 視界が歪む。

 

 霊夢が何か叫んでいる。

 

(待てよ、チップ?)

 

 何時しか見た夢を思い出していた。

 

 シリンダーから何処かに連れて来られ、首の後ろに何かを埋め込まれた。

 

 アダムは首の後ろに手をやると、つねり始めた。

 

 何かが皮膚を突き破る感触がしたのと同時にそれを指先で掴み取る。

 

 少量ながら血が吹き出し、痛みも感じたが気にしてはいられない。

 

 目の前に出したそれは直径2cm程のコンピューターチップだった。

 

 頭痛はある程度収まったがまだ消えてはいない。

 

(奴の能力か。)

 

 操られるものか。

 

 強い感情は何かを押し出す感覚を覚えた。

 

 同時に何かが自分の中にも流れて来る様な感覚を覚えた。

 

 幽々子に紫、妖夢に藍に橙、アガレスとガミジン、そして黒い男。

 

 更に桜の大木が見えた気がした。

 

 あれ程巨大な大木は一度だけある場所で見た事があった。

 

(冥界か。)「2人共、立てるか?」

 

「私は大丈夫よ。」

 

「何とか......。」

 

「付いて来てくれ。冥界で何かが起こっている。」

 

「何かって?」

 

「良くは分からないが悪い予感がする。」

 

 アダムはそう言いながら走り始め、それを追う2人。




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