「ライヒはこの先だよ」
一応答えてはみたものの、彼女なら絶対に分かっているはずだ。彼は――――決して真っ直ぐな人間であるとは言えない。いつだって迷いや悩みを抱えていて、そう言った物事を割り切れる性格ではないから何も決めないまま進もうとする。
――その結果触れなくてもいいものに触れて、そんな自分に失望する。
だとしても。大切なものは最後まで守ろうとする。
だからこそ。どんな時でも先へ先へと躍起になる。
「分かってますよ。でも、ルクスさんとどう話せばいいか、分からなくて」
「話すこと――――うん、僕も思いつかないや」
昔話なら出来るけど、僕の生き方なんて彼女にとっては無価値だろう。それに今はお喋りに興じている場合じゃない。
それに、僕と彼女がここで話すことなんて突き詰めていけば一つしかない。仲が良かった訳でも関りがあった訳でもない僕らに共通点があったとすれば、ライヒの事以外にあり得ない。
お互いこの邂逅が無駄だと分かっているはずだ。この先に続くものも、清算すべき過去も、何も無いのだから。
――だが、無理やりにでも
「あなたはまだライヒ君の事が好きですか」
「いいや、それは違うよ」
――こうなるに決まっている。
「僕は、ずっとライヒが好きだ」
***
この感覚を覚えている。力の反動、課せられた代償。死ぬよりはマシだと使っていたが、使うたびに死んだ方がマシな思いをしていたっけ。禁忌だとか禁断だとか、そう言った部類の技だった気がする。そんな
「通路……どこだ」
立つことさえ難しくなるような眩暈と、方向感覚の喪失。少し時間を置けば収まるだろうが、呑気に休憩などしている場合では無い。
ゼノビアは確実に俺とお嬢をここで止める気だった。その予定を覆してやったのにこれでは何の意味もない。一刻も早く先に進む必要がある。
「あ――――と、危ねえ……」
倒れそうになる体を、剣を杖代わりにして支える。ここで、こんな状態で倒れてしまえば起き上がれなくなる。――――実のところ、後は全てお嬢に任せてしまえばいいと思わないでもなかった。お嬢が返り討ちに合うなんてのは考えない。信じて送り出したのだから最後までそうするだけだ。
『先にいくわね、ライヒ』
それは、つまり、後から俺が来ることを信じてくれているのではなかったか。だったら応えなければ。それだけの余力があれば――の、話だが。
膝からふっと力が抜ける。立て直そうとしてももう遅かった。剣からも手が離れてそのまま崩れ落ちるように意識すら手放して…………。
……。
……――むぅ。
何だか頬の辺りが暖かい。ごわごわした絨毯と堅い床の感触を予期していたが、どちらも感じない。これはそう――人肌のぬくもりだ。これは……膝枕?
「あ、起きた」
心の底から嬉しそうな、そんな感情を湛えた声。何度も何度も聞いて、いつしか当たり前だと錯覚していて、もう俺に向けられることは無いのだと――――確かに諦めた。
「なんで」
「あたしは君の彼女だから――じゃ、だめかな」
「そうじゃない。俺は、お前が、そう決めたならそれでいいって」
SAOでの行動も、結果も、今となってはほとんど証明不可能なデジタルデータなのだ。
――
――だが、
『死』への恐怖から自暴自棄になった少年が、生きるために嘘ばかりになった少女と出会う。やがて二人は苦悩を分かち合い、互いに依存し合い、いつしか恋に
それでもおとぎ話が現実に存在する必要は無い。あったかもなかったかもしれないモノとして区切りをつけてもいいはずなのに。レインはとっくにそうしてしまったのだと思っていたのに。
「会わないかもって、言ってただろ」
「でも見つけて欲しいって言ってたから」
最後の最後にそんな事も言った気がする。でも、そんな他愛ない言葉を頼りにこんなところにまで来るなんて思わないだろう。普通。
「あれだけ派手に宣伝されたら
「見物ならもう帰れよ」
「もう、せっかく会えたのに拗ねないでよ」
「いやだってお前……その、スメラギさんと交際して――ほら、新しく彼氏できたんだろ」
レインが顔を覗き込んでくるので目を背けた。
