オーバーロード  ハイドアンドシーク   作:Gonざれす

7 / 10
短めの文章での投稿。

もう少しポンポン文章を考えたい
今日この頃





終わる世界

『ユグドラシル』終了まで

既に残り10分を切っていた。

 

 

本拠地に戻ったエリックは、

今まで集めたアイテムの整理をしていた。

 

 

あのあと万が一他のプレイヤーが攻めて来ても

大丈夫なように入口付近にゲイルを配置し

エリック自身も迎え撃つ準備をしていたのだが、

いつまで経っても誰も来る気配はなく、

完全な取り越し苦労に終わったようだった。

 

(まっ、当然と言えば当然だよな。

今更ギルドランク気にする人なんていないだろうし、仮に気が付いたとしても、わざわざここまで来る奴なんていないよな。最終日だし。)

 

そんなことを思いながら、

やることもなく始めたアイテムの仕分けを進める。

 

(こんなことなら真っ直ぐにFスピさんの

ところへ行けばよかった…。

なんでビビっちゃったのかなぁ、俺…。)

 

 

こういうときの判断は

いつも裏目に出る気がする。

もはや意味の無いアイテムの整理を

しながらエリックはそう思った。

 

いや、いつもというのは大袈裟かもしれないが、

人というのは悪い出来事のほうが

よく覚えてるものだ。

それはエリックも例外ではない。

 

自分自身の勘の悪さに辟易する。

 

(もしこれがFスピさんだったら、

ワールドアイテムだろうが真っ先に見せに

来てくれてるんだろうな…。)

 

 

いつも明るく、どんな時でも気持ちを

ぶれさせずに『ユグドラシル』を

楽しんでプレイしてたFスピとは対照的に、

たかがゲームの中のアイテム1つで

動揺してしまう自身に自己嫌悪しつつも、

残り少ない時間何をするかということに

脳味噌をフル回転させて考える。

 

 

しかし、どう考えても今更できることなど

ほとんど無いという答えに行き着く。

 

 

今から全速力で本拠地の入口に行けば、

ゲイルの《ワームホール》で

バザー会場まで移動し、広場に直行して

Fスピと合流できるかもしれないが、

 

あれだけの大勢のプレイヤーの中から

広場のどこにいるかもわからないFスピを

残り数分で探し出すというのは、

現実的に考えて不可能に近い。

 

Fスピのアバターは巨体なので

普通なら目立ちがちなのだが、

正直、あのくらいの大きさのプレイヤーは

『ユグドラシル』では珍しくなく、

背格好で探すのはあまり良策ではない。

 

《メッセージ/伝言》を使って呼び出すという

手もあるが、あんな形で別れておきながら

今更Fスピに動いてもらうのも忍びない。

 

(そもそも、Fスピさんだって残り僅かな

貴重な時間で仲間達と存分に楽しみたいと

思ってるんじゃないか?)

 

ネガティブな思案ばかりが心を埋めていく。

 

そんな思考の堂々巡りを繰り返すうちに

『ユグドラシル』の残り時間が遂に5分を切る。

 

 

時刻を確認したエリックは今までしていた

思考を放棄し、全てを諦めた。

 

 

──結局最後は一人か…。

そう思いながら、椅子に座り

一つ溜め息を吐く。

 

 

いや、実際はなんとなく覚悟してた最後だ。

 

だからなのか、エリックはとても落ち着いた

気分になっていた。

 

(別にいいじゃないか。Fスピさんとも

会えたし、こんな底辺プレイヤーが

最後の最後にワールドアイテムなんていう

御宝まで手に入れた。

よくよく考えれば、自分にとっちゃ

上出来な終わりじゃないか。)

 

そして、目を閉じ今までの『ユグドラシル』の

記憶を思い起こす。

 

 

色々なことがあった…。

 

友達と遊び回ってた時期、

Fスピや桜田と冒険した時期、

他のプレイヤーから逃げ隠れしてた時期、

そして、ギルドに引きこもってた時期。

 

今となっては、その全てが懐かしく感じる。

 

思えば、今日という最後の日まで

『ユグドラシル』続けてこれた最大の理由

 

それは、やっぱり楽しかったからだろう。

 

 

「そう、楽しかったんだよな…。」

エリックはそう小さく独り言を呟く。

 

そして目を開き、周りの空間を見渡すように

ゆっくりと頭と視線を動かす。

 

 

(結局、ここも誰にも見つからず仕舞いだったな

『ハイドアンドシーク』とはよく言ったもんだ。)

 

 

ギルド『ハイドアンドシーク』

 

前ギルド長・桜田ファミリアが発見するまで

人目に触れることの無かったダンジョン

『コボルトの洞窟』を本拠地としたギルド。

 

秘密基地をコンセプトとし、

その名の通り【かくれんぼ】をし続けた

そのギルドは、遂にギルドメンバー以外の

誰にも見つかることはなく

その役目を終えようとしていた。

 

 

エリックは『ハイドアンドシーク』に

入った頃のことを思い出す。

 

最初に桜田から連絡があった時は驚いたものだ。

 

「自分にぴったりな本拠地を見つけたから

エリックさんも入りましょ。」

と言われ、半ば強制的にメンバーに

入れてもらった記憶がある。

 

 

「桜田さんは自分にぴったりとか言ってたけど

どちらかというと、他のプレイヤーから

逃げ隠れしまくってる

俺にぴったりなギルドだよな。」

 

そんな自分が、さっきまで誰かと一緒に

過ごそうと躍起になってたなんて…。

 

エリックはそんな皮肉に笑う。

 

 

底辺の本拠地に、底辺のギルドマスター。

おまけに他に活動してるメンバーもなし。

 

 

「お似合いの最後か…。」

 

石造りの天井を見上げながらポツリと呟く。

 

 

残り時間はもう僅かだ。

あと20秒くらいだろうか?

 

(『ユグドラシル』も終わりか…。

次はどうしようか、Fスピさんの言うように

新しいネトゲでも始めてみるか?

なんか、良いゲームあったかなぁ?)

 

そんなことを思っているうちに

残り時間はあと5秒となる。

 

 

5………

 

4………

 

3………

 

2………

 

1………

 

 

 

視界がブラックアウトし

エリックの過ごした『ユグドラシル』は

終了する………。

 

 

 

……………………はずだった。

 

 

 

「ん?あれ?」

 

エリックは目を開ける。

 

 

そこにあったのは、見慣れた自分の部屋

………ではなく

 

見慣れた自らのギルド

『ハイドアンドシーク』の

石造りの部屋だった。

 

「なんだ?どうなってるんだ?」

エリックは思わず、椅子から立ち上がり

ぐるりと周りを見渡す。

 

やはり、ここは『コボルトの洞窟』

地下3階のブリーフィングルーム

兼アイテム格納庫だ。

 

「サービス終了したん…じゃないのか?」

 

 

『ユグドラシル』は終わらなかった。






とりあえず『ユグドラシル』編は
やっとのことで終了。

次からは遂に『異世界』編に入ります。

まだまだ様々な箇所に疎い部分があると思うので
指摘や誤字報告などもしていただけると
作者としては非常に助かります。
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