不思議なヤハタさん   作:センセンシャル!!

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※注意:今回若干程度ですが性的描写があります。苦手な方はご注意ください。

今回はフェイト視点です。これで温泉回は終了です。

17:17 注意書き追加


十一話 温泉 その四 ★

 昨日のことがあり、わたしは部屋から動くことが出来なかった。アルフは「やることがある」と朝早くから出てしまい、今はわたし一人。

 ……アルフには悪いことをした。彼女だって温泉を楽しみにしていたはずなのに、わたしの勝手な都合でフイにしてしまった。

 自己嫌悪。アルフのこともそうだし、なのは達にも心配をかけてしまったと思う。ミコトは……どうだろう。彼女の場合、よく分からない。

 ……結局、ミコトの言う通りだった。わたしはジュエルシード探索を諦めることなんてできない。それは母さんの望みであり、わたしにとって最後の希望。妥協することなんてできない。

 だから彼女達と敵対することしか出来ず……涙がにじむ。本当はそんなことしたくないのに、そうしなきゃいけない現実が辛くて、胸が苦しい。

 なのは……笑顔がとても印象に残る、平和の象徴みたいな女の子。彼女に「わたし達はもう友達だ」って言ってもらえて、本当に嬉しかった。

 ガイ……お調子者で変なことばかり言って皆を困らせるけど、でもどうしてだか憎めない男の子。それはきっと、彼の瞳がいつも優しいからだろう。

 ユーノ……最後までわたしのことを警戒してたね。それは当然かもしれない。話が本当なら、わたしは彼のものを奪おうとしている略奪者なんだから。……迷惑をかけてしまって、本当にごめんなさい。

 ブラン……優しい女の人。いつも必ず誰かのことを気にかけていて、いつの間にかサポートしてくれている、陽だまりのような女性。彼女とも、もっと話をしたかったな。

 ソワレ……わたしのことを怖がってたけど、どうしてなんだろう。ひょっとしたら、子供特有の直感で、わたしが「悪い人」だって分かっているのかもしれない。覚悟はしていたけど……やっぱり、辛いね。

 アリサ、すずか、はやて、忍さん、恭也さん。本当に、みんな、みんないい人だった。もし本当にジュエルシードが願いをかなえてくれるなら、彼らと一緒に過ごす日々が欲しい。そんなこと、出来やしないけど。

 そして、ミコト。冷たくて暖かい、不思議な不思議な女の子。もっと彼女の色々なことを知りたかった。彼女がどんなことを思っているのか、知りたかった。

 だけど……街に帰ったら、もうおしまい。次に会うときは戦場で、わたし達は……敵同士なんだ。

 

「……いや、だよ」

 

 ぽつりと、誰もいない部屋の中に、わたしの呟きが響く。返って来る答えは当然何もない。昨夜から何度も何度も繰り返して、結局何も変わらなかった。

 これが、現実なんだ。わたしが向きあうしかない、たった一つの現実。辛くて苦しくて切なくて、甘い事なんて何一つない現実。

 ……どうして、こんなことになっちゃったんだろう。もし何も知らないままだったら、こんな思いをしなくてもよかったのかな。彼らがただの敵だったら、前と同じで立ち向かえたのかな。

 知る前には戻れない。わたしはもう、彼らとの思い出を抱えながら、彼らと戦わなきゃならない。

 それがあまりにも重すぎて、まるで本当の重しになっているように、わたしの体は動かなかった。

 

 それでもわたしは、自分が思っていたよりも現金だったようで。

 

「ッ! この魔力は!」

 

 旅館の部屋の窓の向こう。そこに映る山の方から感じられる、むせ返るほど濃密な魔力の波動。それが何なのか分かった瞬間、バルディッシュを手に取って飛び出していた。

 見つけた。ジュエルシードだ。あるかもしれないとは思ってたけど、まさかこのタイミングで発動するなんて。何としてでも、ミコト達より先に回収しなければならない。

 わたしの武器は、機動力。だからスタートダッシュで負けなければ、ジュエルシードのところに辿り着くのはわたしが先。一瞬でバルディッシュを起動させ、一瞬でバリアジャケットを装着し、迷いなく飛んだ。

 そのタイミングで、アルフから念話が飛んでくる。

 

≪フェイト! 今何処にいる!?≫

≪アルフ……! ジュエルシードだ。今、発動場所付近の上空≫

≪速っ!? ってそりゃそうか、フェイトなんだから。あーもう、伝えたいことが山ほどあるのに!≫

 

 念話から伝わるアルフの声色が、明るさを持っている。何かいいことでもあったのかな?

