東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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90 宝船

 霧雨魔理沙の朝は気まぐれだ。

 

 早く起きる事も、遅く起きる事も、とにかく魔理沙は自由気ままに生きている。

 

 昔、魔理沙は魔法を学びたいが為に家族と対立し挙句家出した、それ程まで魔理沙は自由を好んだのだ。

 

 ところで、今日は普段より早め、6時半過ぎに目を覚ました。

 

「今日は何故か早いな......まあ早起きは三文の得って言うし。」

 

 寝間着を普段着に着替え、朝食は何を食べようかと考えていた。

 

「リョウのとこが朝早くから開いていればそこで良かったかも知れんけどなー......それからは霊夢んとこ行ってアダムに修行付けてもらって......」

 

 不意に魔理沙は黙り込んだ。

 

 考えるのを放棄したからでは無い、考えているからこそ黙ったのだ。

 

 家の外から聞こえる、確かな轟音。

 

 小さ過ぎる音だが、恐らくそれ程まで離れているのだろう。

 

 音源を探るべく外へ出た魔理沙は手に取った箒に跨り、上昇した。

 

 魔理沙の自宅がある魔法の森は数十m上昇しただけでは木々以外に何も見えない、それ程広く何も無いと言っても良い空間だ。

 

 だから轟音の正体はすぐに判明した。

 

 上空に遠く霞んでいるが、その影は間違い無かった。

 

「......でかい!船か?!浮いているのか?!」

 

 船、らしき物体は更に遠くへ行ったのか次第にその影すらもぼやけていき、やがて雲に隠れて見えなくなった。

 

 早速知らせようと魔理沙は箒を博麗神社へ向けて飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ本当?」

 

「それもでかかった。あれは宝船に違いない。」

 

「宝船?!じゃあ見つけて中に入れば......」

 

「ああ、大儲けだ!」

 

「やったー!」

 

 興奮してすっかり落ち着きを失った霊夢と魔理沙をアダムが横から落ち着け、と割り込んだ。

 

「遠目だから確定とは限らないだろう。それに、この前カイルから異変の可能性を伝えられただろう。その可能性もあるぞ。」

 

「アダム、お前って何時も悲観的だよな。もっと前向きに考えてみろよ。」

 

 だが魔理沙はそう反論した辺り、浮かれているのかも知れない。

 

「でもまずは調べに行けば良いんじゃない。アダムも、行ってみれば分かるわよ。異変だったら解決すれば良い、それだけよ。」

 

「......。」

 

 霊夢から追い打ちを掛けられ、アダムはこれらの楽観的な理由を理解出来なかったが反論も出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 空を飛ぶ船は幻想郷のあらゆる場所で目撃されていた。

 

 それは妖怪の山の山頂付近に位置する守矢神社に住む人物達もそうだった。

 

「今の見えましたか?」

 

「見えたよ、明らかに船だと言って良い。全長45m、船幅15m、船高12m、後方に大きいマストが1つだけ。エネリオンの一種を利用して飛行している。」

 

「良くそんな一瞬で、いや、透視能力か。どちらにせよ便利な物だねえ。」

 

 早苗の質問にカイルが説明を付けて答え、神奈子がカイルの能力を称賛した。

 

「あの大きさなら既に里の住人に目撃されているだろうし、諏訪子、丁度良いんじゃないか?」

 

「そうだね、これを発見し異変を解決し神社のPRだよ、早苗。でもまだ修行段階だから無理しないで良いよ。」

 

「はい。」

 

 神奈子に促され諏訪子が早苗へ命令を与えた。

 

「僕も行きます。この前から続いている結界の揺らぎと関係あるかも知れない。」

 

「それは頼もしい。早苗を任せたよ。」

 

 これは神奈子の台詞。

 

「でもカイルさんって空を飛べないんじゃなかったでしたっけ?」

 

 早苗からの質問。

 

「これを使うさ。」

 

 カイルがそう言いながら指し示したのは手に握る直径2cmの球体。

 

 以前トレバーがこの球体を遺し、アダムが受け取り、カイルがそれを調べく預かっていた物だ。

 

 カイルが球を握る右手に自身の意志とエネリオンを込める。

 

 フワッ、とカイルが床から10cmの所にゆっくりと浮いた。

 

 服や髪が重力を失った様にたなびかなかったのは、重力を中和する力ではないらしい。

 

「ちなみにこの球体は使用者が意志を込める事でエネリオンの変換する他エネルギーを決める事が出来る、というのは前に話したと思うけど、これには明確なイメージの必要があるらしい。例えば僕はこうして地面から浮いているが、まず自重を上回る力で自分を定位置に浮かばせ、その後は自重と同じ力で浮かばせ続けなければならない、その為に必要なエネルギーやベクトルや範囲を明確に理解しなければならないんだ。意志が途切れてしまえば変換も途切れてしまう、使い勝手が良いとは言えない。」

 

 説明しながら意志とエネリオンの供給を止めると床に着陸した。

 

「で、これで行けるって事なんですよね?」

 

「まあそういう事。」

 

 早苗が一言で要約し、カイルが蛇足だったと苦笑いした。

 

「論じるのは後にして、2人共行っておいで。」

 

「大した脅威では無いと思うが、気を付けるんだよ。」

 

 2柱から(諏訪子、神奈子、の順)言われ、2人は出発する事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宝船?

