オーバーロード  ハイドアンドシーク   作:Gonざれす

6 / 10
なんとか年越し前に投稿。

1日で軽く五千、六千文字書ける方々が本当にすごいと思います。

そんなわけで本編始まります~





ワールドアイテム

かつて一世を風靡した体感型オンラインRPG

『ユグドラシル』の終了まで、

あと1時間を切っていた。

 

 

相変わらず街にはゲーム終了の報告と

今までの感謝を伝えるアナウンスが

繰り返し流れており、

大勢のプレイヤー達がかつての仲間や

友人達と再会や別れの挨拶などをして賑わっていた。

 

 

そして、そんな賑わいとは別にエリックは

とある場所に来ていた。

その場所は広場とは違い、プレイヤーの姿は無く閑散とした雰囲気を醸し出していた。

 

エリックが向かった先、

そこはバザー会場だった。

 

そこには出店のような店構えの

無人の店舗が複数並んでいた。

 

この場所は『ユグドラシル』のプレイヤー同士がアイテムや装備品の売買をするため、9つの世界の全ての街に設置されているわけだが、

最終日のこの日に売買などするプレイヤーなどいるはずもなく、辺りには街全体に流れるアナウンスが聞こえてくるだけで、どことなく哀愁が漂っていた。

 

エリックが店舗の1つの前に立つと、

“ブンッ" という機械音と共に、

取り引き用の画面がエリックの前に展開される。

エリックは空中に展開された

その画面に入力を始める。

 

「取り引き内容、金貨での購入…と」

独り言を呟きながら慣れた手付きで

ポンポンと入力を進めていく。

 

入力を終えたエリックの前の画面には

ズラリと並ぶアイテムや装備品の名前が

表示されていた。

 

「金貨枚数1000以下の商品…

まとめて購入…選択完了…決定と。」

再び独り言と共に次々と入力をする。

 

 

エリックが行っているのは

他プレイヤーからの商品購入である。

 

こんな姿を他のプレイヤーが見たら、

大抵こう思うだろう。

 

 

意味がない、と。

 

 

実際のところ意味なんてものは無いのだ。

どれだけアイテムや装備品を集めたところで、

あと1時間で全て消える。

それは絶対に変えられない事実であり結末だ。

 

まさかゲームが終了した後も、今のままの状態で引き続きプレイができる『ユグドラシル2』なるものができるのを期待して、せっせとアイテム収集してるわけではない。

そんなおめでたい考えをもつ者が全くいないとは限らないが、エリックはそういった類いの思考はしてはいない。

 

ならば、なぜエリックは『ユグドラシル』の最終日にこのようなことをしているのか?

 

実のところ、エリックがバザーに来るのは

今日だけではない。

 

『ユグドラシル』が終了するとわかった日から、

ほぼ毎日といってもいい割合でバザーに寄り商品を購入していた。

 

その理由は単純である。

 

終わると決まったなら、貴重なアイテムとかでも安値で手放すプレイヤーが多くなるんじゃないか?

 

そんな風に思ったからである。

 

 

エリックは今まで能力の低い底辺プレイヤーとして『ユグドラシル』で活動してきた。

そのため高位のレアなアイテムや素材などを手に入れる機会がなかなか無く、今更ではあるが、

“どうせ終わるならその前に少しでも未知のアイテムや強力な装備品を手に入れたい”と思ったのである。

 

今まで堅実に生きてきたサラリーマンが、

定年後に昔出来なかったやりたかったことをやるような感覚に似ていると思う。

 

『ユグドラシル』が終了して、手に入れたアイテムが全て無駄になろうが別に構わないのである。

今まで弱く、Fスピや桜田ファミリアのような仲間がいてくれなければ、まともに冒険すら出来なかった。

そんな自分なんかが手が届かなかったような超レアアイテムを入手できるチャンス到来の時、

それが今なのである。

 

実際にエリックの狙い通り、安価でアイテムを売り出すプレイヤーは多くなっており、今日という日までハイエナ精神でせっせと購入を続けた結果、エリックの保管してるアイテムや装備品の数は購入前に比べて倍近い量になっており、質の良いものも飛躍的に増えたのである。

 

今までろくに課金もせずに、大したこともしてこなかった自分だが、最後くらいは少しは見栄えの良い状態にしておきたいと…。

 

 

…なんてことは思いつつも、まさか最終日の今日までこの場所に来るとは実際思ってなかった。

 

本音を言うと、今日くらいは

普通のユグドラシルプレイヤーとして最後の瞬間をむかえるつもりだったのだ。

あわよくば昔の知り合いなどと再会して、一緒に終えることができれば御の字であるのだが、

その最大のチャンスであった、Fスピとの再会をちょっと前にふいにしてしまったばかりだ。

 

今ごろになって、なんであの誘いを断ったんだという後悔の念がエリックの心に広がっていく。

 

Fスピにああいったことを言ってしまった手前、今更「実はもう暇になったんで来ちゃいました」なんてことはエリックの口からはとても言えない。

 

いや、Fスピのことだ、エリックが行けば喜んで受け入れてくれるだろう。

むしろ今からでも行きたいくらいだ。

 

しかし、なんというかイマイチばつが悪い感じは、どうしても否めない。

 

何か思わず会いに行くほどの話のネタ的なものがあればいいのだが…。

 

 

そんなことを思ってるうちに購入が終わった。

 

少しばかり気落ちしながらも、

エリックが終了の項目をタッチすると目の前には購入したアイテムの確認画面が表示される。

 

(ほうほう、流石最終日といった感じだな。結構なレアアイテムがちらほらあるぞ…。

神器級(ゴッズ)アイテムまであるじゃないか!)

