クラス対抗戦から2週間近くが経った。
あれから試合は中止になり、ゾディアーツや謎のISの捜査が続いている。
ゴーレムはスコーピオンの使用なども重なって崩壊したが、コアは秘密裏に回収されている。
そして、1組では…。
「あぁ~ったく!ハッキリしなさいよ!」
「ご…ごめんなさい…」
「鈴さん、あまり無茶には…」
大声を上げているのは鈴音。その言葉に対しておどおどしながら謝っているのは紫苑。
理由は簡単。鈴音が紫苑に何気なく、IS学園に入学できた経緯を聞いたのだが、本人は口ごもってしまい、このような始末になったのだ。
「そんなんだから、あの不良男に虐められるの!わかる!?」
強く指差しながら罵倒するが、紫苑は相変わらず首を力なく振り続ける。
「仕方ないよ…僕はそうなっても、文句は言えないんだ…」
「どうして仕方ないわけ!?」
理由を聞こうとしたが…。
「うるせェぞ、中国女。人の迷惑くらい考えられる頭があるなら、さっさと2組に戻れ」
「なんですって!?」
教室に理雄が入ってきて、彼女に文句を言う。それが鈴音の闘争心に、更に火をつけることとなる。
「テメェも代表なんやらで、調子に乗ってんだろ。そこのイギリスお嬢様みたいにな。位でしか強さを表現できねェのは、ダサいぜ?」
「アンタねぇっ…!」「くっ…!」
「いい加減にしろ!」
言いたい放題の理雄に向かって、一夏が胸倉を掴んで立たせる。
状況が危険だと感じたのか、紫苑は怯えながらも止めに入る。
「お、落ち着こう!ね…?」
「うるせェな、クソ野郎!」
ゴッ!
「うっ…!」
だが結局、理雄に殴られるという形で無駄に終わった。
「やるか?鉄仮面女の弟さんよォ!」
「このっ!」
ガッ!グイッ!
激情した一夏は理雄に殴りかかったが、簡単に右手で防がれ、逆にねじ伏せられた。
「うあっ…!」
「威勢がいいのは最初だけかよ。流石、姉貴の七光りで此処に来ただけのことはあるな」
「おまえっ!」
一夏への罵倒に対して箒も怒り心頭で、竹刀を振りかざして理雄に斬りかかるが…。
ブンッ!
「な…!?」
あっさりと避けた理雄は、彼女の目の前に拳を突きつけた。あと5ミリでも近ければ、思い切り殴られていただろう。
「オマエも調子に乗るなよ。開発者の妹だからって、いい気になってると、あとで痛い目に遭うぜ?」
一夏を捻じ伏せたまま、ニヤリと笑う理雄。クラスの女子達もかなり怯えている。
「そこまでだ。ホームルームを始める。席に着け。鳳は2組に戻れ」
そこに千冬が現れ、クラスに呼びかける。だが、理雄は簡単には治まらない。
「おぉ、来たな鉄仮面女。弟がやられてるのに、随分と冷てェな」
「もう一度言う、席に着け。そして織斑先生と呼べ」
理雄はニヤニヤと笑いながら挑発するが、千冬はそれに全く乗らず淡々と告げる。
「なんだよ、そんなに先生呼ばわりされてェのか?」
彼女の反応が面白く感じなかったのか、一夏を放して近付き、睨みつける理雄。
だが、千冬も全く動じない。
「席に着け」
「それしか言えねェのかよ!?」
苛立った理雄は千冬に殴りかかる。
ガッ!