 

「......それが空を飛んでたって里中で噂なんだって、ブライアン君は聞かなかったの?」

 

「知らん。」

 

 そう俺が言い返した時、鈴仙が僅かにビビった顔をしたのは気の所為ではあるまい。

 

「で、何だと言うのだ?」

 

「い、いや、別に聞いてみただけだけど......。」

 

 俺から質問をしても鈴仙は怯えた様な顔つきで答えた。

 

 まあガキだった頃から顔が怖いだの喋り方が怖いだの言われていたからな。

 

 暫く何も話さず里を歩く俺達。

 

 今日は薬の配送が無いらしく休日だと永琳は言っていた、いや、配達を別の日に回す分休日を作ったのだろう。

 

 そして、永琳から行って来いと言われるがまま俺達は里へ行き何もする事無くただ歩いている。

 

 まあ俺のこんな性格を直す為だろうと見当は付いている。

 

「......ね、ねえ、あの団子屋、里の外に住む仙人が美味しいって言ってたんだけど......」

 

「行かん。」

 

 鈴仙が言い終わる前に俺は即答していた。

 

「......。」

 

「......。」

 

「......。」

 

「......何だ?」

 

 俺がそう問いかけたのは、鈴仙が俺の機嫌を窺い見る様な視線を向けて来たからだ。

 

「......ブライアン君は何かしたい事は無いの?」

 

 何?したい事?

 

「......考えた事が無いな......。」

 

 俺は立ち止まり考え始め、鈴仙も俺に合わせて止まった。

 

 今まで俺が求めて来た物......

 

「......平穏、それだけだ。」

 

「そ、そうなの?」

 

「だから今が不愉快だ!」

 

 怒鳴ると同時に俺は拳を力強く握り地面を大きく踏み込んだ。

 

「きゃっ!」

 

 鈴仙が思わず顔を下に向かせながら1歩下がり、短い悲鳴を上げた。

 

 そして、俺とその足元を交互に見る。

 

 俺も足元を見る、すると俺が踏み付けた地面の箇所に大穴が空いていた。

 

 そして俺を凝視するあらゆる方向に居る群衆。

 

「ハア......。」

 

 俺がため息をつくと群衆は知らぬふりをして離れて行った。

 

「......そ、そのっ、ご、ごめんなさいっ!」

 

 固まっていた鈴仙が解凍したかと思ったら俺に謝罪しやがった。

 

 何故こうなる。

 

 俺は何もしたくない。

 

 だが奴らがそうさせない。

 

 俺が”奴ら”と”違う”のは分かっている。

 

 だから奴らは俺を認めない。

 

 俺は”消した”、俺を拒む奴を。

 

 だが今は消したくない。

 

 二度とあんな惨劇は起こしたくない。

 

 その為にも俺は誰とも関わりたくなかった。

 

「こらっ、女の子が謝ってるのに許さんとは何事だ。」

 

 後ろから不意に聞き覚えのある声を掛けられたかと思い、振り向く。

 

 相変わらずヘラヘラしやがって。

 

「お前こそ俺の癪に障る様な事ばかりしやがって。」

 

 だが俺が今にも怒鳴りそうな態度をしても目の前に居るリョウはまるで動じない。

 

「まあ俺んとこの新メニューでも食ってリラックスしな。鈴仙ちゃんの面倒は俺が見てやるからさ。ちなみに......」

 

 止めろ。

 

 それはリョウに対する言葉か、それとも俺自身に対するのか。

 

 ドガッ!

 

 次に俺が確認した映像は、側頭部を両手で押さえてうずくまるリョウとそれを心配そうに見る鈴仙。

 

「何故だ。」

 

 分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛えや......アイツ行っちまったな......。」

 

「リョウさんが不真面目な態度だからですよ。もう、どうするんですか......。」

 

 リョウは鈴仙から愚痴の様に言われ、ため息をついた。

 

「伝える事があったんだが、鈴仙ちゃん、アイツに伝えてくれねえか?お前さっきでけえ船を見ただろ。」

 

「あ、宝船は私は見なかったけど、里中で噂になっていましたよ。」

 

「カイルが現在調べに行ってて必要だったら俺達を呼び出して俺達が行かなければならんかも知れんだとよ。通信機はあるだろ?カイルから協力の依頼が来るかもしれないって訳。それをブライアンにも伝えといてくれんか?」

 

「良いですよ。でもブライアン君は私や他の皆の言う事を全然聞かない時があるんですけど......。」

 

「心配すんな、ブライアンはあれでもやるべき事は分かっている筈だ。」

 

 心配する鈴仙を余所に、リョウは自分の考えが正しいかのように発言した。

 

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