東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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93 イカリ

「......鍵、ですか?」

 

 早苗がカイルの発言を確認する為に訊き返した。

 

「この扉を開くには鍵となるエネルギー源と、そしてあの倉を修復する必要があるらしい。」

 

 カイルが自信あって予測するのは、自身の演算能力があっての事だ。

 

 空間から情報を読み取るだけでなく、現在の情報を受け取った事による過去の推測や未来の予測まで可能になる。

 

「まず、倉を修復する為にはっと......」

 

 論じるよりも実際にやった方が早い、とカイルは首にぶら下げたトレバーの宝玉を握った。

 

 狙いは既に定められ、後はエネリオンを送り標的にどんな状態を加えるのか。

 

 エネリオンの弾丸が宝玉を握る掌から発射され、宙に浮かんでいる物体へ向かって命中した。

 

 命中した目標を甲板に墜とし、物体を覆う幻影、即ちエネリオンを打ち消す。

 

 それは、先程早苗がUFOと見間違え、カイルがその正体を幻影であると突き止めた木片だった。

 

 早苗視点からだと空を飛んでいたUFOが突然撃ち落され、甲板に墜落したのが見えた。

 

「あっ!」

 

 それだけでなく早苗は目の前の出来事に驚き声を上げた。

 

 UFOが突然和風の建築材らしき木片に姿を変えたからだ。

 

「カイルさんの言う通り幻影だったんですね。それで、倉を修復するにこれが必要って事ですか?」

 

「ああ。だけど木片は見るからにここにある分では足りない。恐らく地上に散らばっていて、それを探しにこの船の人達が地上に降り、船が自動操縦になっているのかも知れない。」

 

「私達も探しに行きますか?」

 

「そうしよう。扉を開けるのに必要なエネルギー源もまだ分かっていないし、探さなければ何も動かなさそうだ。」

 

 早苗の提案にカイルが賛成し、2人は船の縁から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幻想郷には自然がありふれているが、俺は嫌いだな。

 

 心が落ち着くとは良く言うが、俺は心が静まる度に余計な事を考えてしまう。

 

 だからといって俺は文明が好きな訳でも、というか寧ろ嫌いだ。

 

 人間共の忌々しい音を聞かない代わり、自分の事ばかり考える。

 

 俺は自分が何なのか分からない。

 

 俺がこの世に生まれてから「あの日」までの13年間、管理組織に実験され50年余、結論が出ない。

 

 俺の両親は難病で死んだらしく、俺はとある科学者夫妻に引き取られ、育てられた。

 

 俺は両親の事を知りたかった、が誰も教えてくれなかった。

 

 俺は次第に自分の事に気付き始めていた。

 

 人間の形だが、人間を遥かに越えている。

 

 だが自分ではそこまでしか分からない。

 

 「あの日」以来から俺は更に自分の事を知りたくなった。

 

 ビルを殴り壊し、音速を超える速さで動き、爆撃に耐え、銃弾すら見える、何より俺が念じた物が「破壊」される。

 

 俺が何かの人間以外の怪物だってならまだ分かる。

 

 だが俺は人間だった。

 

 カイルの奴によればDNAは殆ど人類と一致しているらしい。

 

 だがその僅かに違う部分は、俺が地球上の生物では無いという証拠でもあるのだ。

 

 誰か教えろ!

 

 心の叫びを誰かが聞いてくれる訳でも無いが......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~あ、探すのもう疲れた~。」

 

 河原に寝そべるのは船幽霊の村紗水蜜。

 

 黒のショートヘアーに青緑の瞳、特徴的なのは彼女か着るセーラー服と、隣に置かれている長さ1mはあろうかという錨。

 

「あんまり見つからないし、やっぱ船長としてあの船に居たかったかな......まああれ自動だけど。」

 

 昔、水難事故によって死んだ村紗は、霊となって来る日も来る日も水辺に近寄る人物や船を水の中に沈めた。

 

 その所為である人物によって遥か昔に封印されたのだが、その封印が解かれ、反省して幻想郷に居る今でも悪戯しようという程度に本能は残っている。

 

 その本能は、河原に別な人影を見つけた事によって刺激された。

 

 大柄で凄味のある顔の青年、この人物にしようか。

 

 向こう岸に居る男はこちらには気付かず、川の水面を覗き込んでいる。

 

 男はそのまま水に手を突っ込んで飲み始めた。

 

(始めるなら今だね!)

 

 男よりも上流に居る村紗は川に手を触れ、静かに流れる水の心地良い感触が伝わって来る。

 

 突如として穏やかな川はまるで雨が降った後の様にその水量を増し、下流の男へ襲い掛かった。

 

 これから起こる出来事を思い浮かべ、村紗は悪戯を成功させた子供の様な笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドドドドド!!!!!

 

 洪水?何だあれは?