「その誤解を解くために来たんだから邪険にしないでってば。ほーら、こっち向いて」
無理やり顔の向きを変えられて必然的に見つめ合うことになる。俺はなおも目線を逸らそうとしたが逆らえっこない。いつだって俺はレインに逆らえるはずがない。
だから、そんな悲しい顔をしないでくれ。俺は本当にお前が悪いだなんて思っていないんだ。なのに、そんな悲壮な笑みで見つめられたら、いよいよどうすればいいのか分からなくなる。
「ごめんなさい」
だから謝らなくてもいいんだ。
「あれは違うの。目的のためにはどうしても必要だった、でも、君が見てるはずないって自分勝手なことして、君の事を裏切って――――ごめんなさい」
だから、無理に笑顔のまま泣かないでくれ。涙をぬぐうしかなくなる。何か言葉を掛けないといけなくなる。やりたかったことに歯止めが利かなくなる。
「泣くなよ」
「むりだよ」
「俺だって女性プレイヤーとばっかりつるんでるのに、それは怒らないのか」
「友達付き合いにまでとやかく言う程重くないよ」
「嘘つけ。ストレアの時のお前、忘れてないとは言わせないぞ」
「そ、嘘だよ。でもお互い様だから言えなかったんだ」
俺だって同じくらい最低だ。彼女を差し置いて他の女の子と仲良くしていたのは紛れもない事実だ。
「俺だって自分勝手だ。同じくらい裏切ってた。お嬢との冒険は楽しかったし、ルクスと仲直りできたのは嬉しかった。俺の為に来てくれたって奴らとも仲良くしたい」
「うわあ……最低だなあ」
そうだ。自分勝手に自分の悪い所に目を瞑って被害者のように泣きわめいて色んな人に迷惑をかけた。それこそ責められて当たり前だ。
それでも。
「それでも――本当に
「あたしもだよ。なんでかな、本当に、君しかいない」
お互いにお互いを裏切るけれど、心の底では繋がっているのなら、絶対に離れる事はない。なぜなら俺たちの関係の本質は共依存だから。都合のいい部分だけ押し付け合うような、決して綺麗なものでは無い。
それでもまあ心地いいから、それだけでいいかな――――と。
言葉にしなくても分かっているから俺たちは惹かれ合った。
だから俺はそれに甘えて、あと少しだけ自分勝手を貫かせてもらう。
「悪い。そろそろ行かないと。――お嬢が待ってる」
「あたしよりミズチさんを選ぶの?」
さっきまでの涙はどこへやら。意地の悪い質問をぶつけてくる。だとしても俺の返事は決まっているのだが。
「恩人だから、返さなきゃいけないものが沢山あるんだ」
「じゃあ仕方ないね」
そう、仕方ない。別に仕方なくやっているつもりはないが、ケジメのためにはそう言うしかない。
もう少しレインのぬくもりを感じていたかったが、今は振り切って体を起こす。反動はすっかり消えている。
「それじゃあ、行ってくる」
「うん。行ってらっしゃい」
レインが付いて来ないのは、
***
「バカね。ワタシがアンタを助けるわけないじゃない」
ワタシの姉は、勝ち誇ったようにこちらを見下すスプリガン領主は。
――――ああ、なんて素敵で愉快なことだろうか――――
ワタシの想像以上にワタシを、人の心を分かっていなかった。
人の心を集めるのは得意なくせに、その中身を理解しようとしない。百の言葉を尽くすことが出来ても、たった一つの本音に気がつけない。望むように他者を動かせたとしても、決して自分が歩み寄ろうとはしない。
だけれど、実際にはこうして囚われている訳で。どんなふうに息巻いてみたところで負け惜しみにしかならないのが悔しい所だ。
「ゲントクをぶつけて見せた時点で心が折れると思っていたのだけれど、案外強いのね。でも分かっている? 今ここでミズチちゃんがやられたらどうなるか――――」
ここでやられたら、どうなるのだろう? 例えば、そう、慣れないながらも築き上げた求心力は消えて無くなる。領主という身分も維持できない。インプ全体がスプリガンに搾取されるし、レネゲイドになるプレイヤーが後を絶たないだろう。クロートーは残ってくれるかもしれないけど、ワタシは追放されてしまうかも。
「ロクなことにならないわね」
「でしょう? だったら」
「まだ分からない?
