不思議なヤハタさん   作:センセンシャル!!
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十二話 会談

 高町家に着いて行った温泉旅行は終わり、平日へ。世間一般は連休という非日常から、学校や仕事という日常へ戻っていく。

 オレ達の場合は、非日常からまた非日常、だろうか。ジュエルシード集めが終わるまでは……いや、はやての足が治るまでは、オレは非日常から抜け出せない。

 先日テスタロッサが封印したもので、封印済、召喚体に変換済のジュエルシードは最低9個。全部で21個なので、残りは12個以下だ。

 うち2つまでは、オレが見つけることが出来たなら、オレのものとなる。そうすれば召喚体を作ることが出来、はやての足の異常の原因を特定することにつながる。

 そのためにも、障害は排除しなければならないのだが……先日なのはに指摘された件は、結構堪えた。

 確かに彼女の言う通りなのだ。テスタロッサとアルフの事情を一切配慮せず、こちらの都合だけで好き勝手やってしまったら、向こうだって手段を選ばない可能性はあるのだ。

 もしそれではやてに危険が及んだら。彼女達は既にはやてを知っている。その気になれば、魔手を伸ばすことは可能なのだ。

 無論、あの二人が自主的にその選択肢を選ぶのは、正直言ってありえないと思っている。彼女達は、本質的にはなのはと同じ。お人好しの子供だ。自分から進んで人を傷つけることはありえない。

 だが、二人のバックに黒幕がいることはもう確定だ。場合によっては、その黒幕こそが今回の事態を引き起こした張本人だという可能性もある。いや、その可能性は十分以上に高い。

 考えてみたら、ジュエルシードが海鳴にばら撒かれてからテスタロッサ達が動き出すまで、間がなさ過ぎるのだ。まるでここにジュエルシードがあることを最初から知っていて、ピンポイントで狙ってきたかのようだ。

 そんな、他者の所有物を計画的に略奪しようとする人間が、他人を傷つけることを厭うだろうか。そこがこちらの弱点だと知ったら、命令してでもやらせることは容易に想像が出来る。

 だから、テスタロッサとは停戦しなければならない。テスタロッサの回収を止めるわけにはいかない。それをしたら、黒幕にこちらの動きを教えることになってしまう。なるべく今まで通りに見せる必要がある。

 そして、ジュエルシードを集め終わるタイミングで、テスタロッサをこちら側に抱き込めれば理想的だ。オレの取り分以外の全てのジュエルシードが、最初の契約通りスクライアに渡ることになるからだ。

 黒幕の処遇に関しては……まあ、管理世界の治安組織にでも任せればいいか。それ以上のことは、それこそオレの知ったことではない。この世界のこと以上にどうでもいい話だ。

 

 

 

 ともかく、ここから先をオレ達にとって有利に進めるためには、知る必要がある。黒幕の正体と、その目的を。

 それを聞き出すためには、まずテスタロッサと停戦協定を結び、一時的な協力関係を築き上げる必要がある。

 そのために、始めよう。八神家会談を。

 

「本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。司会は不肖ながら八幡ミコトが務めさせていただきます」

「ミコちゃん堅いでー。全員顔見知りの訳知りなんやから、もうちょい軽めでええんちゃう?」

 

 今回の事件の関係者全員が集められた八神家のリビング。先日のジュエルシード封印の折、伝えた日時の通りに、彼らはやってきた。

 オレの始まりの挨拶に、はやてが軽い茶々を入れる。残念ながら今は真面目な話をしているので、それには取り合わない。

 

「最初に、今回の事件のおさらいをし、共有しておこうと思います。……スクライア」

「分かりました。今ご紹介に与りました、ユーノ・スクライアです。今回の事件――仮称・ジュエルシード事件の発端についてお話します」

 

 内容は、以前聞いていた通りだ。

 とある世界の遺跡発掘時に発見したロストロギア「ジュエルシード」。

 これを第1管理世界「ミッドチルダ」への渡航船で運搬している最中に、何者かによる次元跳躍攻撃を被弾。船体に空いた穴より、ジュエルシードの積荷が脱落。

 それは第97管理外世界……つまりはこの世界のここ海鳴市上空へと流れつき、バラバラになって墜落した。これが、今から約一ヶ月前の出来事。それから一週間後。

 

「ジュエルシードの漂着世界を突き止めた僕は、この世界に被害が出る前に封印しようと挑戦、失敗。怪我を負って動けなくなったところを、広域念話を聞きつけたガイとなのはに助けられました」

「……ここまでで、いくつか質問があります。よろしいでしょうか」

「許可します。スクライア、秘匿はせずに正直に答えてやれ」

「……分かりました」

 

 テスタロッサの挙手で、一旦説明を止め、質疑応答を開始する。

 

「まず最初に分からないのが、何故あなたが時空管理局に連絡をせず、一人で封印・回収作業を行おうと考えたか。ロストロギア関連の事件の場合、市民は管理局に連絡する義務があると記憶しています」

「それは、ここが管理外世界だからだ。その義務は管理世界におけるもので、管理外世界の場合は推奨となっている。……けど実際のところ、管理外世界で起きた事件に管理局が手を出すことはほとんどない」

 

 次元世界というと規模を想像しにくいかもしれないが、地球のような惑星単位よりもさらに手広くやっていることだ。そうなると、人の手ではどうしたって足りない部分が出てくる。

 故に、管理局という組織は管理世界、つまり自分達のシマを優先し、管理外世界の危険など二の次ということだ。実に合理的な集団である。

 