「…っ!?」
しかし、今度は理雄が意図も簡単に拳を防がれたのだ。
「最後だ、席に着け」
「…チィッ!」
これ以上の反抗が無駄だと感じたのか、理雄は舌打ちをして席に戻った。
事態が収まったことを確認して、鈴音も2組へと戻った。
そこへ入れ替わるように…。
「うおりゃああああああああああああああぁ!セーフ!」
宇月が扉を勢いよく開けて、教室に転がり込んできた。
それと同時にチャイムがなる。
「…城茂、遅刻ギリギリは関心せんな」
「…すいません」
千冬が睨みを効かせながら注意すると、宇月は縮こまって謝る。
「まあいい、次からは気をつけろ。早く席に着け」
「は、はい」
そそくさと席に着く宇月。辺りの雰囲気が悪い事に気づいた彼は、近くの席に居る紫苑に聞く。
「どうしたんだ?」「あ、後で話すよ…」
首をかしげながらも、前を見ると、山田が教卓の前で話を始めようとしていた。
「今日は、みなさんに転校生を紹介します!どうぞ~」
彼女の声と共に現れたのは…。
一人は、金髪で華奢な少年。穏やかな表情でふんわりした感じを受ける。どうやら外国人のようだ
一人は無愛想な雰囲気の黒髪の少年。制服はかなり着崩しており、あたりを警戒するように見回している。
「じゃあ、自己紹介をどうぞ」
山田が促しに、金髪の少年は笑顔で返答し正面を向く。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました、よろしくお願いします」
女子が一気にざわつき始めた。
「わぁ…かわいい系の美少年…」「守ってあげたくなる感じ…!」
「静かに!」
千冬が注意をして静まった事を確認した山田は、もう一人の少年に声をかける。
「じゃあ、君も…」
「…辻永礼」
聞こえるか聞こえないかの声で、ぼそっと呟く礼。
「あっちはクールなイケメン…」「デュノア君とは対照的…」
「えっと…終わりかな?」
「はい。おれは、あの席ですね?」
山田の目も見ずに返し、あらかじめ言われていた席に座る。
「あ…え~…」「わぁ…」
困ったようにおどおどしている山田とシャルルを見かねてか、千冬が代わりに説明を始めた
「辻永は城茂と、デュノアは白石と、それぞれ同室になる。2人は彼等の面倒を見てやれ」
「はい!」「ぼ、僕と同室ですか!?」
快活に返事をした宇月に対し、紫苑は驚いて立ち上がる。
「座れ、視界に入るな」「あ、ごめんね…」
彼の2つ後ろの席に座っていた理雄が苛立ちながら、紫苑に文句を言うと、紫苑は頭を下げて座った。
ホームルーム後…。
今日は、ISの実習訓練。着替えなければならないのだが…。
「あぁ、最悪の朝だぜ!あの鉄仮面女ァ!」
ドガァ!
「がっ…!」
「やめろ裾迫!」
苛立ちが募っている理雄はそれどころではない。さらに、怒りの矛先を紫苑に向ける。
「テメェが悪いんだ!あのとき、上手く止めれば良いじゃねぇか!?」
「ごめん…」「理雄、それは言いがかりってモノだぞ!」
「うるせぇ!」
宇月が止めようとするも全く聞かず、彼と紫苑に殴りかかった。
…だが。
パシッ!
「なんだ、根暗転校生?」
礼が理雄の拳を受け止めたのだ。なんとか離そうとするが、全く外れない。
「…目障りなんだよ。他でやれ」
「ンだと!?」
「そうだよ、君は乱暴すぎる。彼は何も悪くないよ」
シャルルも紫苑の前に立って、理雄に言い放つ。
「…チッ!肩寄せ合って楽しそうだな。あぁダッサ!」
負け惜しみなのか、呆れたような口調でさっさと教室から出て行き、更衣室に向かった。
彼が去った後、シャルルは紫苑を立ち上がらせて埃を払う。
「大丈夫?」
「あ、ありがと、デュノア君。それに辻永君も」
紫苑はシャルルと礼に感謝しようとするが…。
「気安く話しかけるな」
礼はそう言い放ち、理雄に続いて教室から出て行こうとする。
「宇月、一緒に行こうか。話したいことが山ほどある」
「お、おう!」
以外にも、宇月には愛想よく笑いかけ、彼を誘って一緒に教室から出て行った。
箒は不思議そうに見つめていた。
「宇月の言っていた礼って…あんなに変わった性格だったのか…」
更衣室に向かう途中、宇月と礼は話で盛り上がっていた。
「礼!手紙来たときから待ってたぜ!」
「あぁ。そっちも元気そうだな」
先ほどとは想像もつかないほどの笑みを浮かべ、宇月と会話をしている礼。
「そうだ、アストロスイッチの素体が5つ見つかったぞ。M-BUSに残っていた。調整は出来そうか?」
「見つかったか!時間掛かるだろうけど…10番なら、近いうちに調整できそうだ!かなり強力なはずだから、ホロスコープスにも対抗できるかもな!」
アストロスイッチにはそれぞれ番号があり、彼の言っている10番など、キリの良い番号のスイッチはかなり強力なコズミックエナジーを使うスイッチだと判明している。
「そういえば…やっぱり、あのスイッチは捨てないのか?」
宇月の表情が変わり、厳しい眼差しで聞く。
