不思議なヤハタさん   作:センセンシャル!!
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お前らにクリスマスプレゼントを差し上げるんだよォ!!(豹変)



これにて無印編は終了です。しばらく更新止まります。

個人的に、ミコトのイメージテーマは「Roundabout(yes)」だと思ってます。この作品大抵のシーンでこの曲流すと合うんですよね。まあ、単にこの曲が万能すぎるだけかもしれませんが(Roundabout万能説)


十七話 未来

 その後について話そう。

 

 

 

 プレシアが逮捕されて、オレ達は庭園にいる理由の全てを完了。ハラオウン執務官に着いて、アースラへと帰還した。

 ハラオウン提督は、オレ達がプレシアを殺害せずに連行できたことに安堵の表情を見せたが、オレに負ぶわれて眠るアリシアを見るなり表情を険しくした。

 

「帳尻を合わせた説明はハラオウン執務官から聞いてくれ。そこは彼に一任することにしている。彼はあの場で起きた全てを見聞きし、他言をしないと約束した」

 

 事実をなかったことにはしない。だが、公にする気もない。彼女からの質問が飛んでくる前に、オレは先手を打っておいた。

 それを聞いて提督は……呆れたような気の抜けたような、微妙な笑みを浮かべた。

 

「本当に、あなたのような部下がいたら、きっと気が休まるでしょうに」

「だが、コントロールが出来るとも限らない爆弾のようなものだ。現に、オレがプレシアを殺すのをやめたのは、ただその必要がなくなっただけだ。あのままなら殺していた」

「そういうところを含めて、手元に置いておけば安心できると言っているの。本当に、残念だわ」

 

 オレを評価しているということは、腑に落ちないところは多々あるが、彼女の判断なので受け入れておこう。だが、それでもやはり、オレは管理世界に関わる気などないのだ。

 短いやりとりでオレとは決着をつけ、改めてプレシアに向き合うハラオウン提督。

 

「……まるで別人のようですね。こちらが本当のあなた、ということですか」

「さっきまでも本当よ。本当に、狂っていた。この26年間、嘘だったことなんて何一つなかった。……司法取引はいらないわ」

 

 自分の意志で犯罪を実行したことを認めるプレシア。オレがアリシアを「復活」させたことで、彼女に旅立つ憂いは一切なくなったのだろう。

 だからハラオウン提督は、一人の母親として、尊い何かが見えたのだろう。

 

「あなたがやったことは許されることではありません。多くの人に被害を与え、不幸を与えました。……ですが、一人の母親として、あなたのことを尊敬します」

「あなたにそう言ってもらえたなら……この道を歩いてきたことを、少しはあの子達に誇れるかもしれないわね」

 

 ――「母親」を自称し、関わる人達からそう認められていても、やはりオレはまだまだ子供だ。この人達には、遠く及ばない。どうあがいたって、年季が違う。

 そんな当たり前の事実が……何を思ったところで変わり様のない事実が、どうしてか分からないが、悔しかった。

 

 半月後、プレシアは亡くなった。自身の裁判に必要な証言の全てを急ピッチで集めさせ、それが終わると、満足したように事切れたそうだ。

 狂気に濡れた26年間を抜け、最期の半月。たったそれだけの期間だが、「幸せだった」。それが彼女の最期の言葉だった。

 葬儀は関係者のみで行われ、オレもこのときは管理世界がどうこう言わずに出席した。

 フェイトは泣いた。号泣した。彼女と出会って、多分今までで一番泣いていた。オレにすがって、声を出して泣いた。アルフもまた、鬼婆と嫌っていた女の死を悲しみ、悼むように遠吠えをした。

 アリシアも泣いた。彼女はちゃんと理解していた。母が許されないことをしたことも、あれが最後の触れ合いとなることも。それでも、悲しみの感情を抑えきれずに泣いた。

 なのはも、恭也さんも。スクライアも、藤原凱も。執務官と提督も、一度も会話していない通信主任も。ただ一人の例外もなく、泣いていた。

 ……ただ一人の、例外もなく。フェイトとアリシア、ソワレとミステールにすがられながら。オレも、涙を止めることが出来なかった。流れ落ちる熱い滴が、自分の意志と関係なく溢れた。

