仮面ライダーフォーゼ~IS学園キターッ!~   作:龍騎鯖威武

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第25話「過・去・回・想」

 

 

宇月の自宅に到着した一同。

本音、簪、礼以外はその大きさに驚く。

「宇月、結構金持ちなんだな…」

一夏がまじまじと見つめてこぼす。

「父さんや母さんと暮らしてた家。世界初のコズミックエナジー研究室「プロト・ラビットハッチ」も完備してるし、住み心地は結構良いんだ!」

彼もまた、思い出に浸りながら家を見つめる。

心の中で思い描いた、友達を家に連れて、楽しく過ごすという理想も叶った。

 

全員集まったところで、食事の準備を始めようとしたのだが…。

「キッチンが狭いぞ!?」

そう、コズミックエナジー研究室は完備しているが、それ以外の部屋は他の家より少々大きいだけであり、この人数はさすがに多すぎる。

「あぁもう!料理しない人は出て行ってよ!」

鈴音が、セシリアや紫苑を押し出そうとしたが…。

「どうしてですの!?わたくしも…」

「いや、おまえはやめとけ」

「宇月さん!?」

宇月に反論しようとしたセシリアを、必死に紫苑が引っ張っていく。

「い、行こう、オルコットさん。料理が確実に上手な人に…」

「このわたくしが料理が下手と言いますの!?」

「あ、そんなつもりじゃ…ごめんね…」

「おい、行くぞセシリア!次の機会にしろ!」

「はいはい、落ち着いて落ち着いて…」

大声を上げるセシリアは、紫苑を引き剥がそうとするが、途中で料理をしない礼や弾にも押さえ込まれ、なんとか、その場は治まった。

簪と本音も待っていることになった。

 

残された者達はそれぞれテキパキと料理を作っていく。

「意外です、宇月さんや一夏さんも料理が上手いなんて」

蘭は最初の勝気な性格は何処へやら、穏やかな雰囲気で宇月や一夏の腕を褒める。

「いやぁ、それほどでも!」「まぁ、千冬姉がいないときは、おれが料理してたからな」

2人は少し照れながら、料理を作っていく。

 

そして…。

それぞれ一品ずつ、料理を作った。

一夏はチャーハン、宇月は大量の牛焼肉、箒は魚の煮つけ、鈴音は酢豚、シャルロットは唐揚げ、ラウラはおでん(?)、蘭は煮物。

全員分と考えても、結構な量だ。

しかし、宇月は…。

「だめだ、足りねぇ!」

まだ満足しておらず、一人で調理を再開した。

そうこうして…。

「よぉっしゃ、出来たぞぉぉぉぉ!!!」

見上げるほどの量の、生姜焼きまで作った。

「本当にこれ、全部食べるの?」

「モチのロン!食えなかったら言えよ?」

簪はそのサイズと、それをさらりと平らげると言いのけた宇月に恐怖すら感じた。

「おい、これはなんだ?」

「おでんだ」

「いや、どう見ても…」

「おでんだ」

「あのな、人の話を…」

「おでんだ」

「はい…」

礼はラウラの作ったおでん(?)を見て、ツッコミを入れたかったのだが、頑なに言い張るラウラの姿を見て、何も言い返せなかった。どうやら食べる事を拒否することもできないらしい。

ざわついていたところを一夏がまとめる。

「よし、みんな。今日はみんなで楽しもうぜ!まずは腹いっぱい食べよう!」

 

昼食が始まって少したった頃…。

一夏は少し窓の外を見つめていた。

「一夏、どうした?」

心配になった箒が尋ねてみると…。

「…もしかしたら、理雄と夏樹も居たかもしれないんだよな…」

今はもう、ここにいない者達。

理雄は確かに、学園内でも騒ぎを頻繁に起こし、ホロスコープスとして脅威をもたらした存在であったが、それは環境に振り回されていただけに過ぎない。もしそんな環境下に置かれていなければ、良き友として笑いあっていただろう。現に彼を想ってくれた夏樹を、同じくらい愛したのだから。

