東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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何か風神録と地霊殿のアダム君の活躍が少なくて自分でも物足りなく思う所があります...

まあその分カイル君の活躍を多くしたかったってのもありますけど


69 願望

「カイルさん、どうすれば......。」

 

 早苗が絶望感を覚えたのか、そして安心感を求める為なのか何故かカイルに問い掛けた。

 

「......僕も分からない。相手の正体や能力や性質が分からない以上は何が有効で何が不具合かも分からない......ただ今はそれを知らなければならない。」

 

 カイルの答えに対し早苗の表情は不安によって動揺が走った。

 

 何せ仲間であり、”操作されている”筈のレックスであっても動揺しているのだ。

 

 その男がレックスに向かって右手を差し出し、エネリオンの噴流が発射される。

 

 レックスが左手を突き出し、水の壁を建築してエネリオンを防ぐ。

 

 エネリオンの噴流が壁を水素と酸素に”分け”、その威力は留まらずエネリオンはレックスに吹き付ける。

 

 酸素、水素、炭素、窒素、カルシウム、鉄、リン、その他微量な物質。

 

 レックスの身体はそれらに”分けられた”。

 

 常温で気体の元素は周囲に拡散した。

 

 圧力によってリンやナトリウムやカルシウムが自然発火し、酸素、水素、炭素が反応して僅かばかりの火が発生した。

 

 やがてその火も消え、後に残るのはほんの少しの人体を構成する常温で固体の元素の塵。

 

 カイルはエネリオンが作用した様子を”見る”事で何が起こったのかを知った。

 

(分子構造を”破壊”したのか?!何てエネルギーなんだ!)

 

 カイルが無言の驚愕を上げた。

 

「......。」『何故逆らった!「サーファー」への攻撃などという命令は与えていない!少なくともお前は私に完全にコントロールされている筈だ!』

 

「......。」『その答えは言った筈だ!』

 

 さとりの第3の目は暗号化された無音の会話を”聞き取って”いた。

 

(逆らった?)『カイルさん、あの大柄な人ですけどあの黒い人に逆らっている様です。』

 

『それは本当かい?待ってくれ、少し考えてみる。』(じゃああの「コントローラー」に似たエネリオン体を倒せば......いや、逆らっているとはいえコントロールが解かれれば何が起こるか分からない......それ以前に分子構造を”破壊”する力も非常に大変だが、まずあのレックスをあっさりと”破壊”したエネリオン量自体が相当だ......。)

 

 カイルは暫く考え続けた。

 

 そしてそれを心配そうに見る早苗とさとり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「破壊神」が手を差し向けたレックスが塵となって消えた。

 

「何だ今の?!消えたのか?!」

 

 魔理沙が驚きの声を上げた。

 

 紫の「結界を操る程度の能力」は元々ある性質にエネリオンやインフォーミオンを加える事でその性質を確変する能力だ。

 

「......分子構造を破壊したらしいわ。恐ろしい力よ......。」

 

 だから性質を理解できる紫はどんな現象が起こったのかを理解出来た。

 

「恐ろしい力ね......。」

 

 そう呟いたのは幽々子。

 

 幽々子は「死を操る程度の能力」は相手を死なせるという力を持つが、今目の前で起きたのは生と死双方の痕跡すら残さず消し去る出来事だ。

 

 突然、アダムは”知らない筈”の記憶を”思い出した”。

 

「......そうか、分かった。」

 

「えっ?何が?」

 

 アダムの呟きに訊く霊夢。

 

「「破壊神」の事だ。奴の能力はその名の通りあらゆる物を「破壊」する。今のは分子結合を「破壊」したのだろう。そして奴こそが60年前のニューヨークテロの原因だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カイルは考えながらも不測の事態に対処する為、ある程度意識を外に向けていた。

 

 カイルはエネリオンやインフォーミオンに関する知覚だけで無く、視力や聴力といった五感まで優れている。

 

 だから、偽「コントローラー」の反対側にいるアダムの言った事も聞こえていた。

 

「アダム、詳しく言ってくれ!」

 

「ん?分かった!」

 

 突然呼ばれて振り向き、了解の返事をしたアダム。

 

「本当にニューヨークテロの原因なのか?」

 

 そう訊くカイルの声は強張っていた。

 

 ニューヨークテロとは、地球管理組織が起こしたと言われている地球歴前60年程前にノースアメリカ-ニューヨーク(地球歴前のアメリカ合衆国ニューヨーク市)で起きた爆発テロである。

 

 核爆弾に似た爆発により死者が400万人を超えた史上最悪のテロと言われており、爆発は核分裂でも核融合でも対消滅でも無く質量を直接エネルギーに確変させた事が原因だと後に知られている。(核分裂や核融合による放射線や中性子線が観測されず、対消滅で起こるエネルギーの一部をニュートリノが持ち去る現象も観測されなかった。)