「管理局の動きを待っていたら、それこそ何年先になるか分からない。だから僕は、自力での封印を試みたんだ。……結局、失敗したけど」

「……分かりました。それでは次の質問です。なのはが持っているデバイスは、元々あなたのものだったと聞いています。あれだけの性能のデバイスを使って失敗したというのは、どういう要因があったんでしょうか」

「それは……僕では、レイジングハートを起動できなかったんだ」

 

 スクライア曰く。レイジングハートも実は発掘品であり、その概要は一切分かっていない。レイジングハートの記憶ストレージもそのときから開始されており、彼女の記憶もあてにならない。

 そして起動パスワードは分かっていたのに、スクライアがそれを口にしてもエラーが発生して起動しなかった。彼は、恐らく適性が必要だったのではないかと推測した。

 

「僕が自由に出来たデバイスは、レイジングハートただ一つ。だから僕は、身一つで封印作業を行わなければならなかった。それが失敗につながった原因だ」

「……分かりました。あなたほどの凄腕の魔導師が封印できなかったというのが腑に落ちませんでしたけど、それで納得できました」

 

 ちなみに今話題に上がったなのはの方はというと、ちんぷんかんぷんという表情で冷や汗をかいていた。感覚派で実践派の彼女は、魔法に関する知識の貯蓄を一切してこなかったのだろう。自業自得である。

 

「あと、ダメ元で聞きますが、次元跳躍攻撃の犯人は分かっているんですか?」

「いや……輸送船は本当にただの輸送船だったから、攻撃元のアドレスを割り出すような計器は搭載されていなかったんだ。一応管理局で調査はされてると思うけど、絶望的だろうね」

「やっぱり、そうですか」

 

 ……ふむ。やはりテスタロッサは、黒幕=事件の張本人という図式を持っていないようだ。あくまで私兵、ということなのだろう。

 等号で結ばれた上で従っているのだったらどうしようもなかったが、これならばまだやりようはあるな。

 

「わたしからの質問は以上です。続けてください」

「分かった。……ガイとなのはに救助された僕は、事情を説明したかったんだけど、怪我と疲労で意識を失ってしまい、そのまま動物病院に搬送されました」

「ぶふっ!?」

 

 テスタロッサがいきなり噴き出した。……今の短い話のどこに笑いどころがあったんだ?

 

「ど、動物、病院って……ケホッ、ケホッ」

「大丈夫かい、フェイト」

「……この姿だったんだから、そう判断されたって仕方ないだろ。まあおかげで最初の暴走体とすぐに接敵出来たから、結果オーライだよ」

 

 かなり憮然とした口調のスクライア。……ちょっと待て。

 

「質問だ。スクライア、お前は異世界の小動物部族の出身じゃなかったのか?」

「ミコトさん!? 僕そんなこと言いませんでしたよね!? スクライア部族出身って言っただけですよね!? というか、発掘とかの話から分かりますよね!!?」

 

 いや、ひょっとしたら広い世界には遺跡の発掘を行うフェレット似の動物がいるのかもしれないし……。

 見てみると、なのはと恭也氏も驚いている様子。……藤原凱だけ苦笑している。彼は知っていたのか。

 

「だーから言っただろ、勘違いされてんじゃねーのって。俺の話を冗談だと思って受け流してるからこういうことになるんだよ」

「え、ええー……なのはと恭也さんまで。一緒に生活してたのに、今まで気付かれてなかったのか……」

「……ミコトちゃんが女の子だったことを知った時並にショックなの」

 

 そのたとえはどうかと。別にいいけど。

 つまり、スクライアは本来人間であり、今の姿は変身魔法を使ったもの、ということか。

 

「何故そんな姿に?」

「色々あります。まず、怪我をした肉体を保護するため。この変身魔法は結界魔法でもあって、元の肉体よりも丈夫で、治癒力も高いんです。次に、魔力の消費を抑えるため」

 

 彼らの使う魔法に必要な魔力というのは、空間中に飛散している魔力要素と呼ばれる不可視物質を吸収して生成する。だが、これは世界によっては体質に合わないことがある。

 スクライアの場合、まさにこの世界の魔力要素が体に合わなかったのだ。加えて、魔力要素自体も少ない。元の姿のままだと、魔法行使のサイズも大きくなってしまい、ロスが増大してしまう、と。

 

「あとは、戸籍の問題とか食糧の問題とか住居の問題とか、即物的な話です」

「なるほど、理解した。それでは確かに元の姿をおいそれとさらせないわけだ」

「納得していただけて助かりました。ジュエルシードが残っている現状で、変身魔法を解くわけにはいきませんから」

 

 とりあえず、ジュエルシード回収が完了するまで、スクライアの真の本当の究極の(?)姿はお預け、ということだ。

 なのははとても残念がっていて(スクライアの本当の姿が人間であることに対してだろう、憐れ)、恭也氏の方は……眼光が鋭い。鋭くスクライアを射抜いている。

 

「会談の本筋とは関係ないが、俺からも質問だ。……なのはの着替えを、一度でも見たか?」

「にゃっ!? そ、そういえばそうなの!」

「し、しませんよそんなこと! 何かなのはがやたら無防備だなーとか思ってましたけど、ちゃんと後ろ向いて目を逸らしてましたから!」

「ということは、なのははお前がいる部屋で無防備に着替えをしていたというわけだ」

「……うにゃー……」

 

 なのはが恥ずかしさでゆでだこになってしまった。藤原凱は、ニヤニヤとして相棒の醜態を楽しそうに眺めている。助ける気はないようだ。

 

