光が消えると、フォーゼは全く新しい姿になっていた。
紫色のスーツ、コズミックステイツを思わせるアーマー、両手足にはISが装備されている。
これが、コズミックエナジーとISの融合…。
「仮面ライダーフォーゼISフュージョンステイツ」だ。
体中から溢れ出る力に体を縮める。
「宇宙ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」
そして、その力を解放するように、一気に広げた。
「キタァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!」
彼の体の中に、宇宙と41人全員が居るように感じた。
「その姿は…あのときのフォーゼではない…!?」
オフューカスはうろたえる。たしかに、この力はあの「謎のフォーゼ」に酷似している。
だが、見た目が違う上に、エネルギーの方向性も全く違う。
謎のフォーゼはコズミックエナジーが特化していた事に対し、こちらのフォーゼはコズミックエナジーを高めつつも、ISのエネルギーも混ぜ合わさっている。
「最初の言葉…訂正させてもらう」
「何?」
不意にフォーゼISFSが告げる言葉にオフューカスは首をかしげた。
「タイマンじゃなかった。おれには41人の仲間達が居た。つまり42対1だ!」
拳を前に向け、オフューカスに突き出す。
「何が言いたい?」
「おまえは確かにめちゃくちゃ強い。正直に言えば、おれだけじゃ勝ち目は無い。でも、おれ一人だけの話だ。たくさんの仲間が居るおれが…たった一人のおまえに負けるわけが無いんだ!!!!!」
そう言って、フォーゼISFSは走り始めた。
「いくぞ、セシリア!」「わかりましたわ!いきましょう宇月さん!」
そう言うと、フォーゼISFSの隣からセシリアの声がする。厳密には彼女の精神だけがコズミックエナジーに乗って、ここに転送されたのだ。
フォーゼISFSの右手にスターライトmkⅢが装備される。
「それはISの武装!?何故、起動できる!?」
「喰らえぇっ!!!!」
巨大なビームがオフューカスに向かう。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!
「フンッ!!」
それを大蛇で防ぐ。だが、その大蛇は焼け焦げて消滅する。
「何…!?」
「言っただろ、おれ一人じゃないってな!なぁ鈴音!」「もちろん!さぁ、いっくわよ!」
次は鈴音の声と共に、フォーゼISFSの左肩に龍砲が装備される。
「おりゃあああああぁっ!!」
衝撃波が放たれる。もともとの甲龍のもつパワーにフォーゼの力も追加されており、これも今まで以上に強力なものである。
ドゴオオオオオオオオオオオォッ!!!
「オオォッ!!!」
しかし、オフューカスにはまだ余裕がある。その攻撃をたやすく弾いた。
「ブルーティアーズ、双天牙月、借りるぞ!」
宣言した途端、フォーゼISFSの周りに後方支援用のブルーティアーズが現れ、右手には双天牙月が握られる。
「はあああああああああああああああぁっ!!!!!」
ブルーティアーズのビームの嵐。
「チィッ!!!」
それらを避けたり防いだりするオフューカス。フォーゼISFSは嵐の中をかいくぐって、オフューカスの懐にやってきた。
「ムッ…!?」
ガギイイイイイイイイイィッ!!!!!
間一髪のところで、その攻撃を防ぐ。オフューカスもフォーゼISFSも一歩も引かない戦いだ。
「次!シャルロット!」「うん、任せて!」
双天牙月とブルーティアーズが消え、シャルロットのガルムがフォーゼISFSの右手に現れる。
「だぁりゃあああああああああああああああぁっ!!!!!」
ガガガガガガガガガガガガッ!!!!
凄まじい弾幕で、オフューカスに攻撃を仕掛ける。
「その量とて、実弾では…!!!」
大蛇に攻撃全てを防がせ、反撃を始める。
「ズアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!」
火焔弾の嵐をお返しに見舞う。だが、フォーゼISFSは全く焦りを見せない。
「ラウラ、頼む!」「了解だ!!」
ガギイイイイイイイイイイイイイィッ!!!!
