あの日以降、ストリートミュージシャンの噂はパッタリと止んだ。八木がダークネヴュラに送られたので当然である。ただ、その事実はIS学園内では夏樹しか知らない。
「八木さん…何処行ったんだろうな…」
「また、新しい夢を探してるんだろ」
心配している宇月に、一夏が安心させる一言を掛けた。
今日は千冬がいないので、山田がホームルームを担当している。
「皆さん、明日はこのクラス全員と、1年のクラス代表全員で落語を見に行くそうです!」
「落語…?」
彼女の報告にクラス全員、口が開いている。
「え、え~と…経緯はわたしも知らないんですが、日本の文化を学ぶ一環として…だそうです。昼からの授業を利用しますので、覚えておいてくださいね!」
放課後…。
「あ~授業がさっぱり分からん!」「コズミックエナジー分野は、専門的ですのにね…」
実は宇月、テストはまだだが、かなり危険な学力なのだ。コズミックエナジーの勉学に励みすぎた中学時代だったので、他の科目はさっぱりなのだ。ちなみに礼は要領が良いらしく、クラス内でも上の下程度だ。
「そういえば、クラス代表も明日は一緒なんだな…」
「たしか4組の代表は、日本の代表候補生だって…」
そう、1年で代表候補生はその少女が最後の一人だ。話では聞いたが、宇月達は全員、会ったことがない。
だが…。
「簪ちゃんのことかな~?」
本音がふと、声を漏らした。どうやら、彼女はその娘のことを知っているらしい。
「簪…?」
「更織簪ちゃん。わたしの幼馴染で、わたしはその娘の専属メイドだよ~」
「おまえ、ノロマの癖にメイドなんてやってたのか!?」
このメンバーの中で、礼が一番驚いていた。
「ノロマじゃないよぉ…」
それから、彼女の説明を聞いた限りをまとめてみると、こういうことになる。
布仏家は昔から、更織家に使えてきた家系であり、本音の姉と簪の姉も、似たような関係を築いているらしい。
しかも簪を除けば、本音を含めて全員、生徒会に所属しているとのことだ。
「結構すごい家柄なんだな、本音って。それに秀才揃い…?」
「えへへ…それほどでもないよぉ」
興味を持った仮面ライダー部一同。紫苑と本音も含めて、簪に会いに行く事にした。
その頃…。
ホロスコープス達は新たな使徒…キャンサーを歓迎していた。
「おめでとう、キャンサー。これで君も崇高なる十二使徒の一人だ」
「あいや~うれしいですねェ!アタシなんかが、こんな組織に入れるとは!」
明らかに場違いな雰囲気を醸し出すキャンサーだが、レオとヴァルゴは感じ取っていた。
この者の心には、深い闇を抱えている。
「アンタねぇ…ヴァルゴ様への礼儀はわきまえて…」
ピスケスの注意にも、おどけた様子で返すキャンサー。
「いやいや、申し訳ない!アタシの態度が分かる顔と掛けまして、童話の音楽隊とときます」
「…その心は?」
ヴァルゴが静かに問うと、キャンサーは何処からか取り出した扇子を開いてヴァルゴに向ける。
「どちらも…無礼面(ブレーメン)!お後が宜しいようで…」
「全く…。レオ様、どうしてこんな奴を選んだんですか…?」
「オレはただ、星の運命を感じた者にスイッチを渡しただけだ。性格など知らん」
レオの返事にピスケスは溜息をつくが、ヴァルゴはなんら気にしてはいない様子だ。
「構わないよ、キャンサー。居心地の良い姿でいるが良い。それよりも、君に頼みたい事がある」
「へぇ?なになに…?」
4組の教室の近くで、簪は見つかった。
「あ、簪ちゃん!」「本音ちゃん?」
手を振る本音に気付いて、簪は歩いてくる。一瞬、一夏を見て表情が曇ったが、すぐに柔らかな笑みに戻る。
「お友達を紹介したくて!」
そういいながら、宇月達をみる。
「あ…城茂宇月だ!よろしくな!」「織斑一夏、よろしく」「篠ノ之箒だ」
「セシリア・オルコット。イギリス代表候補生ですわ」「鳳鈴音。中国の代表候補よ」
「シャルロット・デュノアだよ。よろしくね」「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「…辻永礼」「えっと…白石紫苑です…」
