東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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前回の投稿から1日で1話作り終えるという、凄いのか今まで怠けていたのか良く分からん


84 Woke Up

「うわあああああん!!!!!」

 

 少女は大声で泣いていた。

 

 何せ目の前で抵抗した父親が殺され、自分を庇おうとした母親も殺されたのだから。

 

 突然家族を失い、少女の心の中はショックに満たされている。

 

 目の前には胸に「EMO」の文字を付けた軍服を着た兵士が居る。

 

「手を上げろ!」

 

 少女は言われる通りに両手を上げた。

 

 少女は目に涙を浮かべ、体を小刻みに震えさせていた。

 

「良いか、動くなよ!」

 

 少女は情けないうめき声を上げ、兵士にされるがまま腕に手錠を掛けられた。

 

「......どうしてこんな事をするの!......」

 

 少女は弱々しくも必死に口応えした。

 

「知るか!」

 

 だがそれ以上の大声で怒鳴られ、少女は何もする気を失った。

 

 更に足にも錠を掛けられ、頭に袋まで被せる。

 

(私、殺されるのかな?......)

 

 どう足掻いたってこの状態では何も出来まい。

 

 それ以前にどうして両親を殺して自分だけど生かしたのか、それもまるで分からない。

 

 バシュッ

 

 突然、何か柔らかい物体が弾けた様な音がした。

 

 それと同時に目の前に居る筈の兵士の気配がしない。

 

 何が起こっているのか分からないまま暫くして、

 

「......もう少し早ければなあ......大丈夫?怪我は無い?」

 

 前半は独り言の様だったが、後編は自分に掛けられた物なのか。

 

「......は、はい。」

 

 涙で震えながら答えた。

 

 若々しい、というか少年の物と思われる声は少女の恐怖を少なからず和らげた。

 

 足音も先程の兵士とは明らかに違って体格が小さいのだろうと分かる。

 

「待ってて、今外すから。」

 

 少女の視界を塞いでいた袋が外された。

 

「心配無い、君を救う。」

 

 その顔は......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

 東風谷早苗は布団の上で唐突に目を覚ました。

 

 暫く布団の上で考え込む。

 

(また嫌な夢を見ちゃった......。)

 

 以前、7年程前に自分が住んでいた地域が地球管理組織に制圧”されそう”になった時の事だ。

 

 カイルから話を聞いた所によると、その地域が幻想郷に近く、外界からの転送が行い易くなる為、侵攻して来たと言う。

 

 その時、早苗は両親を失った。

 

 2人共管理軍の兵士の銃弾によって成す術も無くこの世を去った。

 

 そして、何も出来なかった自分は捕えられ、連れ去られようとしていた。

 

 しかし、誰かが助けてくれた。

 

 その人物は誰なのかは分からない。

 

 その後の記憶は無く、覚えているのは、自分は管理軍が撤退した後に目を覚ました事。

 

 神奈子から聞けば反乱軍によって助けられたという。

 

 しかし、あの人の事は思い出せない。

 

 さっきの様に夢に出て来るが、その顔が見えると思った所で目が覚める。

 

(あの人に会いたい。お礼がしたい。)

 

 夢を見終わって毎回思う。

 

 助けられなかったらどんな人生になっていたんだろう。

 

 恩人の顔や名前すら知らない、その事を思うと嫌悪感が生まれる。

 

 それ以前に両親は自分の所為で死んだのだと考えるごとに......

 

 不意に障子の奥から歌声が聞こえて来た。

 

「I´ve got a train to catch and I can´t be late.」

 

 僕は自分を捕える列車を待っている、そして遅れる事は出来ない。

 

「I´m on my way to another state of mine.」

 

 僕は別の自身の途中に居る。

 

「I´m leaving this one behind.」

 

 僕は後にそれを残している。

 

 大人の落ち着きがありながら少年らしい高いトーンの声だ。

 

 障子を開けると見慣れた人物が縁側に座っていた。

 

「カイルさん起きてたんですか?」

 

「ん?まあね。どうかしたのかい?」

 

 座りなよとジェスチャーで勧められて早苗は隣に腰を下ろした。

 

「今の歌は何ですか?」

 

「「Moving On」という1世紀以上前のレゲエの一種の曲だよ。これでも結構クラシック系やジャズ系が好きで良く口ずさむものさ。」

 

「へえ~。」

 

 2人の視界に満月が映り込む。

 

「......月って不思議ですね。見ていると気分が和らぐというか。」

 

「実際は月の重力が大きく関係している。人間の体内時計が25時間周期なのは月の公転周期と一致している。満月ではあらゆる生物が活発化するという事が分かっている。海における干満潮は言うまでもないだろうね。地軸にも関係していて地球に季節があるのも月のお蔭だ。」

 

 カイルからの小話を聞いて早苗の不安な心は幾分和らいだ。

 

 気分が落ち着いた所で早苗は話そうと決心した。

 

「......カイルさん、思い出したいのに思い出せない事ってありますか?」

 

「あるよ。身の回りの事から昔の事まで、誰だってあると思う。」

 

「でも、自分にとってとても大切な事を思い出せないというのはおかしいんでしょうか?......」

 