夏樹もそうだ。彼女も置かれた状況のために心を歪めさせられただけであり、本来は明るく活発で一途な少女であった。

「理雄と夏樹…今頃、何してるんだろうな…」

その空の向こうにあるであろうダークネヴュラを見つめながら、一夏は呟く。

二人はダークネヴュラに送られてしまい、生きているのかすら分からない。

「いつまでも一緒だといっていたんだ。今でも、ずっと一緒だと信じている」

箒は何故か確信が持てた。二人は死んでなどいない。いつか必ず戻ってくる事ができるはずだと。

そのときこそ、また友として手を取り合いたいと願う。

 

弾はふとケータイの写真を見つめる。

そこには数人の少年達に囲まれて、中心に弾と…

 

八木鳴介が肩を組んで笑っている写真の画像が映し出されていた。

 

「おにぃ。八木さんのこと、まだ気になってる?」

「夢は叶いかけてるって言ったっきり、音沙汰無しだからな…」

彼は元ホロスコープスの八木と顔馴染みなのだ。弾は八木がカプリコーンだとは知らないが。

幾人かのモテない男子達が集まった「私設・楽器を弾けるようになりたい同好会」の仲間として、楽器の使い方のイロハを教えられ、夢を語り合った仲なのだ。

しかし八木もまた、ダークネヴュラに送られ、今は消息不明扱いとなっている。

「でもさ、八木さんって、どこまでも夢に一生懸命だったよね。いつか、情熱的な一曲を世界に届けるって聞かなかったし」

「そうなんだよ、センスがないのにさ。ホントにバカだけど…みんなの兄貴だったよ…」

八木は急に何も言わずに姿を消すような人物ではない。弾達のことは人一倍、気にかけていたし、弾の祖父が切り盛りする五反田食堂で一番の常連であった。

「いつかまた、ひょっこり顔を出すよ」

確信は持てないが、そんな気がした。

それだけ、彼は信頼されていたのだ。

 

紫苑はシャルロットの作った唐揚げを、頬張っている。

「おいしい…!人の作った手料理を食べるなんて、本当に久しぶりだなぁ…」

「喜んでもらえて嬉しいよ!いっぱい食べてね、紫苑は細すぎるから」

シャルロットの言うとおり、紫苑は異常なほど身体が痩せている。本人曰く、もともと食が細かったらしいのだが、自分の身体がこうなってしまった時期に、極度の拒食症になってしまったことが、大きな原因だと言う。

今は何とか回復しているらしいが、まだその肉体は元通りになっていない。

「シャルって、なんでも出来るんだね。本当にすごい」

「そんなこと…。ボクだって、日本に来て分からない事もいっぱいあったし、お箸もちゃんと持てないんだから」

苦笑するシャルロット。今はフォークで食事を取っている。

「だからさ、ボクの分からない事は紫苑が教えて?ボクも紫苑に何か教えたい」

「うん…僕なんかで良ければ…」

紫苑はシャルロットの顔をちらちらと見ながら、顔を赤くして俯く。

 

そして…。

「もう食べられませんわ…」「ありえないわよ…」

セシリアと鈴音は、宇月に付き合わされていたが、遂に限界が訪れてしまったのだ。

一方の宇月は。

「おいおい!全部、喰っちまうぞ?」

「あんたが全部、食べなさいよ!」

「お、良いのか?んじゃ、遠慮なく!」

再び、目の前の食べ物の山を削っていく宇月。

「ほんっと、食い意地が張っているというか…」「フードファイターと言いますか…」

どうしたら、この量が胃袋に収まっているのかが理解できない。物理的法則を完全に無視している。

そこへ簪がやって来て、二人にこそこそと呟く。

「宇月…この前、ゆりこさんを失って悲しかったって聞いた。それを、これで紛らわせてるんじゃ…」

「あ…」

それで気付いた。

宇月は今まで、こんなに食べている事はなかった。一夏のクラス代表決定のお祝いでは確かに沢山食べていたが、これほどではなかった。心を寄せた者を失った悲しみを、食欲として、はけ口にしているのではないのだろうか…。

「いや、それはない」

ふと、礼が入り込んできた。

「宇月は凄まじいエネルギーを消費している。フォーゼの場合は、コズミックエナジーを肉体に循環させるサイクルが早すぎて肉体の消耗が激しいんだ。アレだけ食べても腹が膨れ上がる事もないのは、本来の人体的には有り得ない速度で消化しているからだ」