一通り紹介が終わると、宇月を見た簪の目が輝いた。
「あ…城茂君って…あの仮面ライダーですよね!?」「え…あ、あぁ…一応…」
戸惑いながら答えると、簪は先ほどとは想像もつかないほど興奮した様子で宇月の手を握って、喋り始める。
「わたし、仮面ライダーのファンなんです!」
「そ…そうか…?」
「はい!メテオや龍騎もですが、フォーゼが一番好きです!」
なんと彼女、何処から仕入れたのかは不明だが、フォーゼ、メテオ、龍騎の名前まで知っているのだ。
「どうも照れるな…こんなにはっきり言われると…」
宇月は気分が少し良くなって、頭をさすり始めた。
「あら、結構楽しそうじゃない?」「あまり大騒ぎするのは、良くないと思いますが…」
そこに、3年と思わしき女子生徒が2人やってきた。
「お、お姉ちゃん…」「虚お姉ちゃん~!」
どうやら、この2人が本音と簪の姉らしい。
「あなた達が、仮面ライダー部ね?」
「知ってるんですか?」
彼女は仮面ライダー部のことも把握しているらしい。さすが生徒会といったところか。
「生徒会長なら当然よ。わたしは簪の姉の更織楯無。よろしく」
「わたしは本音の姉の布仏虚です」
さらっと自己紹介を終えた後、楯無は思い出したように言う。
「そうそう、わたしも明日は行くから。生徒会長の権限で」
「無茶苦茶…」
「そういうことだから。じゃあね」
そう言って、さっさと歩き去っていった。
その日の夜。
宇月と礼の部屋で、2人は話をしていた。
「礼…そろそろ、あいつらにメテオの正体を伝えても良いんじゃないのか?」
「…ダメだ」
宇月の提案に、礼は首を振る。
「あいつらが本気で、おれ達をサポートしてくれてるのは分かってるだろ。隠す理由なんて、今はないし…。なんでダメなんだよ?」
宇月はもう、仮面ライダー部のメンバーを信頼している。礼も以前よりは、物事を頼む事が多くなってきた。それにも関わらず彼が良しとしない理由を理解できないのだ。
「今、正体を教えたら…間違いなく、あいつらは失望する…。出来れば、これからも隠し続けていくつもりだ」
「…ラウラか?」
必死に思考や記憶をめぐらせ、ラウラとメテオの関係性の心配事を思い出した。あれが理由なのだろうか…。
「あいつもそうだ。ボーデヴィッヒは、メテオに恋心を抱いている。正体を知れば、ショックを受ける…」
「受けるか…?大丈夫だろ?」
兎に角、メテオの素顔を明かせるときは、まだ先の話のようだ…。
理雄の病室…。
「理雄君、お見舞いにきたよ」
「…懲りないな、ピスケス」
優しい笑みを浮かべて現れた夏樹に対して、少し微笑みながら迎える理雄。
夏樹は毎日、理雄の病室に足を運んでいる。
「もぉ、夏樹って呼んで!アタシといるときは、ホロスコープスは忘れて!じゃないと、スコーピオン様って呼ばないといけないもん!」
「…慣れるのに時間が掛かる。許してくれ」
頬を膨らませて文句を言う夏樹に、理雄は少し困ったように呟く。
「ふふ、少しずつで良いよ。いきなり変わってなんて言わない。じゃあ、今日は何のお話する?」
そのとき…。
「…理雄」
箒とシャルロットが見舞いに来た。実は仮面ライダー部の女子メンバーは毎日、代わる代わる理雄の見舞いに来ているのだ。
2人の姿を見た途端、理雄の表情は強い怒りを込めた表情に変わった。
夏樹も警戒する。
「貴様ら…」「何しに来たの?」
「えっと…お見舞い…かな?」
シャルロットが冷や汗を流しながらも笑うが、理雄はそっぽを向く。
「帰れ」
「だ…だが…」
箒が反論をしようとしたところ、夏樹が立ち上がって詰め寄る。
「帰ってよ!理雄君はもう、何もしない!」
「そんな…ちがうよ…」
2人が必死に弁解しようとした途端…。
「嘘を吐くな!!!!!」
理雄が強く叫ぶ。
「貴様らは偽善的な台詞を抜かしながら、オレの未来を奪った!それだけでも十分辛いのに、今度は夏樹まで奪う気か!?」
「だから、違う…!」
「オレは…何か得たらいけないのか…?ずっと…この病室で横になって、景色を眺める事しか許されないのか!?」