 オレは気付いていなかったけど。26年という長い年月を、たとえ狂いながらであっても、娘のためだけに行動し続けたプレシアを……いつの間にか、尊敬していたのだろう。

 オレは、本当に彼女を満足させられたのだろうか。オレは、彼女に相応しい最期を提供出来たのだろうか。

 自分を納得させる判断基準しか持たないオレに、彼女がどう思ったかを理解出来る日は、永遠に来ないのだろう。「プレシアの連続性」は永遠に失われてしまい、それが戻ってくることは決してないのだから。

 ――ほんの少しだけ。彼女が「失った娘」を求めて死者蘇生に手を出した理由が、分かった気がした。

 

 

 

 第97管理外世界の八神邸に戻ると、フェイトとアリシア、ソワレとミステールは、泣き疲れたのか眠ってしまった。ブランとアルフが部屋に運び、そばに着いていてくれている。

 オレは、はやての部屋で、はやてと二人でベッドに座っていた。

 

「お疲れさんや、ミコちゃん」

「……ん」

 

 オレも疲れているのだろう。はやての呼びかけに対する言葉が、非常に短いものになってしまう。

 無言の沈黙。それでも気まずくならないのは、オレとはやてだからなのだろう。この2年で、オレ達は一緒にいるのが当たり前になった。むしろここ一月半ほどが異常だったと言っていい。

 一月半前を思い返す。三年生になってそれほど経たないときの出来事。たったそれだけの期間なのに、まるで一年ぐらい前のように思えてしまう。

 はやての足を治すための"魔法"を作り出し、それでも足りないと思い「召喚体」という手段を考えた。しかし、召喚体の力は素体に大きく左右され、ありふれたものでは目的を達成できない。

 そう思って、何かいいものはないかともやしアーミーとともに探索をしているときに、偶然見つけたのだ。あの、願いを叶える青い石を。

 

「……オレは……」

「……なに、ミコちゃん」

「ちゃんと、目的の通りに動けたのかな」

 

 ジュエルシードと呼ばれるそれが何なのかはすぐに分かった。"願望機"。魔法は分からずとも、プログラムは分からずとも、ジュエルシードそのものは素材がレアなだけで非常にプリミティブな構造だった。

 もし材料と専用の機材さえあれば、それこそ素人にだって作れる代物だ。逆に言えば、素人にでも作れる程度でしかないから、"願望機"としては欠陥品だったわけだが。

 だが、その構成故に、オレが求める「召喚体の素体」としては最適だった。だから、暴れそうだったソレを沈静化してすぐに現れた持ち主に対し、交渉をすることにしたのだ。自身の目的のために。

 なのに……結局、必要な召喚体は揃わなかった。最後のジュエルシードは、アリシアとなったから。それ自体に後悔はないけれど。

 

「確かに、ミステールの力があれば、いつかははやての足の原因に辿り着くはずだ。だけどそれがいつになるか分からない。その前に……」

 

 はやての足の麻痺が広がってしまったら。……想像したくなくて、口には出せなかった。そんなことになってほしくなくて、オレは奔走しているのだから。

 生み出そうとして、結局生まれてくることのなかった、"真の召喚体"。真と偽を判定し、導く者。それがあって初めて、ミステールは迷うことなく真理に到れる。道と、道しるべなのだ。

 だからミステール一人では、どうしたって惑う。道を作ることが出来ても、航路が分からなければ、無作為に動くことしか出来ない。

 "真の召喚体"を生み出せなかったというのは、それほどの痛手なのだ。その痛手の代償が、プレシアにたった半月、狂気に囚われない時間を与えること。しかもその期間で彼女がやったことは、事後処理のみだ。

 こんな代償で……バランスが取れているのだろうか。どうしても、納得できなかった。

 

「やっぱり、プレシアは見捨てるべきだったのかな。オレが彼女に手を伸ばす義理なんてなかったはずなのに」

「ミコちゃん……」

 

 そうだ。オレならば、そうするべきだったのだ。自分本位で、自分自身の判断基準でしか動かないオレは、プレシアの都合など切り捨ててよかったのだ。藤原凱の懇願など、聞く必要はなかったのだ。