この反逆は確かに個人的というには大きすぎる。なんならこの先のALOの趨勢を決めると言っても過言ではない。実際にゼノビアには野望を達成するだけの力がある。
だけど、そんな事情は後付けだ。開き直ってしまえば、別にALOがどうなろうと知ったことではない。
ゼノビアの野望の動機が目障りな奴らへの嫌がらせなら、ワタシの動機は嫌いな奴への嫌がらせだ。
ゼノビアがワタシを殺すということは、ゼノビアの大事なものを彼女自身のてで殺させることと同義だ。嫌がらせにしては手が込んでいて上出来だろう。――――ワタシの勝手な解釈ではあるが、そんなところだ。ここまで来られたことに既に意味がある。
「そう、そういう事」
ゼノビアはワタシから顔を遠ざけると、不機嫌そうに扇子を開いた。
「私はミズチちゃんを愛しているわ。お父様もお母さまも忙しいから――娘として愛してもらってはいるのでしょうけど、実感できたことは一度もない。そんな私の希望が貴方なの」
「見てれば分かるわ。ほんっと、動機がマンガかなにかみたい」
「愛を実感できないのなら、愛を与えることで感じてもいいでしょう? 愛の対価に妹一人独占したって構わないでしょう?」
「勝手ね、ワタシはモノじゃない」
家族だから、理解できないわけじゃない。だがそんな歪んだ感情を向けられる身としてはたまったものではない。だから逃避の一環としてVRMMOを始めた。ゼロから自分をやり直したかった。自分が自分でいられるように――――。
「だからこの箱庭ごと壊してみようと思ったのよ。個人的に嫌いなヒトも多いし、ミズチちゃんの居場所も奪えるし」
思わず笑ってしまいそうになった。嫌だから壊して台無しにしようだなんて、発想が幼稚すぎる。
「そう、ならもう手遅れね」
「……どうしてかしら?」
足音が聞こえる。
ほんの微かな物音に過ぎなかったが、這いつくばっているワタシにははっきりと感じ取れた。初めは小さかったそれは、刻一刻と大きさを増して、ついには飛び込んで来る。
信じていた。ずっとずっと信じていたから、来るのが遅かったことに少しイライラした。まあ、来てくれたのだからよしとしよう。
手を伸ばす。
「友達が出来たからよ」
ライヒはワタシの腕を取ると重力魔法の範囲外まで引き離した。結果として抱き寄せられるが、それが嬉しかった。
「待たせてすみません、お嬢」
「ホント……遅いわよ」
ワタシの我儘のためにここまで来てくれるような友達が、ワタシにだって出来たのだから。もしALOが無くなってもワタシはワタシの力で頑張れる。
流石に分が悪いと感じたのかゼノビアはワタシたちから距離を取る。ライヒの剣の間合いからは外れてしまったが、形勢逆転には間違いないだろう。
それはさておき、聞いておきたいことが一つ。
「ねえ、まさかゲントクから逃げて来たとかじゃないわよね」
「違いますよ。きっちり倒してきました」
「え、無力化とかじゃなくて……?」
あの無敵マンをタイマン勝負で下したというのも驚きだが、それ以上に領主を倒してしまったという事実の方が問題だ。つまり、今のライヒにはノームへの課税権やら何やらが付与されているわけで、ノームから種族ぐるみで色々と恨みをかうこと請け合いなのだが大丈夫だろうか。
「お嬢のためですからね。そもそも逃がしてくれるような相手じゃありませんでした」
友人の事を褒めるかのように心なしか嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか。ライヒもゲントクもバトルジャンキーという意味では似ているし、意気投合しても不思議ではないけれど。
さて、余計なお喋りはここまで。
「追手はしばらく来ないし、文字通り最後の砦だったゲントクも倒した。こんな状況を何ていうか知っているかしら?」
ゼノビアは扇子で口元を覆っていて正確な表情は読み取れないが、間違いなく悔しさに唇を噛んでいるだろう。震える声でゼノビアは逆にこちらに聞き返して来た。
「なら――――なんていうのか教えてくれないかしら」
「
まるで示し合わせたかのようにライヒが飛び出す。右手に持つ剣に紅い光を灯して一直線にゼノビアへとその切っ先を突き付ける。
「そう。
扇子が振り下ろされてゼノビアの口元が露わになる。ゼノビアは、いっそ美しいとさえ形容できる程に嗤っていた。
「がっ、何っ――で……っ!?」
ライヒの動きが重力と拮抗するかのように一度停止して、そして地へと落ちた。その顔は驚愕に歪んでいる。その様子を目の当たりにしたのも束の間、ワタシの体も一瞬にして鉄のように重くなり、先刻と同じように這いつくばるしかなくなった。
「ウソ! 詠唱はしていなかったハズよ!」
詠唱が始まれば分かるように常に耳をそばだてていた。扇子で口を隠していても、顔の動きまでは隠せない。だからこそ勝ちを確信した。
それなのに、この期に及んでどうして――――!!
