何の事か分かりますか?
チョコレートを漢字で書くとこうなるそうです。
なんか甘くも美味しくもなさそうに感じてしまうのは私だけでしょうか?
商業主義に乗せられているんではないか?などと思いながら
世界中のお祭りや風習、宗教行事を楽しめるイベントに変えてしまえる
そんな日本人て素敵だと思いませんか?
今回はチョコが主役のバレンタインに関するお話です。
今回も前回同様に色々と痛いお話です。
旬、と言う言葉がある
野菜や果物、魚介類などの収穫物の最収穫期とか一番おいしい時期を指す言葉だ。
また10日という意味もあり、月を上旬、中旬、下旬と区切って表現する時に使われたりする。
本来の収穫物に対しての使われ方を考えると元々の旬は結構短い期間だったんだ
なんて思ったりする。
また本来の言葉の使い方から転じて【旬の話題】のように物に対して使われたり、
あるいは度々加工食品に旬という言葉を使ったりもする。
おせち料理に使われる食品などはいい例で、伊達巻や紅白の蒲鉾、黒豆や栗きんとん等は
年末から正月が旬といっても差し支えないのではないだろうか?
ケーキの旬はクリスマスの、チョコの旬はバレンタインの頃
と、断言してもあながち間違いではないだろう。
チョコレートの旬であるバレンタインデー前の1月中旬ころからそわそわしだす人々がいる。
商機を逃すまいとする菓子メーカーの、あるいは小売店の関係者が思い浮かぶが
最も【純粋に】そわそわするのは思春期の男女ではなかろうか?
彼もそんなそわそわしている思春期の少年であった。
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彼は『相手が誰であってもいいからチョコレートをバレンタインに欲しい』と思っていた。
『誰でも』と思っている時点で既に【純粋】とは程遠いのだが切望する思いは強かった。
あぁーーーー
だれかバレンタインにチョコくんねーかなー
だれでもいいから、いっこでいいからチョコほしぃーなぁー
あっ
母ちゃんと男は除外でー
本人は神頼みのつもりで独り言をつぶやいた。
神頼みだとすれば実に不埒な物言いだが
彼がこのように思うようになったのには実はきっかけがあったのだ。
それは正月休み明けの初登校の日の事だった。
クラスメート達との話題の中心は休み中の事、特にお年玉についての話題が盛んだった。
欲しかったゲームや漫画を買った話、はたまた好きなお菓子を買い食いした話、
そんな他愛もない話に花が咲いていた。
やがて話題は貰ったお年玉の額の話になっていった。
「全部でいくらもらった?」
との質問に、彼は実際にもらった額より思い切って1万円上乗せした額を答えた。
『多く言い過ぎたかな?』
と、ちょっとだけ罪悪感を感じていた。
「えー、うっそーー」
友人たちの反応に
『やっぱり多く言い過ぎたか』
と心が痛んだ瞬間
「たったそれだけー」
「すくねーーーー」
「○○君かわいそー」
と、想像していたのとは真逆のクラスメート達の反応。
彼は激しく動揺しながらも
「今年はあんまり出かけなかったから、本当にもらうのはこれからなんだよ」
と強がるのが精一杯であった。
「だよねー」
「なっとくー」
の友人たちの言葉を意識の遠くで聞いていた。
学校から帰ったあと、彼は両親や親族の経済力の貧弱さを呪った。
翌日、子供たちの話題は翌月のバレンタインデーの話題へと移っていた。
友人たちの誰一人としてチョコをもらった経験がなく
【バレンタインにチョコをもらう】事をまるで神事か何かのように憧れの口調で語り、
チョコを入手出来る者をまるで勇者のように尊敬を持って語っていた。
その時彼は心に誓ったのだ。
『所詮お年玉は家族や親族の経済力、本人の魅力で手に入れるチョコの方が絶対価値が高い』
『絶対にチョコをもらってこいつらを見返してやる、羨ましがらせてやる』
そんな心情はおくびにも出さず
「バレンタインか~、でも俺って和菓子派だからチョコは苦手なんだよねー」
と言うと、友人たちは一斉に
「んなこと言ったってもらえっこないじゃん」
「無理無理ー」
「そーいう事は貰える人が言うもんだよw」
嘲笑されてしまった。
この事が彼の決意をさらに強いものにした。
『ぜっっっっっったいにチョコもらっちゃるーーーーーー』
ただ・・・・
まったく当てはなかった。
家に帰り冷静に考えてみると
はっきり言って無理ゲーっぽい。
ゲーム開始直後にラスボスに挑むような話だ。
撃沈、玉砕の末路しか想像できない。
しかし、【友人たちを見返してやりたい】気持ちは少しも萎えない。
自分で買うか
とも思ったが、ばれたらこれ程恥ずかしいことはない。
二度と立ち直れないかもしれない。
『ここは正攻法で、貰える自分になるしかないか』
結局は無理ゲー的結論に落ち着くしかなかった。
バレンタインの話題が出たせいなのだろうか?