完全に気迫に負けた。箒とシャルロットはトボトボと病室を離れていった。
「…理雄君」
「すまない。あまり、こんな姿は見られたく…」
言いかけたところで…
夏樹が理雄の唇を自身の唇で塞いだ。
「嬉しい…。いつの間にか、アタシは貴方の大切なモノになったんだね…」
「…オレにはもう、オマエくらいしか残されてないんだ…」
お互い、顔を紅くしながら俯く。
暫くの沈黙の後、夏樹は顔を上げて微笑む。
「安心して!アタシは奪われたりしない!今度は、フォーゼ達の大切なモノを…アタシが奪ってみせる!」
次の日…。
とある劇場で落語の席が開かれた。
席は自由に座っていいとの事なので、仮面ライダー部のメンバーは固まって座る。
ここでは、やはり一夏は人気者。
「わたしがここに座るんだ!」「いいえ、ここはわたくしが!」「あたしに譲りなさいよ!」
凄まじい席の取り合いが始まっている。
「なんで、こんなに取り合うんだ?」
「人気なんだよ、一夏。それに引き換え、おれは…」
宇月は礼が隣にいるのだが、もう片方の隣席は空いている。なぜ、ここまで人気がないのか…。
シャルロットと紫苑も隣同士で座っている。
「落語を見るのって、初めてなんだぁ」「日本語を上手く使った芸だから、面白いと思うよ」
ラウラは本音の隣に座っている。
「日本の文化か…。そういえば、メテオは日本人なのか?」
結果的に…。
紫苑、シャルロット、鈴音、セシリア、一夏、箒、ラウラ、本音、礼、宇月という席順になった。
そして、紫苑の隣には…
「あら、隣なのね。仮面ライダー部のみんな」
楯無がいた。横には簪と虚もいる。
「し、城茂君のとなりが良いのに…」
実は簪、宇月の隣の席に座りたかったのだが、楯無がいる手前、そういうわけには行かなかったのだ。
まもなく、幕が開くと…
「皆さん始めまして!アタシは、しがない落語家の「九番亭弐式」と申します」
正座をした着物の男が頭をゆっくりと下げる。
そして、落語が始まった…。
30分ほどで幕は下りて、お開きとなった。
劇場から出て、今は外にいる。
意外と、仮面ライダー部のメンバーは笑っている。
「あはは…面白かったぁ…」「日本では、こんなにもユーモアある文化があったんですね」
逆に紫苑と礼にはウケが良くなかったらしい。
「う~ん…」「ふん、つまらん」
そして…。
「だっははははははははは!」
下品な笑い方をしているのは、宇月。ゲラゲラと笑い転げている。
「よっぽど、面白かったのね…」
その笑い方は、鈴音が引くほどだ。
そこへ…。
「皆さん、来てくれて嬉しいよ!」
先ほどと同じ格好で、弐式がやってきた。
「あ、九番亭さん!」「落語、面白かったですわ!」
「ホントに?いやぁ、可愛らしい女の子に褒められると、アタシも男の端くれ、照れちゃうねぇ!」
扇子を頭にぽんと置いて、へらへらと笑う。
「可愛らしい皆さんにはアタシの本名、教えちゃおう。居可弐式ってんだ。変わってるでしょ?そうそう。アタシもね、皆さんに用があってね…」
「なんだ…?」
ラウラが首を傾げて聞くと…弐式は薄気味悪い薄ら笑いを浮かべて…懐に手を入れた。
「乙女座の姐さんからの依頼で…ISの代表候補生や専用機持ち達を捕獲して欲しいって。そこの黒髪の女の子…篠ノ之ちゃんと、元ジェミニのボーデヴィッヒさん、そのお2人さんを除いてね」
懐から出て右手にあったのは…ホロスコープススイッチだ。
それを押して、キャンサーに変身する。
「な…蟹座の使徒!?」
「ご明察!しがない落語家は仮の姿。魂を司る蟹座の使徒「キャンサー・ゾディアーツ」が真の姿ってね!」
キャンサーが右手を挙げると、ダスタードが現れて一夏、セシリア、鈴音、シャルロット、本音、簪を捕まえた。
「なんだと!?くそっ!」「は…放しなさい!」「ちょっと!何処触ってんの!?」
「やめてよ!なんのつもり!?」「うわぁ…捕まったぁ~」「た…助けて…!」
ISを起動させられないように、手を強く握り締めているため、脱出は不可能だ。