 ジュエルシードが発動している光が目視出来た。もう間もなく暴走が始まる。わたしはすぐに暴走体に対処できるよう、バルディッシュをサイズフォームに変化させた。

 

≪ごめん、アルフ。今は念話をしている余裕がない。結界は頼んだ≫

≪あ、ちょ、フェイト! まだ重要なことが――≫

 

 アルフは伝えたいことがあったみたいだけど、今はそれどころじゃない。強制的に念話を切断して、暴走体への対処に全てのマルチタスクを集中させる。

 これが、わたしの対ジュエルシード暴走体の初戦だ。負ける気はないけど、気を抜くわけにはいかない。

 

「さあ……来い!」

 

 先制攻撃のためにフォトンスフィアを前方に4つ展開したところで、ジュエルシードは暴走を始めた。

 

 

 

 しかし、暴走体からの攻撃があまりにも意表を突いたものだったため、スフィアは役に立たなかった。

 

「下ッ!?」

 

 轟音と共に下方の地面が爆発し、巨大で長いナニカが、わたし目掛けて襲い掛かってきた。速いッ!?

 それでもわたしは何とか回避し、体勢を立て直しながら見た。

 

「……なに、これ……」

 

 背筋に寒気が走るフォルム。生理的嫌悪を催す、巨大な節足虫。それは、全長にして100mは下らなさそうな、巨大すぎる黒いムカデだった。

 先ほどわたしがいた場所を通り過ぎ、はるか上空に牙を向けている。今なお長すぎる胴体が地面からはい出しており、その周辺が砂煙を巻き起こしている。

 そのあまりの光景に一瞬呆然としてしまい――すぐに思考を切り替える。破棄したスフィアを再生成。

 

「フォトンランサー、ファイア!」

 

 4つのスフィアから一発ずつ、ランサーを撃つ。わたしの電気変換資質によって帯電した魔力は、突き刺さった場所から電撃で蝕む性質を持つ。たとえダメージは小さくとも、十分な効果が得られるはずだった。

 刺されば、の話だ。相手の防御力が高過ぎる場合、その最小限の効果も得られない。ムカデは体表を甲羅のようなもので覆われていた。

 

「大きくて、速くて、硬い……欲張り過ぎだよッ!」

 

 上空で体を折り曲げたムカデが、わたしに狙いを付けて降ってくる。再び回避し、ムカデの頭は地面に潜った。

 ……厄介な敵だ。暴走体を侮っていたわけじゃないけど、これはいくらなんでも想定外過ぎる。

 恐らく、人の手があまり入っていない山中という環境が悪かったんだろう。周りに魔力要素を吸収する存在がおらず、魔力要素が少ないこの世界でなお大量の魔力を貯蓄できてしまった。

 そのせいで、暴走体を構成する魔力は膨大となり、肥大化・硬質化している。あり余る魔力を出力に変えて、暴力的な速度で襲い掛かってくる。そう推測出来た。

 この環境が作り出した難敵。だけど……。

 

「やりようは、ある!」

 

 地面から顔を出した巨大ムカデを紙一重で見切り、その体に沿って飛ぶ。そして体の節の部分に向けて、サイズフォームのバルディッシュを振るった。

 

――ギィィィィッ!

 

 刃が通った感触とともに、ムカデが甲高い耳障りな悲鳴を上げた。予想通り、つなぎ目の部分は装甲が浅かった。

 もし全身が完全に硬質化していたら、曲がることすらできないはずだ。そうではなく、こいつは方向転換してわたしに狙いを定めてきた。だったら、曲がるための継ぎ目は必ずある。

 そしてつなぎ目の部分なら攻撃が通る。遠距離からの射撃で当てるのは無理だけど、近接なら……!

 

「はああああっ!」

――ギ!? ギイイイ!!

 

 何回も何回も斬りつける。そのたびに巨体が波打ち、わたしを巻き込もうとしてくる。だけどわたしの機動性は、この程度のことで当たるほどじゃない。

 やれる! そう思った直後のことだった。既にわたしの目の前に敵がいるはずなのに、またしても地面が爆発した。

 

「っ!?」

 

 二体目!? 一体目の暴走体に集中していたわたしは、突然現れた二体目に反応できない。予期せぬ事態だった。

 ソレは、真っ直ぐわたしを狙っていた。その巨体にわたしの小さな体を飲み込もうと。黒い虫の口腔に並ぶ鋭い牙と、底なしの闇が視界に広がった。

 ……やられる。

 

「フェイトオオオオッッッ!!」

 

 そう思った瞬間、わたしの体は射線から外れた。先行したわたしに追いついた頼もしい使い魔に抱かれて。

 

「アルフ! 助かっ……!? 腕っ、傷が!」

「なぁに、こんなもんかすり傷だよ!」

 

 わたしを抱きしめて攻撃を回避したアルフは、しかし完全回避とはいかなかったらしい。右の二の腕が切られ、血が出ている。決して浅い傷ではなかった。

 アルフの表情も痛みをこらえているのが分かるほど。わたしが、油断したせいで……。

 

「フェイト! 下を向くな! 戦闘中に敵から目を逸らすなって教えられただろ!」

「っ。そうだね。ごめん、ありがとう」

「気にすんなって。主を支えるのが使い魔の役割だよ」

 

