東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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前調子良くて2日連続投稿とかしてたのにもう前の投稿から随分空いちまった...


88 受け入れ

 俺は猛スピードで自分に向かって来る2体を感知していた。

 

 振り切るか、止まるか。

 

 俺は何故か止まる方を選んでいた。

 

 やがて森林から現れたのは、あの時隠れて俺の様子を窺っていたガキ2人。

 

 小柄で目付きが鋭く表情が垣間見えない少年と、アジア人らしい小柄な、何だこの赤い服、儀式にでも使うのか?......みたいな服着た少女。

 

 少年の方は相変わらず鋭い眼光を見せ、少女の方は少年を心配そうに見ていた。

 

「何故来た。」

 

 こちらから喋った。

 

「訊きたい事がある。」

 

「......何だ?」

 

「僕達がお前と以前接触した時、お前は僕達を助けた。その理由が知りたい。」

 

「......。」

 

 俺は親近感と同時に警戒心も覚えていた。

 

「......知ってどうする。」

 

「知れれば僕にとってはそれで良い。」

 

 訳が分からん、理由も無しにただ知りたいだと?

 

 俺は地面を蹴ろうとした。

 

 だが、俺が行こうとしていた先には別の誰かが居た。

 

「間に合ったみたいだね。」

 

 声を発したのは正面の金髪で穏やかな表情のこれまた小柄な少年。

 

 隣に薄紫のショートヘアーで、あの漂っている目玉みたいな奴は何だ?......まあその目玉の少女。

 

 何故こいつらは俺に構う?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さとり、彼の記憶を辿って彼の素性を知りたい。』

 

『はい......。』

 

 脳内で了解の意を示し、さとりは神経を自分の周りを漂うサードアイに集中した。

 

『......あの、分かりました。それで、何処から話せば......。』

 

『いや、既にテレパシーを通して君が得た情報を共有して貰ったから結構。』

 

 カイルは受け取った情報を整理する一方、さとりは読み取った記憶を見て青ざめてしまっていた。

 

(一体どうしてあんな事に......)

 

 見たのは怒りの少年と破壊。

 

 最後には何処か発達した文明が一瞬で閃光に包まれると共に消滅した、のが見えた。

 

(やはり彼がニューヨークテロの原因か?)

 

 カイルはこの破壊現象について疑問を抱いていた。

 

 だが今は別な問題、すぐに切り替える。

 

「僕はカイル・ウィルソンだ。」

 

 カイルは友好的に自分を名乗った。

 

「......だから何だと言うのだ。俺の何を知っている?」

 

 だが男は反発し、ますます警戒心を高めた。

 

「......ブライアン......ブライアン・スミス。それが君の名前の筈だ。」

 

 男は無表情だったが、僅かに動揺が見えた。

 

「......確かに、俺は人間共にそう呼ばれていた......何故知っている?」

 

「僕は誰よりも真実を知りたい。だから知る事が出来る。」

 

「......願望とやらか。」

 

「そうだ。だから君の願望も聞きたい。」

 

「......。」

 

 男は黙ったままだった。

 

(彼、とても苦しんでいる......。)

 

 心が読めるさとりにはそれがはっきりと分かった。

 

「人が信じられないの?」

 

 さとりが自分から無意識に喋っていた。

 

 返事は無い。

 

「私だって同じだった。心が読めるという能力の所為で散々嫌われて来た。でも、この人は私を受け入れてくれ......」

 

「違う!」

 

 さとりの主張をバッサリと切り捨てられ、さとりは怖気づいて黙ってしまった。

 

「もうあいつは居ない!この世にもう居ない!」

 

 怒りと言うより悲しみの咆哮だった。

 

 ふと彼の脳内は記憶に包まれ、その様子をさとりは見ていた。

 

 彼を取り囲む大量の兵士、そして彼は誰か人、小柄な少女を抱えていた。

 

 直後、爆発。

 

(彼は一体どんな人生を歩んで来たと言うの?!)

 

「それが僕達を助けた理由か。」

 

 ここで割って来たのはアダムだった。

 

「......ああ、俺の様になって欲しくなかった......不思議だなガキ、お前は昔の俺に何処となく似ている。」

 

 男は静かになって答えた。

 

(やはり僕が思った通りだ。奴には僕に似た何かがある。)

 

「俺は二度と俺と同じ奴をこの世に居させたくない。俺を苦しめて来た奴ら、そして俺を利用して来た、地球管理組織......奴らは俺の力を知ってわざとああやった。全ては奴らの計画だった。俺はあの忌々しい地球管理組織を滅ぼす。」

 

 どうやらまだ分からない話があるらしい。

 

「僕達人類共和軍は君に協力する。だからまずは君の事、そして君が知る限りの管理軍の事を教えて欲しい。」

 

 カイルがこの場を代表して提案した。

 

「良いだろう。改めて名乗る、俺の名はブライアン・スミス。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水をくれ。」

 

「は、はい。」

 

 ブライアンの頼みに鈴仙がおずおずと立ち上がり、廊下へ出て行った。

 

「それで、まずは教えてくれ。今は何年だ?秋だと言うのは分かるが、管理軍に飽きる程実験させられた所為で日付が全く分からない。」

 