そう、これはいわゆる、フォーゼを扱う代償なのだ。しかし、食事さえ大量に摂取すれば命に関わる事はないので、不幸中の幸いとも言える。

「それって…もしかして、礼もメテオだから…」

「おれが使っているメテオはコズミックエナジーを使うが、サイクルがそこまで早くない。専用アストロスイッチの数が少ないからな。戦法が少ない分、代償がない」

フォーゼが規格では40個あるのに対し、メテオはメテオスイッチとメテオストームスイッチの2つだけなのだ。これが2つのシステムの大きな違いといえるだろう。

「ただ…宇月のあの悲しみが何処へ向けられているのか、気にはなるな」

礼もそれは図り知ることが出来ない。人の感情を他者が理解する事は非常に難しいのだ・。

そこへ…。

「礼っ!まだおでんを食べてないぞ!」「つっちー、ラウラちゃんの料理、ちゃんと食べないと~!」

「なにっ!?よせっ、そんなゲテモノ…やめろおおおおおおおぉ!!!」

彼は抵抗むなしく、ラウラの料理の犠牲となった。

ただ…。

「ん?意外と美味しい…」

その料理は見た目以外、結構良好であったとか…。

 

礼達のほとぼりも冷めたころ…。

簪は手に持っていた扇子を見つめる。姉の楯無はよく扇子を手にしているが、コレは姉のものでもなければ、簪のものでもない。

居可弐式のモノだ。

更織家の所為で犠牲となり、ホロスコープスになることで狂気に囚われてしまった男。

彼は唯一、宇月達と和解していない。最後まで差し伸べた手を払い除け続けた。

楯無は気にする事はないと言っていたが、簪もそのことに責任を感じていた。

「わたしだけじゃ…何も出来なかった」

その扇子を握り締め、自分に出来る事は何かを考える。

 

片付けも済み、みんながそれぞれ自由にしていた頃。

宇月は窓の近くで寄りかかっている。その手にはロケットスイッチスーパー1がある。

「…美味かったけどさ…」

彼の食欲は満たせた。だが、心の中にある大きな穴はまだ完全に癒えていない。

「…一度も、ゆりことご飯を食べた事がなかったな…」

ゆりこといた時間は本当に短かった。互いに心を通わせたのは事実だが、恋人らしい事は何一つ出来ていなかった。

彼女が好きでいてくれただけで喜べたが、本当のところを言うと、もっと一緒に何かをしたかった。

「でも…止まれないもんな」

ただ、今はその感傷に浸って戦いをおろそかにするわけには行かない。

そのとき…。

 

「宇月!バガちゃんがダスタードを見つけた!」

箒がやってきて、バガミールの動画を見せる。

そこには近い場所で数体のダスタードが暴れている姿が映し出された。

「…行くか!」

彼は礼と箒を引きつれ、外に出て行った。

それを弾と蘭も見逃さなかった。気付いていないフリはしたが。

 

「ムゥゥゥゥ…!」

近所という事もあり、数分もせずにダスタードは見つかった。

「礼、行くぞ!」「ダスタードということは、ホロスコープスがいるかもしれない。気を抜くな!」

<METEOR-READY?><3><2><1>

「「変身っ!」」

眩い光と煙のオーラに包まれ、2人はフォーゼBSとメテオに変身した。

「邪悪な星の運命の従僕共よ!きさま達は…存在ごと消し去ってみせる!」

鼻を拭うしぐさをした後、2人同時でダスタードに向かって走っていった。

それを物陰で見ているのは…。

「あれが都市伝説の仮面ライダー…。フォーゼとメテオ!?」「宇月さんと礼さんだったんだ…!」

弾と蘭だ。こっそり、後を付けてきたのだ。

「来い、メテオスターっ!」

メテオが叫ぶと、何処からか青い発光体が現れ、メテオの愛車「マシンメテオスター」に変化した。

それに跨り、エンジンを唸らせるメテオ。

「行くぞ!うおおおおおおおおおぉっ!」

ドガガガガガガガガガガァッ!

「ヌオオオオオオオォッ!?」

発進したと同時に正面のライト部分から光弾が発射され、ダスタード達を翻弄する。

<WINCH-ON><BOARD-ON><CROW-ON>

「コレ使うか!おりゃぁっ!」

ガキンッ!