「捨てると、尚更マズイ事は、おまえも承知だろう」
そう言って取り出した別のスイッチ…。
ホロスコープススイッチ。
星座の絵柄は牡羊座。
そう。辻永礼こそ、ホロスコープスを裏切った12使徒の1人であり、牡羊座の使徒「アリエス・ゾディアーツ」なのだ。
今はホロスコープススイッチを使う事はせず、宇月と心を通わせフォーゼのスイッチ開発に協力している。
「まぁ…それ捨てて、ゾディアーツが拾ったら確かにマズイけど…」
一足先に着替え終わった宇月達の後に、更衣室へ来た一夏、紫苑、シャルル。
「ボクと同室だから、これからもよろしくね」
「う、うん。僕は白石紫苑。こっちは織斑一夏君。クラス代表だよ」
「よろしくな。一夏でいいぜ」
「うん、ボクのこともシャルルで良いよ」
3人は軽い挨拶を済ませた後、着替えを始める。
…のだが。
「あの…ちょっと後ろ向いててくれる?」
紫苑が下を向いて言う。
「そうだね、ボクも少し恥ずかしいし…。一夏、良いかな?」
シャルルも紫苑に賛同し、一夏に頼み始めた。
「なんだよ、2人とも変だな。良いけど」
一夏は不思議に思いながらも、後ろを向いて着替え始めた。
「あ、早くしろよ。うちの担任、めちゃくちゃ…」
そういいながら振り返ると、2人は着替え終わっていた。
「…なにかな?」「厳しいよね…」
「早いな…」
一夏が驚いていると、シャルルと紫苑の服装が普通のものと違う事に気づく。
紫苑に関しては、男子は腹部が露出しているのに、それすらもなかった。
「それ、着やすそうだな」
「デュノア社製の特注品だよ」
シャルルが一夏に説明していると、紫苑が驚いて聞きなおした。
「デュノア社って…まさか君、あの世界第3位のISシェアを誇る、デュノア社の息子なの!?」
「うん…まぁ…」
何故か堂々としていない。なにか後ろめたい雰囲気だった。
「…そういえば、紫苑は?」
「僕は、ちょっと訳ありで…手と顔以外は、肌を日光にさらせないんだ。理由は言えないけど」
困ったように笑って説明した。
「…あ、織斑君、デュノア君、早くしないと!」
「うわ、やっべ!」「わぁ、大変!」
時間が迫っていた事に気づいた3人は急いで出て行った。
それを見つめていた女子生徒。隣にはスコーピオンもいる。
「シャルル・デュノア…!」
「邪魔者を排除するのだ。君の願うままにね…」
「はい、スコーピオン様…!」
女子生徒の手には…ゾディアーツスイッチが握られていた。
グラウンドでは1組と2組の生徒が集まっている。そこに千冬がジャージ姿で現れて、大きく宣言を始めた。
「本日は初のIS実践訓練だ!2組合同で行なう。飛行や歩行など、基本的なことを学んでもらおう。まず、手本として模擬戦から始めようか。オルコット、鳳、出番だ」
千冬は代表候補かつ、専用機持ちの2人を指名するが、当の本人達はやる気がない。
「なんだか、見世物にされてる気がして…」「やる気がおきませんわ…」
そう言いながら、のろのろと前に出てくる途中、千冬がボソリと呟く。
「アイツに良い所を見せる機会だぞ」
その瞬間…。
「ま、このわたくしを置いて、他に手本はありませんものね!」「格の違いを見せてあげる!」
いきなり、やる気全開に変化した。
「織斑先生、何言ったんだろう…?」「おれに聞くなよ」
シャルルは一夏に聞くが、彼も首を振る。
「さて、お前たちの相手は…」
「きゃああああああああああぁ!避けてくださああああああああああい!」
上を見ると、ISに搭乗した山田が地面向かって真っ逆さま。
「きゃああああああああぁ!」「うおおおおおおおおおおおおおおぉ!?」
生徒達が逃げる中、一人だけ逃げない者が居た。
理雄である。
「ハッ…!」
霧裂を展開し、彼女をムチで捕縛してキャッチする。
「た、助かりましたぁ…裾迫君、ありがとうございます…」
「教師すら、こんなものかよ。そんなんで指導だなんて、笑わせるな」
「うぅ…」
感謝の言葉に対し、理雄は山田を罵倒しながら歩き去る。
千冬は不敵に笑いながら、理雄に語りかける。
「模擬戦を見たら、その考えは変わるぞ」
「ほう…。じゃあ、見せてみろ。そこのウスノロメガネが見返すサマをよ」
鼻で笑いながら、クラスの輪に戻る。
「2人掛かりって…」「流石に無理じゃありませんこと?」
セシリアと鈴音は代表候補生。教師相手とは言え、2体1では勝負が見えている。
「安心しろ、お前等じゃ絶対に勝てない」
「では…始め!」
千冬の合図と共に、山田はISを使い空に舞い上がった。
セシリアと鈴音もISを起動させて後を追う。
「顧問の先生相手といえども、容赦しませんわ!」
「…っ!」
早速、ブルーティアーズのビームが山田を襲うが、彼女はそれをあっさりと避ける。
「なっ…!?」「あぁもう!あたしがやるわよ!」
山田の後ろを取った鈴音は、龍砲を使い、衝撃波を放つ。
ドガアアアアアアアアアアアアアァ!