翌日からの友人たちの態度が変だ。
妙に女子に親切だったり、男同士の話のはずなのに変に女子を意識していたり
受ける楽しそうな話題を声高にしゃべったり。
『こっ・・・こいつらー!!』
口にこそしないが誰もがバレンタインチョコゲットに向けて行動を開始していた。
何故察することが出来たかと言うと、友人たちの行動のことごとくが
彼も参考にしようとした【もて男を目指すハウツー本】そのものだったからである。
〈敵を知り己を知らば百戦危うからず〉
宮本武蔵の五輪の書の言葉であるが、
チョコゲットを目指す彼の意識は剣豪の域にまで達していた。
『もて行動だけじゃ駄目だ、非もて行動こそ気をつけなきゃ』
そう思った彼は友人たちに対する女子の評価評判を注意深く観察することにした。
下ネタや下品な話は受けがいい、だが受けるからといってそんな話ばかりしていると
【下品なやつ】のレッテルを貼られるだけだ。
当然恋愛対象にはならない。
オーデコロン等の香水もそれ単体はいいかもしれないが
口臭きつかったら何の意味もない。
きざっぽい言動もドラマの中の美形がすればうっとりさせれるかもしれないが
ガキがやったら変なやつにしか見えない。
芸人のような面白い行動もへたすりゃおかしな行動と取られてしまう。
髪型決めてもふけが出てたら不潔な印象しかあたえない。
清潔感が大事とか石鹸の香りとか言われたって
学校のレモン石鹸を服や体にこすり付けたって効果があるはずもない。
スポーツマンを演出しようとしたら汗臭い。
男らしさを演出しようとしたらがさつで乱暴。
いやー、中々に難度が高い。
友人たちの評判はかえってだだ下がりであった。
ある日事件が起きた。
クラスでは一番もてるであろうM君の評価がさんざんになっていたのだ。
M君は長身美形、勉強も出来るしスポーツマン。
クラスでは別格といっていい存在だった。
当然他の奴らのようにわざわざもてるような行動を取ることもなかった。
何が起きたのか探りを入れて原因が分かった。
「もーやっだー」
「げ・ん・め・つ(>_<)」
「あれは無いよねー」
「百年の恋も冷めちゃう」
何があったかと言うと
M君の鼻から一本長い鼻毛が出ていて、あろうことかその先端に鼻くそがくっついていて
しかも本人まったく気づかず歩くたんびに鼻の下で振り子のように揺れていたそうだ。
一人が見かねて指摘しながらティッシュを差し出すとその鼻毛を抜きながら汚れも取ろうとし
その瞬間、くしゃみをしながら盛大におならをしてしまったそうだ。
このエピソードは(本人には気の毒だが)非常に参考になった。
それ以前からリサーチの結果を踏まえて毎日風呂に入り、頭を洗い、歯磨きをしっかりし
同じ服を続けて着ていかないように、臭くないようにと気を遣い
ズボラな母の代わりに自身の洋服や下着を入浴時に洗ったりと努力を重ねてきたが
鼻毛にも気を付けるようになった。
通常の毛抜きは先端が平らで鼻の外に近い部分の鼻毛処理に問題は無かったが
角度の問題で奥の方の毛が抜きづらかった。
彼は手先の器用さを生かし、新たに毛抜きを買ってきて
先端を斜めに加工し奥の周囲の毛でも抜きやすいようにした。
ある日、彼はいつものように風呂に入り、洗髪、洗濯をし、鼻毛の処理を始めた。
自作の先端が斜めに加工された尖った毛抜きを使っている時事件は起きた。
むずむずっとした瞬間
『ヤバい』
と思う間もなく盛大なくしゃみをしてしまったのだ。
毛抜きを持つ手が逃げ遅れてしまっていた。
ザクッビキッブシュッが混ざったような嫌な音がした。
!★※☆><▼!!△※
自信作の毛抜きは彼の鼻の左右の穴の隔壁といっていい場所に突き刺さり
その部分の肉をむしり取っていた。
浴室の床に流れた血が排水溝に流れていく様をぼんやり眺めながら
『やっべー、鼻の穴ひとつになっちゃったかも』
『鼻の穴一個じゃバレンタインのチョコは期待できないなー」
激しい出血で貧血を起こしかけながら
この期に及んでそんな事を考えている少年であった。
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肉を引きちぎったと思ったのは彼の勘違いであったが
傷は深く、外科医は