 なのに、オレはそれをしなかった。彼らの情にほだされてしまった。判断基準を揺るがしてしまった。他の誰でもない、自分の意志で。

 

「あいつらはオレのこと最高のリーダーとか言ってるけど……全然そんなことないじゃないか。こんなブレブレなやつが、最高なわけ、ないじゃないか」

「っ、ミコちゃん……」

 

 最高なら、それこそ最高の結果を出して然るべきだ。

 プレシアに与える時間は半月などではなく、今まで失った26年間全て。アリシアも本当の意味で蘇生させ、リニス――もう消えてしまったプレシアの使い魔も復活させ、家族三人と二匹で暮らせる時間を与えて。

 召喚体も一切無駄にせず、はやての足の原因を突き止め、もうはやてが自分の足で歩けるようになっている。それが本当に最高の結果のはずなんだ。

 こんな、ボロボロのつぎはぎだらけの妥協解しか出せなかったオレが、最高なわけがない。

 

「最高になんかなれないから、オレは切り捨ててきたのに……っ! オレは、切り捨てることしか、出来ないのにっ!」

「……ミコちゃん。今は我慢せんでいい。わたししか聞いとらん。いっぱい弱音吐いて、いっぱい泣いたらええんよ」

 

 

 

 はやての言葉で、決壊した。感情が溢れてくる。涙が止まらず、はやての胸に顔をうずめた。

 

「う、ぅあ、っっあああああ! はやて、はやてぇ!!」

「うん。聞いとるよ、ミコちゃん」

「助けたかったっ! 皆、ちゃんと助けたかった! プレシアもアリシアもリニスも、切り捨てたくなかった!」

「うん。ミコちゃん、ほんとは優しい子やもんね」

「出来なかったッッ! やりたいことなんて、全然その通りにならなかったっっ! 全部、ぜんぶ、うまくできなかった!!」

「うん。ミコちゃん、器用なくせに不器用やもんね」

「悔しいよぉ……! 悲しいよぉ……っ! 何もできなかった自分が、情けないよぉぉ……!」

「わたしはそんなミコちゃんが大好きやで。情けなくても、ちゃんとあがけるミコちゃんのことが、大好きなんやで」

「はやて……はやてぇぇぇ……」

 

 すがりつくように、泣き続けた。恥も外聞もなく、喚き散らした。いつもの自制心など今は消え去り、オレは歳相応……それ以下の少女に戻っていた。

 はやては……そんなオレを、ただただ抱きしめてくれた。悪夢で泣く我が子を慰めるように、慈しむように。

 オレは、はやてに甘えることしか出来なかった。愛するひとに抱かれて、泣き続けた。

 

 

 

 はやては泣き止むまで抱きしめてくれた。泣き止むと、オレを元気づけるようにキスしてくれた。

 

「泣いてるミコちゃんも、可愛くて好きやで」

「……泣くのは、辛いし恥ずかしい。オレはこれっきりにしたいよ」

「あはは、そら無理なんちゃうかな。外で強い子な分、わたしの前では弱い子やん」

「……こんな姿、はやて以外の前で見せたら、恥ずかしくて死ぬ」

「ミコちゃん、真っ赤っかや。ほんと、可愛い子」

 

 もう一度、ゆっくりとキスをする。お互いの存在を確認するかのように。親愛のキス。

 

「せやけど。わたしが一番好きなのは、笑ってるミコちゃんや。仏頂面の中に、ときどき笑ってみせるミコちゃんが、たまらないほど大好きなんや」

「……オレも。はやてが笑ってるときが、一番幸せ。はやての笑顔が、大好きだ」

 

 手と手を合わせる。ギュッと握ると、はやても握り返してくれた。

 だからオレは、揺らいだ意志を再び固めることが出来た。

 

「……はやてと一緒に、ずっと笑っていられるように。諦めない」

「……ありがとう、ミコちゃん。わたしと一緒にいてくれて、ありがとう」

 

 そして最後にもう一度、互いの想いを交わすように、長い長いキスをした。

 

 

 

 

 

