第13話「正・体・判・明」
「スコーピオン。一体、どうしたというんだ?君らしくないね…」
ヴァルゴに呼び出され、スコーピオンはジェミニの件について問いただされている。
新たな同胞であるジェミニに襲撃を仕掛けたスコーピオン。本来、スコーピオンはヴァルゴの命や彼女が望んでいるであろうモノに背く事はありえない。ホロスコープスを減らすなど、もってのほかだ。
「私は、貴女の侮辱を絶対に許さないだけです。ご安心下さい、落とし前はつけます」
跪いているスコーピオンは動揺している姿も見せず、淡々と告げる。
ヴァルゴは少しの間、顎に手をやるが、それをやめてスコーピオンの肩に手を置く。
「確かに、君の働きぶりは目を見張るものがある。ならば依頼しよう、アリエスとジェミニのスイッチを回収して欲しい。おそらく…フォーゼやメテオの邪魔も入るだろうから…」
そう言いながらSOLUスイッチを取り出し、近くに備えられた機械に取り付ける。
オンにした途端、SOLUスイッチから青い光があふれ出し、さらに赤い光に変化してスコーピオンの身体に浸透していく。
「おぉ…これは…!」
「確実にスイッチを回収できるように、新たな力を与えよう。君への贈り物だ」
「有難き幸せ…!我等が救世主である、女王の御加護を受けた誇り…私は無駄に致しません」
深々と頭を下げて、スコーピオンは消える。
「…レオ」
「なんでしょうか?」
ヴァルゴが呼ぶと、背後からレオが現れる。
「有り得ないと思うが…。スコーピオンが敗れた場合のことを…頼めるかな?」
「はい」
宇月と礼の部屋に集められた仮面ライダー部のメンバーたち。
礼が気に食わないことが一つ…。
「なぜ、おまえが居る?」
「え~?約束は守ってるよ」
本音が居る事だ。数日前のトーナメントでペアになることを条件に、フォーゼやゾディアーツに関わらないと約束していたはずだった。
「仮面ライダー部に関わるなとは、言ってないもんね」
「そう来たか…」
「まぁまぁ礼さん。彼女は邪魔をされているわけではありませんわ…」
溜息をついた礼。おそらく、このまま関わり続けるだろう。
セシリアの擁護に文句を言う事すら面倒だと感じたため、本音については放っておく事にした。
話を戻す。
今回集められた理由は…箒とラウラだった。
「実は…少し前に蠍座、天秤座、ラウラの会話を聞いた」
「わたしも、少しは情報を提供できると思う」
特にラウラは元ホロスコープス。期間は短かったとは言え、つい最近である。
「で、サソリとゴキブリ達の会話って…?」
鈴音が尋ねると、箒は暗い顔をしていった。
「確証はないが、蠍座の正体が掴めた」
「「本当か!?」」
礼と宇月が身を乗り出して箒に近付いた。
「宇月、礼、とりあえず落ち着けって」
「あ、あぁ…」「悪い…」
一夏に宥められ、再び座った2人。
「で、スコーピオンの正体って…?」
「IS学園の誰か…らしい」
背筋に悪寒が走った。あの危険なスコーピオンが自分たちのすぐ近くに潜んでいるのだから。
「わたしもその会話の中にいた。証明できる」
もちろん、ラウラはその会話に参加しており、証人となった。
「声からして男…。しかも、奴はトーナメントの時にフォーゼとメテオのリミットブレイクを同時に受けて、右肩に大怪我を負ったはず」
その言葉を聞いて、全員の表情が凍りつく。心当たりがあるのだ。
「それって…」
「トーナメントの翌日…紫苑は右肩を痛がってた」
彼女の言葉からして…。
「つまり…蠍座の正体は…白石紫苑じゃないかと思う」
「絶対に違う!」
しかし、シャルルが強く否定した。
「紫苑がスコーピオンなわけない!だって…紫苑は…」
シャルルの記憶にある紫苑の行動。自分を守るため必死に奮闘したり、困ったり戸惑ったりしながらも、優しさを忘れない姿。
「でも、それが演技ってことも…」
「そんなわけない!紫苑はボクを守ってくれた!もしスコーピオンなら、ボクを庇ったりしないよ!」
紫苑がスコーピオンだとは思えないシャルルは、その場から走り去ってしまった。
少しの沈黙の後、一夏が口を開いた。