 アルフはいい子だ。本当に、こんなわたしにはもったいないほど……。

 その思いに少しでも報いるため、わたしは目の前の二体を見据える。長く巨大な体を絡ませ合って、気性荒く雄叫びを上げている。

 

「二体ってのが厄介だね。一体でもてこずりそうなのに。どっちにジュエルシードがあるかって分かるかい?」

「……両方から感じるね。どういうことだろう。まさか二個あったってわけじゃないだろうし」

 

 もしこの場にジュエルシードが二個もあったら、被害はこんなものでは済んでいないはずだ。共鳴を起こして、次元震を起こしていたっておかしくない。

 となると考えられるのは、気配を分散させて狙いを絞らせないようにしている? 暴走体に、そこまでの知性があるんだろうか。だけど……さっきは一体目を囮にしていた。全く知性がないわけじゃない。

 だとしたら、恐らくジュエルシードがあるのは二体目の方。……さっき体を絡ませてたのは、どっちがどっちか分からなくするためか。

 

「両方倒すしか、ないね。アルフ、攻撃は出来る?」

「射撃なら何とか。けど、あれはそんなんじゃ傷一つつかないだろ?」

 

 アルフの利き腕が封じられたのが痛い。彼女の本分は、狼の膂力を活かした体術だ。射撃は牽制程度でしかない。そして、あの暴走体が射撃魔法じゃ牽制にもならないのは、既にわたしが確認している。

 ……どうすれば、あの二体を相手に出来る? 速度で翻弄すれば……アレも動きはかなり速い。一体なら対応できるけど、二体同時となると……。

 マルチタスクで戦術を構築しようとするわたしの頭に、アルフが左手を置いた。

 

「大丈夫。あたしがこれでも、今日は攻撃手段がたくさんあるんだからさ」

「……え?」

 

 どういうことか。そう聞こうとした瞬間、桜色の閃光が暴走体に向けて叩き込まれた。耳障りな悲鳴を上げて、地面に倒れ込む一体。もう一体は、困惑したようにのた打ち回った。

 閃光の発生源に目をやる。そこにいたのは、白いバリアジャケットに身を包み、左手にデバイスを構えた魔導師。

 

「なのは……」

「やっと追いついたの! なのはも一緒に戦うよ、フェイトちゃん!」

 

 「一緒に戦う」。その言葉で、胸がズキリとした。涙が溢れそうになり、ぐっとこらえる。

 

「……必要ない。わたし達は敵対者。一緒に戦っても、結局ジュエルシードは奪い合うことになる。それなら、一人でやった方がいい」

 

 「友達」と言ってくれた女の子。そんな彼女に、こんなことを言うなんて。わたし……嫌な子だな。

 でもきっと、この方が彼女は傷つかないから。なのはが傷つかないで済むなら……わたしは悪者でいい。

 わたしは彼女から目を離し、改めて暴走体の方を見る。……あの砲撃魔法で傷一つない。やはり、硬い。

 それでもわたしは、やらなきゃならない。バルディッシュを持つ腕に力が入り――顔を掴まれ、なのはの方を向かされた。

 

「そんな思ってもないことを言うのはこの口なの?」

「にゃ、にゃにょは?」

 

 彼女のデバイス――レイジングハートを宙に浮かせ、両手でわたしの頬をぐにぐにしてきた。痛くはないけど、しゃべりづらい。

 

「フェイトちゃんがどう思ってるかは、アルフさんから聞かせてもらったの。わたしはフェイトちゃんの友達として、フェイトちゃんの助けになりたい。だから、ここにいるの」

「にゃの、は……」

 

 彼女はわたしを真っ直ぐ見て、曇り一つない目で見て、真っ直ぐに言葉をかけてきた。あまりにも眩しくて、目を逸らしてしまいそう。だけど顔が掴まれてるから、逸らすこともできない。

 アルフ……用事って、そういうことだったんだ。本当に、主思いの素晴らしい使い魔。わたしにはもったいないほどに。

 だってわたしは、アルフがそれだけのことをしてくれたのに、首を縦に振ることが出来ないんだから。

 

「それでも、わたしは……」

「うーん。やっぱりなのはじゃミコトちゃんみたいに理屈で説得ってできないの。とりあえず、共闘は決定事項! フェイトちゃんの反対意見は関係ありませんっ!」

 

 なのははわたしの顔から手を離し、レイジングハートを手に取った。どうあっても一人で戦わせてはくれないらしい。

 先のことを思うと気が重くて……だけど友達が来てくれたという事実が、嬉しくもあった。やっぱりわたしは現金な性格みたいだ。

 

「……足は引っ張らないでね」

「確約できません! なのはは戦いは素人なの!」

 

 自信満々に言うことじゃないよ。だけど何だかおかしくて、くすりと笑ってしまった。

 

 

 

 戦闘は苦手というなのはには後方支援を任せた。二体の暴走体を同時に相手にしようとするから大変なのであって、一体ずつなら対応できることは分かっている。

 だから、砲撃魔法で一体を釘付けにしてもらう。その間にわたしが一体を片付け、それが本体ならそこで終了。偽物なら、残った本体を二人で仕留める。それがわたしの打ち立てた方針だ。