「......今は地球歴0018年、西暦で言う2117年だ。」

 

「......あの日からもう50年も経っていたのか......。」

 

 「あの日」とは何の事か、話し合いの先頭に居るカイルは分かっている。

 

「その時の爆発は現在では管理軍が起こした史上最悪のテロだと言われている、本当に君が起こしたのかい?」

 

「最終的にはそうなるだろうな。」

 

「最終的に?」

 

「詳しくは後で言うが、俺は管理軍の罠にはまったのさ。今は少々言う気になれなくてな。」

 

「それで良いよ。それで、管理軍に捕まってからはどんな実験をされたんだい?」

 

「......余り思い出したくはないが、変な機械に掛けられたり、おかしな薬を飲まされたり、”能力”を使わされたり。恐らく何十年とされ続けて来ただろうな。だが何も進歩らしき物は感じなかった。だが最近やっと何か変化があるかと思ったら力を抑えられる拘束具を付けられ、気付けばこの、幻想郷と言う世界に来ていた。」

 

「それで、その何か”変化”みたいな事は分かるかい?」

 

「そうだな......そう言えば何かと研究者の奴らに焦りっぽいのが見えていたか。」

 

「具体的には?」

 

「別にただの直感だが、チーフにディックって奴が居たが、そいつの様子が苛立っていた感じだったな。」

 

「ディック......アルフレッド・ディックの事か。」

 

「知っているのか?」

 

「まあね。間違いが無ければ管理組織所属のトランセンデンド・マンの研究に関しては一流の研究者だった筈だ。」

 

「......済まんが、それ以上は分からん。」

 

「分かっている範囲で結構だよ。それじゃあ次は......」

 

 ここでカイルとブライアンの会話に加わったのは、

 

「待ってくれ、そのアルフレッド・ディックという人物について教えてくれないか?」

 

 アダムが驚きを込めた声で尋ねた。

 

「アダム、何か心当たりでもあるのかい?」

 

「ディック中佐という人物が僕が見た夢の中に出て来る。僕に何らかの関係があるのかもしれない。」

 

 カイルは話をすべく自分の持っている情報を整理する為少し間が置かれた。

 

 アダムは早くしてくれ、と言わんばかりに冷静さを失っている。

 

「アルフレッド・ディック、管理組織の人類能力開発研究を主な功績に残している科学者だ。詳しくは極秘情報で分からないが、トランセンデンドマンの能力を上げる薬品の開発やトランセンデンド・マンのクローン製造技術、他にも......」

 

「クローン製造だと?!」

 

 アダムの声は完全に落ち着きを失っていた。

 

「落ち着いてアダム、君がそれ程声を上げるとは余程の事だ。訳を話してくれないだろうか。」

 

 カイルの台詞に、ハッ、となったアダムは普段通り冷静さを取り戻していた。

 

「......分かった。まだ話していなかったな。以前、僕が「ブラッククリーナー」の一人のガミジンに接触した時、奴は僕がクローンだと言った。声の波形から見て嘘では無かった。ならば僕はその研究によって作られたという事か?」

 

 カイルは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに表情を戻し、話を聞いた。

 

「成程、その可能性はあるだろうね。でも具体的な根拠が無ければ......。」

 

「待て、何か少し耳にした程度なんだか、そのディックとやらに息子が居るらしい。なんでも、その息子が父親の研究材料にされたとか。名前は確かマルクとか言ってたかな。奴の顔写真を見た事あるが、そう言えばお前、髪と目の色を赤くしたら奴にソックリだ。」

 

 ブライアンが更に情報を追加した。

 

「マルク......。」(奴はどこまで僕に関わりがあると言うんだ?奴が僕を憎む理由がまるで見えて来ない......)

 

 アダムは話を忘れ自分の考えに没頭していた。

 

「で、アダム、君からは何か言うべき事は......」

 

「......ん?ああ済まない。こちらの事だ。気にしないでくれ。」

 

「そうか、分かった。」

 

「あのー......。」

 

 そこへコップに入った水を持って来たは良いが、話が込み入っている様で渡すタイミングを見計らっていた鈴仙が恐る恐る訊いた。

 

「水を......。」

 

「そうか。」

 

 ブライアンは鈴仙からコップを無造作に奪い取った。

 

 コップを横取りされた鈴仙は思わず声を上げそうになったが思い止まった。

 

「......他にあるか?」

 

 コップの中を10割飲み干し、質問を求める。

 

「そうだな……君の頭髪から調べたデータなんだが、DNAが明らかに地球上の生物どころか人間、トランセンデンド・マンにさえ共通しないアミノ酸を発見した。」

 

「何?どういう事だ?!」

 

 カイルの言葉の意味を知ってか、驚いた声で問う。

 

「違う、と言っても普通の人間と0.01%程度の誤差だが、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、これ以外に未知のアミノ酸が2種類もあるんだ。」

 

「待て。それじゃあ俺の遺伝子の一部は地球の物では無いとでも言うのか?!」

 

「あれ程複雑なアミノ酸は突然変異や放射線変異で起こったとは考えにくい。突然変異にすれば地球環境下ではまず作れないし、放射線にしても普通の人間どころかトランセンデンド・マンの致死量を超える量が必要だ。そしてそのアミノ酸の構造が何を意味しているのか分からないんだ。」

 

「.......つまり俺は宇宙人って事か?」

 

「そうかも知れない。せめて不明な部分のDNAが分かれば......」

 

『お前は俺達とは違うんだよ!』

 

 バリン!