「っ!」
「あ…!」「えっ…きゃああああああああああぁ!?」
しかしそれすらも上手く避け、その衝撃波はセシリアに襲い掛かる。
地上から見ていた一夏や宇月は感心しながら実況している。
「早っ!?嘘だろ!」「しかも動きに無駄が殆どない…!」
2人の様子に千冬はフッと笑いながら、シャルルを見る。
「デュノア、山田君の使用しているISの説明をしてみろ」
「はい、先生が使っているのはデュノア社製の第2世代IS「ラファール・リヴァイヴ」。量産型では最後期の機体で、そのスペックは第3世代型初期に劣りません」
シャルルが一通り説明すると、紫苑は口をポカンと開けている。
「へぇ~…すごいね…」
説明が終わった後に、上を見直すと模擬戦が終わろうとしていた。
山田は2人を翻弄し、うまく1箇所に集めさせて、トドメの一撃を放った。
「…っ!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオオン!
「「きゃああああああああああああああああああああぁ!」」
墜落した場所にクラスメイト達が駆けつけると…。
「もう…セシリアがビームをバカスカ撃つから!」「鈴さんだって、見事に手玉に取られてましたわよ!」
「ふ、2人とも、ケンカはやめようよ…」
紫苑がまぁまぁと言いながら止めるが、雰囲気は宜しくない。
空中から降りてきた山田を睨みながら、理雄は苛立った表情でいる。そこに千冬が近付いて呼びかけた。
「裾迫、これで分かったか?お前でも勝てなかったことは理解できるだろう。それに彼女は元日本代表候補生。これからは敬意を持った態度で接するように」
「…チッ、あぁそうですか…!」
彼も勝ち目がないことを理解したのか、不本意ながらも従う意志を見せた。
宇月は目をキラキラと輝かせながら、山田を褒め称える。
「すっげぇですね、山田先生!しかも代表候補だったなんて!」
「あ、あはは…昔の話ですよ…。それに代表候補止まりでしたから」
恥ずかしがりながら、それに答える山田。
千冬は生徒達に改めて指示をする。
「さて、これから基本的な歩行の訓練を行なう。6つの班を作れ。専用機持ちが指導しろ」
どうやら、5グループに分かれて行なうようだが…
「織斑先生」
「なんだ?」
ある疑問点があって、礼が彼女に質問する。
「専用機持ちは、織斑、裾迫。さらに代表候補生のオルコット、鳳、デュノアの5人。指導には1人足りませんが?」
「残り1班の指導は初回で適性度「S」の城茂がやれ」
「お、おれですか!?起動は一度だけですし、まだ実際に乗ってないですよ!?」
いきなり指名された宇月は、驚きながら拒絶の意志を見せるが…。
「やれ。今日のホームルーム、遅刻扱いでも良いぞ?」
「は、はい…」
理不尽な脅迫を受け、しぶしぶ納得する宇月。
さて、誰がどのグループにいくのかは個人が自由に決めるのだが…。
「織斑君、一緒の班にして!」「あたしもあたしも!」
「お、おぉ…」
やはり女子からの人気はナンバー1の一夏。かなり多くの女子から頼まれていた。その中にはこっそりと箒も混じっている。彼女は不満そうな面持ちだが…。
「デュノア君、あたしに色々教えて!」「説明上手そうだし!」
「うん、任せて。あ、紫苑もおいでよ!」
「僕も良いの…?」
次点…というか、ほぼ同等の人気を誇るシャルル。紫苑はどこに行こうかと戸惑っていたところをシャルル自身に呼ばれ、このグループになった。
そして…。
「ねぇ裾迫君。指導、お願いできる?」「セシリアに勝てるくらいだもんね」
「良いぜ、オマエら良い人選だな。気に入った」
