家庭教師ヒットマンREBORN! 夜の守護者 作:tomato88
それは突然の出来事だった。
ダンッ! と大きな音が聞こえた。 その音は大人ランボがいる方向から聞こえてきたんだ。
「あ、あぁ……」
「ちょっ!? 姫!?」
大人ランボの後ろの壁に扇子が突き刺さっていて、あと少しずれていたら確実に大人ランボに当たっていた。
「え、あ、ごめんなさい」
まるで、自分のやったことを認識していないようだった。
「うわーん!!!」
「おい!? ランボ!?」
この時、無理矢理にでも大人ランボの話を聞いておけばよかったんだ。 そうすれば、きっと。
▽▽▽
「これからランボのお世話係を決めるぞ」
ランボが昼間にお漏らしをしてしまった日の放課後、リボーンによって姫、ツナ、獄寺、山本の4人が校舎裏へと集められた。 内容はツナがランボの世話を誰かにお願いしたいということで、ランボの世話をしてくれる人を決めようというものだった。
「ケッ、誰がアホ牛の世話なんてするかよ」
「ベーだ! 誰がお前の世話になんかなるかい!!」
「んだとこのアホ牛!」
その話を聞かされて早々、獄寺とランボは喧嘩し始めてしまった。 ランボと仲の悪い獄寺がそう言うのは誰もが分かっていることだった。さすがに、それがわからないリボーンではなかった。
「ランボの世話係をするやつが右腕だぞ」
「…………10代目、オレ、実はランボのことスゲー好きです」
日頃からツナの右腕となるために努力している獄寺にとって、嫌なランボの世話係をやるだけで右腕となれるのだから、無理をしてでもやるだろう。その考えは見事的中して獄寺はランボのお世話係に立候補した。 しかし、この言葉の効果はそれだけではなかった。
「そういうことならオレも立候補するぜ。 ツナの右腕になるのはオレだかんな」
右腕になりたいのは獄寺だけではない。 負けず嫌いでツナに大きな信頼を寄せている山本も立候補させる意味もあった。
これで少しは面白くなる。 そう、ほくそ笑むリボーンだった。
「姫はどうするんだ?」
後は姫がどうするかだけだった。 リボーン的には加わってくれた方が面白くなると思っていたが。
「んー、私は遠慮しておこうかな。花ほどじゃないけど、実は小さい子苦手で」
そう言われてツナは思い出した。 確かに姫はランボとあまり関わらないようにしている節があった。
「それに、家のことは私がやらなきゃいけないから。 だから、ごめんね!」
そう言って、姫はランボのお世話係を断った。リボーンもそうなることは考えていたようで、あまり残念そうにはしていなかった。
「それで、どうやってランボの世話係を決めるんだ?」
誰が参加するかが決定したところで山本がリボーンにそう尋ねた。
「簡単だぞ」
山本の問いにリボーンはそう一度前置きしてから地べたに座って鼻をほじくっているランボを指差して。
「あいつを笑わせたやつがお世話係に任命だ」
そんな簡単なことか。 2人はそう口にし、何をしようかと考え始めた。
「それじゃあ、オレから行かせてもらいます!」
先行は獄寺。 不安そうに見つめる姫とツナに、心配しないでください! と言わんばかりの自信満々の笑顔を向けた。
「なぁ、アホ牛。 さっきは、その、悪かったな」
獄寺は先ずは謝罪から入った。 ツナは「これはいいんじゃないか!」と言っていたがリボーンはやれやれとした雰囲気を醸し出し、姫は苦笑いを浮かべている。
「仲直りの印に握手しねーか?」
獄寺は感情を押し殺してなるべく表面上は笑顔でランボに接した。そして、獄寺が差し出した手をランボが握ろうとした。 その、ついさっきまで鼻をほじっていた方の手を。
「こんのアホ牛!!」
「ぐっぴゃ!?」
べちょり、という音が握手をした瞬間に聞こえたような気がした。 獄寺が恐る恐る手を離すとそこにはランボの手から自分の手にくっついて垂れているランボの鼻水があった。 それを見た獄寺は怒ってランボを殴って泣かせてしまった。
「獄寺は失格だな」
「結局こうなるのかぁ〜!」
「人ってそんなにホイホイと変わるものじゃないからね」
3人とも言葉は違えど、思っていることは同じだった。 獄寺にしたらよくやった方じゃないかと。
「そんじゃ、次はオレだな!」
後攻は山本。 山本は泣いているランボを持ち前の明るさで泣き止ませて、キャッチボールにランボを誘った。 山本なら大丈夫だよね!! ツナはそう言ったが、すぐにその言葉が裏切られることとなる。
「いくぜ……ッ!」
ビュン! というボールが風を切る音とともに、ボールは一直線にランボが構えているグローブの中に突き刺さった。 そしてそれは、5歳児が、ましてや野球のやの字も知らないものが取るには難しすぎる球だった。 そのまま、ランボはあまりのボールの威力に吹き飛ばされ、またもや泣いてしまった。
「あちゃー、やっぱ、野球のこととなると加減できねーかぁ」
やっちまったな、という顔をしながら頬を掻く山本。立候補者の2人が脱落してしまい、これ以上はどうすることもできない状況。こうして、ランボの鳴き声だけが響く静かな空間が出来上がった。
「みんな揃ってなにやってるんですか!!」
「は、ハル!? お前、どうしてここに!?」
そんな中、怒り心頭という風のハルが現れた。 ハルはリボーンに呼ばれて並盛中を訪れたのだ。 そして、ランボが泣いているのに周りの人が何もしないことに怒ったのだった。 ハルは泣いているランボを抱き抱えて姫たちに文句を言った。