 そして……砲撃という一点に置いては、なのはは間違いなく天才だった。

 

「まだまだいくよー!」

『Devine buster.』

 

 桜色の砲撃が、過たず暴走体の一体を射抜く。大出力の砲撃を受けて、巨大ムカデは木々をなぎ倒しながら倒れた。

 あんな威力はわたしには出せない。そして、あんな次々に撃つほどの制御も出来ない。もしわたしが相手だったら……当たりはしないだろうけど、プレッシャーは大きそうだ。

 なのはが一体を釘付けにしてくれている間に、わたしはもう一体の方に肉薄する。もちろん近づければ切り裂かれるのが分かっている暴走体は、ただでは近付かせてくれない。

 

――ギィィィィィィッッッ!!!

「キモイの!?」

「うわっ、ありゃ確かにキモい!」

 

 これまで動きのなかった節々についた脚が、一気に動き出した。それらの先には鋭い爪がついており、当たればわたしではひとたまりもない。

 だったら、当たらなければいい。脚の本数が多かろうが、相手は一体でしかないのだ。わたしにかわせない道理はない!

 

「はああああああっっっ!!」

 

 気合とともに加速し、前後左右からバラバラに襲い掛かってくる多脚を、飛行制御で失速させずに回避する。そして胴体の継ぎ目に近づき、一閃。

 

――ギィィィッッッ!?!?

「フェイトちゃん、凄いの!」

「当たり前だよ! 何せあたしのご主人様……フェイト!?」

 

 油断はなかった。ただ、ムカデがまだ攻撃方法を全て見せていなかっただけだ。まさか、火炎放射まで持っているとは思わなかった。

 体を変な形に曲げたムカデは、牙の並んだ口から、わたしに向けて炎を吐いたのだ。わたしは思わず腕で顔をかばい、痛みに耐えるために目を瞑った。

 ……だけど熱はいつまで経っても襲っては来ず、目を開けると、わたしの前に角錐の形をした赤紫色のシールドが展開されていた。

 このシールドは、この魔力光は……!

 

「へへ……「ディバイドシールド・改」。またまたやらせていただきましたァン!」

「ガイッ!」

 

 お調子者な彼が、わたしの横に立って、炎の奔流を完全に受け流していた。こんなシールド、初めて見た。

 彼の肩には、ばつが悪そうな表情のフェレットもどき。彼も魔法陣を展開しており、恐らくこの場に割り込んできたのは彼の転送魔法だ。

 

「……僕はまだ、君を認めたわけじゃないからな。ただ、ミコトさんに考えがあるみたいだから、それに従ってるだけなんだからな」

「えっ……」

 

 ユーノの言葉に、思わず目を剥く。ミコト。最後までわたしと敵対関係であることを忘れなかった、不思議な女の子。彼女が、わたしを助けるために……?

 

「ユーノー。男のツンデレ、キモーい。シールドが萎えるわー」

「誰がツンデレだよ! っていうかその言い方やめろ! 今気付いたけど、まさかそのシールドのモデルって……!」

「おうよ! ちょっとポリゴンみたいになっちゃってるけど、コンd」

「ほんっといい加減にしろよなキミはぁ!?」

 

 「うがあああ!?」と頭を抱えるユーノ。対照的に「ハッハッハ」と笑うガイ。暴走体のすぐ近くだというのに、彼らの日常過ぎて力が抜けてしまう。

 ふっ、とわたしの体が抱き上げられる。びっくりして振り返ると、そこには浴衣姿の恭也さん。

 

「こら、女の子を放置して漫才してるんじゃない。二人とも、フェイトを連れてすぐに転送しろ」

「は、はい! って、恭也さんは!?」

「ちょっと本気出す。巻き込まれないように離れてろってことだ」

 

 「ええー」と言いながら、ガイがわたしを受け取り、転送魔法が発動する。座標は、暴走体からつかず離れずの上空。

 わたしは空中に展開された魔法陣の上に乗り、……その非常識な光景を目の当たりにした。

 

「おおおおおおおおおおっっっ!!!!」

 

 恭也さんが巨大ムカデの体表を駆けながら、脚の攻撃を避けながら次から次へと切り裂いて行っている。魔力は一切感じられないので、完全な身体能力のみの動きだ。

 ……あれ、絶対わたしより速いんだけど。どうなってるの?