 

 何かが割れた音がし、その方向を向く。

 

 ブライアンが持っていたコップが大量の破片になっていた。

 

「ヒエッ!」

 

 鈴仙が驚いて思わず声を上げた。

 

 その声を聞いて我に戻ったのか、ブライアンが済まん、と態度で示した。

 

 ただし、コップを割った事では無く、自分が突然動揺した事に。

 

「この話は後にしてくれ。あまり気分では無い。」

 

 俯くブライアンの顔は不機嫌そのものであり、今にも怒鳴りそうな表情だった。

 

「......分かった。今はまだ僕達を信じなくても良い。でも君が必要になる時が必ず来る。」

 

「ああ......。」

 

 カイルに優しく言われたブライアンはまだ顔を怒りに引きつらせたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方達は呑気で良いわよねえ。」

 

「うるせえ、今ジャスガ間に合わなかっただろうが。」

 

「永琳、黙ってて。今こいつをぶち殺すから。」

 

 永琳が皮肉るのは、リョウと輝夜の対決だった。

 

 対決、と言っても2人はテレビ画面から目を離さない。

 

「全く、ゲームをすると性格まで変わるんだから.......。」

 

 呆れた永琳がやれやれ、と腕を放り首を横に振った。

 

 近づいてぇぇ!

 

 画面端ぃぃっ!

 

 バースト読んでぇぇっ!

 

 まだ入るぅぅ!

 

 ......つっ近づいてぇっ!

 

「決め......。」

 

「うるさいぞ。」

 

 何時の間にかリョウの後ろに立っていた慧音がリョウの頭を叩いた。

 

 頭を揺らされたリョウはコントローラーのボタンを押し損ねた。

 

「なっ!てめっ!」

 

「決めたぁぁぁーーー!!!!」

 

 リョウが慧音へ反抗する隣で輝夜が大声で勝利を叫んだ。

 

「お前、俺がししゃもになったじゃねえか!」

 

「お前の言ってる事は分からんが、後ろががら空きだったぞ。」

 

「次からはバックミラーを付ける事にする。」

 

 若干キレてはいたが普段通り冗談を返したリョウ。

 

「アダム達あの男と話し合ってるけど、大丈夫かしら?」

 

 霊夢が心配を呟いた。

 

「カイルさん達は大丈夫って言ってましたけど......でもカイルさんなら良い案があると思いますし。」

 

 これは早苗の台詞。

 

「......今の所何も問題は無いみたいですよ。」

 

「良く分かるなあ。その心を読むとかいう能力って便利そうだよな。」

 

 さとりが能力を使い状況を伝えると魔理沙が感心した様に呟いた。

 

「そうでもありませんよ。知りたくない事まで読んでしまうし......。」

 

『ケンタッキー下さい。』

 

「へっ?」

 

 不意に誰かの思考が流れ込み、さとりが間の抜けた声を上げた。

 

「俺だっての。ファミチキよりもから揚げクン派なんでね。」

 

「は、はあ......。」

 

 リョウの発言の意味が分からなく、呆然とした。

 

 パリン

 

 ガラスか何かが割れる音が壁の奥からした。

 

 続けて、ヒッ、と短い悲鳴。

 

「鈴仙ったらうっかりコップでも割ったのかしら。」

 

 永琳が聞き覚えのある声を聞き、呆れ気味に言った。

 

「きゃっ!」

 

 今度はさとりが悲鳴を上げた番だった。

 

「奴に異常か?」

 

 リョウが飄々とした普段の姿を捨て、戦闘の体勢に入っていた。

 

 さとりは壁を突き抜けて来る殺気を一番強く感じていた。

 

(これは憎悪......とても執念深い憎しみ......。)

 

 それを感じ取ったのか、紫も顔を真剣そうにした。

 

「割れた音はあの男がコップを握り潰したからみたいね。」

 

「良く分かるなあ。何で分かったんだ?」

 

「式神よ。紫は普段からこうして人様の様子をこっそり覗き見してるのよ。」

 

 魔理沙の質問に対して紫の代わりに霊夢が嫌味を込めて答えた。

 

「人聞きが悪いわね。私はただ情報を集めているだけよ……何とか向こうは収まったみたいね。でもこれ以上深い話は無理みたいだわ。」

 

 紫は霊夢の嫌味に反論し、切り替えて状況を話した。

 

(さて、彼は私達の味方になってくれるのかしら。それとも......。)

 

 紫は幻想郷の管理者として未来に不安を抱いていた。

 

 それは果たしてブライアン・スミスが「破壊神」と呼ばれるだけの事あってか。

 




もう章変わります

ちなみに今章を作ったのは休日編とは切り離したかったからです
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