「シャル、みんな!?」
「いやいや、申し訳ない…。ヴァルゴ姐さんの話だとね、ISに優れた子はホロスコープスに覚醒する可能性、高いんだってさ!…知ってる限りの例外はアタシと、アリエスの礼君と、カプリコーンの八木君くらいなもんだ。ナハハハハハハハハ!」
手を振りながらおかしそうに言うキャンサーに対して、残された宇月、箒、礼、ラウラは怒り心頭だ。
いつもは戦闘に参加しない箒と礼も前に歩み出る。それぞれ、竹刀とアリエススイッチをもって。
「あんた…何がおかしいんだ!?」「今回ばかりは、わたしも戦う!」
「口達者め…その舌、引きちぎってやる!」「許さん…すぐに叩き潰す!」
宇月はフォーゼドライバーを装備して赤いスイッチを起動させ、ラウラは自身のISであるシュヴァルツェア・レーゲンを展開する。
<3><2><1>
「変身っ!」
宇月はフォーゼBSに変身し、礼はアリエスへと変化した。
「はぁっ!そいつらを放せ、キャンサー!」
「おぉ…おっそろしい!こりゃぁ、用心しないとねぇ…ピスケスちゃん!」
その言葉と共に、ピスケススイッチを持った夏樹が現れ、すぐさまピスケスへと姿を変えた。
「ふざけてないで行くわよ。コイツ等…一人残らず叩きのめすから!」
「こ、こっちも恐ろしい…いやぁ、女の争いはヤダね。んじゃ、男同士で戦いますか!」
キャンサーの狙いはフォーゼBSとアリエスのようだが…。
「まって!アタシの目的はフォーゼとメテオの破壊よ。逆にしなさい」
「はいはい…」
その役はピスケスのようだ。改めて、キャンサーは箒とラウラを狙う。
<ELEKI-ON>
「うおおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」
フォーゼESにステイツチェンジし、ピスケスにビリーザロッドで斬りかかるが…。
「対策は練ってるっての!」
ガキィ!
それを避けて槍でビリーザロッドを絡めとり、手から離して投げる。
「あっ…!?このぉっ!」
「ここはおれに任せろ。ふんっ!」
アリエスがコッペリウスで生態活動を鈍らせる「眠りのオーラ」をピスケスに浴びせるが…。
「そんな攻撃、効くもんですか!」
液状化して距離を置く事でオーラを避けて、液状化し伸ばした槍でアリエスを突き刺す。
ドガアアァ!
「ぬぅっ…!」
アリエスはもともと、戦闘には向いていないホロスコープス。ピスケスは苦手な相手なのだ。
一方、箒とラウラ対キャンサー。
「喰らえ!」
シャヴァルツェア・レーゲンのワイヤーブレードでキャンサーを拘束しようとするが…。
「ハサミ相手にヒモじゃ、相性は悪いよ。ヒモだけに、締め(シメ)には向かない」
それらを全て、右手のハサミで切り裂く。
「これでは…!」
「はああああああぁっ!」
続いて箒が竹刀で斬りかかるが、キャンサーは避けるどころか怯えるようなしぐさをして…。
「アンタが持ってる武器と掛けまして、怯えて許しを請うと掛けます。その心は…竹刀でぇ~(しないで)」
バキィ!
竹刀は全く効き目がなく、逆に折れてしまう。
「くそ…やはり、戦力にはならないか…!?」
「アタシ達、ホロスコープスをナメてもらっちゃあ困るよ。このキャンサーの特徴は、凄まじい切断力と防御力。つまりだ、お嬢さん達には不向きな相手なの。おわかり?」
くるくると回りながら、おかしそうに言うキャンサー。まるで馬鹿にされている。
「おおおおおおおおおおおぉっ!」「ラウラ!?」
完全に頭にきたラウラは無理矢理突っ込んだ。
「あらあら…それでも、元ジェミニ?とんだ御笑い種だよ。ヒョイ、ヒョイと」
彼女の攻撃を踊りながら避け、見下すような態度で言う。
「その減らず口、いつまで叩ける!?」
「いつまでも叩くよ。アタシも落語家。減らず口じゃないと、飯は喰えないからね。あ…でも、キャンサーには口がない。ボーデヴィッヒのボーちゃん、面白いねェ!」
「きさまああああああああぁ!」
頭に血が昇り、攻撃に乱れが見えてきた。それをキャンサーは見逃さない。
「見えた」
「なに!?」
ズバァ!