 あまり重い話を続けてもかったるいので、少し軽い話をしよう。時系列は少し前後して、ゴールデンウィークの連休明けまで遡る。まだプレシアが存命していた時期のことだ。

 

 

 

 連休明けの学校というのは、活気でにぎわうものだ。連休の間にため込んだ子供のパワーが爆発するのだから、それも当然のこと。

 休みの間はどこそこに行ってきた。何がしをやってきた。お土産はなんたらだ。ゲームしかやってねえ、などなど。

 オレも二日ほどとは言え、この世界ではない場所に行ってきた。そういう意味では十分に連休を満喫してきただろう。満喫しすぎて今も疲労が残っている。

 ダレているオレの周りには、いつもの面子が集まりダベっている。彼女達には、ジュエルシードの脅威が完全になくなったことを伝えた。管理局のくだりで田中が「次元艦、乗ってみたい!」と叫び、チョップを入れた。

 忘れてはいけないが、管理外世界で管理世界の情報を広めるのはご法度なのだ。まあ管理世界に属するわけでもないオレ達が罰せられることはないのだが、一応筋として、だ。

 そんな感じにカオスっている教室が静まるのは、担任がやってきたときと相場が決まっている。我らが石島教諭が出席簿をぶん回しながら入ってくると、生徒達は慌てた様子で自分の席に戻る。

 日直の号令で、起立、気を付け、礼をし、着席。

 

「あー。お前ら、嬉しいお知らせだ。今日からこのクラスに仲間が増える。分かりやすく言えば転校生ってやつだ。嬉しいか? 嬉しいだろ? おら、騒げ騒げ」

 

 普通は生徒達が騒がしくして教師から叱られるところだと思うのだが、あまりにもざっくばらんに言われたために、生徒一同微妙な顔で静まり返っている。本当にこの担任、もうちょっと教師らしく出来ないものか。

 

「なんだよ、ノリ悪ぃな。まあいい、ちゃんと仲良くしろよお前ら。毛色が違うからっていじめとかやったら、問答無用でぶん殴るからな」

 

 堂々と体罰宣言をする石島教諭。以前オレに語っていた「体罰がどうので動きづらい」はどうなった。どうにかしたのか、そうか。

 まあ、その心配はいらないだろう。もしそんなことになったら、教諭が動くよりも先に、オレが報いを与えるのだから。

 教諭の「入ってこーい」という声に従って、教室の扉が開かれる。

 ――瞬間、教室の時が止まった。少なくともオレとはやて以外は、凍りついたように動かなくなった。それだけ衝撃的だったということだろう。

 何故オレとはやてだけ例外だったかと言えば、答えは簡単。彼女はオレとはやての関係者であり、最近出来た家族だから。

 

「初めまして。フェイト・T・八幡です。先日、ミコトおねえちゃんの妹になりました。この国に来てまだ日が浅いので分からないこともありますけど、仲良くしてもらえたら嬉しいです」

 

 つまり、こういうことである。

 

 先の宣言通り、オレはフェイトとアリシアを引き取ることにした。とは言え、8歳のオレが同い年程度の子供と5歳の子供を養子に出来るわけがない。

 そこで、ミツ子さんだ。彼女は事情を聞くと(管理世界に関してはボカしておいた。彼女の余生に、そんな厄介事は必要ないだろう)、二つ返事で養子縁組をOKしてくれた。

 そもそもフェイトはミツ子さんと面識があり、お互いに好印象を持っている。アリシアは天真爛漫な性格であり、高齢の方々には好かれやすい。

 さらに、二人とも実際に養うのはオレ達であり、ミツ子さんにはオレのときと同じ「身元保証人」の立場でいてもらうだけ。彼女の負担は少ないというわけだ。

 とは言うものの、さすがに学費はミツ子さんにお願いしなければならない。……今はオレとフェイトだけだが、来年からアリシアも入学する。はやての足もそうだが、こちらも何とかしなければならない問題だ。