 

「あの人も順調に人間やめてってんなぁ」

「僕はこの世界に来てから、管理世界の常識の儚さを知ったよ。この世界ファンタジー過ぎ」

「ところがどっこい……夢じゃありません……! 現実です……! これが現実……!」

「現実じゃなかったらこんなに疲れてないよ」

 

 「カカカ」と謎の笑いをするガイに、ユーノは呆れのため息をついた。恭也さんは巨大ムカデの体を上り続け、とうとうその顔(?)を蹴り宙を舞った。

 その瞬間に、体を回転させて鋭い針を投げる。わたしとの戦いのときにも使った攻撃だ。それらは過たず暴走体の目を射抜き、痛みに耐えかねたか暴走体がのた打ち回る。

 

「ユーノ!」

「分かってます! トランスポーター!」

 

 そのままでは地面に叩きつけられてしまう恭也さんを、転送魔法で魔法陣の上に回収。あれだけの動きをしたのに、恭也さんは軽く息をついたのみだった。……本当にこの人何者なんだろう。

 

「恐らく、あっちは外れだ。フェイトが付けた傷も、俺が裂いた脚も再生しなかった。本物ならジュエルシードの魔力で再生するはずだろ?」

「……あ、そうか!」

 

 何故恭也さんがあんな無茶をしたのか理解した。どちらを叩けばいいかをはっきりさせるためだったのか。わたしなんかよりもずっと、戦闘思考が出来ている。

 わたしは魔導師だから、本来は戦うだけの存在ではないけれど……戦う者としては、圧倒的に恭也さんの方が上だった。これは……敵わないわけだ。

 ともかく、やるべきことは分かった。なのはと二人がかりで、もう片方を倒してジュエルシードを封印すればいい。そのために飛行魔法を発動しようとして、恭也さんに止められた。

 

「フェイトは少し休んでてくれ。なのはとアルフが来るまで、一人であれを相手にしていたんだろう。相当消耗しているはずだ」

「それは、そうですけど……でも!」

「大丈夫だ。心配はいらない。……だよな、ミコト」

 

 恭也さんが声をかけた方向に、わたしは弾かれたように視線を向けた。

 そこには、闇夜のようなドレスに身を包んだミコトが、エールを右手に逆手で持ち、背中にこうもりのような羽を展開して浮かんでいた。

 彼女に対し、色々と思っていたことがあったはずなのに。……その姿を見た瞬間安堵して、そして妖艶な幼さに見惚れてしまった。

 

「ええ。この状況なら、オレでも外さない。一撃で仕留めてやりましょう」

「頼もしい限りだ。……フェイト」

「はっ!? は、はい!」

「何を慌ててるんだか。ミコトがジュエルシードを露出させたら、暴走体の再生が始まる前に、君が封印するんだ」

「え!? で、でも……」

「なのはからじゃ距離が遠いし、ミコトさんだと接触しないと封印出来ないんだ。不本意だけど、今は君に譲る。預けるだけだからな!」

「う、うん。分かった……」

「ったくもー、ほんと頭固い師匠だよなー。俺だったら可愛い女の子のお願いなら二つ返事でOKしちゃうのに」

「君がそんなだから僕がしっかりしなきゃいけないんだよ、バカ弟子」

 

 どういうことかは分からなかったけど、とにかくジュエルシードの封印を任されたということだ。……余計なことは考えずに、それだけに集中しよう。

 ユーノが作った魔法陣の上で、バルディッシュをシーリングフォームに変化させる。横ではミコトが左手を暴走体の方に向けていた。

 あの黒いドレスが、ミコトのバリアジャケットなのかな。だとしたら……わたしとお揃い、だね。

 

「やるぞ、ソワレ」

『うん。ル・クルセイユ』

 

 ミコトの方からソワレの声が聞こえた。……何処にいるんだろう。もしかしたら、ミコトとソワレが協力して使う魔法? そのために通信を行っている?

 分からないことは多いけど……今は、ミコトの本気を見せてもらおう。あのときは見られなかった、ミコトの本気を。

 暴走体の方に、黒い粒のようなものが集中していった。あれがミコトの魔力光かな? 黒、か。……なんでだろう、ミコトには黒がとてもよく似合っている気がする。

 黒はやがて暴走体を覆い尽くすほどの球体となる。暴走体も異常を感じ取ったのか逃げようとしているけど、なのはの砲撃魔法はまだ続いている。完全にその場に釘付けとなっていた。

 そして、ソワレの声が最後の一節を紡ぐ。

 

『エクスプロージオン』

 

 その瞬間、世界が震えた。そうとしか形容できない音が、結界の中を駆け巡った。

 そして暴走体は、「弾け飛ぶほどの力で圧縮されていた」。自分の目を疑った。射撃魔法で傷一つつかず、なのはの砲撃魔法でも牽制程度が精一杯だった装甲ごと押し潰してしまったのだ。

 なんという威力。もしあの戦いのときにこれを使われていたら、命はなかっただろう。今の様子だと、使用にはかなり制約があるだろうから、そう簡単には使えないと思うけど。

 圧縮で弾け飛んだ暴走体の中から、光り輝く小さな何かが現れる。ジュエルシード。恭也さんの読み通り、あっちが本体だったみたいだ。

 わたしは手早く封印すべく、呪文を紡ぐ。

 

「アルカス・クルタス・エイギアス。封印すべきは忌まわしき器「ジュエルシード」」

 

 バルディッシュのコアから、わたしの魔力光である金色の帯が伸びる。それがジュエルシードを絡め取り、シリアルの刻印を浮かび上がらせた。

 シリアルは……XVIII(18)。

 