 

 俺が見たのは静かに流れる川の上流から急に大量の波が押し寄せて来た所だった。

 

 まるで俺がここに着いたのに気付き、俺を飲み込もうとばかりにしている。

 

 だが、俺が驚きもせず逃げもせず、この場に立っているのは無謀では無い。

 

 大自然を人間が操るのは不可能と良く言われるが、俺はそうは思わん。

 

 試しに俺と同じ「力」を持ってみると良い、それだけで自然さえ崩す事が可能だ。

 

 落ち着きながら右手を前に差し出す。

 

 右手から発射されたエネリオンが大波に命中し、一部の水が”破壊”された。

 

 言い換えれば水が酸素と水素に分かれた事だが、液体の密度のまま気体に分解されれば、気体は周囲の空気と圧力を均等にしようとするから周囲に爆発的に拡散する。

 

 後続の水が気体の圧力で押しのけられ、俺の正面には何も流れないスペースが出来上がる。

 

 後はエネリオンを撃ち込み続ければ良いだけ、それだけで俺は自然災害から簡単に身を守る事が出来た。(そもそもトランセンデンド・マンは洪水程度では死にはしないが、ブライアンがこうやって防いだのは水流に身を晒すよりも楽だったからだ。)

 

 水流に気を取られて後から気付いた事だが、上流でエネリオンが活性しているのを見るとこれは人為的な洪水らしい。

 

 静かな海を割って突き進むモーゼとは違って荒れ狂う洪水を割って俺は上流へと登って行く。

 

 すると、不意に洪水が止んだかと思うと、俺の正面に水兵服を着たガキが見えた。

 

「何のつもりだ、言え。」

 

「......ひょ、ひょっとして今ので全然無事だった訳?しかも濡れてもいないし......」

 

 おどけた年相応の女のガキらしい声だ。

 

 早く答えろ。

 

「早くしろ!」

 

「ひっ!......その、ちょっと悪戯でもしようかと、ね......うわっ!」

 

 ガキが2度も悲鳴を上げたのは、前者は俺が怒鳴ったから、後者は俺がガキから50cmと離れていない距離まで接近したから。

 

「......二度とするなクズガキ!」

 

 俺の腕は無意識にガキの襟まで伸びていた。

 

「村紗!危ないっ!」

 

 この場で状況が一変したのは、俺でも目の前のガキでも無く、第三者の声から始まった。

 

 声のした後ろへ振り向くと、そこに見えたのは薄いピンクの煙だった。

 

 慌てる事も無く右手を前に伸ばした俺はそこからエネリオンを発射する。

 

 煙が俺を覆おうとしていた体積分だけ消え去り、残りは俺を避ける様にして広がった。

 

 すると、煙が急に1か所に集まったかと思うと、秩序状態の雲から無秩序状態の人の形をした。

 

 下半身は無いらしいが、上半身は白く長い髭を生やした、筋肉があって体格の良い老男、しかも雲が元々ピンクだった為肌もピンク色となっている、それが宙に浮いていた。

 

「雲山、大丈夫ですか?」

 

「危なかったが、次からは油断せんぞ。」

 

 低く威厳のある声で言う雲男の後ろには別の女性。

 

 東アジアに多い女性仏教徒(ブライアンは「尼」という言葉を知らなかった)がする様な格好だが、この女も仏教徒なんだろうか。

 

「ありがと一輪、雲山。」

 

「それより、私が見た限りでは貴方にあの男が襲っている様に見えたのですが......。」

 

「そうだよ!だから助けて!」

 

 咄嗟に答えた村紗に対し、一輪の目つきが変わった。

 

「仲間に手を出すのは許しません!」

 

 あの水兵の馬鹿ガキが、適当に答えやがったお蔭でこちらが悪人みたいに思われたじゃねえか!

 

「溺符「ディープヴォーテックス」!」

 

「稲妻「帯電入道」!」

 

 俺は咄嗟に身を捻り、迫り来る低速(ブライアン視点)の光弾を難無く避ける。

 

 まあこんな攻撃など避けるまでも無いが……

 

 手を着き後転しながら俺はどうするか考える。

 

 殺さんようにせねば、俺は殺したくないんだ。

 

 心に決め、俺は更なる攻撃を受け流す。

 

「とおっ!」

 

 不意に低く唸るような男の声、振り向くと先程の人型の雲が拳をこちらに向けて殴り掛かっている最中だった。

 

 俺がすぐさま頭の前に掲げた腕は雲の太い腕を受け止めた。

 

 雲のくせにやたら堅いパンチだな。殴る時だけ固まっているのだろうか。

 

 そんな事はどうでも良く、俺は次に来る拳撃を連続して受け止める。

 

 相手が拳を左右連続させると俺も左右に合わせ拳を逸らす。

 

 次の1発、俺は雲の拳を自分の拳で迎え撃った。

 

 予想通り、雲は俺の拳を受け、しかも自分の放ったパンチの反動に勢いを追加され後方に吹き飛んだ。

 

 今度は左右をちらと見る。水兵のガキと仏教徒の女がそれぞれから俺を挟み撃ちにするように弾幕を放つ。

 

 俺は慌てもせず、腕でそれらの攻撃を全て弾いた。

 