「み、ミコトさんならっ!」

「いやギルティだろう、これは。本当に悪いと思っているなら、「自分は外に出ている」ぐらい言って然るべきだ。役得とか思ってる部分があったんじゃないのか?」

「ミコトさんの目が汚物を見るようになってるゥ!? ち、違うんです! なんていうか、慌ててて思考が回らなかったっていうかっっ!」

 

 何故オレが味方になると思ったのか。オレは女なんだから、女子の味方に決まっているだろう。何で痴漢少年の擁護をせにゃならん。

 ……まあ、話が進まないのは確かか。

 

「恭也氏。制裁は帰ってから、家族総出で行ってください。今は会談優先だ」

「分かった。なのはの無念は俺が晴らす」

「生きてるよっ!?」

「ううう……あァァァんまりだァァアァ……こういうのはガイの役回りなのにィ……」

「ムッツリスケベとオープンスケベ、どっちが真の正義なのかよく分かったぜッ!」

「お前はお前で調子に乗るな!」

 

 だから話を進めようと言ってるだろう。協力しろ、たわけども。

 スクライアとなのはが使い物にならなくなったので(片方は最初から使い物にならないという説もある)、ここからは恭也氏と藤原凱が引き継ぐことになった。

 

「ユーノが最初の暴走体と接敵したときに発した救難の念話をなのはが受信して、助けに行こうとした。それで、安全のために俺とうちの父が着いて行くことになったんだ」

「まーぶっちゃけ過剰戦力ですよね。俺も念話聞いて全力で走ったのに、着いたときには完全に終わっちゃってたし」

「なるほど……それで高町家に関しては、全員が管理世界のことを知っていたんですね」

「なのは一人に背負わせるわけにはいかないからな。とにかく、そのときになのははレイジングハートを譲り受け、ジュエルシード封印係を依頼されたというわけだ」

「で、なのはと同じく魔法の才能があった俺は、士郎さんから直々に肉盾を任命されました、と。これが、俺らと魔法の出会いだよ。旅行のときにも言ったけど、俺もなのはも、魔導師にはなりたてほやほやなんだ」

「一応、なのはは早朝トレーニングとか寝る前のイメージトレーニングとか、魔法の訓練はしてるの。だけど、戦いってなったら全く分からないから……」

「そのために、うちの剣術を相伝してる俺がついている。無知故の無謀でないことは、フェイトも剣を交えて分かってるだろ?」

「……ええ、痛いほどに」

 

 テスタロッサの顔が苦笑とも困惑とも取れる表情になる。先日の暴走体に対処する際の人外っぷりを思い出したのだろう。あれはオレも意味不明だった。

 いや、恭也氏がオレ達の中で最も戦力を持っていることは知っていた。だがあそこまでブッチ切っているとは思ってもみなかった。

 はっきり言って、地上スタートで何でもありだったら、魔導師は為す術もなく絶命させられるだろう。バリアジャケットやシールドなど、気休め程度にもなりやしない。

 月村の屋敷でテスタロッサと一戦交えたときだって、恭也氏は「必要以上に相手を傷つけないように」戦っていた。最初から殺る気満々だったオレとは違う。それであの戦果だ。

 要するに、事件に参加しているメンバーに「無力な人間」は一人としていないということだ。全員が何かしら戦う術を持っている。

 

「んで、俺はユーノに防御魔法と結界を教えてもらった。攻撃はさっぱりだけど、防御に関しては結構自信あるぜ」

「うん。ガイの防御力は、凄かった。「ディバイドシールド・改」だっけ。構造も頑丈だったし、何よりエネルギーを分散させて防御するって発想が素晴らしいよ」

「うひょー! フェイトちゃんマジ天使! 俺の周りって素直に褒めてくれる人いないんだよね! 何かあれば二言目には「この変態っ!」だもんよ!」

「あ、あはは……苦労してる、のかな?」

「それはキミが悪いの。ちょっと気を許すとすぐふざけるし、エッチな発言ばっかりだし、ハーレム思想だし……」

「バッカお前、男は皆エロいんだよ! エロいからハーレムに憧れるんだよ! そうっすよね、恭也さん!?」

「お前と一緒にするなと言ってるだろうがッ! 度を越し過ぎだ、小学生!」

 

 話が脱線しすぎだ。盛り上がるのはいいが、今はそのときじゃないだろう。場をわきまえろ。

 

「……まあ、残すところはオレの話だけか。オレに関しては、先日話した"魔法"の研究中に、偶然ジュエルシードを発見した。それがきっかけだ」

「え? ミコトは、元々彼らと知り合いじゃなかったの?」

「知り合いでは……なかったが、なのはだけは4年前に一度だけ会ったことがある。しかも、失礼なことに4年間オレを男だと思っていたらしい」

「……なのは、何やってるの」

「にゃああっ!? み、ミコトちゃん! お願いだからその話はもう蒸し返さないでぇ!」

 

 いいや、蒸し返すね。自業自得だ。飽きるまで弄り続けてやる、コンチクショウ。というか蒸し返すも何も、さっき自分で言ってただろうに。

 テスタロッサの呆れた視線を受けて、なのはは悶えのた打ち回る。外野で話を聞いていたはやてが、ケラケラ笑った。

 