「ジュエルシード・シリアル18……封印っ!」

 

 一瞬の激しいスパーク。それでジュエルシードは封印を完了し、暴走体は初めから存在しなかったかのように、溶けるように消滅した。

 吸い寄せられたジュエルシードにバルディッシュのコアを近付け、収納する。……これで、ようやく一つ。

 

 そう思った瞬間、膝から力が抜けてしまった。自分で思っていた以上に消耗していたみたいだ。

 

「フェイト!?」

「フェイトちゃん!」

「っ! ……大事はないみたいだね」

 

 恭也さんとガイ、ユーノもわたしに駆け寄った。ミコトはユーノの魔法陣の上に乗り、エールを待機状態に戻した。

 

「スクライア。ここでは落ち着けんだろう。とりあえず、山の入り口付近に転送しろ。なのは達に念話で連絡を入れるのも忘れずに」

「は、はい! ……あ、あれ? 今ミコトさん、なのはのこと名前で……」

「余計なことを気にしている暇があるなら、テスタロッサの体調でも気にしてやれ」

「わ、分かりました! トランスポーター起動!」

 

 魔法陣が輝きを増し、わたし達は緑色の光に包まれて転送された。

 ……ずるいよ、なのは。

 

 

 

 

 

 転送されて待つことしばし、なのは達が到着した。それと同時、アルフが結界を解いて、世界が色を取り戻す。

 なのはは地面に降り立つと、すぐにバリアジャケットを解除してレイジングハートを待機形態に戻した。それは、彼女は本当にわたしと争う意志がないということ。

 わたしは……まだバリアジャケットを解けない。彼女がそう思ってくれたとしても、現実にわたし達が敵対していることに変わりはない。それに、ミコトもドレス姿のままだ。

 

「そう警戒するな。君に余力がないのと同じように、オレ達にも余力がない。君の答えがなんであろうと、今は戦いになり得ない」

「……だけど、あなたはバリアジャケットを解除していません。油断は、出来ない」

「フェイト、それは……」

「アルフ。顔を合わせる機会が得られたのだから、説得はオレがやる。それでいいな」

「……分かった。任せるよ、ミコト」

 

 アルフは、ミコトを信頼しているみたいだ。……わたしだって。わたしだって、こんな敵対関係さえなかったら……。

 心の中に生まれる荒波を冷たい無表情の仮面で抑え込み、ミコトを見る。彼女もまた、いつも通りの仏頂面だった。

 

「オレがこの格好を解除しないのは、それがオレの力に関連した事柄だからだ。解除すれば、オレの力を一部教えることになる。これは、敵対関係を続けている限り許容できない」

「……理屈は分かりました。続けてください」

「そこで提案だ。停戦、あるいは互いの譲歩のための会談を開きたい。時間は二日後の午後5時から、場所は八神邸にて。この条件を受けてもらえるなら、この格好を解除する」

 

 ……どういう、こと? ミコトは、ずっとわたしとの敵対関係を忘れてはいなかった。これまでの様子から、彼女が情にほだされて動くなんてことはありえない。なのに今、停戦か譲歩という歩み寄りの姿勢を見せた。

 アルフは、一体彼女に何を話したの? 何が彼女を動かしたの?

 

「……質問をさせてください。どうして急に、そんな掌を返すようなことを?」

「君が戦いたくないと思っていると聞いたからだ。無駄な戦闘を避けられるなら、それに越したことはない」

「だけど双方がジュエルシードを求めている限り、感情なんか関係ない。あなたはずっと、わたしにそう言ってきました。今はわたしもそう思っています。まさか今更そうではないとでも言うつもりですか」

「いいや、正しい。オレもそう思っている。だが、歩み寄ることで得られるメリットがあり、またそれが出来る可能性があるならば、かけるだけの価値はある。そういう判断だ」

 

 つまり彼女にとって、わたしと戦わずに済むということに価値が発生した、ということらしい。

 それと、と彼女は言葉を続ける。彼女らしくなく、目線を逸らし、恥ずかしいのか頬に赤みが差している。

 

「……大事なものを傷つけられる痛みというのを、計算に入れていなかった。それに気付かされた、と言ったところだな」

「それって……」

「なのは、頑張りました!」

 

 横で話を聞いていたなのはが、エッヘンとない胸を張る。……そっか、それでミコトは、なのはを名前で呼ぶようになったんだ。

 少し……ううん、かなり悔しかった。

 ミコトは咳払いをして、姿勢を戻す。総括。

 

「こちらにも失いたくないものというのはある。戦えば、否が応にも何かを失う可能性が発生する。それは、避けられるなら出来る限り避けたい」

「そして双方が戦いを避けたいと思っているなら、話し合いによる解決も可能である。そういうことですね」

「理解が早くて助かる。もっとも、確実に解決できるわけではなく、せいぜい一時的な停戦程度が関の山だと思っている。戦わずに終戦させられるかどうかは、その後次第だ」

 