「…宇月、おれも紫苑がスコーピオンとは思えない…」
「でもな…箒の言葉は真実だし…今は、そう考えるしかない。逆に言うけど、紫苑以外でスコーピオンじゃないのかって候補はいるか?」
一夏がそれに意見を言った。
「龍崎先生と月宮先生が…怪しい。千冬姉が、その2人からラウラがジェミニだと聞いたらしい」
「それはないな。龍崎先生の正体は仮面ライダー龍騎だった」
「龍崎先生が龍騎!?」
宇月が意識せず呟いた言葉に、一同が驚く。
「喋らないほうがいいだろうけど、誤解招くよりマシ。とにかく、あの2人はゾディアーツとは無関係だ。他に候補は…」
さらに宇月の問いかけに手を挙げたのは、礼だった。
「篠ノ之の推理、一つだけ間違いがある。ホロスコープスは声や体型を変えることが出来る。つまり、スコーピオンは必ずしも男だとは限らない」
礼の予想では、スコーピオンは女ではないのかと考えている。
「じゃあ、誰だと言うんですの…?」
セシリアの質問に礼は重い口を開いた。
「おれは山田真耶を睨んでいる」
「仮面ライダー部の顧問をしているそうだが、おれが来て以降、まったく仮面ライダー部に姿を現さない。同じホロスコープスのおれに勘付かれまいと、距離を置いたんじゃないかと考えている。顧問を認めたのも、フォーゼの情報を流すため…」
確かに山田は礼が現れて以降、仮面ライダー部の集会に何かと理由をつけて、来ていない。
礼の推理は憶測が多いものの、説得力が大きかった。
「とりあえず今後は、ゾディアーツ発生時以外のとき、スコーピオンの正体を探そう。候補の山田先生と紫苑には…注意して接触してくれ。だれか、シャルルにも伝えてくれな」
宇月の指示に全員が頷く。
その日の夜。
IS学園にいる男子が山田によって集められた。
「みなさん、先日はトーナメントお疲れ様でした!」
山田から労いの言葉を言われ、戸惑う宇月達。
理雄は腕を組んで山田に近付き、ガンを飛ばす。相変わらず凄まじい威圧感であり、山田は縮こまって怯える。
「…で、なんだよ。アァ?」
「え、えっとですね…男子の大浴場が準備できましたので…報告をと思って…」
「チッ…ンなことで呼び出したのかよ」
内容を聞かされた理雄はバカバカしいと吐き捨てながらその場を去った。
取り残されたのは落ち込んだ山田に、宇月、一夏、礼、シャルル、紫苑。
沈黙を破ったのは紫苑だった。
半泣き状態の山田の背中をさすりながら、優しく言った。
「あ…山田先生、落ち込まないで下さい…。わざわざ教えてくれて、ありがとうございます」
「ぐす…はい…」
立場がまるで逆だった。ただ、宇月と礼は2人を懐疑心のある目で見つめている。
なにしろ、どちらもスコーピオンである可能性があるからだ。この行動が演技である可能性もある。
「みんな、先に行ってて。僕とシャルルは別々に入るだろうから…」
紫苑は困ったように笑って、その場を後にした。
残りの男子メンバーも一緒に入浴の準備を始めようとするが、山田は彼等を引きとめようとする。
「あ、あの…仮面ライダー部のことで…」
「気安くおれ達に話しかけないで下さい」
「え…つ、辻永君…」
礼はぴしゃりと言い放ち、さっさと歩き去った。またしてもショックを受ける山田に一夏が言う。
「その…あいつ、先生のことを信じてないらしくて…」
「そうですよね…いつも会議会議って、部活をほったらかしにすれば…そうなりますよね…」
しゃがみこんで、再びイジける山田。そんな彼女に宇月は、はっきりと明言した。
「先生。おれと礼は…あなたをホロスコープスではないかと疑っています。ですから、疑いが晴れるまで、今までのように接する事は出来ません」
宇月は礼ほど疑っているわけではないが、やはり完全な信用はしていなかった。
これはフォーゼやゾディアーツに関わってきた2人だからこそなのだ。
ゾディアーツは様々な手を使って、彼等を騙してきた。そのゾディアーツの可能性がある人物には、どうしても疑いの目を向けてしまうのだ。
戦う者は…そうして純粋な心を失ってゆくのかもしれない。
宇月達の入浴後、暫くして紫苑は1人で入っていた。
