家庭教師ヒットマンREBORN! 夜の守護者 作:tomato88
「いやー、さすがにトラックの上に乗っちゃった時はどうなるかと思いましたよ」
「相変わらず、君はロクなことをしないな」
「褒めてもなにも出ませんよ?」
「ハハッ! 言うようになったな。 あの時の若造が」
時刻は深夜。 場所は大空家。 その1つの部屋で2人の男が酒を飲みながら現状について報告しあっていた。 男の1人は、姫の父親である大空信明。 そして、もう1人は。
「それにしても、モレッティ。 お前、なんで日本なんかに来たんだ?」
「実は親方様がご子息の心配をしていましてね。 それで、折角なので様子を見に行くという口実の元、休暇を満喫しようと思いましてね」
殺され屋のモレッティ。 門外顧問チームの特殊工作員であり、10年ほど前まで、信明直属の部下だった男だ。
「楽しかったかい? 日本は」
「えぇ、未来のボンゴレ10代目とそのファミリーにも会えましたからね。 いい土産話が出来ましたよ」
「そりゃ、外であんなにどんちゃん騒いでるのを見たらそりゃ楽しいだろうよ」
そうやって、笑いあう2人の男。
「それにしても、信明さんに初めて会ってからもう20年ですか」
「そうだな。 案外、時が経つのは早いものだ」
「私は色々と迷惑をかけましたからね」
お恥ずかしい限りです。 そう言って照れ笑いを浮かべるモレッティを見ながら信明はあの日のことを思い出していた。
20年前、信明とモレッティはイタリアにある街の広場で出会った。 当時、門外顧問チームの特殊工作員、具体的に言うならばスパイとして活動していた。
「おーおー、こりゃ、派手にやったなぁ」
「マフィア同士の抗争のあとってこんな感じになるんっすね……」
その日、信明はイタリアの中小マフィア同士の抗争のあった場所に地元の警察官として紛れて捜査をしていた。
「子供の遺体まであるぞ……」
「うぇぇ……」
上司に扮した仲間とともに当たり障りのない会話をしながら調査を進める。
「おーい! そろそろ切り上げるぞー!」
今回の現場指揮をしている捜査官から全体に捜査を終えるよう指示が入る。
「どうします?」
「目立ちたくはないけど、とりあえず、捜査がもう少しだけ続けられるか、一回聞いてみるよ」
そう言って仲間は現場指揮をしている捜査官の元へと行き、なにやら少し話してからこちらへと戻ってきた。
「もう少ししたら遺体処理班が来るからそれまでならいいってよ。それに、あっちはもう先に戻ってるだと」
「あ、そうなんっすか。 了解っす」
なるべく怪しくないように、上司と部下を演じる。 他の捜査官が現場から離れたのを確認してから、2人は緊張感を抜いた感じで、しかし、動きは無駄がなく素早いものだった。
ふと、何か動いたようなものが目に入った信明はそちらの方に目を向ける。 それは、先ほど話題に上がった子供の死体だった。
「なぁ、この死体、動かなかったか?」
「はぁ? なに言ってんだ、お前」
いきなり、信明がトンチンカンなことを言い始めたと仲間は呆れた様子をしながら、調査を進める。 信明は首を捻りながらも調査を続ける。 だが、やはり子供の死体が気になって仕方がなかった。
もしかしたら、まだ生きてるのかもしれない。
そう思った信明は思い切って子供の死体に近づき、心臓の音を確認した。
「やっぱり動いてないか……」
心臓は動いていない。 念のため瞳孔も確認したが開いている。
まぁ、こんなこともあるか。
そう完全に割り切って安心した信明は完全に油断していた。 信明が子供の死体に背を向けて2、3歩歩き出した時、後ろにあった子供の死体がゆっくり、ゆっくりと動き出した。 その手には一振りのナイフがあった。
仲間が気づいた時には遅かった。 そのまま信明は子供に背中を刺されることとなった。
信明は思い出す。 その日のことを。 きっと、あの時が自分が1番油断してしまった瞬間なのだろうと。
「お前につけられた背中の刺し傷、まだ残ってるぞ」
「本当にそのことはなんとお詫びしていいか……」
信明の刺された傷は偶然にも急所を外していた。 それでも十分、重症であったが、命に別状があるものではなかった。 子供は仲間によってその場で捕らえられ、信明は近くで待機していた別の仲間によってボンゴレのアジトまで運ばれていった。
「あの時、信明さんが私を部下にしてくださらなかったら、きっととっくの昔に、のたれ死んでいましたからね……」
その後、あそこまで完璧に死体を演じられるところを評価した信明は自らその子供を門外顧問の特殊工作員として育て上げた。 その子供こそ、モレッティだった。
「そういえば、今日は娘さん、どっかに出かけてるんですか?」
「仕事でな」
「仕事?」
あぁ、信明はそう返事をしてから、一気に酒を飲んだ。
「なぁ、モレッティ。 子供っているのは自分の道をどんどん進んじまう。 たとえそれが茨の道だとしても」