 それは……その通りだろう。お互いがジュエルシードを求めているという衝突原因をどうにかしない限り、この争いが終わることはない。

 だけどミコトは言った。「戦わずに終わらせたい」と。わたしと同じ気持ちで、いてくれた。

 そのことが嬉しくて。冷たい仮面に罅が入る。悲しみではない感情で、視界がにじむ。零れ落ちるのを耐えるのに苦労した。

 

「……分かりました。その提案を飲みます。話し合いましょう」

「ありがとう。受け入れてもらえて、本当に助かった」

 

 そう答えたミコトの表情は、本当にほんの少しだけ、緩んだ気がした。

 

 そうしてわたしは教えてもらった。ミコトが魔導師ではないこと。わたし達の知らない、彼女が作り上げた"魔法"を使うこと。

 彼女が纏っていたドレスの正体。それはミコトによく似た少女、ソワレだった。"夜の召喚体"という、ミコトが生み出した存在だと言っていた。

 エールも同様で、デバイスではなく"風の召喚体"。ブランは"光の召喚体"で、全て前述の"魔法"により生み出された者達だった。

 その事実は、少なからずショックだった。ブランもソワレも、人と何ら変わりない姿をしていて、皆そう扱っていたから。わたし達で言うところの魔法プログラム体だとは思っていなかった。

 ショックだった……けど、受け入れられたのは、皆が彼女達の個性を、一人の個人として受け止めていたからだと思う。生まれや存在がどうであれ、そこにある人格は嘘ではない。

 エールは、おしゃべりで悪戯好き。ブランは、優しくて暖かい。ソワレは、甘えん坊で可愛らしい。彼らは正体が知られても、接し方を一切変えなかった。

 だから、結局「そうというだけの事実」でしかないんだろう。ミコトにしても、魔導師ではないと言われて納得し、わたしの中での印象は全く変わらなかった。

 不思議で、ちょっと気になる女の子。それが、わたしにとっての八幡ミコトだった。

 

 

 

 二日後にはやての家で会談を開く約束をし、チェックアウト時間を過ぎたわたし達は街へ帰る――はずだった。

 

「あ゛あ゛~、生き返るぅ~」

「アルフ……品がないよ」

 

 この宿はチェックアウト後も、その日のうちなら温泉に入ってもいい制度だったらしく、昨日も今朝も入りそびれたアルフが、「それならあたしも温泉に入りたい」とごねた。

 結果、わたし達はこうして温泉に浸かっていた。……ミコト達とともに。

 なんだろう、これ。物凄くいたたまれない。「話し合いましょう(キリッ)」とかやって別れた後に、結局温泉で合流してるって……。

 

「まあ、こんなこともある」

 

 長い髪をタオルでまとめて温泉に浸かるミコトは、こともなげにそう言った。今はリラックスタイムなので、ジュエルシード絡みの話を一切していない。

 あと、何となくなんだけど、ミコトとの間にあった壁が一つなくなった気がする。一先ず敵対関係でなくなるかもしれないからかな。

 男湯の方からは時折エールの悲鳴。そういえば昨日も「マッチョ怖い」とか言ってたっけ。男湯では一体何が……。

 

「なんや、わたしらは蚊帳の外で分からんけど、フェイトちゃんが元気になったみたいでよかったわ」

「なのはから念話のこと聞いて心配したんだからね? 今度からちゃんとあたし達のこと頼らなかったら、許さないんだから!」

「皆、ごめんね。ちょっと色々抱え込んじゃって。でも、もう大丈夫だから」

「そうみたいだね。……やっぱり、ミコトちゃん関係?」

「どうしてそうなる。今回の件はテスタロッサの内面の問題だ。『私は悪くないわ』」

「やめなさいっ! ほんっとそれ気持ち悪いからっ!」

 

 ミコトの女言葉で背筋がゾワゾワした。はやては耐性があるのか、引いている皆に苦笑していた。

 ザブンと誰かが温泉に飛び込む。ソワレだった。

 

「こらー、ソワレちゃん! 温泉はプールじゃないんだよ! そんなことしちゃダメなの!」

 

 一拍遅れて、なのはも入ってきた。ソワレの体を洗い終わったみたいだ。何故だか今日の彼女は、ソワレの世話を焼いていた。

 さらに遅れて、ブランも入ってくる。今この場にいる全員が温泉に浸かっている。ふぅー、と全員が気持ちよさそうなため息をついた。

 と、ソワレがミコトの方にザブザブと近付いてきた。やっぱりマスターの近くが安心するのかな?

 そう思って、幼い少女を皆で微笑ましく見ていたら。

 

 

 

「ミコト、ミコト。ソワレ、おっぱいほしい」

『ぶふぅ!?』

 

 意表を突いた発言に、八神家以外の全員が噴き出した。な、何!? どういうことなの!?