両手を広げると、右肩にレールカノンが現れ、虹色のバリアが火焔弾からフォーゼISFSを守りきった。
どちらもラウラのISによるものだ。
「おのれ…!!!」
オフューカスは戦いに劣勢に追いやられてはいないものの、敵が全く疲労や苦痛を感じていない事に焦りを感じている。
「先ほどまで、満身創痍だったはずの貴様が…なぜ平気でいられる!?」
「平気でいるわけじゃない」
その質問から帰ってきた返答は、オフューカスにとっては意外なものであった。
「さっきも言ったけど、おまえはめちゃくちゃ強い。そのときにアストロスイッチなしで戦ったんだ。本当は死に掛かってるよ」
今はステイツチェンジによって、スーツの表面の傷は完全に消えているが、装着者自身である宇月の傷が癒えたわけではない。
ベースステイツの状態で死んでもおかしくないほどの攻撃を受けたのだ。そこから新たなステイツにチェンジしたとなると、そこから導き出されるのは、負担だ。
今の宇月は、当の昔に限界を超えているはずなのだ。
「ならば、何故!?」
「ここで倒れたら、力を貸してくれた41人に会わせる顔がない。それに、ゾディアーツを倒して地球や学園を守るって決めたのは、おれ自身なんだ。だから倒れるわけにはいかないし、おまえに勝ちを譲るつもりも無い!!!!!」
強く言い放ち、拳を握り締める。
「必ず勝つ!!!そして地球に帰る!!!みんなに…「ありがとう」って言わなきゃいけないんだ!!!」
次に構えたのは開いたバリズンソードだ。両手で強く握り、オフューカスに向かって走る。
<LIMIT-BREAKE>
「ライダァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!超銀河・フィニィィィィィィィィィッシュ!!!!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!
虹色に輝くバリズンソードのエネルギーの刃が、オフューカスの体にえぐりこまれる。
「ヌゥッ…!!ウオオオオオオオォッ!!!!」
しかし、それもオフューカスはなんとか防ぎきった。
「貴様も所詮は星の力に魅せられたことがある人間!!!言うなれば、我の従僕だ!!その貴様が、我に勝てると思うか!?」
苦し紛れの発言だった。案の定、フォーゼISFSはリミットブレイクの力が残ったバリズンソードを闇雲にも見えるような具合で振り回しながら答える。
「おれも…みんなも…何度も挫けそうになったし、時には挫けた!!!何度だって失敗したり、悩んだりした。でもな…そんなときには、何時だって一人ぼっちじゃなかった!!!誰かが負けそうになれば、誰かが支える。おれも支えたし、支えられた!!!」
ガギイイイイイイイイィッ!!!!
大蛇で防いだり避けたりしていたが、遂に隙を突かれて肩にバリズンソードが突き立てられた。
「グオオォッ…!?」
「そうやって…人間は生きていく!!!!!」
「これが、人間の創り出す宇宙だ!!!!!」
ドガアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!
「グワアアアアアアアアアアァッ!!!?」
コズミックエナジーの爆発が起こり、オフューカスは吹き飛ばされた。
「恐怖や絶望や…おまえを生み出したのも人間だ。でも、人間は他のモノも創れる。夢や希望…宇宙へ向かおうと前に進み続ける気持ち!!!それがコズミックエナジーやISなんだ!!!」
フォーゼISFSの手に雨月と空裂が握られる。箒のものだ。
「行くぞ、宇月!そして帰ってくるんだ!!」「あぁ!!絶対にな!!」
箒と似た構えをしながら、オフューカスに向かっていく。
「おおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!!」
ガアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!
2つの剣の猛攻に、オフューカスは驚きながらも防御し続ける。
「速い…!!!」
「これが、おまえがバカにしてたISの力だ!!!この力は…ときには人の脅威になるかもしれないけど…同時に希望にもなる!!!」
双方の刃で、オフューカスを切り裂く。
ザンッ!!!
「グウウゥッ!?人間が…!!ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!」
「ズアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!」
ドガアアアアアアアアアァッ!!!!!
されるがままに攻撃されていたオフューカスは怒り狂い、火焔弾を放つ。
「うおおおぉっ!?」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!