「そして、ジュエルシードがオレの目的に有用であることが分かったため、スクライアと交渉し、協力関係を締結した。これがオレの立ち位置だ」

「……わたし、ずっとそっちの中心はミコトだと思ってた。実はユーノだったんだ」

「リーダーシップがなくて悪かったな! そうだよ、ミコトさんが協力してくれるようになってから、考えることがほとんどミコトさん頼りになっちゃってるよ! この場を作ったのだってそうだし!」

 

 ヤケクソ気味のスクライア。オレの都合で振り回し過ぎたせいで、スクライアの主体性がなくなっていたのか。それは悪い事をしたが、目的を達成できるならどちらでもいいんじゃないかとも思う。

 スクライアへの同情なのか呆れなのか、テスタロッサは曖昧な苦笑を浮かべた。

 

「そして、先日の月村邸のお茶会で君と遭遇し、温泉旅行でアルフと対面した。これが、関係者の出会いの全てだ」

 

 説明役を終了。一旦区切って司会進行に戻る。

 

「それでは、テスタロッサ陣営の流れを説明してください」

 

 次は、向こうの経緯を説明してもらう番だ。

 

 

 

「わたし達の詳しい素性に関しては、今は置いておきます。ひょっとしたら、後々語ることになるかもしれないけど」

 

 テスタロッサは、そう前置きした。どうやら彼女は、現段階での線引きはちゃんとできているらしい。

 

「わたし達は元々、ミッドチルダ南部のアルトセイム地方で暮らしていました。この世界に来たのは、今から二週間ぐらい前のことです」

 

 まず、彼女の出身はやはりこの世界ではない管理世界であった。スクライアのように、高度な魔法教育を受けていることからそれは明白だったが、彼女自身の口から語られたのは、これが初めてだ。

 

「……アルフから聞いたけど、ミコトは誰かがわたし達に指示を出してジュエルシードを回収しているってことに気付いてるんだよね」

「その通りだ。それについて、今更隠し立てする必要はない」

「分かった。……指示を出したのが誰なのかはまだ話せないけど、ともかくこの世界にジュエルシードというロストロギアがあると言われ、魔法の研究に必要だからという理由で回収を命じられました」

 

 何処まで本当かは分からないが、ジュエルシードというものの有用性を考えれば、不思議な理由ではない。オレだって動機は同じだしな。ただ、正規の陣営に交渉したというだけの話。

 

「この世界に来てすぐにマンションを借りて、ジュエルシード探索を始めました。だけど、ミコト達が、じゃないや、ユーノ達の回収が早かったのか全然見つけられなくて、初めて見つけたのが月村家でのことだったんだ」

「そこでフェイトがミコトにやられた傷を治すのに、大事をとって二日動けなかった。さらに三日探して見つけられず、ミコト達、じゃないや、ユーノ達が探してなさそうな温泉街に行ったってわけさ」

「……言い直さなくていいよ。どうせこっちはミコトさんが主体で動いてるようなものなんだから」

 

 投げやりすぎるぞ、スクライア。クライアントはお前なんだからな。それを忘れるな。

 しかし、ということは、だ。

 

「テスタロッサ達が回収したジュエルシードは、この間の巨大ムカデが初めてということか」

「……はい」

 

 これで残りのジュエルシードは12個確定。全て回収しなければいけないが、これはオレも少し気合を入れて探さなければならないか。

 今は明かせない事情が多いため、テスタロッサが話せることはそう多くなかった。これにて向こうの経緯は終了らしい。

 そして、質疑応答。

 

「君達は、自分達がやっていることが犯罪行為だと分かってやっているのか? 拾得物横領は、管理局法でも違法だ。ましてやモノはロストロギア。僕はまだジュエルシードの所有権を譲渡していない」

「……分かって、いました。それでもわたしは、あの人の命令には逆らえないんです」

 

 そう言ったときのテスタロッサの表情は悲しげであり、対照的にアルフは怒りに満ち満ちていた。……二人の間で、黒幕に対する感情が違うようだ。

 若干の苛立ちを持っていたスクライアは、背後に黒幕がいること、テスタロッサが命令に従っただけであること、そして彼女の表情を見て、その感情を引っ込めた。同情が湧いたらしい。

 次の質問は、オレから。

 

「アルフから聞いたが、君は依頼者の具体的な目的を知らずに命令に従っているらしいな。これは、本当か?」

「……はい。何に使うのか聞いても、研究としか答えてもらえませんでした。だけど、どうしても必要だって……」

 

 なるほど。黒幕がテスタロッサを縛る鎖が、何となく見えてきた。物理的な束縛ではなく、テスタロッサの内側にある感情を使っている。

 テスタロッサは、理由は分からないが、黒幕に対して強い感情を持っている。親愛か、共感か。負性のものではない。

 黒幕は、それを知った上で、自分のためにテスタロッサを利用している。オレが言うのもなんだが、中々の人でなしだ。合理的過ぎて反吐が出る。

 自分のために他人を利用すること自体は、別にどうでもいい。オレだってやっていることだ。だがオレは、最低限の筋は通している。自分のために動いてもらったら、相応の報酬を与えている。

 だが、恐らくこの黒幕は……。

 

「ジュエルシード回収を行うことへの見返りは?」

「そんなもの、ありません。そんなことのために命令に従ってるわけじゃないよ。……事情を言ってないわたしも悪いけど、もう言わないで」

「分かった。感情を害したなら失礼した」

 

 やはり、か。貸借のバランスが崩れている。はっきりしたが、テスタロッサは使い捨てられている。感情を利用されて、いいように動かされ、最後は貸し分を踏み倒される。そういう関係性だ。