彼等と一緒ではなかった理由はもちろん、身体にある縫い跡や母親の右手や左足を見られないためだ。
「…はぁ」
ここでも溜息を漏らしている紫苑。
そこへ…。
「おじゃまします…」
「…え?」
背後から声が聞こえて振り返ると、シャルルがタオル一枚で立っていた。
「へ!?あ…あの…?えぇ!?」
「あ…あの…あまりジッと見られると…恥ずかしい…」
俯いて顔を真っ赤にしているシャルル。紫苑も自分の行動が恥ずかしくなり、後ろを向いた。
「はっ…ご、ごめんなさい!」
「紫苑、ごめんはダメ!」
いつもの癖でつい注意してしまう。だが、今回ばかりは紫苑も彼女の意見を否定しようとした。
「あ…でも…どうして?…君は女の子なのに…」
「ボクと一緒じゃ…イヤかな?」
「い、嫌って訳じゃないけど…その…なにもお風呂まで一緒だなんて…僕は男で、君は女だし…」
紫苑に対して、この行動は良くなかったようだ。シャルルは落胆して、浴室から出て行こうとする。
「…ごめん、ビックリさせて。やっぱり上がるね」
だが…。
「あ…まって!」
戸惑いながらも紫苑は、シャルルを引き止める。
「もし…良かったら…ここまで来た理由を…教えて」
背中を向けたまま、少し身体を縮めながら言う紫苑。その背中に幾つもの縫い跡がある。
「…ボクの在り方…決めたから。それを言いたくて…」
ここに来たのは、シャルル自身の決意を紫苑に伝えるため。
そして…。
「ボクは…仮面ライダー部のみんな…それに紫苑と一緒にいたい」
浴槽の中で二人は背中合わせに座る。シャルルの手が紫苑の手と重なる。
「…一緒に…?」
「うん。だから、紫苑に…ボクの本当の名前を教えるね…」
次にシャルルは紫苑の肩に手を置いて静かに続けた。
「ボクの名前は…シャルロット…シャルロット・デュノア。これが、お母さんからもらった名前。一番、最初は紫苑に教えたかった…」
「そっか…」
紫苑へ自分の真実をまた一つ伝えた。そしてシャルロットが来たもう一つの理由。
(良かった…紫苑の右肩に傷はない…)
それは、紫苑がスコーピオンではない確証を得るためだった。
あの攻撃を受けたならば、例えスコーピオンでも傷や跡らしきものが残っているはず。だが、紫苑の右肩には縫い跡以外には何も無かった。
つまり、紫苑はスコーピオンではない。
「ボクは…紫苑が居たから、ここに居場所が出来て、ボクらしく在ることが出来た。本当に…ありがとう」
背中から紫苑を抱きしめるシャルロット。
だが…。
「…ぐぅっ!?」
突如、紫苑は右肩を庇いながら苦しみ始める。
「紫苑…どうしたの!?」
シャルロットは紫苑から少し離れて、様子を窺う。
「この右手はお母さんの腕だから…うぅっ…!時々、拒否反応が起こる…!」
「大丈夫なの…?」
そっと手を伸ばそうとするが…。
「触るなああああああああああああああぁ!!!!!」
ドンッ!
「きゃあっ!?」
いつもの紫苑とは思えないような形相で、シャルロットを突き飛ばした。
「ダメだ…気を許しちゃ…!今更…僕なんか…!…ダメだ!」
何度も繰り返しながら右肩を庇う紫苑。そのまま浴室から出ていってしまった。
その異変にシャルロットは唖然と見送るしかなかった。
「どうして…気を許しちゃいけないの…?」
深夜。
本音から逃れた礼は、バガミールが撮影した過去の映像などをじっくりと見ていた。
「どこかにヒントがあるはずだ…」
そう、他愛ない会話の中や、ゾディアーツたち、スコーピオンの発言が、正体へ導く糸口になると信じて見直していたのだ。
「…ん?」
ふと、映像の一つに目が止まった。
それは、セシリアがカメレオン・ゾディアーツの襲撃を受けた現場で箒が撮影した動画だった。
それを見て、ある予感がする。
「…ヤツの周辺を洗ってみるか」
次の日…。
教室は騒然としている。
「シャルロット・デュノアです。改めてみなさん、よろしくおねがいします」
今まで男子と通してきたシャルルが突然、シャルロットと名乗り、女子用の制服に身を包んでいたのだから。
「…はああああああああああああああああああああああああああああぁ!!!???」
「うるさい」
スパァン!