 

「あー。ソワレの甘えん坊が始まったなぁ」

「ソワレちゃん、ああやってミコトちゃんやはやてちゃんに甘えるんですよ。今回はミコトちゃんだったみたいですね」

 

 と、はやてとブランが解説を入れてくれる。甘えるって……あれでいいの!?

 いや、確かにソワレは、実際には生まれて一週間程度しか経ってないはずだ。というかブランもそう変わらないはずだから、むしろソワレの方が歳相応な反応ってこと?

 だけどソワレは、見た目で言えば5、6歳ぐらいだし、ミコトの方は8歳の子供だし、色々間違ってる気がするんだけど!?

 周囲が大混乱する中、ミコトとソワレはマイペースに会話する。

 

「ソワレ、何度も言うがオレはおっぱいが出ないんだ。君も分かっているだろうに」

「ミコトのおっぱい、あんしんする。きょう、ソワレ、がんばった。ごほうび……ダメ?」

「……はあ。子供のこういう顔は、本当に卑怯だ。断れるわけがないじゃないか」

「いつものことやん。堪忍してやり」

「人前でやることじゃないと思うが。……まあ、女しかいないのが救いと言えば救いか」

 

 観念したミコトは、両腕を開いてソワレに「おいで」と声をかける。ソワレは、嬉しそうにミコトの胸に抱き着いた。

 そして小さな口で、ミコトの小さな胸の先端の、淡いピンクに吸い付く。

 

「……んっ」

 

 刺激でミコトがピクリとして、小さく吐息を漏らす。……うわぁ、うわぁ……。

 皆、顔を真っ赤にして何も言えない。わたし達には刺激が強すぎる。あ、なのはが目を回して倒れた。

 時々吐息を漏らすミコトの、抑えられた艶めかしい声。上気した朱い頬。慈愛に満ちた潤んだ瞳。

 子供が子供に授乳する。いや実際には何も出てなくて、ソワレが吸い付いてるだけなんだけど。背徳的な何かがあって、異様な淫靡さを感じる。

 それでいてミコトの顔は、間違いなく「母親」だった。腕の中の我が子を慈しむ、愛おしそうな顔。

 それが何だか……羨ましかったんだ。ソワレのことが、羨ましかったんだ。

 

 ――え? ちょっと待って? それって、わたしもソワレみたいにしたいってこと? わ、わたしもミコトのおっぱいがほしいってことなの!?

 嘘っ!? そ、そんなはずはないよ! だ、だってわたし、ミコトと同い年ぐらいのはずだもん! そんな赤ちゃんみたいな真似はしないよ!?

 女の子同士で、その、え、エッチなことする人たちはいるっていうけど! わたしはノーマルだよ!? ノーマルのはずだよ!!?

 落ち着け、落ち着くんだ! 他の女の子たちを見て、自分はノーマルだって確認するんだ!

 なのは! 目を回してて可愛いけど、そういう対象としては見てない、純粋に可愛いだけ!

 アリサ! 快活で負けん気の強い子が、今はしおらしくて女の子らしいそのギャップが可愛いけど、以下同文!

 すずか! 何でそんなに目力強くして見てるの!? 怖いよ!

 はやては余裕そう! ブランは困ったように笑ってるけど顔がちょっと赤い! ソワレ、そこ代わって……じゃないから!

 あああ! わかんないよ! 自分で自分が何を思ってるのか分からないよぉ! アルフは何で呑気な顔で温泉楽しんでるのぉぉぉ!?

 

 その後、ソワレが満足してミコトから離れた後も、わたしは顔が真っ赤のままだった。皆から「大丈夫?」と聞かれたけど、「うん……」としか答えられなかった。全然大丈夫じゃない。

 

 

 

 

 

 帰りのバスの中で。

 

「ねえ、アルフ。わたし、ノーマルだよね。ちゃんと男の子のことを好きになれるよね」

「ふぇ、フェイト? ほんとに大丈夫? まだ顔真っ赤だよ?」

「あうぅぅぅ……。わたしは赤ちゃんじゃないのに……なんでぇ……」

 

 わたしはアルフに、何度も何度も自分のアイデンティティを確認しようとした。結局、答えは何も得られなかった。

 

 

 

 ――わたしがミコトに求めていたもの。それが「母性」だったことに気付いたのは……この事件が終わった後のことだった。




あれれー(Bah Law) 戦闘回だと思った? 残念、微エロ回でした!
直接的な表現はなるべく避けましたが、ひょっとしたらアウトかもしれないので、その場合はさらに表現をボカして修正します。R-18にはしない方向で。

答え合わせの回。フェイトがミコトに対して持っていたのは、「友達になりたい」という感情ではなく「お母さんのような人」という印象でしたという話。
でもどっちかっていうと、厳しさからしたらお父さん役だと思うんですよね。母性と父性が両方そなわり最強に見える。

ジュエルシード暴走体(強)のモデルは、大型仮面虫「イヤヤモウ」もとい「ツインモルド」です。斬られた際の悲鳴を「イヤヤモウ」にしようか迷いました。戦闘シーンがギャグそのものになるからやめましたけど。

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