コードギアス 俺の妹がこんなに可愛いくないだとっ!   作:札樹 寛人
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ゲーム と 妹

 ブリタニアの少年ルルーシュ……

 いや、今は千葉県千葉市の少年、高坂京介は妹と契約を結ぶ。

『人生相談』いかなる兄にでも雑用を押し付ける事の出来る絶対遵守の力

 その契約を以って、桐乃は兄に何を願うのか?

 

 * * *

 

「で、どう?」

「圧倒的にお前にセンスが無い事が分かったよ」

「……いや、あれは無いって。 誰も止めてくれなかったの?」

 

 ……落ち着け。落ち着くんだ俺。

 センスの足り無い妹にこれ以上の問答は無用だ。

 俺は折れそうになる心を繋ぎ止めながら、もう早く寝たいと言う思いに駆られていた。

 別に桐乃が大量のオタクグッズを隠していようが俺には関係の無い事だ。

 フッ、こんな低俗な趣味に走るからセンスが下がるんだ。

 やはりこいつは俺の理想とする妹とは程遠い。

 理想の妹で有ると言うならば

 

『素敵です! 流石お兄様ですね』

 

 とこのように持ち上げてくれるに違いないのだから。

 俺のそんな思いを無視するかのように桐乃は自分の言いたい事を続けてまくしたてる。

 

「だからー 私の趣味を見た感想よ! どう思った?」

「ああ……まぁ、驚いたよ」

「そんだけ?」

「正直言って、こういう物に興味が有るとは思っていなかった」

 

 これは率直な感想だ。

 最近では、オタクと言う物に対する偏見も過去に比べれば薄くなってきていると言う。

 アニメやゲームを動画サイトなどを楽しむ女子中学生だって決して少なくは無いのだろう。

 しかし、彼女は俺の知っている範囲ではそういった素振りを見せなかった。

 それに何より彼女が所有しているのは、アニメだけでなくR18の物まで含まれる。

 

 それは流石に、ちょっと闇でも抱えているのでは無いかと思ってしまうのも事実だ。

 

「やっぱりあたしがこういうの持ってるのっておかしいかな……周りだって皆……」

 

 突然しおらしくなってどうしたんだ桐乃。

 はっきり言って、この腹が立つ妹をそこまでフォローする必要が有るのかはわから無い。

 しかしーーそれでも俺はーー

 

「だからどうだと言うんだ」

「え?」

「周りの認識など関係無い。 世界とは自分自身の物だ。

 お前の世界にとって大事な物がそれならば、何人にも否定される物では無い」

「…………」

 

 どんなに可愛くなかろうと彼女は妹だ。

 俺は妹の世界は守らなければならない。

 こう考えてしまうのは何故なのだろうか。 それは宿命にも呪いのようにも思える。

 

「そっか……そーだよね。 たまには良い事言うじゃん!」

「たまに……? それは、お前が俺の話をきちんと聞いていないだけだ」

 

 桐乃の顔に明るさが戻った。

 俺の回答にどうやら満足したようだ。

 しかし……なんでR18の妹物のエロゲーなんだ?

 

 まさか……いや、しかし……

 この場合、想定されるパターンは……56通り

 その内の32が指し示すのは……50%を超える確率で……桐乃は……

 

「桐乃……一つだけ確認しておきたい事がある」

「……何よ」

 

 確認しなければならない……

 事と次第によっては、今後の生活に大きく関わってくる事になる。

 

「何故……ここに揃っているグッズ類の約67%を占めるのが……妹物のR18なのかと言う事だ」

「……なんで……だと思う?」

 

 桐乃の顔には、朱が差している。

 

 …………お、落ち着けっ!! これは想定の範囲内だろう!?

 そうパターン27及び31、37においてこの返しは想定している。

 更に桐乃の顔が赤くなっている、そこも計算に入れれば答えは簡単だ。

 しかし、この答えはーーこの答えではーー

 

 桐乃は徐々に俺との距離を詰めてくる……

 ま、待てっ!! 覚悟はあるのかっ!?

 撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけだっ!!

 

「このパッケージ見てさ、ちょっと良いと思っちゃうでしょ?」

「……は?」

 

 想定外の桐乃の言葉に、俺は本日数回目の間の抜けた言葉を放った。

 ……つまり……どういう事だ? この俺の思考が付いて行っていないだとっ!?