 ……ああ、イラつく。自分のことではないが、目の前で貸し借りの筋を通していない関係を見ると、どうにもストレスが溜まってしまう。

 オレが貸借バランスを取りながら生きているのは、つまりはそういうことだ。利用するなら利用させる。利用させるなら利用する。持ちつ持たれつ。それが、健全な人間関係だと思っている。

 貸借バランスが崩れている人間関係が不健康だなんてことは、目の前の二人の表情を見れば一目瞭然だろう。口出しして正してしまいたいが、オレがそれをすることはそれこそ筋が通らない。それはただの感情論だ。

 イラつきを仏頂面の裏に隠しつつ、こちらの質問を終える旨を伝える。……藤原凱が何やらもぞもぞして不自然だが。

 

「藤原凱。言いたいことがあるなら言ってしまえ。ここはそういう場だ」

「あ、いや、えーっと。別に大したことじゃないんだよ」

 

 大したことじゃなかろうが、疑問は全部出すべきだ。停戦締結の段になってあれやこれや言われても困る。

 藤原凱はしばし逡巡したが、思い切って口を開いた。

 

「あのさ! フェイトちゃんは、その依頼した人のこと、どう思ってるんだ!?」

 

 何かを焦るように、口早にそう尋ねた。……この男、もしかして黒幕の正体に辿り着いたのか? 一体どうやって。

 「何かあるだけのアホ」だと思っていた藤原凱の意外な一面に驚いている中、テスタロッサははっきりと口に出した。

 

「大切な……とても大切な人です。だからわたしは、あの人のためにジュエルシードを集めたい」

「そ、っか。そうだよな……」

「……藤原凱。もしよかったら、お前の考えを聞きたい。テスタロッサの背後にいる人物は、テスタロッサとどういう関係がある人物だ?」

 

 オレの問いかけに、藤原凱はテスタロッサの方を見た。彼女も彼女で、彼の答えに興味を示している。

 少年が、ごくりと喉を鳴らす。そして観念したかのように、答えた。

 

「……「親」、だろ」

「!? ど、どうしてっ!」

「その反応、正解ということか。一体、何処で分かった」

「分かったっていうか……「分かってて見たら、それ以外に考えられない反応だった」っていうか」

 

 「分かってて見たら」? どういうことだ。

 

「……悪い。こればっかりは口が裂けても言えねえんだ。それに、「それ」が何処まで正しいのか、俺にももう分かんねえんだ。今までもだいぶ違ってきてるし」

「ガイ、君……?」

「……言えないというなら、無理強いはしない。そちらにだって事情はあるだろうからな。こちらに不利益を与えるために黙ってるわけではないなら、オレがとやかく言うことではない」

「悪いな、ミコトちゃん。だけど、これだけは胸を張って言う。俺は、この場にいる誰の不利益になることも望んじゃいない。皆が幸せで、楽しい人生を送れることを、願ってるんだ」

 

 そう言った藤原凱の目は、いつものおちゃらけたものではなかった。真剣そのもの。それが、彼の奥底にあった感情だった。

 彼を以前から知っているなのはは目を見開き、口元を手で覆うほど驚いていた。普段変態だなんだと罵っていた相手が、実はこんなことを真剣に考えているほど、真っ直ぐな人間だったことに。

 皆の視線を真っ直ぐに受け……彼は頭をガシガシとかいて「あ゛ー!」と唸った。

 

「だからシリアスって嫌いなんだよ! 重い、重すぎる! 皆、もっと楽しく行こうぜ! 人生楽しまなきゃ損なんだからさ!」

「お前は……それが、本当のお前だったのか。全く、もっと早く見せろというんだ。そうすれば、もっと早くお前を見直せたのに」

「いや恭也さん! 見直さなくていいっす! おふざけしてるのもそれはそれでマジだからね俺!?」

「ガイ……僕は、師匠失格かもしれない。ちゃんと君のことを見ていなかったかもしれない。君は君で色々と考えてたのに……ほんとダメな奴だな、僕は」

「ユーノ! だからそうじゃねえの! そういう重いのが嫌だから軽いノリだったの! 真面目君しかいねえのか、この空間は!」

 

 藤原凱は、逃げ場を探すようにリビングを見渡した。と、そこでオレと視線が合う。

 

「こうなったら……っ! ミコトちゃん今日のパンツ何いロゴスッ!?」

 

 オレに向けてヘッドスライディングしながらスカートをめくろうとしてきたので、その頭を踵で踏み潰してやった。そしてぐりぐりと踏みにじってやる。これが望みだったんだろう、ええおい?

 

「ありがとうございますっ! ありがとうございますっ!」

「せっかく見直してたのに……。やっぱり変態はキモチワルかったの」

「結局、こっちの面もこいつの本質ってことか。真面目にしてれば、それなりに見込みがある奴なのに……」

「……ガイ。君は今、君の夢のための大切なチャンスを逃したよ。同情はできないけど、まあガンバレとだけ言っておくよ」

 

 かくして、オレの中で藤原凱の評価が、「何かあるアホ」から「特大の秘密を抱えた変態」にメガ進化したのだった。

 ……オレの今日のパンツの色? 答えるわけがないだろう、アホか。

 

 

 

 変態のせいで盛大に脱線したが、変態のおかげで図らずも停戦締結前に向こうの情報を一つ得られた。

 テスタロッサが縛られている鎖は、親子の情。だが……それが一方的だというのが不可解な話だ。何かが食い違っている。

 世の中、子供を子供と思わない親というものはいる。事実オレは捨て子だ。与えられたものは名前とゆりかごだけ。そのゆりかごも今はもう存在せず、残ったのはカタカナ三つの名前だけ。