 

神器級(ゴッズ)とは装備品の中のレア度を示す意味のものだ。

ちなみに神器級というのは、プレイヤーが作成できるアイテムの中では一番レア度が高く、最も作るのが難しいとされているものだ。

 

その他にも主に伝説級(レジェンド)聖遺物級(レリック)遺産級(レガシー)などが存在する。

 

そのなかでも神器級アイテムは、カンストプレイヤーなら誰しも1つくらいは持っておきたいと思う代物なのだが、実際には持ってないプレイヤーも珍しくはない。

 

生産方法が難しいというのもあるが、稀少な金属を使用しなければ作れないという前提条件から入手できるプレイヤーが限られるというのが大きな要因だ。

 

かく言うエリックも、自力で製造した神器級アイテムは1つしかない。

いや、エリック程度のプレイヤーが1つ作れただけで結果としては充分と言うべきなのだろう。

 

そんなエリックが唯一持つ神器級の武器

その名も『完全なる復讐者(フル・リベンジャー)』。

 

基本的に自らが攻撃を仕掛けることの少ないエリックのためにカスタマイズされた武器で、文字どおり全ての攻撃に対してカウンターで攻撃してきた相手に反撃をする。

 

当時、Fスピと桜田ファミリアに

「エリックさんも神器級アイテムの1つくらい持っておいたほうが良いですよ!」と勧められ、

今までに手に入れたログインボーナスやバザーで購入したデータクリスタルや、トレードやおすそ分けなどでもらったレアな金属などを総動員して(足りない分はFスピと桜田ファミリアに工面してもらった)作った逸品だ。

 

これを作った時には二人から

「これがあればソロプレイも心置きなくできますね!」などと言われたりしたのだが、

正直な話、エリック自身は装備品をロストするのが怖くて、ソロの活動時にはほとんど持ち歩いてはいなかった。

 

 

そんな神器級アイテムまでもが

あっさり手に入るあたり

さすが最終日といったところだろうか。

なんとなくだが、寂しささえも感じる気がする。

 

(このアイテム1つ作るのにも、相当苦労したんじゃないのか?それとも、他のプレイヤーから奪ったものとかなのか?)

 

そんなことを思いながらも、エリックは別のことを考え始めていた。

 

(でも、もしかしてこれ、Fスピさんとの話の種にできるんじゃないか?)

ネタ探しに手をこまねいていたエリックの心に一瞬光明が差しこむ。

 

(神器級アイテムをゲットして思わず見せたくなって戻ってきちゃったとか。よし!それでいこう!)

 

思わぬかたちで、なし崩し的に話の種を手に入れたエリックは、Fスピのいる広場に戻るべく、残りの購入したアイテムのチェックも急いで行う。

 

(やっぱり最後くらい誰かと一緒にワイワイ楽しく過ごしたいしな。終わる前に良い話のネタが見つかってよかった。)

 

つい先程までFスピを気づかって、わざわざ身を引いた者とは思えない切り替えの早さで意気揚々とチェックを進めるエリックの目に、とあるアイテムが止まった。

 

(ん?なんだこれは…。世界級(ワールド)アイテム…?)

 

そこにはレア度の項目に[世界級]と

表示されたアイテムがあった。

 

「え?嘘だろ?まさかのワールドアイテム?んな、バカな!」

 

突然の出来事に目を疑い、

思わず大声を出してしまう。

 

もし他のプレイヤーが見られていたら完全に不審者に見えていただろう。

 

世界級(ワールド)アイテム』とは『ユグドラシル』の中でも神器級を超える最高位のレア度とされているアイテムだ。

 

その他アイテムなどと違って、

プレイヤーが作成することが一切できず、その数も200個と固定されている。

 

その効果の程は凄まじく、まさにそれ1つで世界を変えるほどの効果を持つものもあるという、ほとんど反則に近いアイテムだ。

 

上位のギルドであっても入手することが困難で、ギルドに1つあるかないかで、ギルドランキングが大きく変動されるほどである。

 

ちなみに、最も多くの

『ワールドアイテム』を持つギルド

 

それは過去にエリック達を殲滅した、

あの『アインズ・ウール・ゴウン』である。

 

その数は、なんと驚きの11個だという。

 

 