フォーゼBSは、ウインチでメテオスターの後ろを引っ掛け、地面を滑り始めた。

「傷つけるなよ!?」「今までつけたこと無いだろ!コレは父さんと母さんの形見だからな!」

メテオの攻撃を逃れたダスタード達はフォーゼBSが相手をする。

「どぉらあああああああああああぁっ!」

ガギィ!ドガァッ!

遠心力を応用しながら、フォーゼBSはダスタードを一網打尽にしていく。

「箒、ファイヤーを!」「あぁ、受け取れ!」

メテオは箒からファイヤースイッチを受け取り、メテオドライバーに挿入する。

<FIRE-ON READY?>

「アチャアアアアアアアアアァッ!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!

その姿は、大気圏内に入ったことで起こる摩擦で炎を吹き上げる隕石のようだった。

ダスタードは多くなく、特にリミットブレイクも使わずに殲滅する事ができた。

「…ホロスコープスが現れない」「妙だな…」

フォーゼBSとメテオは、その不自然すぎる勝利に疑問を抱きながらも変身を解除する。

帰ろうとした矢先…。

「おまえら…仮面ライダーだったのかよ」「まさか二人が…」

弾と蘭が現れた。

「やべっ!正体、バレた!?」「厄介な事になったな…」

変身を解除するところは見られたであろう。言い逃れは出来ない。

しかも、相手は仮面ライダー捜索会とやらに所属している。もしIS学園以外の公の場に仮面ライダーが知られるものならば、たちまち彼等は戦いづらい状況下に置かれるであろう。

「どうして戦ってるんだよ」「そうです。仮面ライダーの戦う意味って…」

弾が尋ねる。

「…父さんと母さんの意志を継いでるつもり」「おれは宇月の友として手を貸している」

宇月の心では、父と母の笑顔が思い出される。

白騎士事件の日、二人は行方不明となった。一部では死亡したという噂もある。

だが、それを否定したい。二人が帰ってきたときのために、宇月は両親の意志を継いでいるのだ。

「おまえ、そんなことあったのかよ…」

一見では想像できない過去を、宇月は背負っているのだ。

「頼む。だから、仮面ライダーの事は学園以外に知られたくないんだ」

事情を知った弾達は…。

「あぁ、捜索会にも、何も言わない」「これは、わたし達だけの秘密です」

心情を理解してくれて、本当にありがたかった。

これで仮面ライダーのことは知られずに済むだろう。

「良かった…ありが…」

 

「っ!?」

 

感謝の言葉を述べようとした途端、そこにいる一同が凄まじい悪寒に襲われた。

蘭にいたっては、膝がガクガクと震えて倒れそうになっている。弾が支えるがその腕も震えが止まらない。

「なんだよ…なんなんだよ!?」

「とにかく、この場から離れるぞ!」

箒がそう言い放ち、全員ですぐにそこから走り去った。

 

それを影で見ているのは…。

「チッ、騒ぎには発展しなかったか」

レオだった。先ほどの凄まじい悪寒は彼の殺気によるものだ。

宇月達の立場を悪いものにするために、ダスタードを生み出しフォーゼとメテオを、弾達、一般人に知らしめたのだ。

「IS学園でまだ邪魔をするようなら、本当に一戦交える必要がありそうだな」

どうやら、レオはフォーゼ達と直接対決することを望んでいないらしい。

だが、それが本人の恐れや怠惰ではない事は見て明らかである。

「あの…レオ様…」

背後から、ビクビクしながら現れた少女。どうやら、レオと知り合いであるらしい。

「なんだ?」

「ひっ!?」

何の気も無しに話しかけても、極度に怯え、後ずさる。

「早く言え。用件はなんだ?」

「あ、あの…こ、このスイッチ…」

そうやって取り出したのは…。

 

ホロスコープススイッチだった。

 

「ほう、遂に覚醒したか。随分と時間が掛かったな」

ここにいる少女は、新たな十二使徒へと覚醒したらしい。

だが、レオはようやくかと言った感じだ。何を隠そう、彼女はラプラスの瞳で見た結果、確実に水瓶座の運命を持っていたが、覚醒への時間は今までのホロスコープスの中でも最も遅かった。

「ご、ごめんなさい…。その…それで…瑞希ちゃんは…」

「安心しろ、約束は守る。陽野瑞希は我々の同志として迎え入れる。歓迎しよう清水満子…いや」

 