「多少痕は残るけど覚悟してね」
と言いながら傷口を縫った。
「それにしてもはさみで鼻毛を切ってればここまでひどい事にならなかったでしょ」
に対して彼が
「その手があったか」
と言うと
間髪を入れず彼の母が
「それこそはさみなんか使っていたら鼻ごともげちゃってたかも知れないでしょーに」
と怒鳴ったのであった。
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後日談
鼻毛ってやつは嫌われる存在であるが結構重要な役割を持っている。
ほこりやウィルスが体に入りづらいようにフィルターの役目をしてくれているのだ。
そのフィルターを自ら失くしてしまった上に色々と無茶をしたために
案の定、彼は風邪をひいてしまった。
しかも念願のバレンタインデーの2日前からである。
普段風邪をひいた時などは親の目を盗んでまともに薬を飲まなかったり
多少体調が良くなると油断して遊んでしまい長引く事が常であったが
この時ばかりは彼は【いい子】であった。
母親が驚くほどであったが、彼にしてみれば
『何としてでも当日は学校に行きたい』
その思いからであった。
はたして当日、彼は回復し登校できた。
教室に入る時、誰かがチョコを渡しに来ないかとどきどきしていた。
が、そんな夢のような事が実際に起きるはずがない。
意気消沈のまま時が流れた。
この日の授業は午前中だけで、給食、昼休みのあと、ホームルームで終了であった。
昼休み、クラス委員が音頭を取り全員でドッチボールをした。
教室に戻りホームルームが終わり帰る支度をしようと机の中の教科書を取り出そうとすると
何か四角いものが手に触れる。
!!!!
『まさか』
と思いつつ取り出してみると
それは赤い包み紙にくるまれたまぎれもないバレンタインチョコレートであった。
彼は泣きそうなのを必死でこらえ
「あっあれー?」
「なんだこれー」
とチョコを机から取り出した。
手紙等はついていない。
『誰がくれたんだろー?』
女子たちを見ると目を合わせようとせずそそくさと帰っていく。
『照れてるのかな?』
『皆がみんな同じような態度って事はお金出し合って合同でくれたんだろか?』
そんな事を考えていた。
友人たちを見ると女子と同じように無言で帰っていく。
『あーそうですか。無視ですか。』
『くやしい気持ちは分かるけど何か言えよー』
M君が近づいてきて
「分かったからさっさと帰ろーぜ」
と声をかけてきた。
他の奴らも硬い表情をしている。
彼は内心の飛び上がらんばかりの得意な気持ちを抑えつつ
「チョコって苦手なんだよなー、もらうのはうれしいけどちょっとねー」
などと周りに聞こえるように独り言を言いながら家路につくのであった。
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バレンタインデー2日前
女教師はホームルームの最後に生徒たちに話しかけた。
「明後日はバレンタインデーなのはもちろん皆知ってるよね?」
女子の中には意中の誰かにチョコあげたいって思ってる子がいるかもしれないけど・・」
きゃーっ
やっだー
はずかしいー
女子がざわめく。
「でも、知っての通り学校にお菓子を持って来るのは禁止となってます」
えーーーっ
そーだったー
異論と納得の声があがる
「なので、当日はお昼までだから渡したい人は学校から帰ってからにして下さい」
またしても
きゃー
と女子の嬌声
「それと、せっかくのこういう日だから、先生から男女全員にチョコを渡します」
「先生みんなの事だーい好きだからその気持ちです♪」
女子の嬌声に加え
うおぉーーーっ
と男子の雄叫びが混ざる
「雰囲気も大事だからお昼休みは全員校庭にでてネ」
はーい
「それと、他のクラスや先生方には内緒だから、そのつもりで黙って持ってかえってねー」
はーい
「それでは当日楽しみに。さようなら」
せんせーさよーならー
ありがとー
せんせー大好きーーー
【2日前の真実】に関して彼に事実を告げたクラスメートはいなかった。
これは意地悪などではなく、最大の優しさであった。
ただ、以前は単純で能天気な奴と思われていた評判に
ちょっとイヤな奴という評価が加えられたのは確かである。