「あだっ!?」
宇月の大声は千冬の出席簿で遮られた。山田がそれに苦笑しながら説明した。
「デュノア君は、デュノアさんでした…ということです。これからも、彼女となかよく…」
ドガアアアアアアアアァ!
突如、大きな轟音が鳴り響き、IS学園にダスタードの襲撃が始まった。
「きゃあああああああぁ!」「怪物よ!」
逃げ惑う生徒達の流れを掻い潜って逆走する宇月達。その先には、10体前後のダスタードとスコーピオンが待ち構えていた。
「ごきげんよう、フォーゼと支援者諸君。そして、星に見放された愚か者よ」
「スコーピオン…!」
ラウラは静かに怒りの表情をあらわにする。現在は仮面ライダー部とは言え、彼女はスコーピオンにただならない因縁がある。だが、今のラウラは随分と落ち着いており、感情に任せた行動は取らない。
一夏が前に進み出てスコーピオンを指差す。
「正体を現せ、スコーピオン!」
「最初に言ったはずだ。知りたければ、私に勝てと」
ダスタード達がスコーピオンを守るように立ち塞がる。どうやら、簡単には通してくれないようだ。
「ダスタードくらい、ISなら難なく倒せるはず。一夏達、頼めるか?」
「あぁ!」「片付け次第、援護に向かいますわ!」
一夏とセシリアの返答と共に、鈴音、シャルロット、ラウラを含めた5人が、それぞれのISを展開する。
宇月はフォーゼドライバーを装着し、礼は箒と下がりながら、バガミールでの分析を始める。
<3><2><1>
「変身っ!」
やはり、この場でも箒は役目が無かった。
「今のわたしにできることは…」
彼女に出来る事は、この戦いの中で、なんとしてでもスコーピオンの正体を掴む事だ。
ふと、礼が立ち上がる。
「篠ノ之、少し頼めるか…?」
そう言って、早々に走り去る。
「礼…?」
遠くのほうで、NとSが描かれたケータイを取り出して連絡を取っている。
「…メテオ、力を貸せ。スコーピオンの雰囲気が違う」
そう言いながら、学園の中へと消えた。
「ヌウウウゥン!」
ダスタードが放つ手裏剣のようなエネルギー体。
「そんなもの、効かないわよ!」
鈴音の龍砲でそれらを相殺し、その後からシャルロットとセシリアが攻撃を放つ。
「いくよ!」「覚悟なさって!」
ズガアアアアアアアアアアアァ!
「ヌオオオオオオオォ!?」
一方スコーピオンには、フォーゼBS、一夏、ラウラが乗ったパワーダイザーが攻撃を仕掛ける。
「ラウラ、パワーダイザーは動かせそうか?」
「問題ない、上々だ」
ラウラは兵器の扱いにも長けているので、こういったモノの操作にはかなり強い。
「いくぞ!」「あぁ、一夏!」
一夏は雪片弐型を構え、パワーダイザーとともに突進する。
「そんな単調な攻撃…」
<LIMIT-BREAKE>
「なに!?」
2人の攻撃を避けた背後に、ランチャー、ガトリング、ヒーハックガンを構えたフォーゼFSが待ち構えていた。
「ライダー爆熱シュート!一斉掃射ああああああああああぁ!」
ドガアアアアアアアアァ!
「ヌゥッ…!」
とっさにクロークで防いだのでダメージは無かったが、視界を失う。
「チッ…小賢しい!」
視界が取り戻されたと思った瞬間…。
「おおおおおおおおおおおぉ!」「はああああああああぁ!」
再び、一夏とパワーダイザーが突進してきた。
ドゴオオオオオオォ!