突如、ほとんどゼロ距離から攻撃された事もあって、正面からその攻撃のダメージを受けた。
「くっ…!!!」
だが、フォーゼISFSは負けずに立ち上がる。
「こんな程度で…おれ達は倒れないぞ!!」
強がりではなく、彼の決意なのだ。
「ならば、倒れるまで続けるだけだ!!!」
「ズアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!」
オフューカスは自分の出せる全ての大蛇を呼び出し、フォーゼISFSを迎え撃つ。
「倒れるわけにはいかないって言っただろうが!!!!」
大蛇の攻撃を全て防ぎながら、オフューカスの懐に入り込む。
「ヌッ…!?」
「一夏!!」「あぁ!力を貸すぜ!!」
フォーゼISFSの体が黄金色に輝く。零落白夜と似た状態だ。
左手には雪片弐型が現れる。右手のバリズンソードと合わせて、二刀で戦うのだ。
<LIMIT-BREAKE>
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉっ!!!!!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッ!!!!!
「ヌアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!??」
リミットブレイクと零落白夜。二つの技を組み合わせて、凄まじい威力の攻撃を生み出した。
オフューカスはたまらず吹き飛ばされる。
「これで最後だ!!!絆の力は…どんな強大な闇も打ち砕く!!!!!」
<LIMIT-BREAKE>
両手足にあったIS型の装備が分離し、一つの機械の塊を創り出す。それはフォーゼISFSの攻撃と共に向かう支援武装へと変化したのだ。
「ライダァァァァァァァァァァァァァァキィィィィィィィィィィィィィィィック!!!!!!!!!」
懇親の力を込めた、仮面ライダーフォーゼ最後の大技。
それはフラフラになったオフューカスの胸に強く突きたてられる。
「グウウウゥッ!!!」
しかし、それでも耐えようと体中に全ての力を注ぎ、迎え撃とうとする。
フォーゼISFSも度重なるリミットブレイクの使用により、無理が祟ってフォーゼドライバーに火花が散る。
限界は近い。
『負けるかあああああああああああああああああああああああああああぁっ!!!!!』
その途端、フォーゼISFSの背後にISを纏った一夏、箒、セシリア、鈴音、シャルロット、ラウラが現れる。
彼の仲間も最後の最後まで、力を貸しているのだ。
そして…。
「我が負けるとは…!!!!人間が…宇宙にかなうとは…!!!!」
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!!
フォーゼISFSの右足は、オフューカスの体を貫いた。
その事実に驚愕しながら、オフューカス・ゾディアーツは爆風に飲み込まれ、消滅していく。
仮面ライダーフォーゼは、仲間との絆を糧に、辛くも勝利を収めたのだ。
静まり返ったIS学園。
そこにいる者達は、一人の生徒の帰りを待っている。
一人で最後の戦いに赴き、そして勝利を収めたヒーローの帰りを。
程なくして…。
<LIMIT-BREAKE>
青白いワープゲートが現れ、フォーゼISFSが降り立った。
地面に着地すると同時に、フォーゼドライバーは強制的に彼の腰から離れ、変身を解除させた。
人間の姿に戻った宇月は意識を失い、地面に倒れていく。
だが、それを支える事で止めた者がいた。
礼である。
「無茶な奴だな…」
実は、フォーゼが戦っている間、オフューカスは苦し紛れに学園に無数のダスタードを放った。
それらを一夏や箒、そしてメテオが一掃していたのだ。彼らは一足早く一掃し、宇月の帰りを待っていたのだ。
一部を除いたのスイッチを押した人々も、彼に歩み寄っていく。
宇月は意識を失っていたが、寝言のように呟いた。
「ありがとう…みんな…」
その宇月に、一人の青年が歩み寄った。
如月弦太朗である。
「よくがんばったな。これでおまえも、おれのダチだ!」