「水瓶座の使徒「アクエリアス・ゾディアーツ」よ」

 

夕方。

それぞれが帰ることになった。

「本当に楽しかった!こんなににぎやかな家は久しぶりだったんだ!」

心の底から嬉しそうに微笑む宇月。

「また行くぞ。そのときも、楽しんでいこうな!」「あぁ、わたしもまた来たい」

一夏と箒も笑う。

そして、全員を見送った後…。

「…片付け、考えてなかった」

家は色んなものでごった返していた。一人で掃除するのは骨が折れるだろう。

「ま、楽しかった代わりなら、安いモンだよな!」

掃除器具を取り出し、片づけを始めようとしたとき…。

「宇月、わたしも手伝う」

「どわぁっ!簪!?」

さも当たり前のように簪が片づけを手伝おうとしていた。

「一人じゃ大変。手伝いたい」

「お、おぉ、助かる」

戸惑いながらも、宇月は片付けを再開する。

半分ほど終わったとき…。

「宇月は…ゆりこさんのこと、忘れられない?」

ふと、簪が聞いてきた。

「…まぁな。言ってしまえば、おれの初恋だったし。まぁ、初恋は実らないって言うけど…これじゃな…はは」

苦笑いをしながら、掃除を続けている。

「今も…悲しい?」

「…悲しいというより、寂しいな。あいつは死んだわけじゃないし、おれの傍にいるのは知ってるんだ」

そう言って、ロケットスイッチスーパー1を取り出す。コレにはゆりこの意思がこもっている。本体は未だ、ヴァルゴの持つSOLUスイッチの中だ。

「でもさ…やっぱり姿を現して、傍に寄り添って欲しいさ」

ゆりことの思い出を振り返りながら、ひたすら掃除を続ける。

そのとき…。

簪は宇月を抱きしめた。

「か、簪…?」

「わたし、きっと宇月にとってのゆりこさんにはなれない。わたしも…宇月のことが好きと違う。でも…あなたの寂しさを…ほんの少しだけでも和らげるくらいなら出来ると思う。…ダメ?」

彼女は理解している。宇月のゆりこへの想いは強すぎるのだ。それが分かっているからこそ、コレだけしかできない。彼の心のたった一部を満たすだけだ。

「…気にかけてくれてありがとうな。でも簪、おまえにはおまえの可能性がある。満たされないおれの心のために、おまえの可能性を潰したくない」

宇月が信じているのは「可能性」だ。誰の身にも宿る可能性。それは目の前にいる簪も例外ではない。それを無駄にして欲しくない。

おそらく、自分のために簪が寄り添えば、彼女のもつ可能性はきっと潰える。しかも彼女が得られるものはない。

「だけどよ、おれってあんまりメンタル強くなくてな。だから、困ったときとか、悩んでるときは、話くらい聞いてくれよ。今は…それだけで良い」

「…分かった」

簪は複雑な想いを残し、彼の身体に巻いていた腕を放した。

 

その日の夜。

千冬と山田は、町の外れにある少しお洒落なバーで酒を飲んでいた。

「これからは、わたしも一緒に探します!」

そう宣言したのは山田だ。

「真耶…」

「織斑先生だけに危険な目にあって欲しくはありません。それに…わたしも仮面ライダー部の一員なんです。今まで、何一つ城茂君達に顧問らしい事できてないんです。こんなのダメだって思うんです!」

山田は仮面ライダー部でまともに役に立てていないことに悔しさと申し訳なさを感じていた。

「あの子達は…わたしを信じて仮面ライダー部の顧問を任せてくれたんです。だから…!」

「危険だぞ?」

千冬にとっては、山田を危険な目にあわせたくない。ヴァルゴは彼女の知っている人物であり、山田とはなにも関係がないのだから。

「分かってます、だから行くんです!協力させてください!」

席から立ち、頭を下げる真耶。

暫くじっと見ていたが、千冬は優しく微笑む。

「お前に仮面ライダー部を任せてよかった。力を貸してくれ」

「はいっ!」

千冬が手を差し出し、山田がそれを両手で握る。

二人は改めて、力を合わせることを決意した。

そこへ…。

 

「あまり、干渉し過ぎないほうが良い」

 

