家庭教師ヒットマンREBORN! 夜の守護者   作:tomato88

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第6話

「フフフーン♪」

「何だ? やけに楽しそうだな」

「あ、おはようっ! お父さん!」

 

朝、信明が起きてくると娘の姫が鼻歌を歌いながら料理していた。 いつも楽しそうに料理をしているのは変わらないのだが、鼻歌までは歌っていない。 だから、信明は姫の行動が不思議だったのだ。

 

「あぁ、おはよう。 それで、今日は何かあるのか?」

 

信明はそう言いながらキッチンに備え付けられている椅子に座る。 ここの家のキッチンには椅子が2つに小さめのテーブルが1つ置いてある。 2人の朝食はだいたいここで食べるようなっている。

 

「そんな大したことじゃないんだけど…… 今日は学校でおにぎり実習があって、それが楽しみなの」

「そういうことかぁ。 だけど、それだけじゃないだろ?」

「私って一応料理研究部に入ってるでしょう? だからかわかんないけど、数のノルマ以外は私は自由に作っていいって先生が言ってくれて」

 

てへへ、と姫は笑う。 だが、信明はその話を聞いて何とも微妙な表情をしていた。

 

(学校としていいのか、それで……)

 

そう思う信明であった。

 

 

▽▽▽

 

 

 

「花! おはようっ!」

「おはよ、って何!? その荷物!?」

 

姫はいつもの学生鞄とは別に大きなバックを1つ持っていた。

 

「あ、これ? 今日のおにぎり実習の食材だよ」

「え!?」

花が驚くのも無理はない。 おにぎりに使う米や具の材料はほとんど学校が用意してくれている。 持ってくるとしたらメジャーではない具を入れると思うはずだからだ。

 

「色々と持ってきたからね。 鮭に梅干しに昆布にお肉。 他にもあるよ」

「被ってるのもあるじゃない!? 何でこんなに持ってきてるのよ?」

「それは…… 実習の時になったらわかるよ」

 

姫はそう言いながら遠い目をする。

 

「まぁ、いいわ。 それよりもあんた、誰に渡すか決めたの?」

「い、一応……?」

「へぇ、誰よ? 沢田とか〜?」

「な、内緒だよ〜」

露骨に目をそらす姫。 それを見逃す花ではなかった。

 

「いいじゃん。 減るもんじゃないんだから」

「教えないよ〜」

「教えなさいよ〜!」

「やだよ〜。 そっちの方がびっくりすると思うよー?」

 

教えるつもりのない姫。 何としても聞き出そうとしている花。 この2人の戦いは予鈴が鳴るまで続いた。

 

 

▽▽▽

 

 

 

「姫が言ってたのってこういうことね…… なんか色々と理解したわ……」

「私もここまでとは思ってなかったよ……」

「うわー! すごーい!」

 

姫、京子、花の3人の班のテーブルには他の班よりも1人分ぐらい少ない量の米が乗っている皿ともう1つ。

 

「姫ちゃん1人でこの量全部作るなんてすごーい!」

 

そう、この班にはもう1つ、100人分ぐらいはあるであろう米があった。

 

(50人分ぐらいだと思ってたんだけどなぁ。 まぁ、余分に作ってきたし、大丈夫かな?)

 

姫はそう考え、どの順序で作ろうかをシュミレートし始めた。

 

「それじゃあ、始めよっか!」

 

 

▽▽▽

 

 

「遅れちゃったよ〜!」

 

あの後、姫は1人で100人分のおにぎりを1時間半で作り、周りを驚かせた。 そして、先生が試食して「みんなに1つずつ配りなさい」と言われたので配ったり、後片付けをしたりして遅くなってしまったのだ。

 

「ちゃおっス」

「あ、リボーンさん! こんにちは!」

 

急いで教室に戻っていた姫を引き止めたのはリボーンだった。

 

「ちょうど良かったです。 1つ貰ってくれませんか?」

姫はそう言って、紙袋に入っていたおにぎりを1つリボーンに手渡した。

 

