東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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やっと2回目の日常に入ったぜ...

サブタイはレイジアゲインストの曲から


2.5 幻想郷の休日2
75 Wake Up


 地霊殿異変から次の日。

 

 アダム・アンダーソンの朝は早い。

 

 何の前触れも無く目を覚まし布団から起き上がったアダムは顔を洗い、寝間着を脱ぎリョウから貰った戦闘スーツを着るとすぐに外に出る。

 

 山の陰からぼんやりと光が見えるが太陽の姿は見えない。

 

 まずは準備運動程度に体の節々を伸ばす。

 

 準備運動を終えると中腰になり両腕を肩の高さに水平に上げ掌を前に、全身に力を入れる。

 

 力を抜き、中腰を解き軽く膝を曲げ、腕を腰の高さに下ろす。

 

 武者震いの様にわざと体を震わせ緊張状態を一定に保つ。

 

 左半身を前に、右手を曲げ腹の辺りに持ってくる。

 

 前に出した両手をブラブラさせる。

 

 腹の位置から素早く左ジャブ右ストレート、続けてスリーフォーとパンチを繰り出す。

 

 少し間を置いて再びワンツーから今度は左フック右フック計4回。

 

 次は連続して数十発のボディブロー、最後に大振りのアッパーを放つ。

 

 今度は左半身を更に前に出し、左手で4連続裏拳を繰り出す。

 

 左裏拳を出し、右正拳、右肘打ち、曲げた肘を戻しながら右裏拳。

 

 そして足を少し大きく開いたかと思うと真っ直ぐに左水平蹴り。

 

 そのまま左足でローキック、ハイキック、足を戻し次は右足でローキック、ハイキック続けて体を回し左回し蹴り。

 

 宙を舞い8連回し蹴り。

 

 ワンツーパンチから左前蹴り、ワンツー右ローキック、ワンツー右踵落とし、ワンツー2連蹴り。

 

 下段回転蹴り、跳び上がって上段回転蹴り、後ろを振り向きオーバーヘッドキック、両手を着いて反動で起き上がる。

 

 すると急に体勢を低くし、手を地面に着ける。

 

 両足下段蹴り、体を起こし両足サマーソルトキック。

 

 前方へ飛び出し回転しながら逆サマーソルトキック。

 

 右蹴り、左蹴り、体を回し右跳び蹴り。

 

 着地した所で後ろから自分へ声が掛けられた。

 

「おはよう。昨日は大変だったわね。それって何て格闘技?」

 

 アダムは朝の修行を終え、質問に答える事にした。

 

「ジークンドーと言うマーシャルアーツの一種だ。基本や構えは詠春拳と呼ばれるマーシャルアーツ、それらにボクシング、合気道、柔道、レスリング、等あらゆる格闘技を取り込んだ物だ。本来は急所攻撃によって相手を倒す事を目的とした物だ。格闘技だが特に型といった物は存在しない。」

 

「ふーん。確かに構えは古武術に似た所があったけど動きとか特に決まった感じが無く西洋みたいな感じだったかしら。」

 

「今日はこの前の管理組織の侵攻で向こうが持って来た武器を改造して武具を製作するつもりだ。1つ試したい物がある。」

 

「私の修行も手伝ってよね。」

 

「ああ。割とすぐに完成出来るから試行も兼ねるか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柏リョウの朝は早い。

 

 何故なら強烈な目覚ましに起こされるからだ。

 

 どれ程信じまいとする者達が居ようと 事実を調べる事は出来ない

 

 この針に俺は糸を通す 過激に本質をえぐる詩

 

 1966年に彼らが抱いた怒り 俺は彼らと共に立つ

 

 Eダブルのように怒り狂う 体制の糞に膝まで浸かりながら

 

 フーバーは死体を片付け続けた クスリなどでは

 

 決して及ぶことができない 俺の内に作られたこの憤怒には

 

 拳を上げろ この偽善の国で

 

 運動はやって来ては去る 指導者たちは説く

 