弦太朗は、礼に抱えられているために、だらんと垂れた宇月の右手を握り、拳を打ちつける。
彼の「友達の印」だ。
ゾディアーツとの戦いが終わり、一週間が過ぎた。
「どういうことですか!?」
復興が続くIS学園内で、仮面ライダー部全員が声を荒げる。
叫びの原因は…
宇月と礼の強制転校だ。
「すまない、私の力が及ばなかったんだ」
千冬は少しばかり頭を下げた。
「織斑先生も知ってるでしょう!?二人は仮面ライダーとして、命懸けでこの学園を守り抜いてくれたんですよ!?」
「…分かってあげてください」
そう言って箒を止めたのは山田である。
「城茂君と辻永君は仮面ライダーだからこそ、ここに居る事が出来ないんです。二人はコズミックエナジーでISを起動させていました。それは、本当のことを言えば不正なんです」
つまり、ここに宇月と礼がいることは、学園をバックアップしているさまざまな政府や国家に憤りを募らせてしまう。
二人の立場が危機にさらされるのだ。
今まで、仮面ライダーやコズミックエナジーのことで宇月と礼が学園に入学した事は、ひた隠しにされていたが、今回のオフューカスの襲撃によって遂に隠し通せなくなってしまったのだ。
「だから、二人には藍越学園に転校してもらうんです。それが二人にとって一番安全な対処です…」
「私も、学園に転校の取り消しと二人の学園内での保護を申し出たのだが…受け入れてもらえなかった」
2人の教師は自分の力の及ばなさに、歯軋りする思いであった。
それを見ていた仮面ライダー部の一同は、何も言う事が出来なかった。
そして、さらに一週間…。
宇月と礼が転校する日がやってきた。
IS学園との別れの日である。
転校の前日、本人の意思によって、クラスの全員に宇月が仮面ライダーフォーゼであり、礼が仮面ライダーメテオであることも告げられた。
理雄と紫苑については、理雄本人とシャルロットの意思で正体が明かされた。ただ、悪事を行ってきたと同時に、改心した事や仮面ライダーに少しでも協力し、共に戦った事も強調された上でだ。
「今日を持って、このクラスから2人の友達がお別れをします」
山田の言葉に、包帯状態の宇月と、まだ傷の癒えていない礼が教壇の前に歩いてきた。
「…そういうことだ。短い時間だったが…楽しかった。ありがとう」
礼は少しだけ下を俯き、短く述べた。
続いて宇月。
「正直言って、この学園には思い入れがある。いろんなことがあったし、思い出がたくさんある」
そして、宇月は精一杯の笑顔を向けて述べた。
「だから、いつかこの学園に戻ってきたい!!生徒じゃなくても、どんな形でも!!!」
胸を二回拳で叩いて、クラスの全員を指差す。
「それまで、暫しのお別れだ!!待っててくれよ!!」
そう言って、バッグを抱えて教室から宇月と礼は出て行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
同時刻。
理雄は車椅子で外出をしていた。夏樹に介助をされながらの外出である。
「理雄君、気分は?」
「もちろん、最高だ。これで走れたらもっと良いが、贅沢は言わないよ」
あれから、夏樹は学園を退学した。
理雄を支えるために、介護の知識を深めることに決めたらしく、福祉系統の高等学校に転入したのだ。
両親との関係も少しずつ上手くいっているとのこと。
「おまえなら、優秀な介護士になれる」
「当然、理雄君専属だよ?」
「それなら、この身体でも不自由は無いな。よろしく頼む」
一度は悪に染まりかけた二人。
だが、宇月達のおかげで本来の形に戻り、幸せを掴みかけている。
ゆりこはIS学園に残る事になった。
ただ生徒としてではなく、ここに残されたラビットハッチの管理役を任されているのだ。
今、ここは宇月と礼は使っていない。
そして時折、一夏達が集まって話し合ったり、考査前の勉強に使われている。
これを提案したのは礼だ。
今日もゆりこはラビットハッチの整理や掃除をしている。
「ふんふふ~ん♪」
楽しそうに鼻歌を歌いながら、役割をこなしていく。
ふと、窓から見える地球をみつめる。