「ぐあああああああああああぁっ!?」
シュヴァルツェア・レーゲンの部分を強く切り裂かれ、吹き飛ばされたラウラ。
地面に叩きつけられて、意識を失った。
フザケた態度を取っていたのは、相手の心を乱すためだったのだ。その作戦に上手くハマッたラウラが心を乱した瞬間、一気に攻撃をしたのだ。
「武士の情けだ、身体は斬らないであげたよ。でも…罰ゲームは必要だね!」
そう言って、キャンサーは左手をくるりと回す。すると、ラウラの胸から光の輪のようなモノが出てきてキャンサーの左手に収まった。丁寧に「らうら」と書かれた札が貼り付けてある。
「な…なんだ今のは!?」
「ボーさんはアタシに負けたよ、ピスケスのピーちゃん。退こうか」
「その呼び方はやめて!」
ドガアアァ!
「ぐあああぁっ!」「うおあああぁっ!?」
フォーゼESとアリエスを手玉にとっていたピスケスは、キャンサーの戦いが終わるのを見た瞬間、2人を吹き飛ばして距離を置き、手元から取り落としていたカプリコーンスイッチを回収して、去ろうとする…。
そこへ…。
「随分、派手にやってるわね」
楯無と虚が現れる。楯無の様子は穏やかではない。
「更織楯無…!」「お…誰?」
ピスケスは彼女を知っているが、キャンサーは知らない。気になって聞くと…。
「裏工作を実行する暗部に対する対暗部用暗部「更識家」の17代目当主。生徒会長でIS学園最強の女よ。生徒では唯一のIS現役代表…。アタシ達位のホロスコープス相手なら互角かもね」
「何…!?」
ふと、キャンサーの様子が変わった。先ほどのおどけた様子から、急に静かな雰囲気に変わる。
「先に行け、ピスケスちゃん。アタシはこの娘と一戦、交えたい」
「…どうなっても知らないわよ」
ピスケスは一夏達を連れて、姿を消した。
「さぁて…IS学園最強の力。見せてくれるよね?」
「さっき言ったとおり、後悔するわよ。弐式さん」
楯無も自身の専用IS「ミステリアス・レイディ」を展開し、戦闘形態に移る。
「よっしゃ!生徒会長さん、おれも…」
「黙って見てなさい、仮面ライダー」
フォーゼESが共闘を申し出るも、静かに言い放って断る。
静かににらみ合い…。
「はっ!」「オラアァッ!」
同時に動き出した。
「お、お嬢様!」
虚があせったように叫ぶ。
キャンサーがハサミで切り裂こうとするも…。
バシャアァ!
彼女の周りを水のような防御壁が守っており、攻撃は当たらない。
「どうしたの?落語家なら、ふざけた事でも言うと思ったんだけど?」
「…生憎、ネタ切れでね!」
再び、攻撃するが、全く当たらない。
「今度はこっちの番!」
ズバシャアアァ!