 しかし彼らの首が飛ばされるとすぐに運動は止む 馬鹿者共が揃って彼らの頭に銃弾を撃ち込むからだ

 

 警察に裁判官に連邦捜査官 仕掛けられた網の目が人々を大人しくさせる

 

 奴らがキング牧師を追いかけ回したのを知っているだろう 彼がベトナム反戦を説いた時に

 

 彼は「持たざる者たち」に力を持たそうとした だから彼は撃たれた

 

 ヘッドフォンから鳴る大音量のエレキギターとボーカルにリョウの眠気はすっかり覚めた。

 

「自分でやりながら何だがすげえ効果だな......。」

 

 タイマープログラムを組み込んだ照明器具を使えば任意の時間に照明を付ける事で脳が太陽の光を浴びたという錯覚を受け体内時計によって心地良く起きる事も可能だ。

 

 リョウはちょっとしたプログラムの書き込みなら出来るし、プログラムを照明器具に組み込む程度の事も出来る。

 

 しかし、リョウは夜遅くにまで起きている、即ち体内時計が普通よりもずれているのだ。(そもそもトランセンデンド・マンは脳の処理能力が高い為、本来は睡眠の時間が短くて済む。それでも疲労回復やストレス解消の為6時間以上の睡眠を取る者は居る。)

 

 その為、目覚まし時計が開発されてもなお変わらない原始的な方法で体を無理に起こしているのだ。

 

 時計に目をやると6時30分前を示していた。

 

 机の上にあるパソコンを立ち上げ、幻想郷に来てから毎日行っている習慣を今日もする。

 

「定時連絡だぜロウ。お前最近どうなん?」

 

『トレバーの遺品漁りをしている。中東地域のアクセサリーやらアンティークな家具やら見つかってるよ。それで、異常は?』

 

 リョウは画面の左半分を埋めるグラフや数値に目をやる。

 

「昨日は話した通りだが今日はレーダー見る限りは異常は無いな。」

 

『そうか。まあ管理軍もあれ程戦力を投入して何も得られなかったのだから暫くは動かないだろうな。それと昨日話した管理軍の捕虜とやらについてだが、具体的な方針はお前達に任せる、だそうだ。ドニーさんもやはり賛成したよ。それにしてもお前、管理軍の情報を聞き出す事が目的じゃないな?』

 

「まあな。最大の目的はアイツに幸せになってもらいたいんだ。以前の俺に似てる所がある。」

 

『しかしお前珍しく本気の話をするなあ。安全性はどうだ?』

 

「カイルから聞けば俺達に敵意は無いらしく、こちら側から害を与えなければ大丈夫だとさ。」

 

『まあ気を付けろよ。ところでカイルは?連絡が来ないのだが。』

 

「さあな、寝てるんじゃねーの?カイルは日曜日はしっかり休むからさ。まあアイツの分も俺がまとめてやるって事で。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カイル・クロード・ウィルソンの朝は、今日はそれ程早い訳でも遅い訳でも無い。

 

 カイルが目を覚ました時、時間は8時30分を過ぎていた。

 

「......昨日は疲れたなあ......。」

 

 ゆっくりと体を起こし、体を伸ばす。

 

 太陽の光が部屋の中に、そして目に流れ込んでいる。

 

 障子が開かれた所からは紅葉が見える。

 

 乾燥気味の秋風が紅葉の枝を揺らし、鳥のさえずりも聞こえる。

 

 目を閉じ深呼吸すると澄んだ綺麗な空気が気道を通って肺の中へ流れ込む。

 

 カイルは自然に身を任せ暫く放心状態になっていた。

 

「あっ、カイルさん起きたんで......」

 

「ワッ。」

 

 だから同居人に突然(カイル視点)声を掛けられた時は拍子抜けした驚き声を上げた。

 

 相手に驚かれたので釣られて早苗も軽く驚いた素振りを見せた。 

 

「......。」

 

「......。」

 

 カイルが自分の失態に照れ笑いを浮かべ沈黙が破られた。

 

