家庭教師ヒットマンREBORN! 夜の守護者   作:tomato88

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第9話

「京子〜! おはよ〜!」

「あ、姫ちゃん! おはよ〜!」

 

夏休みも終わり、数日が経ったある日。 姫は登校中にカバンを2つ持った京子を見かけ、声をかけた。

 

「なんでカバン2つ持ってるの?」

「これ? 実はお兄ちゃんのやつなんだ〜。 カバン落としてどっか行っちゃったみたいで……」

「そ、そうなんだ……」

 

姫は京子の兄とは面識がないが、噂は聞いたことがあった。 並盛中ボクシング部主将で、座右の銘は極限。 リボーンも注目している男だ。

 

「姫ちゃんはお兄ちゃんと会ったことなかったよね?」

「噂は聞いたことあるんだけどね。 直接は会ったことないかな?」

「なら、お兄ちゃん、最近ツナ君に興味があるみたいだから会ったときに紹介するね!」

 

そんな話をしながら2人は学校へと向かう。

 

「あ! お兄ちゃん!」

 

学校が近くと校門の前で騒いでいる2人組みが目に入った。 1人は見慣れたパンツ一丁の男。 もう1人は短髪の男。

 

「あれが噂の京子のお兄ちゃんなんだ」

「うん! おはよっ! ツナ君!」

「き、京子ちゃん!? それに姫も!?」

「おはよう。 それと、初めまして、京子ちゃんと仲良くさせてもらってます。 大空姫と言います」

「おう! 話は聞いてるぞ! オレは笹川了平だ! 座右の銘はきょくげーん!!」

 

何があったのかと聞くと、どうやら了平がツナをボクシング部に誘っていた途中だったそうだ。

 

「もう、ツナ君に迷惑かけないでよ! お兄ちゃん!」

「ハッハッハッ! 沢田! 放課後、ボクシング部の部室で待っているぞ!」

 

そう言い残して了平は颯爽とその場を去っていった。

 

「す、すごいお兄さんだね……」

「うん! あれでもすっごい優しいんだよ!」

「オレはどうすればいいいんだよ〜!!」

 

3人とも、了平に対する反応は様々だが、強烈な印象を残したのは確かだった。

 

 

▽▽▽

 

 

「えっと、確かここら辺だったよね?」

 

時刻は放課後。 姫はリボーンに呼ばれボクシング部の部室がある場所へと急いでいた。 だが、文化系の部活に所属している姫は運動系の部室がある場所の記憶が曖昧で少しだけ違うところに来ていた。

 

「しっかり確認してくればよかったよ……」

 

後悔しながらも、歩みを止めない姫。 校舎裏を通ろうとした時、バンッ! という音が聞こえた。

「あれ? なんの音だろう?」

 

校舎裏から聞こえてきた人を殴ったような音。 気になった姫はこっそりと校舎裏を覗いた。

 

「おら! 雲雀に楯突くのが悪いんだよ!」

「や、やめてください! 痛いっ! 痛いって!」

「ウルセェ! 黙って殴られろ!」

 

そこで繰り広げられていたのは不良たちによるリンチだった。 着ている服は並盛中の昔の制服の学ラン。 それだけで姫はだいたい、その不良たちが何者かの検討がついた。

 

「あれは風紀委員の人たちかな……」

 

雲雀恭弥を委員長とする、並盛中の風紀委員会。 姫もその悪名は聞いていた。 風紀委員とは名ばかりの不良の巣窟。 委員長である雲雀は並盛の不良の頂点に立つと噂されている人物。 だからか、真面目な部類に入る姫は風紀委員会にいいイメージを持っていなかった。

 

「あんまり関わりたくないけど……」

 

そう思いながらも、姫はそのリンチの現場を見た。 薄く口元を綻ばせながら殴る不良。 口でごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら、逃げることもできず殴られる男。

 

「見ちゃったからには、このままにしておけないよね」

 

姫は1人、そう自分の中で結論付け、その現場に突入した。

 

「あの、そこら辺てやめたらどうですか?」

 

刺激しないように、刺激しないようにと、姫は不良たちに声をかけたが、不良たちは姫の言葉に気づかず、そのまま殴り続ける。

「あの! そこら辺でやめたらどうですか!」

 

姫が大声を出したことでやっと不良たちは姫の存在に気づいた。

 

「あぁ? 誰だお前」

「えっと、1年の大空といいます」

「あぁ? 1年だぁ? 1年がこんなところに何の用だよ」

「一方的な暴力を見たらさすがに止めようと思います」

 