 

「だぁかぁらぁー! すっごく可愛いじゃん!」

 

 いや、確かに昼間に検証実験を行った際に詩織のキャラクターデザインは悪く無いと思った。

 思ったがーー俺は、瞬時に状況を整理する。 一旦ロジックの組み直しが必要だ。

 

「つまり……純粋に……18禁ゲームの妹キャラが可愛いから……好きだと?」

「うんっ!」

 

 満面の笑顔で返事をする桐乃。 そこには躊躇も後悔も何も無い。

 ただ、純粋に好きであると言う気持ちだけが滲み出ていた。

 

「ほんと可愛いんだって! 大抵ギャルゲーだとプレイヤーは男って設定だから

 お兄ちゃんとかおにいとか兄貴とか兄くんとか――その娘の性格やタイプに添って

 『特別な呼び方』でこっちを慕ってくれるのね。それがもう本当……グっとくるんだぁ」

「なるほど……お兄様……とかもあるわけか」

「……あんた……そう呼んで欲しいの」

「お前にそう呼ばれたいと思った事は無い」

 

 むしろ桐乃がそんな風に呼んで来た日には、俺の精神がヤバイ気がする。

 まぁ、そもそも兄と呼ばれた事すら無いような気がするが……今更だな。

 

 その後は桐乃によるキャラクタートークが延々と続いた。

 様々なゲームのパッケージを見せつけながら、黒髪ツインテールが良いだの

 清楚で大人しい娘は守ってあげたくなるだの……お前も妹と言うカテゴリに入る以上

 そういうキャラクター達を少しは見習ったらどうかと思うのだが……

 

 しかし、清楚で大人しい妹を守りたくなると言うのには心底同意出来た。

 むしろその為ならば世界を敵に回しても構わない。 そう、ナナリーに優しい世界を与える為ならばーー

 それを否定すると言うならば……間違っているのは俺じゃない。 世界の方だ!!

 

 ……頭が痛いな。 妹と妹トークをするという異次元空間に長くいすぎたようだ。

 時計の針も既に、深夜2時を回っている。 今日はそろそろ解散の頃合いだろう。

 

 最後に俺は一つだけ疑問をぶつけた。

 先ほどの回答。 可愛いキャラクターが好きだからと桐乃は言う。

 しかし、何故そもそも興味を持ったのかと言う事だ。

 

 家族では誰もこの手のゲームやアニメを趣味としている者はいないし

 少なくとも桐乃が友人とこの手の趣味を楽しんでるとも思えなかったからだ。

 

「それはーーその……」

 

 先ほどまでの生き生きとした表情は影を潜め、言い難そうにしている。

 

「わかんないの……自分でも……何時の間にか……本当に何時の間にか好きになってたの」

 

 自分でも判らない……か。

 趣味など所詮はそういうものなのだろうか。

 確かに俺も、清楚可憐な完璧な妹を何時から心の中で求めるようになったのか……良く覚えていないからな。

 

「あたしだって……こういうのが普通の女子中学生の趣味じゃないって分かってる。

 だから今まで隠してたんだし……でも、それでも、どうしても好きで好きでたまんなくて!

 あーもう買うしかないって気持ちになっちゃって! 毎日毎日、あたしに買わせようと情報更新するまとめサイトが悪いのっ!」

 

 ステルスマーケティングには気をつけろよ桐乃……

 

「ねぇ、あたしさ……どうしたら良いと思う。やっぱお父さんとかお母さんにも話した方が良いのかな……」

「間違っているぞ桐乃!!」

「え、え……?」

 

「別に家族だからと言って全てを曝け出さなければならないわけじゃない。

 俺も億単位の資産を運用しているが、父さんにも母さんにも言った事は無い」

「そっか……そうだよね……じゃ、やめとく……って億っ!?」

「もちろん冗談だ」

「……何となく、あんたやりかねないって思わせる何かがあるのよね」

 

 特に父親……奴には見せない方が良い。

 いや、こんな物、奴にとってはどうでも良い事か。

 子供が何に興味を持とうと……それは奴にとっては……

 

 ーーーー違う。 俺は今、誰の事を考えていた?

 普通にこんな物を見せたら堅物の父さんは、怒り心頭になる事だろう。

 

「やっぱ……拙いよね……バレたら……」

「そうそうお前の部屋に父さんが入る事もないだろう。 今日みたいなミスにだけは気をつけるんだな」

「うん、判ってる……」

 

 何かを求めるような目……ふぅ……何故だろうな。

 この目には答えなければいけない。 そう思ってしまうのは何の因果なのか……

 何故か、俺は父親が妹に対して、強権を発動するシーンだけは見たくないと思ってしまった。

 思ってしまった以上は仕方がない。 乗りかかった船だ。 最後まで呉越同舟と行こう。

 

「出来うる限りの協力はしてやる」

 

 俺が何を言ったのか一瞬理解出来なかったのか、桐乃はきょとんとしている。

 

「お前の趣味がバレないようにするくらい……俺の策謀を以ってすれば造作もない事だ」

「良いの?」

「フハハハハ!! 今、お前は100万の軍勢にも等しき力を手に入れたと自覚せよ!」

「……えー……うん……助かる……」

 