「…ここで、良いよね?わたしの居場所」
彼女はしばらく宇月とは会えない。
だが、宇月は必ずIS学園に戻る事を約束した。
だからこそ、ここで待つ事にしたのだ。
「まってるよ、宇月!」
宇月達が転校する前日の夜。
シャルロットは、紫苑といた部屋の荷物を見つめる。
紫苑が残していったものだ。
「きっと…絶対に…」
「シャル」
ふと、紫苑の声が聞こえた。
声のする背後を振り返ると、紫苑が立っていた。
「紫苑!戻ってきたんだね!!」
彼の帰還を喜び、抱きしめる。
だが…。
「ううん、違う」
悲しそうに首を横に振る。
「オフューカスが消えた事で、ザ・ホールも消えかかっている。たぶん、今の状態では、これが最後になると思うんだ。だから…」
つまりダークネヴュラも地球から離れる。紫苑は遠い宇宙へ飛んでいくのだ。
「これで…最後なの…?もう、会えないの…?」
不安そうにシャルロットは聞く。
「…もしかしたら、そうかもしれない」
「じゃあ、ボクも連れて行って!一緒に居たい!」
「それはダメだ!!!」
紫苑はシャルロットの願いを叱るように断った。
「君の居場所はここなんだ。そして…もし、いつか僕が帰ってきたときの道しるべになっていて欲しいんだ」
「紫苑…」
紫苑はシャルロットの手を強く握って微笑む。
「頑張って帰ってくるから、待ってて。いつか…きっと…」
少しずつ紫苑の体は薄れていく。
「待ってるから…絶対に待ってるからね!!!」
未来への約束。
それを交わした後に、紫苑は消えていった。
「…約束するよ…!」
涙をぬぐい、再会を信じて…。
一夏は、宇月達の見送りをする前に、ふとこぼした。
「実はさ…おれ、決めたんだ」
ちょうど居合わせたのは、箒、セシリア、鈴音。
「何を?」
「おれの好きな人」
「「「本当!?」」」
3人は一夏の眼前に近づく。
「みんな…近いって…!」
それをなんとか押しかえす。
一夏も、3人のアピールを幾度とも無く受け、遂に心に決めた人ができたのだ。
「それで…!?」「いったい誰を…!?」「好きになったの!?」
焦る気持ちを抑え…抑えていない気もするが、とにかく、一夏の答えを聞く。
「その…おれが好きな人は…」
「…だ!!」
この答えは、この4人だけしか知らない。
宇月と礼が廊下を歩いていく中、4人の生徒が前に立つ。
「待ってください」
更識姉妹と布仏姉妹だ。
「ん?見送りなら、校門で…」
「…」
楯無が無言でツカツカと2人の元に歩み寄る。
なにか凄まじい威圧を感じた。
「な、なんすか…?」
「ごめんなさい。あたしも、二人の転校を止めたかったけど…」
実は楯無も学園側に抗議を申し立てていたのだ。
だが、千冬でさえ通らなかった抗議だ。彼女でも通る事はなかった。
「やってくれただけで十分っすよ!なぁに、死ぬわけじゃないすから!」
「そんなことだったの…?」
ふと、簪が呟く。
「え?」
「二人にとって、この学園での生活って、そんな程度だったの!?」
「簪ちゃん…!」
とっさに本音が羽交い絞めにして引き止める。
本音は、宇月と礼の別れの挨拶を聞いているため、二人の心境は分かっているが簪はクラスが違うために、それを知らない。
「この学園から、ヒーローが居なくなって…じゃあ、誰が守るの!?」
さらに彼女のヒーローへの憧れや、寂しさの入り混じった感情がこの言葉を生み出した。
「おまえだ」
それに対する宇月の返事は、少しぶっきらぼうにも聞こえた。
「え…?」
「おまえがこの学園を守るヒーローになれよ。おれなんかが出来たんだ、おまえにも出来るさ」
簪の肩を叩いて、軽く微笑んで歩き去る。
「あ、それと学園での生活って「そんな程度」じゃないんだぞ!だから、泣いてお別れは嫌なんだ!分かったか!?」
少し離れた距離でそう言った。
束はあの決戦の日を思い出す。
「結局…あの吾朗おじさんは…何だったんだろうね、ちーちゃん」
「さぁな」
束の質問に、千冬は肩をすくめる。
スイッチを押した直後、吾朗はその場に居なかったように消え失せた。
「きっと、あいつの親父さんの想いが形を作ったんだ」