「......僕には分からないな。」

 

 それを聞いた早苗は顔色を更に不安に歪めた。

 

「でも、」

 

 しかし、その次の言葉によって早苗の不安は取り除かれた。

 

「記憶というのはいわば引き出しの中の物体だ。思い出すには開ける必要がある。でも長い事使った引き出しは歪んだり擦り減ったりして開け辛くなる、それと同じだよ。思い出せないのは引き出しが開かないからさ。でも開け辛くても引っ掛かりが外れて突然開く事もあるし、直せば開くだろう。きっかけさえあれば思い出せると僕は思うよ。」

 

「......カイルさんには何時も助けられてばかりで、すみません......。」

 

「謝る事は無いよ。僕はただ最適な選択をするだけだ。」

 

「最適な、選択、ですか?」

 

「ここで言うのもなんだけど、僕は自分の所為で僕の父親を死なせてしまった。」

 

 早苗はカイルに対し、驚きとある種の共感を覚えていた。

 

 あの時両親が死んだのは自分が何も出来なかったから、そうと自分を責め続けていた。

 

「あの時もっと僕に力があれば、と思ったよ。そうすれば物事を一番良い方向に導けた筈だった......。」

 

 普段カイルが浮かべている爽やかな笑みがこの時消えた。

 

 それを見た早苗はこんな込んだ話にするんじゃなかった、と後悔し同時にどうにか彼を慰めようと考えていた。

 

「けど、その事は僕にとって必然だったのかもしれない。そうした過去があって今の僕がある。「過去」は感情的に捉える物じゃない、知識とするべきだ。そのお蔭で僕はそれ以来の事について正しい判断が出来るようになった。」

 

 早苗は無意識にカイルの話を集中して聞いていた。

 

「感情は「今」に存在する。その場で何を感じるかだ。思考は「未来」に存在する。最善の選択をする為だよ。僕にとって父の死は悲しむべき事だけど、そのお蔭で僕は未来を考えられる様になった。僕は未来の為に戦うよ。罪滅ぼしなんて考えなくて良い。まあ最終的な選択はその場の感情に左右されると思うけどね......まあ要するに何が言いたいかというと、未来を見据えるんだ、という事だよ。」

 

 話を聞き終わった早苗は暫くの間息をするのも忘れていた。

 

「僕は人生相談なんて出来やしない。僕が何を思っているのか、参考までに伝えただけさ。」

 

「......私、前向きに生きる事が出来る気がします。」

 

「生きれるさ。」

 

 早苗が希望を見出した様に言い、カイルは何時もの微笑を浮かべて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪いのはお前だ。

 

 俺は奴を殴った。

 

 奴も怒って俺を殴ろうとする。

 

 だが俺が傷付く事は無い。

 

 俺は「特別」だったが、この時の俺には知る術も無い。

 

 殴る、殴る、殴る、殴る、殴る......

 

 気付けば奴は血まみれで床に倒れていた。

 

 周囲には他の奴らが俺と奴を見ている。

 

 皆が俺を恐れている。

 

 何だ。

 

 俺は問いかける様に他の奴らへ振り向いた。

 

 だが他の奴らは俺に関わる事を忌避する様に俺から遠のいていく。

 

 何だ!

 

 俺が間違っているとでも言うのか!

 

 すると大人が一人、誰かに聞いてやって来たのだろう。

 

 大人は俺に向かって叱る。

 

 だが俺に何の非があるというのか。

 

 俺は大人の腹に1発決めてやった。

 

 それだけで俺よりも明らかに体の大きい大人は地面に伏した。

 

 俺は周囲の奴らを見るなり、睨んで部屋から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭が痛い。

 

 何か針で刺された様に痛む。

 

 額に手をやるが、傷は無いらしい。

 

 体が思う様に動かない。

 

 手だけを動かそうとしても勝手に連動して肘や肩まで動く始末だ。

 

 まるで手の動かし方を忘れた様な......

 

 忘れた......そう言えば此処は何処なんだ?

 

 俺の体は和式の布団の上に寝ていた。

 

 体を遅くながらも起こし、辺りを見回す。

 

 俺の体はガウンの様な白い病人衣らしき服を纏っている。

 

 床には畳、後ろに襖戸、前に障子戸、見るからに和風だな。

 

 だが、現代においてある筈の物が無かった。

 

 天井に照明器具が無い。

 

 生活水準が低い地域でも照明器具が無いという家は無い筈だ。

 

 分からず、立とうと起き上がる。

 

 足の方も歩き方を忘れた様な感覚がしたが、すぐに慣れ立てる様になった。

 

 障子戸を開けると、驚くべき光景が待っていた。

 

 竹林だ。

 

 他の民家が無い。

 

 一体此処はどれ程の過疎地域なんだ?

 

 俺は裸足のまま縁側を越え地面に立った。

 

 俺はただ走る。

 

 何が待っているのか。

 

 俺は知りたい。

 




早苗の過去はオリジナル性を持たせました

今後の為です

あと、サブタイトルは以前の「Wake Up」と掛けてます

歌詞:Moving On/坂本龍一
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