エリックは急いで確認画面を終了させると、自分のアイテムボックスから先ほどの購入した『ワールドアイテム』を取り出す。

 

その形は何のへんてつもない、

ただの紙切れのような物体に見えた。

 

 

エリック自身、『ワールドアイテム』を

手にしたことなどない。

 

『ハイドアンドシーク』に入る前に在籍していたギルドに『グライアイ』という世界級アイテムがあったのを目にしたことがあるだけだ。

 

 

以前ネットで、どこかのギルドが作った世界級アイテムのリストが載ったwikiを見かけたことはあるが、どんなアイテムがあったかなどは

いまひとつ覚えてはいなかった。

 

なので、その紙切れが本当に

『ワールドアイテム』なのか疑わずにはいられなかった。

 

過去に、ふざけ半分で自分で作った下級のクソアイテムにワールドアイテムなどと名付けてバザーに売り出す輩も少なくなかったためである。

 

(誰かのイタズラか?魔法で擬装でもしてるのか?)

 

そう思い、エリックはその『ワールドアイテム』に対し魔法を発動させる。

 

《アプレーザル・マジックアイテム/道具鑑定》

 

 

鑑定結果は…

 

 

それは間違いなく『ワールドアイテム』であった。

 

レア度の欄には世界級の表示がされており、

説明文もきっちり書き込まれている。

情報阻害魔法の形跡もない。

 

どんな魔法を使っても、

ここまでの擬装は不可能だ。

 

しかし、その結果を見てもまだ納得のいかないエリックは次にシステムコマンドから、ギルドランキングの一覧を表示し、自らのギルドの順位を確認する。

 

(順位が上がってる…200位以上も…。)

 

エリックの所属するギルド『ハイドアンドシーク』のランキング順位が飛躍的に上昇していた。

 

(マジか…!本当にこれ、ワールドアイテムなのか?最終日とはいえ、普通売るか!?ワールドアイテムだぞ!?て言うか、ワールドアイテムってバザーで売れるのかよ!)

 

あまりの出来事に頭が混乱し息が荒くなる。

 

(おいおい、落ち着けよ!今更ワールドアイテムを手に入れたからって、うろたえすぎだろ俺!)

 

つくづく希少アイテムに対する耐性の無い自分を情けないと思いつつ、なんとか気持ちを落ち着かせようとエリックは今後のことを思案する。

 

(どうする?やっぱり、Fスピさんに見せに行くのが普通の選択か?しかし、いきなりワールドアイテムなんて言っても信じてもらえなさそうだし…。)

 

そんなことを考えながらも、エリックの脳裏にとある予感がよぎる。

 

(あれ?でも、このままで大丈夫なんだろうか?もしかして俺、このあと狙われたりするんじゃ…。)

 

余計な心配だと思いながらも、エリックの心のなかに沸々と恐怖と焦燥の感情が湧き出す。

 

「いや、落ち着け!今更ワールドアイテム持っていようがいまいが、襲うやつなんていないに決まってるだろ!最終日だぞ!最終日!」

 

自分に言い聞かせるようにエリックは地面に向かって言葉をぶつける。

 

最終日、しかも残された時間はあと1時間も無いのに、争い事などしようとする奴などいないであろうことはわかっている。

わかってはいるが、僅かでも可能性があると思ってしまうと、どうしても周りを疑ってしまう。

 

貧乏人が宝くじなどで、いきなり大金を手にしたらこんな風に思ってしまうのだろうか?

 

エリックは疑心暗鬼になりつつあった。

 

(まずい…色々まずいぞ…。Fスピに会いに行く予定だったのに、どうしよう…)

 

 

迷った末にエリックが導きだした答え、それは…。

 

 

「ゲイル!《ワームホール》を展開しろ!」

 

エリックがそう命令すると、今までエリックの肩に留まっていたゲイルが空中に飛び立ち、エリックの前方に移動すると、自らの頭上に何やら光の粒子を集めだした。

 

そして、集まった光の塊を地面に叩きつけるように降り下ろす。

次の瞬間、一瞬辺りを光が覆ったかと思うと、エリックの前には次元を歪めた空間が現れた。

エリックはその空間の歪みの中にゆっくりと入ってゆく。

 

 

エリックが下した決断、それは一旦本拠地に帰還することであった。

 

ゲイルの使用した《ワームホール》は記憶した別々の場所のポイントを繋ぎ、一瞬で移動できるスキルである。

記憶できるポイントの数には上限があり、上限を超えて新たなポイントを記憶するためには他に記憶したポイントを消さなければならず、1日に使用できる回数も制限があるという、少し不便さが目立つスキルでもある。

 

そんななか、当然エリックの向かう場所は

ギルド『ハイドアンドシーク』の本拠地、

『コボルトの洞窟』である。

 

 

───『ワールドアイテム』を手にしたことによって、エリックの運命は少しずつ変わっていった。




次でやっと転移します。


他の方の作品を拝見させていただくと高スペックな主人公が多めな気がします。

やはり、そのほうが書きやすいのだろうか?
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