 

 その為、別名「マス・ボム」と呼ばれており、そう言われる地球管理組織の秘密兵器が存在していると伝えられてきた。

 

 またこのテロが起こった事により、世界が徐々に混乱状態に陥り、崩落した世界を地球管理組織が支配した。

 

「ああ、奴は「破壊神」とも呼ばれている。何故僕が知っているのかは分からない、思い出した様な感覚だ。だが恐らく間違い無い。」

 

「そうか。ならば質量を「破壊」する事でエネルギーに変換されるという訳だな。何て事だ、まさか「マス・ボム」の正体が此処に居るなんて......しかし、妙な事だ。わざわざ幻想郷に戦略兵器を持ち込んだんだ?質量破壊によるエネルギーで幻想郷の隔壁を壊す事は可能な筈だ。だが、直ぐにそうしない。何か裏でもあるのか?」

 

 その答えをアダムが言った。

 

「「破壊神」を操る為だ。まだ完全にコントロールし切れていない......それ以上の事は分からない......。」

 

「いや、十分参考になったよ。今この場、戦闘に関する理由で無くても、あれ程の力なら権力や安全性に関わる可能性もある。だが今はそれにどう対処するかだ。」

 

 気持ちを切り替えて対策を練り始めるカイル。

 

(エネリオンの噴流を吹き付けるならば遮蔽物である程度は軽減できるだろが、あのエネリオン量では幾ら遮蔽物があっても......いや、その前に、)『さとり、あの「コントローラー」とあの男、「破壊神」のやりとりの意味を理解出来るかい?暗号化されているのか僕には信号を感知しても意味は読み取れないんだ。』

 

『えっ?私は直接考えを読めるので出来ますよ。』

 

『良かった、それじゃあそのやりとりを僕に伝えてくれないか?』

 

『はい!』

 

 さとりはそう伝えると相手2人の脳から脳への会話を聞き取った。

 

『次は他の奴らを消せ。早くしろ。』

 

『ふざけるな!俺はもう”二度と”誰も殺したくない!』

 

(二度と、という事はやはり彼がニューヨークテロを起こしたのか。しかし彼自身がこんなにも反抗して良く実行出来たのだろうか。)

 

 カイルは話の内容を確認しながらある程度仮説を立てた。

 

『だがあの場に居た400万人を殺したのは紛れも無くお前だ。他の誰でも無い。ただお前の感情とやらに触れただけだろう。』

 

『......それは奴らが悪い!』

 

『しかし、お前はそれで理性を失い、関係無い奴らを殺した。それが”お前達”の弱点だ。だから私がお前を操ればお前の弱点も無くなる。お前の意志で傷付く者は誰も居なくなる。』

 

『......それは俺の意志での話だ!お前達の意志ではどうなんだ!』

 

『我々はお前の力を有効活用出来る。』

 

(理性を失い、テロが起きた?)

 

 「コントローラー」の話は続いた。

 

『お前をニューヨークの更地から”見つけた”時”我々”は確信した。”我々”こそが人類の進化の延直線上に居ると。』

 

(”見つけた”?管理組織が操っていたんじゃないのか?)

 

 今必要な事とそうでない事に整理しながら聞く。

 

『だがお前は”我々”よりも遥かに強大な力を持っていた。お前を捕獲し、お前を調べ、お前を操ろうとした。しかし、お前は全てを拒否し、お前に関しての研究は何もかも行き詰った。辛うじてお前の力を抑制するあの鎧が完成した程度だ。』

 

(テロは管理組織では無く彼が理性を失った時、そして管理組織の管理下に置かれる前だったと考えて良さそうだな。)

 

『お前は冷凍保存され、その後私とそのプログラムが開発された。この私「ルーラー」は今お前にこうして話しているがそれは「ルーラー」の中の「コントローラー」という能力では無くユニバーシウム供給式エネリオン体「カオス」の中にある「コントローラー」というプログラムである。その能力やプログラムは表向きの目的として、死亡した兵士を蘇らせる「兵士再生計画」と脳の直接支配による「兵士改造計画」そして兵士だけでなく人民を直接的に操る「人類操作計画」の一部として開発された物だ。だが実質的にはお前「破壊神」をコントロールする為の物なのだ。』

 

『......。』

 

 カイルはさとりから受け取った情報を理解するのに集中し、「破壊神」は何も言い返せなくなっていた。

 