「詠唱はしていたわ。ずっと、ね」
ゼノビアはどうということも無いというように再び歩み寄ってくる。
「言ったでしょう? ここは私の領域。無尽蔵に魔法を使えるということは、隠蔽魔法だって重ね掛けできるのよ」
「ワタシの《
ワタシの声に呼応するかのように目が紫紺の輝きを放ち、余すことなく部屋の全てを貫く。
「何よ、コレ……」
そして見えたものは、さっきまでは影すら掴めなかったゼノビアの分身、分身、分身――――。恐らく百体は下らないであろうその数を、一体どうやって隠蔽したというのだろうか。
「いくら隠蔽したところでミズチちゃんが本気を出せば確かに《姿眩まし》は無意味よ。でも、あくまでミズチちゃんのそれは《視る》ためのもの。
「《消音》――――」
「さあ、次の一手はあるのかしら?」
次の一手、そんなものは――。
「うふふ。それじゃあお望み通り私の手で終わらせてあげる」
ゼノビアが先ほど遠くへと弾いたワタシの鎌を手に取る。器用にそれを弄ぶ様はワタシよりもよっぽど死神に見える。
死神よりもなお恐ろしい死神は優雅にワタシの方へ歩いてくる。這いつくばっているせいで足音がはっきりと聞こえる。コツン、コツン、と焦らすように近づいてくる。
だが、その歩みが止まる。
「お前が、その武器を、使うな……」
ライヒがゼノビアの足首をむんずと掴んでいた。ワタシなんて指一本持ち上がらないというのになんて馬鹿ステータスなのだろう。こんな状況だというのにライヒはまだ諦めていなかった。いっそ執念とでも呼ぶべき感情が瞳の奥で渦巻いていた。
「あら、どうしてかしら?」
「その鎌は、お嬢が……アンタの首を掻っ切るためのものだからだ――」
「そう、叶わなくて残念ね」
ゼノビアが自由な方の足でライヒの顔を踏んづける。それでもライヒは掴んだ手を放そうとしない。
ライヒと目が合う。真っ直ぐにワタシを見つめるその目は、確かにワタシの事を信じている目だった。こんな絶望的な状況なのに、まだ負けていないと訴えかけるようですらあった。
――実はある。奥の奥の、奥の手が。
いろんな人を巻き込んで、無茶なことばかり押し付けて、ずっと助けられてばかりで。これはワタシが始めた事で、ワタシの都合で、そして目標。
だったら。
ワタシが最後を飾らなくて、どうする!!
後ろ手に操っていたホロウィンドウからもう一対の鎌、《ファルクス=ミーミック》を呼び出す。そして力の限り叫んだ。
「《デス・バイ・エンブレイシング》――――!!!」
ワタシを置き去りに鎌だけが回転しながら飛んでいく。方向ははもう一対の《ファルクス=パンドーラ》へと、真っ直ぐに。
ライヒがゼノビアを掴んでいるおかげで回避は不可能。そして《パンドーラ》もまた《ミーミック》に引き寄せられるように動き出し――――
「ミズチィィィィイ!!!!」
「
ゼノビアのアバターは、綺麗に半分に分断された。見たこともないほど激しいリメインライトの光が部屋を数秒間にもわたって照らし出し、消えた。
術者が消えたせいか体が急に軽くなる。それと同時に床に次々と、いや、この摩天楼全体に夥しい数の亀裂が入っていく。
「お嬢、これは!?」
「あ、言ってなかったかしら。領主が倒されると領主館のランクがリセットされるのよ。全く意地の悪い仕様よね」
「へえ……いや、それは確かにそうなんですけど。このままだと俺たちもゼノビアの後を追うことになるんじゃ」
なるほど、確かにその主張はもっともだ。
――――それなら、取るべき行動はたった一つ。
「脱出よ!」
一際大きな亀裂によって広がった隙間を見つけると、今度はこっちからライヒの腕を取り――勢いよく飛び込んだ。
***
「うわあああぁぁあ!?」
「あははははははは! 楽しい!」
びゅごうびゅごうと耳元で空気が鳴る。それをもかき消すほどに目いっぱいに叫ぶ。
ALOで一番と謳われた摩天楼が崩れ落ちていく。月の光に照らされたその様子は美しいの一言に尽きるが、今のワタシたちにとってはよくできた背景に過ぎない。
「ねえ聞いた? 聞いた? あの断末魔! ワタシ、ぜえーーったい、嫌われたー!」