 だがその場合、子供から親に向かう感情というのは、テスタロッサのようなものにはならない。捨てられれば想いは消え、虐待されれば恐怖と殺意が残る。愛情という要素は生まれない。

 だからオレは、一つの仮説を立てている。テスタロッサが、マインドコントロールされている可能性。

 これは非常に厄介だ。もしそれが事実で、かつ精神の深部にまで食い込んでいた場合、スイッチ一つでオレ達を殺す可能性まであるのだ。

 そして、精神科医でもないオレにその事実を確認することは出来ず、本人に聞いたところで分かるはずもない。こちらへの不信感を持たせて終わりだ。

 藤原凱なら、何か知っているのかもしれない。だがそれが正しいという確証はないし、彼自身これ以上しゃべる気はないようだ。

 

「……ミコトちゃんに踏まれるの、癖になるかも」

 

 というか、この変態としゃべりたくない。悪寒が走る。こんなことでなのは達の気持ちを一つ理解してしまった。これは確かに、学校生活中付き纏われたら嫌にもなる。

 ともあれ、マインドコントロールではなく、別の要因であることを祈るしかない。どの道今後のロードマップには、テスタロッサとの停戦・協力が不可欠なのだから。

 

「それでは、状況をまとめます。海鳴に落ちた21個のジュエルシードのうち、回収されたものは9個。あと12個のジュエルシードが、今なお未封印の状態で海鳴の何処かに落ちています」

 

 変態以外が顔を引き締める。ジュエルシードの暴走や歪んだ発動がどういう結果を引き起こすか、皆既に見て来ているのだ。

 何故変態が引き締まらなかったかというと、オレに踏まれた余韻を楽しんでいるからだ。キモチワルイ。

 

「我々は現在、二つの勢力に分かれてこれを回収していますが、関係性は協力ではなく競争。非効率と言わざるを得ません」

 

 そして、本日集まった本題に、ようやく移る。

 

「そこで一時的な停戦協定を結び、協力して速やかにジュエルシードの封印を行うことを提案します。内容については、ただいまより図を用いて説明致します」

 

 ガラガラガラと、キッチンの方に置いてあったホワイトボードをブランが運んできた。この会談のためにミツ子さんから借りたものだ。

 オレは最初に、真ん中に「ジュエルシード」と書いた楕円を描く。次に、現在の勢力を表すために、横に二つの楕円と、「スクライア」「テスタロッサ」を書く。

 矢印はそれぞれジュエルシードへ。これが、現在の状況の図式だ。

 

「これは大まかな勢力図であり、具体的な構成員については考慮されていません。今から各陣営の構成員について説明していきます」

 

 それぞれの勢力円を消し、解放括弧を大きく描く。まずはテスタロッサ陣営から見て行こう。

 

「テスタロッサ陣営は、実働班が二人、指示班が一人。実働班は言わずもがな、フェイト・テスタロッサと使い魔のアルフ。そして指示班は、名称未出のテスタロッサ親」

 

 テスタロッサ側の括弧の内側に、楕円を離して描く。小さい方に「親」の文字を、大きい方に二人分の名前を書く。

 これで、「テスタロッサ陣営の実働班と指示班が実質別の集団である」ということが分かりやすくなった。

 次は、スクライア陣営だ。

 

「スクライア陣営は全員が実働班です。うち、指示班を兼任しているのが、クライアントであるユーノ・スクライアと、不肖私め、八幡ミコト」

 

 こちらも楕円を二つ描くが、内訳が違う。スクライア、なのは、恭也氏、変態が同じ円の中にあり、実働班と指示班が同じ集団だ。

 そしてもう一つの楕円の方に、ミコト、ソワレ、もやしアーミーの文字。オレはあくまで契約に従って協力しているだけであり、スクライアの集団ではないということだ。

 楕円それぞれに関係性を書く。テスタロッサ陣営の方は、指示班から実働班へ「回収を指示」の文字。スクライア陣営は双方を結ぶ矢印で「協力契約」だ。

 これで、今事件に関わっている面子の最小集団単位での関係性がはっきりとしたはずだ。

 

「このように、それぞれの陣営は一枚岩ではなく、別個の集団が互いの利害関係によって協力、あるいは指示の関係性で繋がっています」

 

 そして今度は、スクライア陣営のスクライア集団(分かりづらいな)からジュエルシードに矢印を。テスタロッサ陣営の親から、やはり矢印を描く。

 実際にジュエルシードを求めているのは、こういう図式なのだ。オレは協力契約の矢印から、報酬として受け取る形だ。

 

「衝突が発生しているのは、正規の持ち主であるスクライアと、ジュエルシードを研究に使いたいテスタロッサ親の利害の不一致です。我々とテスタロッサの間には、本当の意味で利害の不一致は発生し得ません」

 

 時間はかかったが、言いたいことはそこだ。テスタロッサにとってジュエルシードは手段であって目的ではない。もし代替手段があるならば、別にそれでもいいのだ。

 その代替手段を用意するのが、この停戦協定ということだ。

 テスタロッサは、かなり渋い顔をしている。自身が親と切り離された集団であると言われたことに不満を持っているように思える。

 それでも何も言わないのは……実際のところは分かっているのだろう。自分達の扱いが、ただの傭兵のものであることを。その現実を信じたくないというだけ。

 まあ、そこのところはどうでもいい……とまでは言わないでおいてやるが、今から言うことに関係ないのは事実だ。

 