「ヌガアアアァ!?」
フォーゼやメテオの攻撃無しに、初めてダメージを追わせられた。
「よし!」「良い調子だ!」
一夏とラウラは拳を軽くぶつける。
そのとき一瞬、この場の空気が重くなる。
「愚かな…。我が女王の御加護を受けた力を見るが良い」
ドォッ!
スコーピオンの身体から赤黒い霧が噴出し、背中の尾が巨大な針となる。
「あれは…!?」「…女王の力…!?」
一夏とラウラはあの現象を見ることが初めてで、戸惑っている。
だが、フォーゼBSには理解できた。
「いや、ゆりこの力を使ってる…!」
SOLUであるゆりこのコズミックエナジーを変換したものだ。
強い怒りがこみ上げてきた。
愛する者の存在した証を、こんなモノに悪用されているのだから。
「スコーピオン、おまえ…!」「どこまでも、堕ちた者だな…!」
一夏とラウラにもその怒りは伝わってきた。
それに対して、スコーピオンはおかしそうに笑う。
「フフフ…堕ちたとは見当違いだな。私はこの力で、更なる進化の道を辿る!」
そう言い放った途端、尾が凄まじい勢いで振りかざされ、フォーゼBS達を襲う。
「くっ…!」
とっさに全員が避けたのだが…。
避けた瞬間にスコーピオンから視線を外したため、パワーダイザーに一気に間合いを詰められた。
「うぅっ…!?」
「まずは裏切り者からだ…!」
パワーダイザーの装甲版を抉る勢いで、針を突き刺そうとするが…。
「ラウラっ!」
ドズッ!
「がっ…!?」
なんとフォーゼBSが庇い、毒を受けた。
変身が解除された宇月は顔面蒼白になり、身体中がガタガタと震えている。
「宇月っ!おい!」
一夏が駆け寄るが既に意識が無く、震え続けているだけだ。
ドガアアアアアアアアァ!
「ヌウウゥ!?」「ムオオオォ!?」
そこへ、青い発光体がダスタードを蹴散らしながら現れ、メテオの姿に変わった。
「来たか、嫁!」「違う!」
ラウラの呼び名をすぐに否定した後、振り向きながら全員に指示した。
「ラウラ。フォーゼを連れて逃げろ!早くしないと、こいつは死ぬ!」
「…だが、スコーピオンは…!」
ラウラが引き止めるのは理解できた。今のスコーピオンは只ならぬ殺気があり、凶悪な存在になっている。メテオだけを置いていくのは気が引けたのだ。
「早く行け!おまえの強さの意味を失う前に!」
その言葉で思い返した。ラウラが足りなかったのは友である。宇月を失うのは、新たな友を失い、強さを失ってしまうのだ。
「…わかった!一夏、箒、セシリア、鈴音、シャルロット!退散だ!」
軍人らしい指示を全員に送り、パワーダイザーで宇月を抱えて走り始めた。
残されたメテオとスコーピオン。
「またしても、お仲間の危機に登場したようだね」
「彼等はゾディアーツと戦う心を持っている。その者達を今、失うわけにはいかない!」
メテオが強く言い放ち、構えを取る。
「セアアアアアアアアァッ!」
「オオオオオオォ…アタアアアアアアアアアァッ!」
一気に間合いを詰め、2人は同時に蹴りを放つ。
ドゴオオオォ!