とりあえず、自分の方に注目を集めることができたことに安堵する姫。

「あ? お前、俺たちが風紀委員ってことがわかんないの? オレたちは委員長の雲雀の指示でこれやってんの。 わかる? わかったら邪魔すんじゃねぇよ」

「嫌です。事情は知りませんがさすがにやり過ぎですよ。 それ以上やるとこの人たち危ないと思いますし」

「ウッセェ! 余計なこと言ってんじゃねぇ! それ以上言ったら、女だからって容赦しないぞ!」

 

もう、どうしてこんなことになるかな…… さっさとやめてくれればよかったのに……

 

姫は心の中でそう悪態をつきながら、表面上はそんなことを見せず、ただ、淡々と暴力をやめるようにと訴える。 そんな中、1人の不良がふと思い出したように言った。

 

「おい、こいつ、1年で有名なやつだろ?」

「あ? そうなのか?」

「確か、なんでも出来る真面目で可愛い子が1年にいるとかなんとか。 こいつのことじゃね?」

「まぁ、確かに可愛いけどよ」

 

舌なめずりをしながら1人の不良がある提案をした。

 

「そんじゃ、雲雀にバレないように犯すか」

「おー、そりゃいい案だ。 おい、もうこいつらどうでもいいから放してやれ」

 

その不良たちのまとめ役であろう男がそんなことを言い、リンチされていた男たちを解放した。 そして、リンチされていた男たちはその場から我先にと姫を置いて逃走した。そして、姫は真っ先に逃げる男たちには一切、目もくれない。

 

「あーあ、あいつら、これから女の子が犯されるって言うのにさっさと逃げちまったぜ」

「ハハッ! ダッセー!」

 

不良たちは真っ先に逃げた男たちをダサいと笑う。 姫はそれを無表情で見つめていた。心の中で、自分の醜い部分と話をしながら。

 

ーークスクス、逃げられちゃったわねぇ。

 

そんなこと、当たり前だよ。 怖かったら逃げる。 それが人でしょう?

 

ーークスクス、そうよねぇ。 あなたは私だもの。 あんな奴らどうでもいいのよねぇ。

 

どうでもよくはないけど…… まぁ、いいや。とりあえず、この不良たち、やっちゃおうか。

 

ーークスクス、そうねぇ。 少しは楽しめるといいわねぇ。

 

そこから、姫は笑う。 クスクス、クスクスと楽しそうに扇子で口元を隠しながら笑う。

 

「おいおい、笑ってるぞ、この女! そんなオレたちに犯されたいのかよ!」

「クスクス、そんなわけないじゃない。 バカじゃないの?」

 

さっきとは別人のような声で口調で笑う姫。 だが、ほとんどの不良たちはそんなことにも気づかない。

「あん? てめぇ、今なんつった?」

「だから、バカじゃないの? あなたたちみたいな人たちに犯されたい人なんてこの世にいるわけないじゃない」

 

ニコニコと楽しそうな笑顔で男たちを罵倒する姫。 その罵倒を聞いた不良たちは徐々に血管を浮き上がらせ始めていた。

 

「そもそも、あなたたちそんなに弱い人たち、虐めて楽しいの? 雲雀っていう人に命令されて動くつまらない人間なの? 気持ち悪いわねぇ」

 

その言葉で不良たちの血管は完全に切れた。

 

「おい! こいつ、ボコってから犯そうぜ!」

「おう! オレはこいつの泣き叫んで許しを請う姿を見ねぇと気が済まねぇ!」

 

楽しそうに、本当に楽しそうに笑う姫。 その姿にやっと一部の不良たちは不気味さを感じ始めたが、時すでに遅し、姫に向かって突撃していく。

ひとーつ、ふたーつ、みーつ……

不良たちが自分に向かって振るう暴力の数を数えながら、するりするりと姫はそれらを避けていく。

 

「お、おい! どうなってんだよ! こいつ!」

「当たらねぇ! 当たらねぇよ!」

 

自分たちが一方的に拳を振るっているのに、一発も当たらない事態に次第に焦り始める不良たち。 そして、不良たちが焦れば焦るほど、姫はどんどんと表情を曇らせていった。

 

「つまらないわねぇ。 歯応えが無さすぎるわよ、あなたたち」

 

つまらない。 今の姫の感情はそれしかなかった。 雲雀の部下と聞いて少しは楽しめると思った。 人がリンチにあってるのを見て、建前は助けなくてはと思った。

 