楯無は蛇腹剣「ラスティー・ネイル」でキャンサーに高圧水流で攻撃した。
吹き飛ばされるも、キャンサーは平気な様子である。
「アタシも防御には自身があってね。そんな水じゃ、アタシを流す事はできないよ」
ピスケスの言うとおりだ。2人は完全に互角である。どちらも一歩も譲っていない。
「強ぇ…」「本当にホロスコープス並の実力なのか…」
フォーゼBSや箒はその強さに驚愕している。
「…次に会ったときは、どんなカタチで会うか楽しみだ」
キャンサーは捨て台詞のような言葉を吐いて去っていた。
去り行く直前に…
「あの女…まさか…」
こう呟いて…。
千冬は、自分の知っている範囲でヴァルゴの正体を探っていた。
「何かあるはずだ…なにか…」
だが…全く手がかりがつかめない…。
「何がヒントになってるんだ…?」
そのとき、携帯から着信音が鳴り響く。
「はい…」
電話越しには、明るい声が響いた。
「ちーちゃん、お困りかなぁ?」
「お、お前は…!?」
辺りが落ち着いて…。
宇月、箒、礼、ラウラ、紫苑、楯無、虚の7人は、一堂に集まって、一連の事を話し合っている。
「どうしよう…シャルやみんなが…」
一人でオロオロしているのは紫苑。あの状況下で何もしていないのは紫苑と虚だけだ。
もっとも、虚は現れたときに自体が収束し始めている上に戦闘要員ではないが…。
「恐れていた事態だな。あの中で誰かがホロスコープスへ強制的に覚醒させられるかもしれない…」
礼は眉間に指を当てて俯いていた。
「あいつ等が集まっている場所さえ分かれば…」
箒はホロスコープス達が集う場所を探す事ができれば、一夏達を救いにいけるかもしれないと思ったが、それは礼ですら知らない限り、困難だろう。
「こんなときに限って、嫁はなにをしているんだ…!」
ラウラは腕を組んで立腹している。この状況で、実はメテオが現れなかったのだ。
「実は、メテオ…」「やめろ宇月!」
見かねた宇月がメテオの真実を言おうとするが、礼に止められる。
「ヤツは戦えなかった。この前、メテオドライバーが限界寸前になるまで戦っただろう」
そう、メテオドライバーを酷使した所為で、まともに戦えないのだ。
「どうしましょう…このままでは…」
「次の襲撃ね。またあの弐式さんが来るはず」
虚が困り果てているとき、楯無がサラリと答えを言う。
確証が得られているようだが、何故だろうか。気になった宇月が聞く。
「分かるんすか?」
「弐式さんはわたし達、更織家に恨みを抱いてるの。裏工作の関係で、妻や子供に見捨てられてるから…またわたしを狙ってくるはず」
「じゃあ…」
囮になるということだ。正確にはキャンサーをおびき寄せる餌を演じる予定らしい。
だが…理由はどうであれ…。
「危険っすよ!ホロスコープスでもキャンサー以上の者がまだいる!レオやリブラ、それにヴァルゴ…。こいつらが一緒に襲撃したら…!」
「でもね、このままだと一夏君達が怪人になるわよ。いいの?」
「そ…それは…!」
確かに、仲間がゾディアーツ化するのはなんとしてでも防ぎたい。
「大丈夫。弐式さんと互角くらいなら、何とかなるって。生徒会長を信じなさい!」
「…すんません、よろしくお願いします!」
宇月は、楯無に頭を下げる。
「さぁ、仮面ライダー部の巻き返しを見せるわよ!」
そして数時間後…。
レオの目の前に、一夏達が拘束されている。
「ヴァルゴ様は、貴様等へ直々に顔を見せることすら問題があってな。オレが代わりを務める」
一夏はレオに向かって、恐れずに噛み付くように言う。
「おれ達をホロスコープスにするなんて無理だ!おれ達は絶対にスイッチを押さない!」
彼をじっと見たレオはゆっくりと近付き…。
ガッ!
「ぐぅっ…!」
首を締め上げて持ち上げる。
「一夏さんっ!?」「このライオン!一夏を放せぇ!」「やめて!一夏が死んじゃう!」
セシリア、鈴音、シャルロットが必死に呼びかけるも、身体を拘束されているために抵抗は敵わない。
「安心しろ、殺しはしない。そして織斑一夏…。貴様の意思は関係ない。強制的にスイッチを押してもらうだけだ」
「がはっ…!お、押さないぜ…絶対に!」
意識は朦朧としているはずだが、その瞳の意思はさらに強さを増している。
「オレも…以前は、そんな目をしていた」
「な…なに…?」
ゆっくりと一夏を下ろして、彼等を見下ろしながら話す。