 ――ハラオウン執務官から「二人は管理世界に住むべきではないか」という意見も出た。元々そちら側の住人なわけだから、その理屈は分からないでもない。

 が、ここで重要になってくるのが二人の戸籍だ。フェイトはプレシアが登録をしていないため(というか違法研究なので出来るわけがない)戸籍が存在せず、アリシアは故人となっている。管理世界の戸籍がないのだ。

 書類上では、二人は何処の世界にも属さない存在。それならば、養子として第97管理外世界日本国の戸籍をゲットしても何ら問題はない。

 というか、そもそも二人の母親から頼まれたのはオレなのだ。そのオレが管理世界に行く気がない以上、二人がこの世界で暮らすのは決定事項というわけだ。

 そう正論を言ってやると、ハラオウン執務官は渋々というか、悔しそうな顔で引き下がった。彼はどうにもオレと張り合うことにやりがいを見出している節がある。勘弁していただきたい。

 

 かくして、フェイト・テスタロッサ改めフェイト・T・八幡と、アリシア・テスタロッサ改めアリシア・T・八幡の二名が、この世界に住民登録されたのである。

 二人ともミドルネームに「テスタロッサ」を残しているのは、プレシアの子供であったことを忘れないため。今でも彼女達は、母親のことが大好きなままなのだ。……いつまでもそうあってほしいと思う。

 余談だが、フェイトが姉でアリシアが妹だ。この辺を決める際に一悶着あった。

 アリシア的には、自分が(正確にはオリジナルが)生まれた後にフェイトが生まれたのだから、フェイトの方が妹。フェイト的には、肉体年齢は自分の方が上なんだから、アリシアの方が妹。どちらも譲らなかった。

 最終的には「アリシアは生まれ直してるんだから正確には0歳だろう」というオレの一言で、フェイトが姉の座を勝ち取ったのだった。どうでもいい話だな。

 そしてアリシアは戸籍上5歳なので、学校に通うことは出来ない。現在はブラン、ソワレ、ミステール、そしてフェイトのペット(という立ち位置となった)アルフとともにお留守番である。かなり不満そうであった。

 

「全くもう。ミコトもはやても何も言わないから、びっくりしちゃったじゃない」

 

 あきらが不満があるのか呆れているのか、そんな調子でオレ達に話かける。はやては苦笑し「ごめんごめん」と軽く謝る。

 

「せやけど、最初はやっぱ大事やん? 教えてインパクトなくすより、しっかり驚いて印象に残ってもらった方がええと思ってな」

「ありすぎなのよ。ポケーっと口開けてアホ面晒しちゃったじゃないの、恥ずかしい」

「君の過去の痴態よりは恥ずかしくないから、安心するといい」

「何よそれー!?」

 

 ドッと笑いが起こる。オレ自身は、まだ皆のようには笑えない。

 

「んー。ソワレが学校来なくなっちゃったけど、ふぅちゃんがいるなら問題ないよー」

「お、重いよ、さちこ。のしかからないでぇ……」

 

 まだまだ親離れできないソワレであるが、二人の妹とペットが出来たことで、留守番は出来るようになったようだ。亜久里が言及しているのはその件だ。

 オレはその件について、単純に子供の成長を喜ばしく思っているが、亜久里を含む何人かは少し寂しく思っているようだ。結構可愛がられてたからな、ハムスターソワレ。

 代わりに、亜久里はフェイトの背中からのしかかるようにして抱き着いていた。オレも時々やられることだ。慣れろ。

 

「それにしても、よくふぅちゃんが同じクラスになれたね。双子の姉妹とかの場合って、普通別のクラスにされちゃうよね」

「フェイトがこの国に来て日が浅いというのは、紛れもない事実だからな。オレの目の届くところに置きたいと教諭にお願いした」

「やっぱミコっち色々考えてんなー」

 

 君に比べればここにいる全員が色々考えていることになると思うがな、アホの田井中。

 オレが懸念しているのは、日本文化に慣れていないという点ではなく、管理世界の常識で行動してしまわないかという点だ。ここの面子なら大丈夫だが、それ以外はアウトだ。

 故に、管理世界への理解がある面子が集まるこのクラスで面倒を見るのが妥当であるという判断だ。問題児たち(伊藤はブレーキ役)ということでひとまとめにされていたことが、こんなことで役に立つとは。

