防空棲姫になっちゃったんだが、どうしよう   作:防空棲姫(憑)

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一日目

 色素の抜け落ちた純白の髪。そして鬼を彷彿とさせる太く巨大な角が二本。

 その紅き双眸にはこの世の憎しみを全て凝縮したような煌めきが内包していた。

 

 深海棲艦の特徴とも言えるその歪な艤装にまるで女帝のように腰かけた彼女は、ニヤリと見る者を嘲笑うかのような妖艶な笑みを浮かべて挑戦者を出迎えた。

 

 「フフ……キタンダ?……ヘェ……キタンダァ……」

 

 歪なエコーの掛かった聞く者を気圧すその声音は、まさしく深海の底より君臨した≪姫≫そのものであった。 

 

 対峙する艦娘の凛々しい美声が海域を貫く。

 

 「砲雷撃戦よーい!」

 

 ――戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 +++

 

 俺はこの夏に艦これを始めたいわゆる新米提督というやつだ。

 

 アニメの影響もあってか最初に選べる艦娘は吹雪を選び、アニメとまんまのそのボイスを聞いてテンション上がったのはいい思い出だ。

 

 俺が鎮守府に着任したその頃、夏休みということもあってか艦これではちょうど夏イベントなるものが開催されていた。

 攻略ページとか動画サイトに投稿されるプレイ動画を見て、艦これをプレイする一提督としてイベントに参加したい気持ちはあったが、先にも述べたとおり俺はこの夏艦これをプレイし始めたばかりの新米であり、資材も艦娘もレベルもまるで足りていなかったので泣く泣く断念した。

 課金して強引に参加する手もあるにはあったが……流石にその奥の手は俺の現実面での財政的に厳しいところがあったので使うことはなかった。

 

 とりあえずこの夏は進めるだけ基本ステージを進めて、艦これのノウハウを学んで、イベントの参加は次回からにしようと踏ん切りをつけ、俺は艦これをプレイしていた。ああ、そういえば羅針盤に振り回されてなかなか先に進めないこともあって、『ああ、これがラスボスは羅針盤というヤツか』ということをつくづく実感させられたこともあったなぁ……。

 

 どうにか金剛型四姉妹を揃え第四艦隊を開放することができ、大型建造もできるようになったのでちょっと試しに大和コイヤァ! と一回だけ大型建造やってみて大和がマジで来た時には本当に一瞬時が止まった。8:00:00? ……ウソだろ? って。まぁ、まだ司令部レベルも低くて資材の余裕もまるで無かったので全然運用できませんでしたがね(笑)

 

 そうこうしているうちに夏休みが終わりを告げ、同時に艦これ夏イベも終わりを迎えた。やっぱイベ参加できなかったなぁと俺はその事を少しだけ寂しく思いながらもベッドにもぐりこんだのだ。

 

 それでなんだが……………………………どうしてこうなった?

 

 「……」

 

 現在の俺の状況を簡潔に説明すると。

 

 1海の上にいる。

 2何かめっちゃゴツイ何かに座っている。見てみたら禍々しい艤装だった。

 3身体が女になっていた。もっと具体的に言うのなら防空棲姫になっていた。

 

 「……ハァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!?」

 

 漏れ出た悲鳴は妖艶な女性の声に歪なエコーがかかったかのようなものであったが、その事実すら認識することなく俺は改めて海面に映る自分の姿をよく見る。

 

 腰元まで伸びた白い髪に血のように紅い瞳。血の気の失せた白い肌。頭に生えてるのは何これ……角?

 あと、どこか挑発的な印象を受けるその可憐な目鼻立ち。やばい、綺麗すぎるんですけど。

 そして確かにある二つのふくらみ。はっきり述べるのならばおっぱいです。

 

 間違いなく防空棲姫だ。表情こそ驚きのものとなっているが、ネットの画像で見たまんまの防空棲姫だ。

 

 ここで防空棲姫について簡単に確認しておくと。

 

 1今回俺が参加できなかった夏イベにおける新登場の深海棲艦にしてラスボスである。

 2異常なまでの装甲値と対空値を持っていてその上火力も普通の戦艦なみに高い。これで駆逐艦というのだから驚きである。ネットでよく『お前のような駆逐艦がいてたまるか』と書かれていたが、まさにその通りだと思う。

 

 「ドウシタ?」

 「イッ!?」

 

 急に声をかけられたので見ると、そこには黒髪が美しい一人の深海棲艦――戦艦棲姫の姿があった。って、戦艦棲姫!?

