ユグドラシル
DMMORPG 『ユグドラシル<Yggdrasil>』は
2126年にとある日本のメーカーが発売した体感型無料MMOである。
専用コンソールを利用して、外装に五感を投入し、
仮想の世界で現実にいるかのように遊べるゲーム
それが『ユグドラシル』なのである。
『ユグドラシル』の他にも似たようなゲームは存在していたが
当時『ユグドラシル』は他のゲームとは明らかに格が違っていた。
まずプレイヤーの自由度が異様なほど高く
そのプレイヤーを待ち構えている広大なマップ。
アースガルズ、アルフヘイム、ヴァナヘイム、
ニダヴェリール、ミズガルズ、
ヨトゥンヘイム、ニヴルヘイム、
ヘルヘイム、ムスペルヘイムといった
9つのフィールドがあり
そろぞれ特徴のある世界の1つ1つは
現実世界の東京2つ3つほどの大きさがあるほどである。
そしてプレイヤーはまず自分の分身となるキャラクターを作る。
その際にも人間以外の種族、亜人種や
モンスター種を選ぶことができる。
更には合計2000を超える職業。
6000種類以上の魔法やスキル。
別売りのクリエイトツールを使用することにより
製造できるオリジナルの装備品や住居。
そういったプレイヤーのクリエイティブ魂に
火を付ける要素の数々は
多くの人々を魅了していったのだった。
しかしそれも昔の話である。
『ユグドラシル』が始まってから12年
遂にその終わりの日が近づいていた……。
広大な世界の1つ
ミズガルズの辺境のとある森の中に
ギルド『ハイドアンドシーク』の本拠地
『コボルトの洞窟』があった。
『ユグドラシル』のギルドには拠点を持つ権利が与えられ、その拠点の大きさに応じて
拠点NPCの作成など
様々なメリットを得ることができた。
かなり小さい部類には入るが
この『コボルトの洞窟』もその拠点の1つであり
そこにエリック・トレイ・フォアードはいた。
『コボルトの洞窟』の地下3階
そこには石造りの広い部屋があった。
部屋の両側には壁に沿うようにアイテムボックスがびっしりと並べられていて
その前にはところ狭しと
鎧兜の装備品が飾られており
学校の体育館1つと同じ程の広さを持つと思われるその部屋のスペースの半分以上占領していた。
部屋を動ける場所はちょうど真ん中の部分だけであり、一番奥まで続く一本道のようになっていた。
その奥には不自然に開けたスペースがあり
そこには大きなテーブルが1つと
その周りにいくつかの椅子が置いてあった。
その椅子の1つに腰掛ける1人の人物、
ギルド『ハイドアンドシーク』の
ギルド長・エリックだった。
その姿は黒いフード付きのマントを羽織り
胴体や手足には光沢のある黒い金属でできた
胸当てとガントレットやブーツなど付け
それ以外の部分は身軽に動けるような
軽装で固めた格好をしていた。
「今日でこの『ユグドラシル』も最後か……。」
エリックは呟いた。
エリックが『ユグドラシル』を始めたのは
およそ10年くらい前、まだ彼が高校生の頃だ。
学校で友人らと一緒にオンラインゲームで遊ぼうという話題になり、当時既にテレビのCMなどで
有名になっていた『ユグドラシル』を皆でやろうということになったのが事の始まりであった。
当時のエリックは『ユグドラシル』をプレイするための専用コンソールを持っていなかったため
親に頼み込んで、「許可なく課金しないこと」を条件にコンソールを買ってもらったのは良い思い出だ。
その後は友達らと共に『ユグドラシル』の世界に繰り出し様々な場所を巡り、
冒険に没頭していった。
その後高校を卒業し大学へ進学した後も
エリックは『ユグドラシル』を続けていた。
進学した際に離ればなれになった友達との連絡や会話の手段としても
『ユグドラシル』は大いに活用できたが、
その頃にはバイトで稼いだ金で
別売りのクリエイトツールを買い、オリジナル装備を作ることにハマっていた。
ギルド『ハイドアンドシーク』に飾られている装備品の多くは
その頃に作った名残の一部であった。
そして大学を卒業し社会人となった後も
エリックは『ユグドラシル』を続けていた。
その頃には徐々にプレイヤーの数も減り始め
当時の仲間もほとんど引退していた。
因みにギルド『ハイドアンドシーク』にエリックが入ったのもこの頃である。
元々『ハイドアンドシーク』には
『桜田ファミリア』という名の別のギルド長がいた。
後に『桜田ファミリア』が引退する時に、当時
ギルド内で唯一活動していたと言っても過言ではない
エリックにギルドマスターを引き継いでほしいと頼んだのである。
そして社会人になってから数年
遂に『ユグドラシル』に終わりの日が来た。
エリックは迷っていた。
残された時間はおよそ4時間
それが過ぎれば、もうこの世界には来れない
その間に何をするか……。
最後の最後に貯まったアイテムを使い派手に何かをするか……
それとも街で過去に会った知り合いなどを探してみるか……
はたまたまだ見ぬ世界を時間制限いっぱいまで探してみるか……
少し考えた後に
「とりあえず街に行って最後の祭りでも見に行ってみるか」
そう言ってエリックは動き出した。
その後この判断が彼の運命を大きく左右することになるとは知らずに………。
相変わらず遅筆ですが
とりあえず2話目(汗)