「ホロスコープスに覚醒するのは…心に巨大な闇を抱えている者だ。辻永礼は世界への疑問、ラウラ・ボーデヴィッヒは脆くなっていた存在の追及、裾迫理雄は自身の喪失への怒りや悲しみ、尾坂夏樹は他者から向けられる愛情の渇望、八木鳴介は叶わない夢への強い欲望、居可弐式は失ったものの奪還…。オレやリブラ、ヴァルゴ様もそうだ。全員が大きな闇を抱えている」
そう言いながら、ゾディアーツスイッチを取り出す。
「オマエ達は…どんな闇を抱えている?」
彼の目はセシリアを捉え、ゆっくりと近づく…。
「あ…あぁ…」
レオからにじみ出る凄まじい威圧感と恐怖が、セシリアの表情を歪ませる。
だが…。
ガシャッ…
「え…?」
スイッチを目の前で落とした。
「…オマエはダメだな。スイッチやオレに対して、恐怖心を持っている。闇も大きくない」
次に選んだのは…鈴音。
「やめて!あっちいってよ!」
「コイツも候補ではないか…。ゾディアーツに嫌悪感を示している」
さらに、シャルロットを見るが…。
「闇そのものを感じないな。…抱えるに足る過去を持っているのに」
「それって…まさか理雄がボクの秘密を知ってたのは…!」
「ホロスコープスの情報網は世界に及ぶ」
どうやら、彼女もホロスコープスへの可能性を持っていないらしい。そして以前、理雄がシャルロットの秘密を知っていたのは、ホロスコープスの情報から得たものだったらしい。
次は本音。
「うわあぁ…大きな口のライオンさんだ…」
驚いているのか怯えているのか分からないが、彼女からも闇を感じなかったらしい。
無言で次の候補に目を向けた。
「ひっ…!?」
「更織簪…姉への憤りを感じている…。自身が代表候補であるにも関わらず、織斑一夏のほうが先に専用機を作られたことへの不満…」
「簪…?」
一夏が驚いた様子で、簪をみる。
「そうです…。わたしは…悔しかったんです…」
「それなら、みんなで作ればいいじゃないか!おれも手伝う!」
一夏が叫ぶ。
「一夏…?」
「いや…おれだけじゃ頼りないかもしれないけどさ…。セシリアはISに物凄く詳しいし、礼やシャルロットも器用だ!宇月も教えるのは上手いぞ!」
彼女はいつの間にか、支えてくれる人々に囲まれている。なぜだか、心の中にあった氷が解けていくような感覚を感じた。
「だから…」
ドガァッ!
「がっ…!?」
「一夏!?」
言い終わる前に、レオが一夏の頭を抱えて地面に叩きつけた。
「そこまでだ。せっかく見つけた闇を拭おうとするな。貴様も外れだな、闇どころか光を感じる」
「あんた、許さないわよ!絶対に!」
鈴音が顔を真っ赤にして怒鳴るが…。
「グウゥゥ…!!!」
唸るような声を出しながら、レオは彼女を睨みつける。
その瞬間…。
「え…あぁ…?」
自分でも理解できないほどの強い悪寒に襲われる。身体中の震えが止まらなくなり、沢山の涙を流し始めた。
「あぁ…うぅ…」
「その程度の精神で、オレに歯向かえると思っていたのか?」
レオは鈴音の肩に軽く手を置いて、力を入れずに押す。彼女の身体は意図も簡単に倒れた。
「さぁ…星に願いを…」
簪の目の前に、スイッチを突きつけられる…。
そして…。
続く…。
次回!
アンタ達…捨てられるってわかる?
おれだって、捨てられた…でも頑張れた!
アタシは頑張れなかったよ
仮面ライダー部!意地を見せなさいよ!
なんで、違うのかよおおおおおおおぉ!?
おれ達だって…学園を守る事ができるんだ!
第19話「立・場・相・違」
青春スイッチ・オン!
キャスト
城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ
織斑一夏
篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音
ラウラ・ボーデヴィッヒ
辻永礼=アリエス・ゾディアーツ
布仏本音
シャルロット・デュノア
白石紫苑
更織簪
布仏虚
更織楯無
織斑千冬
山田真耶
???
尾坂夏樹=ピスケス・ゾディアーツ
居可弐式=キャンサー・ゾディアーツ
裾迫理雄
???=レオ・ゾディアーツ
???=ヴァルゴ・ゾディアーツ
如何でしたか?
キャンサーが意外と目立たなかった…(汗)。
今回、登場させましたIS小説内のみのキャラクター。実は読んだことないので、こんな口調であってるか不安です…。
レオの扱いが良く分からなくなってきました。こんな静かな雰囲気じゃなかったんですが…ドラゴンボールのブロリーをモチーフにしたので…。まぁ戦闘時には…。
次回はキャンサーと決戦です!意外な結末を辿りますよ、お楽しみに!