「それは最高だ! でもそろそろ翼使いません!?」
「これでいいのーーーっ!」
決して手を離さないように、目を逸らさないように。満月の中でワタシたちは一つになっている。
分かっている。
私たちの関係は、この瞬間、真っ逆さまに
それでも今は。二人で行きついた先の、果てにある今だけは――。
「ねえ、ライヒ! ワタシねえ!!」
「俺!? 何ですか!?」
もし告白するのなら。とびっきりの笑顔でするって、決めていた。
「アナタの事、大好きよ! 愛してるーーーー!!」
「好きって……な、はあァっ!?」
「あはははは、バーカ! バーーカ!」
「なんで俺罵倒されてんですか!?」
どちらともなく翼を広げて、無限のような一時は終わりを告げた。カタチに出来ない感情が次々と胸の内からせりあがってくるが、抑える。
本当に短い旅路だった。誰にでも出来たような道のりで、それでもどちらかが欠けていたら叶わなかった。
二人並んではるか遠くの世界樹を見つめる。
「俺、お嬢には感謝してるんです」
ライヒがぽつりと言った。
「お嬢が俺を見つけてくれたから、救ってくれたから、今の俺があるんです」
「そうよ。一生感謝しなさい」
でも、これで――――。
「契約は、これでおしまい。ワタシはアナタのもので、アナタは私に縛られない」
声が震えそうになるけれど、ぐっとこらえる。
「でも、まだあのお城は全部崩れてないわよね?」
「え? それは、まあ」
「だから、最後にお願い」
ストレージから《ムードメーカー》を実体化させて周囲に振りまく。きらきら、きらきら、と光が舞い散る。
「一緒に踊りましょう?」
スカートの裾をつまんでお辞儀をする。ライヒはそんな私の手を恭しく取る。二人合わせてステップを踏む。
「なかなか上手じゃない」
「SAOにこういうのが必須なクエストがあったんですよ」
「そこは嘘でもワタシのために練習したって言いなさいよ」
くるくる、くるくる。月の光を一身に受ける。お互いにその場の気分で踊っているだけだというのに、予め知っていたかのように乱れることなく舞踏していた。
ワタシは笑っている。きっと月だって魅了してやれるくらいに。誰しもが見とれてしまうであろう――絶対そうに決まっている――笑顔で、こっそり泣いている。その
「お嬢」
「なに?」
「目指し続ければ、諦めなければ、どんなところにだって行けるし、何だって出来る。そうですよね」
全く、今更何を言い出すかと思えばそんな事。
「そんなの、当たり前じゃない!」
月光の下、二つの影は繋がったまま永遠になっている。
摩天楼が
お久しぶりです。アクワです。まずはその……またまた長らくエタってしまい申し訳ありませんでした。追いかけてくれている皆さんには(間が空きすぎてそんな方々がいるかは自信ないですが)いやホント申し訳ないです。
挨拶はほどほどにして、国盗り編。如何でしたでしょうか。私個人としては、この結末は最初から予定していたので大満足です。エタりにエタって、急にSAO編を手直しし始めたかと思えば、唐突な投稿ラッシュ、そして最終回になってからまたエタり――。と、まあ紆余曲折ありましたが無事に書き切ることが出来ました。
まずは読んでくれた皆様へ。私は読んで頂くためだけに小説を書いています。皆さんがいてくれなければ、絶対にここまで書けませんでした。
感想をくださった方々へ。変に堅苦しいこの作品に感想をくださって、本当に嬉しく思いました。本当に励みになりました。
評価をつけてくださった方々へ。ありがとうございます。お礼しか言えませんが、本当に嬉しくて、一言入れてくださった方もいて、泣くほど嬉しかったです。
コラボしてくださった今井綾奈様へ。お忙しい中こんな拙い作品とコラボしてくださったこと、今でも大切な経験で、思い出です。本当にありがとうございました。
次は新章か、或いは別の作品か。どこでお会いできるかはまだ分かりませんが、またどこかでお会いできることを楽しみにしております。
感想その他お待ちしております。