少し離れた席で酒を煽っている男がいた。長い髪を後ろで結んでおり、独特なスーツを身に纏っている。

身なりから言って、社会的に高い地位である事は明らかだった。

「貴方は…?」

山田が尋ねると、その男は酒を飲み干して二人を睨むように見つめる。

「私は勇士…」

 

「白石勇士だ」

 

その苗字は、はっきりと覚えている。自分たちの担当しているクラスの数少ない男子生徒。母親は死んだと聞いていたが、父親は行方不明と言っていた。

良く見ると、どこか紫苑と面影が似ている。雰囲気は正反対であるが。

「まさか白石紫苑の父ですか…?」

千冬が訝しげに尋ねると、勇士はグラスを握っていた手に力を込める。

どうやら、確認の方法が気に喰わないらしい。

「…君達に警告する。ホロスコープスを追うのはよせ」

「どういうことなんですか?貴方は、どうしてホロスコープスのことを!?」

バキィ!

山田が詰め寄ると、勇士が握っているグラスが粉々に砕け散った。

破片に驚き、山田は飛び跳ねて避ける。

「本来、酒は一人で静かに飲む。それが私のルールだ。必要以上にそれを乱す者は…容赦しない。IS学園の者であろうと、例外はないぞ」

勘定をテーブルに置き、勇士はすぐさま姿を消した。

「あの人…もしかして…」

「おそらくホロスコープスに関係している。それに人間であの力…。既にゾディアーツかホロスコープスに覚醒済みだろう」

勇士のいなくなった場所を見つめながら、ふと思いつく。

「白石紫苑…彼は何か知っているかも知れんな。話を聞いてみよう」

「でも、白石君はとてもデリケートで傷つきやすいんです。こんな事を話したら、どれだけ落ち込むか…」

山田は紫苑に問いただす事を反対した。

だが…。

「今は、それ位しか出来る事がない。やるしかないんだ」

それこそが、ヴァルゴを知る手がかりになるかもしれないのだ…。

 

次の日。

仮面ライダー捜索会は毎週日曜日に行なっている。

仮面ライダーの騒動は、弾達の所属した仮面ライダー捜索会にも知れ渡ってしまった。

「なぁ、フォーゼとメテオって、どんな奴だった!?」

一同は目撃からフォーゼ達と面識のあると聞いた弾と蘭を取り囲んで、話を聞こうとするが…。

「知らない。何も分からなかった」「教えようもないわよ」

頑なに語ろうとはしない。宇月達との約束だからだ。

ただ、二人は胸に想いを込めた。

隠す代わりに、絶対に負けないと約束してくれと…。

 

 

 

 

 

続く…。

 

 

 

 

次回!

 

                              臨海学校だ!

 

遂に完成したが…

 

                              あ、アクエリアスです!

 

ちょっと、満子の邪魔はしないで!

 

                             お父さんを見たんですか!?

 

まずオマエ達から血祭りに挙げてやる!

 

 

 

 

第26話「水・瓶・臨・海」

 

 

青春スイッチ・オン!

 

 





キャスト

城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ

織斑一夏

篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音

辻永礼=仮面ライダーメテオ
ラウラ・ボーデヴィッヒ
布仏本音

シャルロット・デュノア
白石紫苑

更織簪
五反田弾
五反田蘭

織斑千冬
山田真耶
白石勇士

清水満子=アクエリアス・ゾディアーツ
???=レオ・ゾディアーツ


如何でしたか?
今回、過去に登場したキャラ達を振り返りながら、彼等の心情に触れてみました。
八木は弾と関わりがあったんです。実は初期案では、弾をカプリコーンにさせるかなとも考えてたので、その名残ですね。
そういえば、弾たちがあまり活躍できなかった(汗)
今回、ちょっと触れましたがスイッチを手にしてから覚醒するまでの時間の短さは…
レオ、スコーピオン、ヴァルゴ、リブラ、ジェミニ、ピスケス、アリエス、キャンサー、カプリコーン、アクエリアスという順番です。
私の物語では、スイッチを押して、覚醒するまでの時間が短ければ短いほど強いという設定です。
基準として、レオはスイッチを押した瞬間に覚醒、スコーピオンはスイッチを押して一日、アクエリアスは、第一話の時点ですでにスイッチを手にして、今回で漸く覚醒です。
次回は臨海学校編です。遂にレオ・ゾディアーツと本格的に戦います!
お楽しみに!
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