「ツナさんと姫ちゃんがいるのにどうしてこんなことになってるんですか!!」
「ご、ごめん……」
「で、でもさ、ハル。 これには訳があるんだよ」
「どんな訳があったって小さい子を泣かせるなんてことしちゃダメです!!」
ハルの正当な言い分に何も言い返せない2人。 やってしまった側の獄寺と山本は元より何かを言える立場ではない。
「ツナさんにはランボちゃんを任せておけません!!」
そう言うハルだったが自分自身、興奮し過ぎて抱っこしているランボをキツく締め上げていることに気がつかなかった。
「うわーん!!!」
そして、とうとう息が苦しくなったランボは再度、泣き始めた。 そうなることでやっとハルは自分が何をしたか気づいた。 ハルの拘束が少しだけ弱まった隙にランボは手を頭に持って行き、ガサゴソと何かを探し始めた。 ランボが取り出したのはピンク色のバズーカ砲、10年バズーカだった。
「うわーん!!!」
ランボは泣きながらそのバズーカを自分に向けて、発射した。
「やれやれ、今日はどんなじょうギャアァァ!」
ランボはハルが抱き抱えていた。そんな状況でいきなり子供が大人になったのだ。 当然、体重は増える。その重さに耐えられず手を離してしまう。落とされたランボは運悪く座っている体勢だった。 そして、たまたま落ちた地点にハルの膝があった。 ランボのケツにハルの膝が突き刺ささる。
「イタタタ…… これは本当にどんな状況ですか? おや、これは若きハルさん。変わらずお美しい」
この時代のランボはそういうセリフを恥ずかしげもなく言える。 だが、それはこの時代のハルには逆効果であった。
「いやー!!」
「え? あの、オレですよ、ハルさん」
「エロいですー!!」
ハルが大人ランボを突き飛ばした。そして、そのまま走って姫の背に隠れてしまった。
「ハルちゃん、あの人ダメなの?」
「はひー、ハルはあんな感じのエロい服を着ている人は無理ですー!」
「だ、そうだよ。 ツナ君」
「なんでここでオレに話をふるのー!?」
「そりゃ、結局、お前がランボのお世話係だからだろ」
「やっぱりそうなるのー!?」
「すみません! 10代目!」
「悪りぃな、ツナ」
「だ、大丈夫だよ」
そんな時、ツナは話に入ってこない大人ランボに気がついた。
(ハルにあんなに拒絶されたし、仕方ないよな。 だけど、このままじゃあ、大人ランボも可哀想だしなぁ)
ツナはそう思い、大人ランボに声を掛けようと目線をそっちに移した。 どうせ、羨ましそうにこっちを見ているんだろう、そう思って。ところが。
「大人ランボ……?」
大人ランボの視線は一点に注がれていて、その顔は青白く、その体は小刻みに震えていた。
「おい、大丈夫か?」
「あぁ? 何震えてんだよ」
獄寺と山本も大人ランボの異変に気がついた。 さすがの獄寺もこの大人ランボの異変には心配せざるをえなかった。
「お、お、大空姫……」
「え? 私?」
自分の名前が呼ばれるとは思っていなかった姫は少しびっくりしたような顔をした。
「えっと、私、何かしたかな?」
そう言って姫はランボの方に一歩近づいた。その時。
「く、くるなぁ!!」
「え?」
大人ランボの異常なほどの反応。
「お、おい、どうしたんだよ」
ツナの問いに大人ランボは覚悟を決めた顔をして。
「若きボンゴレ。 あいつはーーー
ダンッ! と大きな音がした。
「あ、あぁ……」
「ちょ!? 姫!?」
大人ランボの後ろの壁に扇子が突き刺さっていた。 もう少しズレていたら当たっていただろう、そんな位置だった。
「え、あ、ごめんなさい」
姫は自分が何をしたかわからないようだった。呆然としている。
「うわーん!!!」
「お、おい! 大人ランボ!」
大人ランボはあまりの恐怖に泣き出し、そのまま走り去ってしまった。
「ごめんね。 私、もう帰るよ」
姫も扇子を回収してからその場にいる人の顔を見ようとせず、その場からいなくなった。
「姫、どうしたんだろう」
「なんか、無意識でやった感じだったっすね」
「ハハッ! 大空、すげー肩してんなー!」
「何のんきなこと言ってんだよ! この野球バカ!」
山本の言葉で少しだけ場が明るくなった。結局、その日はツナが引き続き、ランボの世話をすること、姫のことは様子見ということで解散となった。
▽▽▽
「イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイィィィィ!!」
どこかの牢獄の中で泣き叫ぶ男がいた。そして、その中には彼以外の人物がいた。
「今日は随分とイラついているようだね。 何かあったのかい?」
「別に」
なんとも奇妙な二人組だった。 大きなシルクハットに黒い服、そして、全身に巻かれた白い包帯。 顔はわからない。 片方は背丈が赤ん坊ぐらいだった。そして、もう片方は声でなんとなく女かもしれないということが分かるだけだった。
「あんまり囚人で遊ばないで欲しいなぁ。 僕たちはこれでもーー
「わかってる。 気が済んだから、もう行くよ」
「そうかい。 次はいつ頃くる予定だい?」
本当に気が済んだのか、赤ん坊の問いに女は、そうねぇ、と考え込んでから。
「また、今日みたいにふらりとくるかもしれないわね」
「その時はイェーガー君にお菓子でも用意させよう」
「クスクス、それは楽しみね。 それじゃあ、また会いましょう。 バミューダ」
ここは復讐者の牢獄。 ここでまた1人、罪を犯した者が処刑された。