「サンキューな。 もぐもぐ」

 

リボーンは渡されたおにぎりを一口食べた。

 

「こ、これは……」

「何か駄目でしたか……?」

 

動きの止まったリボーンを不安そうに見つめる姫。

 

「ママンの料理並に美味いぞ……っ!」

「ツナ君のお母さんですか?」

「そうだぞ。 ママンの料理は最高だからな。 お前のおにぎりも最高だぞ」

 

リボーンから褒め言葉をもらい、先ほど不安そうだったのが嘘のように笑顔になった。

 

「ありがとうございます! それじゃあ、私は教室に戻ります!」

 

そして、姫は教室に戻っていった。 現在、教室がどんな状況になっているのかも知らずに。

 

姫は自分の教室が近づいて来るほどに、教室の中から叫び声が聞こえてくるのに気がついた。 聞こえてくる内容はツナがおにぎりを手当たり次第に食べているというものだった。 姫はため息を1つし、教室の扉を勢いよく開けた。

 

「うおー! たりーん!!」

「誰か沢田をとめろー!」 「オレたちの分まで取らせるかー!!」 「10代目! この場は収めてくださいー!」 「キャー! 獄寺君かっこいいー!」 「山本君! 1つだけ死守できたから! 食べて!!」 「おう。 サンキューな」

 

教室の中はかなり混沌としていた。 死ぬ気状態で大量のおにぎりを口に含んでいるツナ。 ツナを止めようとする男子たち。 おにぎりを取られた女子はツナに非難の目を向けている。

 

「あ、姫ちゃん。 片付け終わったの?」

 

京子が教室に入ってきた姫に気づいて声をかけた。

 

「うん。 それよりもこれ、どうしたの?」

「ツナ君、お腹空いてたみたい! 私のも美味しいって食べてくれたんだ〜」

その時、出入り口付近で話していた2人にツナが気がついた。 その視線は姫の持っている紙袋に注がれていた。

 

「たりーん!!」

 

そう言って、ツナは出入り口に向かって走り出した。

 

「逃げたぞ! 追え!」 「おい! 大空さんと笹川さんがいるぞ!?」 「避けてー!!」

 

どんどんと距離が縮まっていく。 そして、ツナが紙袋を奪おうと手を伸ばした。 が、姫は少しだけ横に避けた。そして、そのままツナの足を引っ掛け、ポケットから扇子を取り出し、ポンっとツナの頭を叩いた。 それだけのことで、ツナの鼻から死ぬ気がこぼれ落ちた。

 

「いってぇー!!」

 

そのままゴロゴロと転がり、廊下の壁にぶつかったツナが最初に見たものは

 

「ツナ君。 そこに正座」

 

冷たい笑みを浮かべた姫だった。

 

後に獄寺隼人は語る。 「あれは人間じゃねぇ! あれは人の皮を被った鬼だ! そうに違いねぇ!!」

 

こうして、おにぎり騒動は幕を閉じた。




後日談

「あ、みんなにもおにぎりあるから食べてください!」
「お! 旨そうだな! 頂きまーす」

山本が姫が作ったおにぎりを食べたことにより、続々と他の男子もそのおにぎりに手をつける。

「う、うめぇ……」

獄寺は驚愕する。 たかがおにぎり、ほとんど味は変わらないと思っていた。 しかし、米の炊き加減、塩加減、具の旨さ。 どれを取っても自分が食べた中で一番美味しいおにぎりだった。

「な、なぁ、大空。 うちでバイトしねーか?」
「バイト?」
「おう! オレん家、寿司屋だからさ、親父が「いい腕を持っている料理人がいたら連れてこい!」って言ってっからよ。 一度、手伝いに来ねーか?」
「お手伝いぐらいなら、せひ!」
「サンキュー!」

山本はこれで親父に少し楽をさせてあげられると考えていた。 自分と姫が手伝えばその日ぐらいは楽をさせてあげられるだろうと。 だが、この誘いが後々、厄介ごとを呼び込むとは思っていなかった。
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