ーークスクス、そろそろ終わりにしちゃえばぁ? 私、もう飽きてきちゃったわよ。

 

そうだね。 そうしようか。

 

「ごめんねぇ。 あなたたち、つまらないからもうお終い。 ここで寝ててね」

とん、とん、とん、と近づいてくる不良たちの首筋に姫は扇子を当てていく。 それだけで、1人、また1人と次々と不良たちはその場に崩れ落ちていく。 そして、ついに立っている者はまとめ役であろう不良1人だけになってしまった。

 

「て、てめぇ!! オレたちにこんなことしてタダで済むと思ってんのかよ!?」

「どうでもいいわよ。 そんなこと。 それよりも、あなたはさっさと寝ててちょうだい。 次に面白そうな人が待ってることだから」

 

そう言いながら姫はチラッと後ろを見る。 そこには校舎の陰からこちらを確認する者がいた。

 

「あの人、あなたたちのボスなんでしょう? 少しは楽しめると期待したいわねぇ」

 

その言葉を最後に、不良の意識は途絶えた。 結局、その場に立っているのは姫だけだった。

 

「そろそろ、出てきたらどうなの? 雲雀恭弥さん」

「ふーん。 気づいてたんだ」

「クスクス、当然よ。 あんなに楽しそうにされたら気付かない方がおかしいんじゃないかしら?」

「そうかもしれないね。それじゃあ、 一応、名前を聞いておこうか。 なんて言うんだい?」

「1年A組の大空姫よ。 よろしくね、雲雀恭弥さん」

 

そう言って、姫は華麗に一礼する。 ツナたちが見たら、一体、彼女のことをどう見るのだろうか、そう思ってしまうほど、今の姫は別人のようだった。 だが、逆に雲雀はその姿を好意的に見た。

 

「君は僕を楽しませてくれそうな人のようだね」

「クスクス、そう思ってくれて嬉しいわ」

 

ピリピリと張り詰めた雰囲気の中、お互い笑い合う2人。

 

「それで、やるかい?」

 

トンファーを構えながら、答えるまでのないことを聞く雲雀。 それは、彼なりの一応の配慮だった。 だが、姫は残念そうにその申し出を断った。

 

「もちろんよ、と言いたいところだけど、やめとくわ。 あそこでセクハラしようと考えている人がいる前で戦えないわ。 悪いけど、また今度にしましょう」

「あーあ、残念だ。 折角、喧嘩を止めるついでに胸でも触ろうと思ってたのによ」

 

出てきたのはトライデント・シャマル。 今日の彼はリボーンの頼みで並盛中の保健員の採用試験にやってきていたのだが、その時に偶々、2人の話しているところに居合わせたのだった。

 

「それじゃあね、雲雀さん。 また会いましょう」

 

そう言うと姫は足早にその場を去った。 雲雀は不機嫌そうにシャマルを一目見た後、どこかに行ってしまった。 1人、その場に残されたシャマルはポケットから携帯を取り出すとどこかに連絡し始めた。

 

「おう、オレだ。 お前が言ってたあの嬢ちゃん。 かなりやばいぞ」

 

その話を聞いていたものは誰もいなかった。

 

 

 

▽▽▽

 

 

 

「えーと、ハルちゃん。 これってどういう状況?」

 

やっとの思いでボクシング部の部室に着いた姫が見たものは、ツナたちに伸されていた柔道着を着た人たちだった。

 

「ハルにもよくわからないですが、この人たちがボクシング部に殴り込みに来たんみたいなんです! カウンターを決めたツナさん、格好良かったです!」

「そ、そうだったんだ…… でも、ハルちゃんたちに怪我がなくて良かったよ」

その後の帰り道。 帰る方向の一緒な姫とツナは今日起こったことについて話していた。

 

「それでさ! 柔道部の人たちと京子ちゃんを巡る戦いになって、大変だったんだよ!」

「もう、大変だったのはわかったよ。 頑張ったんだね」

 

ツナは自分が死ぬ気を使わずとも柔道部の人を倒したことで、少し興奮気味だった。 そのせいか、先ほどから話がループすることが多かった。

 

「そういえば、姫は来るのが遅かったけど、用事でもあったの?」

「実はちょっと道に迷っちゃって…… あんまり運動部の部室には行かないからかな」

「ふーん。 姫にもそういうことがあるんだ」 

「ツナ君は私のこと、何だと思ってるの? 私は完璧超人でもなんでもないよー?」

 

姫は自分のことを偽りながらツナと会話する。 この仮初の平和が長く続くようにと。  

 

ーークスクス

 

 

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