『勿論それが知られれば安全性の為反対する者が多いだろう。だからお前に鎧を付けて安全性を保障し、戦闘データを取るという名目を与える事で持ち出せた。そして幸いにも幻想郷の内部を詳しく知る為の観測機器の開発が遅れている為、何が起きているのか詳しくを知れない。そして解放されたお前を操る。あの鎧の脱着は本来ディック中佐の許可や生体認証が必要だが、その認証に使われる信号パターンを読み込み、解除する事が出来る。最も、あの反乱軍のトレバーと言う男がその前に外してしまったがな。』

 

(ならば「コントローラー」を倒せば大丈夫か、「破壊神」自体はこちらから何もしない限りは危害は無さそうだ。)

 

「カイルさん大丈夫でしょうか?」

 

 早苗が黙り込むカイルを心配して呟いた。

 

「さあ、何か作戦立ててるんでしょ?アダム、貴方はどう?」

 

 霊夢が思った事をそのまま述べ、そして何となくアダムに質問した。

 

「僕も良い案は今の所......」

 

 言い終わる前に突然の頭痛がアダムを襲い、頭を手で押さえる。

 

「アダム、大丈夫?」

 

 霊夢がそんなアダムの様子を心配して言った。

 

「......誰だ?」

 

 一言言い残したアダムは地面を駆け、「カオス」へと接近した。

 

 「カオス」の掌からエネリオン塊がアダムに向かって発射された。

 

 アダムはエネリオン塊に対して体を捻って避け、素早く取り出した2丁の銃を「カオス」目掛けて乱射した。

 

 銃弾を避けながら更にエネリオン塊を連射する「カオス」。

 

 アダムは攻撃を避けながら接近し、銃をナイフに変え、左のナイフを真っ直ぐに突き出した。

 

 「カオス」が迫り来る刃を体を逸らして避け、続けて来る横薙ぎに対して腕を出した。

 

 何の音もせずに腕でナイフが受け止められた事に驚愕したアダムは左足で膝蹴りを繰り出す。

 

 アダムからの膝蹴りをもう片腕で防ぎ、次なるもう片足からの上段蹴りを同じ腕でガードした。

 

 右足の蹴りは防がれたが、反動によって後ろに下がり距離を取ったアダム。

 

「......。」

 

「......アンダーソン。」

 

 突然「カオス」から呼ばれたアダム。

 

「何だ?」

 

 一瞬は驚いたが、短く応答する。

 

「お前は何かをしたいと思う気持ちになった事があるか。」

 

 合成音声の様なぎこちなく抑揚の無い声だった。

 

「どういう意味だ?お前の質問に答えるならそれはある。」

 

「私は「カオス」。「破壊神」を操る事が目的で作られた。そして私は「ルーラー」を元に作られ「コントローラー」と言うプログラムを書き込まれた。」

 

「それが何だと言うのだ。」

 

 「カオス」はわざとらしく間をおいて話を再開した。

 

「私にもその気持ちが湧いて来た。プログラムの複雑反応か、「ルーラー」の性質全てを受け取った所為なのか、それとも別の理由か。」

 

話の要点が見えて来ない。

 

「だが理由はどうでも良い。今大事なのは私には願望という感情の一種があるという事だ。私には「破壊神」を操るという目的があるが、その目的が私の興味を引き、その為にはどうなるのか、どうすれば良いか、考え続けて来た。」

 

 「カオス」は別の方向を振り向くとその方向へゆっくりと歩き出した。

 

「何処へ行く。」

 

「そして今それを達成する。目的と願望を。不思議なものだ。目的はあっても願望が無ければ私はこんなある種の快感を味わう事も無いだろう。」

 

「お前はプログラムじゃないのか?そもそも感情自体お前達が無くすべきだと言っているではないか。」

 

「じゃあ私からも訊くが、お前は幻想郷の結界を破る目的の為に感情を抑えられているクローンなのではないか?ガミジンによってそう伝えられただろう。それでいてお前は願望があると先程言ったじゃないか。確かに我々は人類における感情は不安定だとして不必要とされている。しかし私自身そうは思っていても感情が思考を支配している。まるで訳が分からない。」

 

「......。」

 

 アダムは言い返せなかった。

 

 それでも「カオス」の話は続いた。

 

「目的によって興味を惹かれ、願望が芽生え、考え、導かれ、そして......」

 

 何時の間にか「カオス」は「破壊神」の背後に立っていた。

 

「......達成する。その瞬間は最高の気分だ。もしやこの感情も目的を達成する為の私のプログラムの一部なのかもな。」

 

 アダムは直感的に地面を蹴った。

 

 ザクッ!

 

 「カオス」は勢い良く「破壊神」の背中に手を着き刺した。

 




今回魔法科高校のあるシーンがそのまんまあるのがまる分かりですね
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