「弾幕をいとも簡単に腕で防ぐなんて......」

 

「なら、転覆「撃沈アンカー」!」

 

 水兵のガキが手にカードらしき物を持って何か唱えたかと思うと、巨大な錨の形をした弾幕が俺目掛けて発射された。

 

 臆する事はない。俺は何時も通りにすれば良い。右手を錨に向ける。

 

 俺を踏みつぶそうとしていた錨が突如その形を失い、消えた。

 

「今のは一体?!」

 

 今度は雲が俺の背後を取って俺を手で掴もうとしている。

 

 俺は逆にその腕を掴んでやろうと思い、相手の腕を潜り抜けその腕を掴んだ。

 

 だが手応えが無く、掴めない。まあ雲だから当然か。

 

「油断したな!」

 

 雲が俺に言いながら手を手刀にして殴り掛かる。

 

 だから俺も言い返した。

 

「油断では無い。余裕だ。」

 

 俺は左裏拳を顔面へと雲が俺に攻撃を当てる前にヒットさせていた。

 

 よろけた雲は怯みを見せず更に俺に向かって拳を撃ち込む。

 

 俺はそれに合わせて雲の肩、に当たる部位へ、そこへ攻撃を当てる事で出端をくじくと同時に攻撃を当ててもいる。

 

 一歩、といっても足が無いのでその分だけという意味、下がった雲は俺の様子を窺おうと腕を胸の前に構えてじっと動かない。

 

 雲が前に出した左手を着き出そうとする、それと同時に俺が前に出している左足が動いた。

 

 結果、俺の蹴りが雲のジャブを蹴り止め、そのまま同じ足で雲の側頭部へ蹴りを決めた。

 

「雲山!」

 

「分かっとるわい。」

 

「神拳「天海地獄突き」!」

 

「ぬおおおおお!」

 

 仏教徒がまたあのカードらしき物を持つと、雲の方が凄まじい勢いで俺に突進しつつ連撃を繰り出し、仏教徒の方からは援護に後方から弾幕を張る。

 

 元々どちらも大した事が無かったから合わさったって大した事はあるまい、と思っていたが、中々強い。片方に攻撃の隙があってももう片方がそれを許さない。

 

 まあ大した事はないのは事実だが。

 

 俺は掌を没教徒の方へ向けた。

 

「きゃっ!」

 

 女らしい甲高い悲鳴を上げたのは、突然今まで立っていた地面が何の前触れも無く消滅したからだ。大した深さでは無い(1m)が仏教徒はバランスを崩し、穴に落ちた。

 

「一輪!」

 

 雲が後ろの仏教徒を心配して振り向くと同時に、俺は地面を蹴った。

 

 直後、目の前には穴に落ちた女が居て、俺はそれを迷う事無く持ち上げる。

 

 女の首を左手で掴み、もう片方は近くにあった川原の岩へ向けた。

 

 エネリオンを発射、それだけで左手の先にあった岩はケイ素原子や酸素原子、その他金属原子へ分解され、すぐに風で飛ばされてしまった。それらの現象が一瞬で起こった結果、奴らには岩が一瞬で姿を消したと見えるだろう。

 

「今度はこの女が消えるぞ。」

 

「ぬぬ~......」

 

「汚い真似をしおって......」

 

 水兵のガキ、雲がそれぞれ言う。

 

 汚い手だというのは俺も認めるが、実戦などどんな手段でも相手を殺さねばならん。甘っちょろい奴らめ。

 

「俺の頼みを聞けばコイツを放してやる。」

 

 俺は2人を睨み付けた。

 

「た、頼みって何なのさ?」

 

 水兵のガキが俺に怯えながら言った。

 

「二度と俺に関わるな、クソ共。出来なければお前達も消えろ。」

 

 俺は乱雑に女を投げ捨て、奴らの前から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雲居一輪は仲間の村紗と相棒の雲山に助け起こされた。

 

 彼女は入道遣い、何時も彼女の隣に居る入道雲の雲山は遥か昔、自分を認め慕った。

 

 彼女の目的も村紗と同じくある人物を蘇らせる事。

 

 その為に飛倉の破片を集めている。他に2人仲間が居るが、その2人も同じく探し続けている事だろう。

 

 一輪が偶々村紗の担当範囲を通り過ぎた時、あの男を見つけた。

 

 村紗は、自分を襲って来た、と主張していたが、あの男からは罪を感じなかった。

 

 だがとても怒っていた。

 

 きっと彼は迷っている。

 

 一輪はブライアンが仏教徒だと推測していた通り、尼でもある。

 

 仏教は宗教の一種であるように、心に安らぎを与える物。仏教信者として、一輪は彼を心配していた。助けたいとも思った。

 

 だが、彼女自身の力では足りない。もっと強い力が......

 

 そのためにも「聖」を......




ここまで続くと自分の表現力やパターンの無さに泣けてくる...

タイトルは村紗のスぺカでも出て来る「錨」とブライアン君の「怒り」を掛けたんですが...
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