「ここで確認だ。テスタロッサ。君は親から、何を指示された? 出来るだけ正確に思い出してもらいたい」

「えっ……。えっと……「私にはどうしてもジュエルシードが必要なの。だからフェイト、ジュエルシードを集めて来てちょうだい」……だったと思います」

 

 なるほど、簡潔で分かりやすい。おかげでこちらも非常にやりやすくて助かる。

 

「では、その通りにしよう」

「え!? ちょ、ミコトさん!?」

 

 スクライアが何か慌てているが、無視。

 

 

 

「停戦協定の内容は、テスタロッサがスクライアのジュエルシード回収に協力する代わりに、全て回収し終わった後にテスタロッサ親のところへ持っていくこと。これで、双方の要件を満たすことが出来ます」

 

 

 

「っっっそんなバカな話があってたまるか! それじゃあ、ジュエルシードを回収する意味がないじゃないですか!!」

 

 いやあ、スクライアの反応が予想通り過ぎて思わず笑みがこぼれてしまう。皮肉な、と形容詞が付くがな。

 

「人の話は最後まで聞くものだぞ、スクライア。オレは何もテスタロッサ親に「ジュエルシードを渡す」などとは一言も言ってないぞ」

「えっ!? いや、だって……、……ぁあああ!! そういうことかっ!」

 

 やっと気付いたか。オレが何のためにテスタロッサに親の言葉を確認させたと思ってるんだ。言質を取るためだよ。

 分かったのは、スクライア以外は恭也氏と変態のみか。恭也氏はオレと同じ質の皮肉な笑みを浮かべ、変態は苦笑。他は皆一様に困惑の色を浮かべている。

 

「分かってない皆はもう一度思い出してもらいたい。さっきテスタロッサは、テスタロッサ親の指示は何だと言った?」

「え? それは、ジュエルシードを回収して持ってく……って、そういうこと!? そんなのありなの!?」

 

 ほう、なのはも気付いたか。意外と早かったな。テスタロッサの方が早いかもと思っていたのだが。

 どうやらテスタロッサもアルフも、思考がちゃんと回っていないようだ。要するに、契約書の内容はよく読みましょうということだ。

 

「フェイトの親からの指示は、あくまで「ジュエルシードを集めてくる」こと。集めた後どうするかの指示が一切ないっ!」

『あっ!?』

 

 スクライアが言葉にしたことで、ようやく気付いたらしい。テスタロッサなら盲目的に従うとでも思って、よく言葉を練らなかったんだろう。とんだ凡ミスだ。

 

「だ、だけど! それじゃあ母さんは絶対納得しないっ!」

「指示内容に回収したジュエルシードをどうしろというのが入ってない時点で向こうのミスだ。テスタロッサのデバイスの中に、当時の音声データが残ってたりするんじゃないのか?」

「そ、それは確かに、作戦指示なんだから残ってるけど……」

「だったら、突き付けてやればいい。そうしたら向こうは何も言えない。自分のミスが自分に返って来るだけなんだからな。何か言っても、全てブーメランだ」

 

 悪因悪果。テスタロッサを娘として見ず、そのくせ娘の感情だけは利用しようとするから、肝心な部分が抜け落ちる。そんな甘っちょろい考えだから、練るべき言葉を練らない。やはり貸借バランスは大事なのだ。

 とは言え、これがテスタロッサの本当の要件を満たすとは思っていない。テスタロッサの目的は、ただ母の――ポロっと漏らすのは主従で一緒だな――指示に従うことではない。

 テスタロッサは見返りは求めないと言った。大嘘だ。母からの感情という報酬を求めている。でなくて、あんな悲しい表情をするものか。

 これはあくまで、本当の要件を満たす布石。

 

「そしてこれで、テスタロッサ母を交渉の舞台に引きずり出すことが出来る」

「っ!?」

 

 テスタロッサが息をのんだのは、協定に先があったからなのか、オレが「テスタロッサ母」と性別を断定したからなのか。多分自分で言ったことに気付いてないだろうからな。

 そう。ぶっちゃけ、この辺はどっちだってよかった。ただ、こうであれば停戦協定締結の理由として、文句が出にくいというだけだ。あとはこの先がやりやすくなるか。

 そうでなければ、ジュエルシードを餌にして交渉の舞台に引きずりだしてやればいい。向こうが何を言おうが、手札があるのはこちら側なのだ。

 

「そこでテスタロッサ母に、ジュエルシードを使う目的を吐かせ、場合によっては代替手段で叶えてやればいい。そうすれば、ジュエルシードは全てスクライアの手の内のまま、全ての要件を満たすことが出来る」

「……そう上手く、行くかな」

「先々の話はそのときになってみなきゃ分からん。が、現状戦闘行為を避けつつ互いの利害を一致させる内容は、これ以外にないと思うが」

 

 ひょっとしたらあるのかもしれないが、現状オレが思いつくのはこんなものだ。テスタロッサ母の目的が分からないせいで、後の交渉が不明瞭だが、こればっかりは仕方ない。

 サービス過剰かもしれない。だが、これで全ての戦闘が避けられる可能性があるならば。かけてみる価値は十分にあるのだ。この会談を開いたのと同じように。

 

 これで話は全てだ。我々は停戦し、協力し、ジュエルシードを集め、テスタロッサ母と交渉する。これが、協定の大まかな内容だ。決を採ろう。

 