「ヌゥ…!」「クッ…!」
威力は同等…いや、スコーピオンが僅かながら勝っている。
だが、スコーピオンは唐突に力を抜いて立ち尽くす。
「降参か…?」
「いや、一応の目的が半分達成できたのでね」
勝ち誇ったように言うスコーピオンの右手には、ジェミニスイッチを握っていた。
どうやら、フォーゼがパワーダイザーを庇っていた際にラウラから掠め取ったのだろう。
「それは…ラウラのスイッチ!?」
「アリエスは…次の機会にする。またお会いしよう。その時はぜひ、正体を明かしてくれたまえ」
そのまま、黒い霧の中にスコーピオンは消えた。
「フォーゼを救うためには…」
メテオはそう呟きながら、青い発光体となって去っていった。
それから少し時間が経って、礼が千冬に頼みごとをするために現れた。
「どういうことだ…あいつの過去の経歴が知りたいとは…?」
「理由を聞かずに答えてはもらえませんか…」
落胆する礼。他人の情報をすぐさま明かすなど、そう簡単に出来るものではない。
「おれ達からもお願いします」
そこに竜也とあゆが現れ、頭を下げる。
「礼君達は、絶対にこの学園を守ってくれます!信じてください!」
3人の様子に、少しだけ心が揺れた千冬は…。
「…分かった」
彼等の要望に答えることにした。
放課後…。
ふと、箒が木陰に目をやると…理雄が笑みを浮かべながら立ち尽くしていた。
「あと1つ…。すぐに回収してやるぜ…!」
そう言って、ポケットに入れていた右手を出す。
「あ…!?」
それを見て、息が止まったかと思った。右手に握られていたのは…
ホロスコープスイッチだった。
それを押した途端、理雄の身体は見る見る黒い霧に包まれ、その姿は…。
蠍座の使徒であるスコーピオン・ゾディアーツへと変わった。
「まさか…そんな!?」
あまりに衝撃的な出来事で、身体が動かなかった。
「さて、正体を知ってどうだね、篠ノ之箒?」
やはり、気付いていた。振り返ってゆっくりと箒に向かって歩いてくる。
「理雄…!おまえが…おまえがスコーピオンだったのか!?」
「そのとおり。この私、裾迫理雄こそ…偉大なる女王、ヴァルゴ・ゾディアーツ様の星団「ホロスコープス」の一員である蠍座の使徒、スコーピオン・ゾディアーツだ」
歩み寄っていた足を止め、クロークを脱ぎ捨てる。身の危険を感じた箒は、後ずさりを始めて、すぐにこの場から走り去ろうとしたが…。
「無力な者の敵前逃亡は、敗北が運命付けられている」
ドズッ…!
「あっ…!?」
スコーピオンは自身の尾を伸ばして、箒の背中に突き刺した。その途端、彼女は言い様のない苦痛に襲われて地面に倒れ、もがき始める。
「う…あぅっ…!な、なにを…!?」
「ヴァルゴ様から「篠ノ之箒は殺すな」と指示を頂いているのでな…。永遠に苦痛が持続する毒を贈ろう。受け取ってくれたまえ」
身体中から汗が噴出しているにも拘らず、背筋は強い寒気に襲われ、頭痛や腹痛、身体中の痛みが、箒の脳内を支配する。身体の先は強い痺れもきたしていた。
「あ…ぅ…く…!」
箒は口を開けて叫ぼうとしたが、声が全く出てこない。身体を抱えつつ必死に口を開ける彼女の姿を見て、スコーピオンは笑い始めた。
「ハハハハハハハハ、良い格好だ。…私の正体を喋られても困るのでね、痺れで言葉も話せないようにしておいたよ。精々、後悔と苦痛に悶えるが良い」
そう言い捨てて、箒を放置したまま姿を消した。
次回!
超・新・星!
メテオだけじゃ…スコーピオンには…!
まだだ…諦めるのは早い
もう言い逃れは出来ない!
オレはヴァルゴ様から…人として生きる素晴らしさを学んだ!
ヴァルゴ様が…オレを救ってくれた!
ゆりこ…力を貸してくれ!
零落白夜、発動!
第14話「蠍・座・決・戦」
青春スイッチ・オン!
キャスト
城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ
織斑一夏
篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音
???=仮面ライダーメテオ
ラウラ・ボーデヴィッヒ
辻永礼=アリエス・ゾディアーツ
布仏本音
シャルロット・デュノア
白石紫苑
裾迫理雄=スコーピオン・ゾディアーツ
織斑千冬
山田真耶
???=レオ・ゾディアーツ
篠ノ之束(?)=ヴァルゴ・ゾディアーツ
今回のSOLUスイッチは、超新星を発現させるモノです!
さて、遂にスコーピオンの正体が判明しましたが、どうでした?
山田先生や紫苑ではないかと思っていた皆さん、残念でした(わざとらしく)!
実は最大のヒントとして、名前でした。
すそさこ・りお→(並び替え)→さそり・すこ(ーぴ)お(ん)
原作でもある、アナグラムですね。
彼がスコーピオンになった理由は…次回で明かします!
次回、遂にスコーピオンとの最終決戦!さぁ、毒を喰らった宇月と箒はどうなるか…!?
お楽しみに!