 

 「体調デモ悪イノカシラ?」

 「……イエ……別二……何デモナイ」

 

 艦これにおいて反則級の火力と耐久を擁する彼女に対し、反射的に漏れ出たのは男としての俺の言葉では無く女性の言葉だった。なんか勝手に防空棲姫仕様に翻訳されてないか、コレ?

 

 「ソウ……ナライイワ」

 

 そう言うと戦艦棲姫は再び俺の横でポツンと立ち尽くす。

 

 「少シイイカシラ?」

 「ナ二カシラ?」

 「アタシタチ、ココデ何シテルノ?」

 

 すると戦艦棲姫は信じられないものでも見るかのように俺を見てきた(といっても基本が無表情なので、本当によく見ないとわからないとるに足らない僅かな変化であるが)が、すぐに説明してくれた。

 

 「アメリカ――オーストラリア間ニオケルシーレーンノ分断。ソレガ私タチニ与エラレタ使命ヨ」

 「アア……ソウダッタワネ……(マジで!?)」

 

 エエッ!? 何それ!?

 そう言ったつもりであったが、やはり口から出た言葉は俺の意図したものとは僅かに異なったニュアンスの言葉。どうやら俺の思ったことは全て防空棲姫であるならばこうなるであろう言葉に自動的に翻訳されてしまうみたいだ。……なんだよ、その仕様。

 

 よくよく見てみると、俺の隣に立つ戦艦棲姫のほかにもう一人、戦艦棲姫がいて、あと重巡ネ級、さらには駆逐二級の姿も見える。

 

 「……」

 

 ちょっと待て。この編成、どっかで見たことあるぞ。っていうか今夏イベ最終ステージ≪FS作戦≫の敵編成と同じじゃないですかヤダー。

 

 となるとまさかとは思うが、コレ、俺たち攻略対象なの? 夏イベみたいにガンガン連合艦隊で攻められちゃうみたいな展開なのコレ?

 

 とその時、まるでタイミングを見計らったかのよう上空を小さい艦載機がブォーンと飛んでいく。『敵艦隊見ゆ!』と脳内でなぜか再生されたんだがまさかだよな? あれ、敵艦隊の索敵とかじゃないよな? 見つかったら回避と命中が上がるとかそういうのじゃないよな?

 そんな内心冷や汗だらだらの俺に戦艦棲姫が耳打ちした。

 

 「来タワ……イマイマシイカンムスドモガ……」

 「……(ゑ?)」

 

 見ると遥か前方の海域から迫り来る無数の存在があった。間違いなく艦娘じゃんあれ。砲口こっち向けて敵意バリバリじゃんあれ。ちょっ、待て、ふざけんな。何これ(艦これです)? アレ? これから命を賭けたサバイバルバトルが始まっちゃう的な展開ですかコレ?

 

 内心パニック状態の俺のこの思いをこの身体が勝手に防空棲姫仕様のモノへと変換した。

 

 「フフ(錯乱)……キタンダ(マジで!?)?……ヘェ……キタンダァ(マジで殺るおつもりなんですか!?)……」

 

 なんでそーなる!!!

 




 防空棲姫(憑)
・異常なまでの対空と装甲を合わせ持つ、通称『お前のような駆逐艦がいてたまるか』に憑依してしまった男。ちなみに防空棲姫とは2015年夏季のイベント『反撃! 第二次SN作戦』におけるラスボスであり、本作においても第7海域の戦線防衛を任されている(つまるところラスボス)。とにかく死にたくない――ので各鎮守府から送られてくる艦娘たちと戦うことになっていく。内心はパニックに陥りやすい大したことのない男なのだが、なぜか周囲の深海棲艦からはミステリアスで頼りがいのあるリーダーとして勘違いされている(なお男の内情は全て、防空棲姫仕様に翻訳されており、それが勘違いを呼ぶ原因となっている)。なお、男は艦これをこの夏に始めたばかりであり、イベントに参加したいとは思っていたが流石に今回の参加は(艦娘、資材的に)無理ということで諦めている。イベントの概要は攻略wiki等で一通りは知っている……のでそこのところの知識を生かし、この死境を生き延びることができるか注目である。ちなみに本人は自覚していないが、その身体的ステータスは廃スペックである。

 ステータス(注:本気じゃないッス)
耐久:510
火力:400
装甲:666
雷装:190
対空:780
射程:長

 ……実際いたら無理だろ、コレ。
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