女性は、危険な雰囲気の男を好む者も居る。
注目される事は、理雄も嫌いではないようで、彼も多くの女子から指名があった。
代表候補生のセシリアにはカメレオンだった女子生徒をはじめとし、鈴音にもハウンドだった女子生徒等も集まった。
一番の不人気は…。
「…ま、そうなるよな」
宇月だった。
班になったのは礼だけ。一応、リンクスだった女子生徒からは頼まれたが、他のクラスメートから無理矢理引きずられて、シャルルの班に向かったのだ。
「あんな女共の相手をするのは面倒だ。かえって良かっただろ?」
鼻で笑いながら、量産機の打鉄を起動させようとした礼。
だが…。
「うっちー、いいかなぁ?」
1人の女子がやって来て、宇月に申し込んだ。とろんとした瞳が特徴的で、黄色のネズミのような髪飾りをつけている。
「う、うっちー?」
「宇月君だからうっちー。辻永君はつっちー」
「…気安く話しかけるな、勝手に呼び名を作るな。そして、まず名乗れ」
彼女が来た途端、急に不機嫌そうになった礼は彼女に名前を聞く。
「布仏本音だよ~。みんなからは「のほほんさん」って呼ばれてるんだ~」
礼の様子など全く気にせず、かなり遅めの口調で自己紹介した。
「おう、じゃあ一緒に頑張ろうか、本音!」「名前で呼ぶんだぁ…。うん、がんばろぉ!」
すっかり意気投合した宇月と本音は、2人でエイエイオーと叫んでいる。
「足手纏いになるなよ、ノロマ」
一方、全くそりが合わない礼と本音。
「うぅ…せめてのほほんって呼んでよ~」
「黙れ、抱きつくな、気持ち悪い」
この班は全員で3人。
今回は、彼等に焦点を当ててみることとする。
「よし、礼。まず歩行からやってみようか」
「あぁ」
礼は宇月の指示通り打鉄に乗り込んで、歩行を開始した。
「あれ…すぐ出来るじゃん」
「舐めるなよ」
自信に満ちた笑みを浮かべてすぐに降りる。
「指導甲斐がねぇよ…。んじゃ本音、いってみよう」
「はぁい!」
次は本音の番だ。打鉄に乗り込み、歩行を開始しようとするが…。
「あ…あわわ!」
「おっと、あぶね!」
礼のように上手くいかず、バランスを崩して倒れそうになる。いち早く気付いた宇月は彼女の背中を支えながら、体勢を元に戻す。
「おれもまだ乗ってないけどさ、こういうのは体重を中心に持ってくる感覚でいけば、大体うまくいく。さ、頑張ってみろよ!」
「うん、ありがとぉ~」
宇月は自分の感覚を頼りにして、自分なりの説明で指導をしている。
「…早速、足手纏いになりやがって」
「もぉ…つっちーは意地悪だねぇ」
「その呼び方はやめろ」
礼は彼女の存在を良く思っておらず、さっそく文句を言い始めた。
「悪いな、本音。こいつ口は悪いけど、本当は良いヤツなんだよ。わかってくれよな」
フォローを入れる宇月に対し、こっくりと頷く本音。
「大丈夫だよ~。つっちーは恥ずかしがり屋さんだもんね~」
「勝手に決めるな」
一方、一夏達のグループでは…。
「一夏、乗れないのだが…」
打鉄を起動させたまま、先の生徒が降りたため、箒が打鉄に乗れないのだ。
山田が優しくフォローする。
「あぁ、よくある最初のミスですね。織斑君、白式を展開して篠ノ之さんを抱きかかえて乗せてあげてください」
「は、はいぃ!?」
指導側になっていたため、それを引き受けて箒を抱きかかえる。
「しっかり捕まってろ、箒!」「ひゃっ…一夏…!?」
一夏に「お姫様抱っこ」をされ、顔を真っ赤にする箒。
「わぁ…箒、良いなぁ!」
クラスメートからは、羨望の眼差しを一手に受ける。
一方、箒は…。
「これがお姫様抱っこ…良いものだな…」
「なんか言ったか?」
「い、いや、なんでも!」