そこに現れたのは如月弦太朗だった。
「へぇ…非科学的だね」
「でも現実に起こったんだから、信じるしかないだろ」
明るく笑い、束を指差す。
「教えてくれ。君は一体、何者なんだ?」
千冬は彼の素性を知らない。最後のスイッチを押した謎の人物、如月弦太朗。
彼は一体、何者なのか…。
「おれは如月弦太朗!すべての仮面ライダーと友達になる男だ」
そう言って取り出したのは…。
「フォーゼドライバー!?」
フォーゼドライバーだった。ただ、宇月が使っているものよりも使い込んでいるようなキズや変色がある。
おそらく別物だろう。
「じゃあな!」
<3><2><1>
「変身!」
<FUSION-ON>
そういうと、彼の姿は「仮面ライダーフォーゼメテオなでしこフュージョンステイツ」へと変身し、ワープドライブを創り出して消えた。
「…もう一人のフォーゼ…」
千冬の脳裏に、以前の竜也が言った「異世界」というワードが浮かぶ。
「この世界以上に、もっと大きなモノがあるのかもしれないな」
「…その世界以上の大きなモノは、楽しいと思う?」
束はさらに問う。
「それは、行ってみないと分からないな」
「だが、今の世界もそこそこに楽しい。お前はどうだ?」
見送りだ。
礼はラウラと名残惜しそうに別れを告げている。
「まぁ…二度と会えない訳じゃない。夏休みは連絡するし会いに行く。だから返事をくれ」
「…絶対にだぞ!!」
二人も暫しの別れだ。だが、すぐに再会できるだろう。
宇月は学園を振り返る。
「よぉし…最後に言っとくか!!!」
最終決戦後、修復したてのフォーゼドライバーを腰に装着する。
「みんな、カウント頼む!!」
そう言って、赤いスイッチを起動させる。
仮面ライダー部のメンバーをはじめ、学園の人々がそれを受け入れた。
<「スリー!!」>
<「ツー!!」>
<「ワン!!」>
「変身っ!!!」
煙のオーラを纏い、仮面ライダーフォーゼベースステイツに変身した。
<METEOR-READY?>
「変身っ!!!」
そして、礼も仮面ライダーメテオへと変身する。
「仮面ライダーフォーゼと仮面ライダーメテオは、この学園から居なくなる!!でも、いつか必ず戻ってくる!!」
「おまえ達の運命は…おまえ達が決めろ!!!」
手を振るフォーゼBS。万感の思いを込めた別れだ。
「じゃあ、またな!!」
マシンマッシグラー、マシンメテオスター、パワーダイザーが現れる。それに二人は跨る。
<TOWER-MODE><READY?>
<3-2-1><BLAST-OFF>
フォーゼBSはマッシグラーと共に空へと飛び立ち、メテオはメテオスターと共に青い発光体となる。
かけがえの無い仲間と再会を信じ、前に進み続ける。
「宇宙ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…キタァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
~FIN~
キャスト
城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ
織斑一夏
篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音
辻永礼=仮面ライダーメテオ
ラウラ・ボーデヴィッヒ
布仏本音
シャルロット・デュノア
白石紫苑
ゆりこ/SOLU=仮面ライダーなでしこ
更識簪
更識楯無
布仏虚
裾迫理雄
尾坂夏樹
織斑千冬
山田真耶
篠ノ之束
オフューカス・ゾディアーツ
如月弦太朗=仮面ライダーフォーゼ
終わりました…。
ちょっとあっさりかなとは思いますが…とりあえず、今までのなぞは全部回収できたかなと思います。
まだ「これはどうなったんだ!?」という点があれば、ご意見ください!お答えします!
さて、次回からの新作ですが…。
ブレイドとアギトを題材にした二次創作を考えてます。
ご意見が欲しいのですが、未だに協力していただける方がいらっしゃらないので、もし良ければ、どなたかお力添えをしてください!
ではまた!