家庭教師ヒットマンREBORN! 夜の守護者 作:tomato88
かなり駆け足。
「毎朝悪いなぁ、姫ちゃん」
「気にしないでください! 私は楽しんでますからっ!」
学校も夏休みでなくなり、補習もない姫は夏休みに入ってから毎朝、山本の実家の寿司屋に手伝いに来ていた。 山本から頼まれた手伝いをしているのだ。
「姫ちゃんが手伝いに来てから仕事が楽になってなぁ。 できればこのまま雇いたいぐらいだぜ」
「私はまだ寿司なんて握れませんし、皿洗いしかできませんよ?」
「いやぁ、もう十分な出来だぜ? この分なら後1年足らずで立派な寿司職人になれるな! オレが断言するぜ!」
山本の父、剛は笑いながらそう言う。 そして、目を見ればわかるが嘘ではなく本気で言っている。
「えっと、じゃあ、将来の候補に入れておきますねっ!」
「たははっ! そうしてくれや! っと、そろそろ武が帰ってくる時間だな」
「あ、本当だ……」
山本は夏休みに入ってからほとんど学校に行っている。 成績が思わしくない生徒は追試があるからだ。 もちろん、ツナも一緒だ。
「姫ちゃんはそろそろ上がっていいぞ。 今日の午後は貸切の客しか入ってねぇからな。 仕込みは終わったし、こっからは俺1人で大丈夫だ」
「わかりました! それじゃあ私は着替えに行ってきます!」
そうして姫は奥に向かった。 その時、ちょうど入れ違いで山本が店に帰ってきた。
「おう、おかえり、武」
「ただいま。 あれ? 大空はもう帰ったのか?」
「なんだ? 姫ちゃんに用があったのか?」
「これからツナん家で勉強会やるからよ、頭のいい大空がいたら心強いかなってさ」
補習で宿題の出たツナと山本はツナの家で勉強会をすることにしていた。 そのため、2人だけだと不安だからと姫と獄寺を呼ぼうということになっていた。
「姫ちゃんなら今、奥で着替えてるぞ。 もう少しで戻ってくんじゃねーかなぁ」
「そんじゃあ、待ってるな」
約10分後、姫が奥から着替えて戻ってきた。
「あ、山本君、帰ってきてたんだ。 補習、お疲れ様」
「おう。大空の方こそ店の手伝いサンキューな」
「楽しんでやってるし、色々と勉強させてもらってるから気にしないでっ!」
事実、剛は姫に寿司がどういうものかということを教えていた。剛の教えは感覚に頼ったものだったが、姫は要領良くコツを掴んで楽しそうに練習していた。
「ハハッ! そりゃよかったぜ! ところでよ、これからツナん家で勉強会やるんだけど、来てくんねーかな?」
「勉強会?」
「今日の宿題をツナと一緒にやることになってな。 教えられるヤツがほしーんだわ」
山本の問に姫は考える必要もなく、即答した。
「私で良かったら力になるよ。 でも、一旦家に帰らせてくれないかな? 私も色々と用意したいから」
「サンキュー! そんじゃ、また後でな!」
そう言って、山本は慌ただしく家の中に入っていった。 その山本の元気さに姫は苦笑いを浮かべる。 そして、姫も剛に挨拶をしてから竹寿司を出た。
▽▽▽
「お邪魔します」
「い、いらっしゃい! 待ってたよ!」
山本と獄寺が来てから少し後、姫はツナの家へとやってきた。
「昨日の夜作ったプリンなんだけど…… 家族、みんなで食べてください」
「ありがとう! 冷蔵庫に入れてくるから! えっと、オレの部屋は2階にあるから先に行ってて!」
「あ、うん。 わかった」
姫は2階に上がり、ツナと書かれた部屋へとノックをしてから入った。
「だから! これがこうなるんだって!」
「こうか?」
「ちげーって! こうだって!」
部屋の中はなかなか凄まじいことになっていた。 獄寺が山本に勉強を教えているのだが、理屈派の獄寺の教えは感覚派の山本には合わないらしく、進みは難航している。
「ちゃおっス。 よく来たな」
「お邪魔してます。 えっと、私はこの状況でどうすれば……?」
「ツナのやつが来たら獄寺と変わってやれ。 そっちの方が効率がいいだろう」
「わかりました!」
そうして、姫は獄寺と山本に一言断りを入れてから席に着く。 そして、ツナが部屋に戻ってきて勉強会は進んでいく。
「しっかし、ほとんど教科書だけで問題って解けるのな。 これでどうよ」
そう言って山本は姫にプリントを手渡す。 姫はそれを受け取り、自分が解いた解答と照らし合わせる。
「うん。 解いた問題は全部合ってると思うよ」
「なにぃ!? 貸してみろ!」
獄寺は姫からプリントを奪い取り、山本の解答を見る。
「ぜ、全部合ってやがる……」
「だけど、問7はサッパリわかんなかったけどな」
「やっぱりダメじゃねーかよ! 問7は……」
問7の問題を見た獄寺が突然、動きを停止させた。 そしてみるみる顔を青くさせていった。
「やべぇ…… サッパリわかんねぇ……」
「え!? 姫は!?」
「ごめん。 問7は私もわからなかったの……」
「まずいな。 全部解けなきゃ落第なんだよな」
山本の言葉が追い討ちのように場の雰囲気を暗くさせる。
「そんな時には我慢大会が一番だぞ」
「なんか出たー!?」
リボーンが場を明るくさせようとしたのかコタツと鍋という季節に合わない装備で部屋に入ってきた。 それを見たツナはリボーンがふざけてるのかと思い、怒りを露わにする。
「我慢大会ってこんな状況でそんなとこできるかよ!」
「はひー!? す、すみません……ハルは、皆さんを明るくしようと……」
「は、ハル!?」
ドアの横から顔を覗かせたのはハルだった。 ツナの家を訪れたハルはリボーンから今の状況を教えられ、我慢大会を思いついたのだった。