「この停戦協定案に賛成だと思う方は、挙手してください」

 

 司会進行へと戻り、オレは皆に尋ねた。真っ先に挙げたのは、やはりというかなんというか、なのは。

 

「異議なし! ミコトちゃんが考えてくれた、なのは達が悲しまなくて済むアイデアだもの! 賛成しないわけがないの!」

 

 それはちょっと考えなしの気もするが。というか君は途中から話についていけてなかっただろう。

 ……まあ、いいか。

 

「異議なし。よくもまあここまでペテン染みたことを思いつくもんだ。大した奴だよ、お前は」

 

 恭也氏、それは褒めているつもりなのだろうか。本人は褒めてるつもりなんだろう、多分。

 

「異議なーし。へへ、ミコトちゃん最高だわ。俺のハーレムに来ねえ?」

 

 変態は死ね。慈悲はない。

 

「異議なしです。……やっぱり、ミコトさんには敵いません。僕らのリーダーは、ミコトさんで決定ですよ」

 

 スクライア、お前はもっと主体性を持て。あとオレはただの協力者だということを忘れるな。

 これでスクライア陣営は全員異議なし。対して、テスタロッサ陣営は。

 

「異議なしだよ。ミコト、あんたを信じてよかった。……ありがとう」

 

 アルフ。まだ停戦締結するってだけの話なのに、気が早いぞ。そういうのは全てが終わった後に取っておけ。

 そして、最後の一人。フェイト・テスタロッサ。

 

「……異議なし、です。わたし……わたし……っ」

 

 余程溜め込んでいたのか、その場で泣き崩れるテスタロッサ。使い魔が主を支え、彼女も嬉し涙を浮かべていた。

 その様子を、皆が暖かく見守っていた。……オレも、そんな空気は悪くないと思う。

 これで停戦協定は締結された。あとは総力を持ってジュエルシード回収に当たるのみ。先のことは、そのときにならないと分からない。

 だが、上手くやってみせるさ。オレの都合で契約してしまったのだから。借りた分は、ちゃんと返す。それが、「オレ」が始まったときから続けている生き様なのだから。

 

「しかしミコちゃん、イキイキしとったなぁ。悪巧みとかしてるときが一番輝いてるんとちゃう?」

「人聞きの悪いことを言うな。単に少ない力を有効活用してるだけだ。そうしないと、オレは"勝てない"から」

「ふふふ。そうして"勝てる"ミコトちゃんは、きっと強い子ですよ。私はそう信じてます」

「ソワレも、ミコト、しんじてる。ミコト、つよいこ!」

 

 八神家の皆も、オレを支えてくれる。だから、ちゃんと最後まで走りきろう。それが目的に続く道筋なのだから。

 もちろん、オレ自身のジュエルシードの回収も忘れない。それが、オレがこの事件に関わることにした目的なのだから。

 

 

 

 

 

 こうして、スクライア陣営とテスタロッサ陣営――テスタロッサ陣営実働班は、協力関係となった。今後の連絡は、八神邸のリビングで行うことになる。代表者だけでなく、参加者全員だ。

 より密に連携を取る必要があるのだ。テスタロッサ母――プレシア・テスタロッサは、恐らく一筋縄ではいかない相手だから。

 そんなわけで……まあ恐らく建前だ。本音は、皆が互いに交流を取りたいだけだと思う。それもまた悪くないと思っているオレがいる。

 ともかく、今日の八神家の夕食は、それはそれは大所帯となった。

 

「ムッ。フェイトちゃん、ニンジン残したらあかんで。ニンジンさんはカロテンたっぷりなんやからな!」

「アルフ。肉ばかりを摂りすぎだ。もやしを食え、もやしを。テスタロッサもだ」

「はやてとミコトがお母さんすぎるぅ……」

「このもやしって……さっきまで動いてたあのもやしだろ。食べづらいって……」

「はいソワレちゃん、あーん!」

「……なのは。ソワレ、じぶんで、たべれる」

「うめえ! うめえ! これ作ったのはやてちゃん!? それともミコトちゃん!? どっちでもうめえ! お替り!」

「ガイ、もうちょっと落ち着いて食べなよ。食べ物は逃げたり……この家だとするかも」

「ふむ……スープははやてが作ったのか。味付けが優しくて食べやすいな。ミコトが作った肉じゃがは……美味い、幸せの味がする。充実した毎日を送れてるんだな」

「ふふ、そうですね。こんな日々を送れているんだから、充実していますよ、きっと」

 

 ……こんな非日常も、悪くない。だからオレは、はやてと送れる日常を目指して、非日常を突っ走る。最後まで。




かなり無理矢理まとめた感。この手の策謀は苦手です(白目)
でもミコトが戦う力あんまりないので、こういう手段を取るしかないのです。「UBW!」「グワーッ!」ってやれたらどんなに楽か(コンセプトの崩壊)

今回ガイ君の転生者的要素がちょろっと出ましたね。まだまだ彼視点で語れる日は来ないので、バックグラウンドがどうなってるのかは不透明なままです。
彼が先々のことを黙っているのは、バタフライエフェクトを恐れていることが大きいです。何せ小学校入った時点でなのはが原作ブレイクしてますからね。
彼は最初から真っ直ぐな心根の少年です。ただ、エロさは本物です。エロいからハーレムを求めてるそうです。意味分かんねえ。

なお、この作戦は時空管理局の介入を全く考慮に入れていないため、奴らが来た途端破綻します(次回以降のフラグを立てておく作者の鑑)


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