色々と、実習や机上学習が終わり…。
放課後になった。
「よし、ラビットハッチにいこうか。早速、スイッチ調整に取り掛かる」
「おう、10番と20番を調整しないとな!」
宇月と礼は自室に戻り、ラビットハッチに向かう。
だが…。
「な…!?」
「お、宇月、来たか!…辻永も!?」
「バガちゃんの偵察だが、ゾディアーツは見つからなかったぞ」「久々に穏やかな夜ですわ…」
「暇といえば、暇だけどね…」「鳳さん、それが望ましい状態なんですよ…?」
礼は驚愕する。ラビットハッチは宇月と自分しか知らないはず。
なのに、目の前には5人もの生徒や先生が居る。しかも憩いの場のようにしていた。
「おまえら…何をしている…?」
「礼、みんなは一緒にフォーゼとしてのおれの活動を支えてくれる「仮面ライダー部」のメンバーだ!一夏と箒はスイッチャー捜索、セシリアはISの知識や情報収集、鈴音はパワーダイザーの操縦、山田先生は顧問として、学校面での調査をしてくれてるって感じだ!」
それぞれの代わりに、宇月が説明するが…。
「全員、出て行け!!!!!」
礼は宇月以外に言い放つ。
「礼…?」
「ここは学校の部室じゃない!ここはな、本気でゾディアーツと戦う気持ちを持った戦士だけが集う場所だ。おまえらのような奴らは、此処に来る資格はない!さっさと出て行け!」
「な、なんだよ、いきなり!?」
一夏が困惑しているが、それをお構い無しに礼は宇月に詰め寄る。
「宇月!城茂博士の息子としての誇りを失ったのか!?こんな下らん連中を、お前の父親の形見であるラビットハッチに連れ込むほど、おまえの意志は腐ったのか!?」
「取り消せ、礼!!!!!」
礼に対して、大きく怒鳴り声を上げたのは宇月だった。
「みんなは全員、本気でゾディアーツと戦う意志を持っている。下らない連中なんかじゃない!」
「宇月…!?」
彼がここまで怒る姿を見たのは、一夏達も初めてだった。
「この前、スコーピオンと戦って、優勢に持ち込めたって話をしたよな。あれはみんなのおかげだ!みんなで力を合わせたから、ホロスコープスを退かせる事ができた!」
「あのスコーピオンに!?」
礼はアリエスであり、ホロスコープスの1人。スコーピオンの恐ろしさは十分理解しており、それに打ち勝てたことは大きな衝撃となった。
だが…。
「…認めない!それでも!」
礼はそう言って、ラビットハッチのスイッチ調整室に閉じこもる。
「礼…」
「…宇月。今日はわたし達、帰った方が良いよな?」
箒がおずおずと聞いてきたので、宇月は小さく頷いた。
「じゃあ、また明日。教室でお会いしましょう…」「おやすみ、宇月…」
「えっと…遅刻ギリギリはしないでくださいね…?」
そう言って、出て行こうとしたとき…。
「う、うわああああああああああああああああああああああああぁ!」
ラビットハッチの扉の向こうから悲鳴が聞こえた。
「シャルルの声じゃないのか!?」
全員、ラビットハッチを飛び出して、彼の元に向かった。
取り残された礼は…。
「くそ…おれと宇月じゃ、スコーピオンに太刀打ち出来なかったのに…なんであいつ等が!?」
ヤケになりながらも、スイッチの調整を進めていた。
廊下では…。
「や、やめて…!」
「シャルル・デュノア…。デュノア社への見せしめにアンタを殺す!」
シャルルは腰を抜かせて、地面にへたり込んでいる。
視線の先には…白い馬のようなゾディアーツが居る。
「う、うわああああぁ!」
シャルルと一緒に居た紫苑は、近くにあった棒を持ち勇気を振り絞って、ゾディアーツに殴りかかる。
だが…。
カァン!
「邪魔!」
ドゴォ!