 フッ……俺の余りの頼もしさに照れているのか、普段からそういう態度を取って入ればいいものを。

 しかしーー共同戦線を結ぶに当たって確認しておかなければならない事がある。

 

「ところでお前は……妹が好きで妹物のゲームをやっているんだな?」

「は? そう言ったでしょ」

「…………兄妹物ばかりを集めるその行動の裏に……まさかとは思うが……他に理由は無いな?」

「それってどういう…………はっ!」

「き、キモッ!! あんた、何をとんでもない事考えてるのよ! キモいっ!! マジでキモいんですけどっ!!!」

 

 ………………………

 

 分かっていると思うが……一応弁明はしておく。

 俺は、この歪んだ性癖を持つ妹が、どこまでも歪んでい無いか確認しただけであり

 俺自身にそういったつもりは全く無いと……

 

 何故、ここまで言われなければならないのか。

 

「本当に童貞兄貴キモすぎる! 人生でいちばんきもいっ!!」

 

 ……いい加減俺の中の反逆ゲージがMAXになりそうなのだが。

 妹と言えども、ブラックリベリオンしてやろうか、この女……!

 だいたい、ゲームにおいては妹は兄の事が大好きなのでは無かったのか。

 

「現実とゲーム一緒にしないでよ! 現実で兄の事好きな妹なんているわけないでしょ!!」

 

 おかしいな。 俺の中の妹像と言うのは……そのゲームの方に大分近いのだがーー

 現実とはどうも世知辛もののようだ。 くっ! 認めんぞ。やはり認められん! 俺の妹がこんなに可愛くないなどとっ!

 

 この妹の人生相談などという物に首を突っ込んでしまった事を後悔しながら俺は部屋に戻った。

 時刻はすでに午前3時……そろそろ眠らなければ明日の授業は全て睡眠時間に当てる事になるだろう。

 仮にそうなったとしても、あの程度のレベルの授業で有れば何の問題も無いが、敢えて俺の完璧な内申に傷をつける必要も無い。

 そして俺は眠りにおちーーー

 

 パァァン!!

 

「人生相談つづき……」

 

 またしても頰への衝撃で俺は目を覚ます。

 体勢は再びのマウントを取られた状態だ……

 

 世の中の兄を集めて一度会議をしてみたい。

 本当に妹とはこういう物なのかーーと。

 

「今度は何だ」

「このゲームの客観的な感想が欲しいの」

 

 桐乃はどうやら今からプレイしろと言いたいようだ。

 その手に握られるのは「妹と恋しよっ」

 ふ、フフフ……良いだろう。 そこまで言うならこの俺の本気を見せてやろう。

 

 既に昼間のプレイで俺はこのゲームの概略を把握している。

 ならばーー

 

 パソコンの前でR18のゲームを起動する俺と桐乃。

 俺は眼をつぶり深呼吸をしながら、静かに両腕をクロスさせた。

 

 脳内でのシミュレートは完璧だ。

 

 

 目を見開くと、俺は高速でタイピングを始めたーー

 

 次々と俺の前にイベントは攻略されていく。

 詩織……昼間のプレイでも思ったが、彼女は俺の理想とする妹に近いかもしれない。

 

『お兄様……今日は一緒のベッドで寝ても良いですか?』

 

 1.もちろんだとも詩織!

 →2.この俺が命じる……今日は寝かせ無いぞ詩織

 3.は?ふざけるな!(ベッドから蹴り落とす)

 

「ちょ、あんた!!」

「この場合、98%の確率で2が正解だ。これで次のステップに……」

 

 これは統計の結果であり、早くこのゲームをクリアする事が俺が安眠を得るための必要条件であり

 決して俺が、たかが3次元の妹キャラと一緒に夜を過ごしたいと考えているからでは無い事を理解して貰いたい。

 そして詩織と俺の夜がはじまーー

 

「も、もう良い! ちゃんとクリアしておきなさいよ!!」

 

 顔を赤くした桐乃はそう言い残すと部屋から出て行った。

 やれやれ……計算通りだ。 あいつも兄妹でR18のゲームのそういうシーンを見る趣味も無いだろう。

 

 既に窓からは光が差している。

 

 始業まで約2時間といったところか。

 このまま眠ると恐らく、その時間までに起床するのは困難だろう。

 ゲーム画面からはお兄様と呼び続ける詩織の声がする。

 全く、低俗で下らないゲームだが、やり残しと言うのも俺の性分に合わない。

 

 

 良いだろう。 ゲームをして良いのはクリアする覚悟のある奴だけだ。

 

 ッターン

 

 俺は勢い良くキーを叩き続けるのだった。

 

 つづく



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