「ツナ君。 その子は?」
「ツナの知り合いか?」
獄寺は一度会っているのでハルのことを知っていたが、当然、その場にいなかった姫と山本はハルのことを知らなかった。 それは、ハルにも言えたことだった。
「ツナさん。 そちらの可愛らしい女性は……?」
「あ、3人とも初対面だったっけ。 えっと、こいつは三浦ハル。 この前、2人にも話した子だよ。 それで、あっちが山本で、こっちが姫」
ツナがそれぞれを簡単に紹介する。 そして、3人は改めて自分で自己紹介をする。
「オレは山本武。 よろしくな」
「大空姫です。 宜しくお願い致します」
「三浦ハルです」
ハルは姫のことが気になるようで、じっと姫の方を見ていた。
「えっと、私に何か……?」
「大空さんはツナさんとどういう関係なのでしょうか!?」
「は、ハル!? お前、何聞いてんだよ!?」
姫はハルにそう聞かれ、自分とツナがどんな関係かを考え始める。
「んー、友達、かな?」
出た結論がそれだった。 姫は自分はまだ彼の影ではない、彼の部下でもない。 だから、出した結論がそれだった。
ツナはその答えに少し安心した。 何故だがよくわからないが、そんな気がした。
「はひ! そうだったんですか! ツナさんの彼女さんじゃなくてハルは安心しました!」
「私とツナ君に限ってそんなことはありえないよっ!」
姫の言葉にツナは少なからずダメージを受ける。 それを知ってか知らずか姫とハルはツナについての話から段々と仲良くなっていった。
その時、問7について考えていた山本がふと、思い出したように口を開いた。
「そういや、お前の制服、緑中のやつだろ? あの超難関進学校の」
「え!? そうだったの!?」
「この子ならこの問題解けんじゃねーか?」
2人に希望が見えた瞬間だった。
「この問題、学校で習いました!」
「ほ、本当に!?」
「はい! 少し待っていてください!」
そして、10分、20分と待つ。 そして、3時間が経過したところでついに。
「ごめんなさい…… わかんないです……」
ハルが解答を断念した。 そして、3時間も待たされた獄寺はハルにキレるがツナと山本がそれを宥めたおかげで大事には至らなかった。
一方、ハルの方は姫が作ったプリンを食べたおかげで元気が戻り、今度、一緒にケーキを作る約束をしていた。
「それにしても、誰だったらこの問題解けっかなぁ?」
もうだいぶ遅い時間になってしまった。 流石の山本も焦りが隠せない。 ならばと、ハルはみんなにある解決法を伝えた。
「それなら! 大人の人に聞けばいいんですよ!」
ハルの考えは大人に聞く、彼女には1人、アテがあった。
「あ! そうだよ! その手があったよ!」
「それで、この前おでん屋で知り合った格好いい女性の方がいるんですけど、その人をお呼びしました!」
「そうなんだ。 どんな人?」
「えーと、リボーンちゃんの愛人さんだとか言ってました!」
ハルのその言葉を聞いてからの獄寺の行動は速かった。 外で自転車のベルの音がしたと思った時にはツナの部屋から出て玄関まで行き、ビアンキが入るギリギリのところで鍵を閉めることに成功した。
「ツナ君は誰が来るか知ってるの?」
「まぁ、うん。 獄寺君のお姉さんでビアンキって言うんだけど……」
姫はその名前でだいたいのことは納得したようで、なるほど、という顔をした。
「毒サソリのビアンキかぁ。 本当にツナ君の周りにはどんどん面白い人が増えてくねー」
「オレは増えて欲しくないんだけどね……」
姫はツナの言葉になんとも言えず苦笑いで返した。 2人がそうこう話しているうちにビアンキが獄寺を抱えながら部屋に入ってきた。
「それで、この問題なんだけど……」
獄寺をツナのベットに寝かせた後、ビアンキに事情を説明し、解いてもらうことになったのだが……
「こんなもの、私にはどうでもいいわ」
そう言って、ツナのプリントをビリビリに破いた。
「なにしてんのー!?」
ここから、また更にビアンキへのお説教、プリントのコピーやらで時間がかかってしまった。
「うぅ…… オレはもう落第なんだー!!」
「どうすっかなぁ」
正直、2人はもうほとんど諦めていた。 だが、ここで寝ていたリボーンが姫にこっちに来いと手招きをした。
「リボーンさん? どうしたんですか?」
「ヒントをあげようと思ってな」
「え? いいんですか!?」
「教えるのはお前にだけだがな」
期待していたツナと山本の2人はその言葉にわかりやすく落ち込む。 だが、姫は何かを理解したようで、安堵のため息をしていた。
「耳を貸せ。 ゴニョゴニョゴニョ」
「あー、そういうことだったんですか。 やっぱり、一手間足りませんでしたか」
「姫はダメツナと違って優秀だな。 どうやったらここまで差ができるんだろうな」
「うるさいぞ! リボーン!」
ツナがリボーンに抗議している間、姫はガリガリと紙に解答を書いていた。 たまにそれを見ていたハルが質問をいくつかしていた。 だが、山本には2人から聞こえてくる単語はサッパリわからなかった。
「はい、できた。 リボーンさん。 これでどうですか?」
解き終わったようで、姫は自分の書いた解答をリボーンに見せる。
「ふむふむ。 正解だぞ」
「よし! それじゃあ、2人とも。説明するね」
「「よろしくお願いします!」」
この勉強会が終わったのはほとんど夜中だったようだ。 そのおかげか、無事、2人は落第を回避することができた。