「がっ…!?」「し、紫苑!?」
鳩尾を殴られ、あっさりと気絶する。シャルルは紫苑に近付き、必死に揺り起こす。
「紫苑、しっかり!しっかりして!」
「シャルル、紫苑!」
そこへ宇月達、仮面ライダー部が現れた。
「城茂君!紫苑が死んじゃう!」
「大丈夫だ、シャルル!一夏。紫苑とシャルルを安全な場所に!箒はバガミールで分析を!」
宇月は指示を送りながら、フォーゼドライバーを装着し、赤いスイッチを押す。
「わかった!シャルル、こっちだ!」
<3>
「任せろ!バガちゃん、頼む!」
<2>
「紫苑…」
<1>
「変身っ!」
レバーを引き、フォーゼBSへと変身する。
「はあっ!」
「邪魔者が多いわよ!」
そのゾディアーツの姿を見て、フォーゼBSは判断した。
「一角獣座…ユニコーン・ゾディアーツだな!」
「えぇ、そう。そしてアタシはデュノア社を潰して、ホロスコープスになるの!」
「いい考えとは思えないわね!」
ユニコーンの言葉を、真っ向から否定する鈴音。
「おまえを止める!」
<CHAINALLEY-ON>
強く宣言したフォーゼBSはチェーンアレイモジュールを装備し、振り回しながらユニコーンに攻撃を仕掛ける。
しかし…。
ドゴオオオォ!
「うわあぁ!?危ないわよ!?」「ぶつかったら、どうするおつもりですの!?」
「わ、悪い!」
チェーンアレイは壁に激突し、壁の瓦礫が危うくセシリアや鈴音にぶつかりそうになった。
謝っていると…。
ドガアアアアァ!
「ぐおおおぉ!?」
ユニコーン自慢のツノを持ってする頭突きを正面から受け、地面を転がる。
「やっべ…他にいいスイッチは…」
「宇月、使え!」
唐突に現れた礼。渡したのは…。
「このスイッチ…エレキだ!もう完成したのか!?」
「未完全だが、強力に間違いはない!」
10番のアストロスイッチ「エレキスイッチ」だ。多少不安要素はあるが、迷っている暇はない。
「よし、使ってみるか!」
<ELEKI-ON>
右手用のソケットを差し替え、エレキスイッチをオンにする。
その瞬間、フォーゼBSの右手は金色に輝き、電気を纏った杖上の武器「ビリーザロッド」を握り締めている。
「す、凄い…身体中が痺れるみたいだ!」
右手を強く握り、ビリーザロッドをユニコーンにぶつける。
ガッ!バリバリバリバリィ!
「キャアアアアアアアアアアアアアァ!?」
「うわあああああああああああああぁ!?」
だがフォーゼBSすら、その電撃を受けてしまっている。
「う、宇月!?」
「エナジーが強力すぎて逆流してる…!」
これでは、ユニコーンに対抗する術がない…。
「どうする…!?」
続く…。
次回
あんたも中途半端なモノ作るな!
あの場でエレキがなかったら、宇月は負けていた!
ボクの秘密…教えるね
僕も教える…君の秘密も知っちゃったから…
いろんな人が力を合わせなきゃ…
ボクも…仮面ライダー部に入るよ!
第8話「距・離・難・解」
青春スイッチ・オン!
キャスト
城茂宇月=仮面ライダーフォーゼ
織斑一夏
篠ノ之箒
セシリア・オルコット
鳳鈴音
辻永礼=アリエス・ゾディアーツ
布仏本音
シャルル・デュノア
白石紫苑
裾迫理雄
女子生徒=ユニコーン・ゾディアーツ
織斑千冬
山田真耶
???=スコーピオン・ゾディアーツ
あとがき
いかがでしたか?
新キャラの辻永礼。彼は元ホロスコープスのアリエスです。さらにスイッチ開発担当。そして、もう一つ役割があります…。名前でバレるかも知れませんが(汗)
今回、やっと登場させたモブで人気の、のほほんさん。メインストーリーに絡むかどうかは…未定です。
スコーピオンの出番、少なかったですね。まぁ次回、また暴れますが…。
IS訓練シーンの未完全ぶりと来たら…(大汗)。
次回は、シャルルの秘密(元を知ってる人はバレバレですが)と、紫苑の秘密を明かします!
そろそろSOLU編にも突入予定です。
お楽しみに!