 クスクスと早苗が笑い、和やかなムードに包まれた。

 

「朝ご飯出来てますよ。私と神奈子様と諏訪子様はもう先に食べましたから、どうぞ。」

 

「分かった。寝坊してごめん。」

 

「いえ、カイルさんは何も悪くありませんから。」

 

「それじゃあ食べようか。早くやりたい事があるし。」

 

「へえ、どんな事なんですか?」

 

 カイルは独り言のつもりだったが、早苗はそれを誤解したのだ。

 

 だがカイルは話を振る事無く質問に答えた。

 

「この前も言ったと思うけど僕はこれでも科学者の端くれさ。幻想郷へ来た目的は管理組織からの防衛だけじゃない。あらゆる研究もしようと思っているんだ。」

 

「研究熱心なんですね。私も何か手伝いましょうか?」

 

「いや、別に僕だけで十分だよ。僕の知覚能力を利用した調査だからね。」

 

「なら見学だけでも良いですか?」

 

「良いけど、君から見たら詰まらないと思うけど。」

 

「私もこれで理系ですから、興味はありますよ。」

 

「そうかい、なら別に良いよ。その前にちょっと寄る所もあるけどね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴仙・優曇華院・イナバの朝は早い。

 

 彼女は永遠亭の住人の中で一番早く起きる。

 

 師匠の永琳は医者兼薬師の仕事によって毎日忙しいので疲れているし、主である輝夜と地上の兎妖怪のてゐは眠気に身を任せ全然起きようとしない。

 

 鈴仙は眠気に打ち勝ち布団から体を起こし、身支度を始める。

 

 永遠亭メンバー全員分の朝食の用意も彼女がする。

 

 そして、昨日、というか午前0時を過ぎていたので今日の真夜中、永遠亭に運び込まれた患者、と言えるのかも疑わしい者を診なければならない。

 

 運び込まれた時、鈴仙はそれが死体だと思った。

 

 医学に詳しい永琳も、瞳孔散大、呼吸停止、心停止、どれも死の証拠であった為、死んでいるかと疑った。

 

 だが、運び込んだ者達の内カイルという青年によれば脳波が微弱にあり脳組織が再生しているのが確認された為じき目を覚ますだろう、との事らしい。

 

 でも本当に彼は生きているのだろうか。

 

 彼は身長195cm近くある大男で額に大穴が空いている。

 

 鍛え上げられた身体と目を瞑ってもなお凄味を帯びた顔は鈴仙を怖がらせるのに十分だった。

 

 年齢は多めに見積もっても20代前半の容貌だが、まるで多くの人間を殺して来た軍人や殺し屋の様な雰囲気を感じる。

 

 もしこの重そうな目が今にも開いたら......

 

「ウドンゲ?」

 

「ひっ?!」

 

 急に声を掛けられた鈴仙は思わず声を上げた。

 

 慌てて自分へ話し掛けた声の主を見る為振り向く。

 

「......何だ、師匠でしたか......。」

 

「何驚いてるのよ。そして何だとは何よ......それで彼の調子は?」

 

 永琳は自分が鈴仙に驚かれた事をさておき本題に入った。

 

「見た所変わってないみたいですけど......。」

 

「どれ......いえ、変わった所が1つあるわ。ここを良く見なさい。」

 

 永琳は額の穴を指し示した。

 

「昨日より明らかに傷が小さくなっているわ。良く見ないと分からない程度だけど。」

 

「......言われてみれば。本当にこの人は生きてるんですね?」

 

「そうじゃなければ傷なんて治らないわよ。全く驚異的ね、トランセンデンド・マンの再生能力は。アダムの場合では骨折を一晩で治したし、彼は脳組織そのものを再生できる。でも脳のダメージが大きいこの調子だと意識を回復するのにどれ程かかるかしら......。」

 

 布団に仰向けになる男は依然として生きている証拠を見せない。




歌詞:Wake Up/Rage Against the Machine
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