 ――後年、フェイトも問題児の仲間入りを果たし、最後までこの面子で行動することになるとは、知る由もないオレ達であった。

 

「ふ、フフフフフ……次元艦には乗れなかったけど、バルディッシュにはいつでも触れる……アリねっ!」

「ところで最近田中のキャラ崩壊が激しいんだが。田井中、幼馴染として何とかしてやれないのか」

「ごめん無理。このモードのはるかは、逆にあたしが振り回されてる」

 

 普段は突撃バカで振り回しているわけだから、バランスはいいのかもな。

 

 さて、フェイトであるが、どうやらちゃんと歓迎されているようだ。オレ達だけでなく、クラスの女子が代わる代わる話しかけに来ている。

 

「名字が八幡ってことは、あの八幡の姉妹なの?」

「バッカねぇ。最初の自己紹介でそう言ってたでしょ。事情があるんだから聞かないの」

「あ、あはは……大丈夫だよ、わたしは気にしてないから」

「うわーいい子だ。すんごい綺麗な金髪。これ、地毛だよね?」

「あ、目の色赤だ! キレー! 何処の生まれなの!?」

「え!? え、えっと……一応、イタリアってことになってるよ」

「……ああ、八幡の関係者ってことは、そういうことなのね」

「これ深く聞いたら戻れなくなる奴だ。5人衆みたいに」

 

 オレ達がどういう扱いなのか、よく分かる会話である。安心しろ、説明する相手は選んでいるから。

 フェイトには事前に「管理世界のことを話すのはNGだが、臭わせる程度はセーフ」と説明しておいた。それに従って行動した結果、今のようになったということだ。

 ちょっと虚ろな目で遠くを見る女生徒二人に、フェイトはわたわたと慌てた。

 

「ご、ごめんね、ちゃんと話せなくて! 結構厄介も多いことだから、あんまり巻き込みたくないんだ!」

「……何この子、信じらんないぐらいいい子なんだけど。これでマジであいつの姉妹なの?」

「み、ミコトはいい子だよ!? わたしなんかよりもずっと、凄いおねえちゃんなんだから!」

「しかもこのお姉ちゃんっ子ぶり。八幡さーん、フェイトちゃんあたしン家にくんない?」

「やるか。あまりフェイトの教育によろしくない真似はしてくれるなよ、加藤、鈴木」

 

 ちなみにこの二人、一年次にオレの服を切り、机に彫刻をしてくれたグループのうちの二人だ。この通り、しこりなく会話をする程度にはなった。

 残りの一人、遠藤という名前だが、彼女は3組で別のクラスだ。オレが痛い目に合わせて以来、すっかりおとなしい娘に変わった。今では立派な文学少女だそうだ。なるようになったということなのだろう。

 

「あたしら一年のとき、八幡に酷い目に合わされてんのよ。まあ、全面的にあたしらが悪かったんだけどさ」

「おかげで「悪因悪果」って言葉がトラウマよ。悪いって思ってることはするもんじゃないって思い知らされたわね」

「そ、そうなんだ。……ずっと前から、ミコトはそうなんだね」

 

 それは確かにオレが相手を追い詰めるときに使う言葉だ。それで教訓を身に刻めるなら、意味のあることだろう。

 プレシアにも言った言葉だ。アースラのブリッジであった出来事を、思い返しているのだろう。フェイトは少しの間目を瞑った。

 

「だけど……わたしは凄くいい言葉だと思う。わたしにとっては、希望の言葉だから」

「……あー。うん。八幡の妹だわ、これ」

「不思議ちゃん姉妹か。これは男子が騒ぎそうね」

「言いたいことはあるが、既に騒ぎになってるみたいだぞ。アレを見る限り」

 

 オレが親指を向けた方では、他クラスからフェイトを一目見ようと押しかけた男子生徒が、教室の扉のところですし詰めになっていた。

 

「ちゃんと見えねえぞ! お前もう十分見たんだからどけよ!」

「お前2組だろ!? 俺ら別のクラスだから、八幡さんも普段ちゃんと見れてないんだよ! もうちょっと見させろ!」

「ふっざけんな! お前去年一昨年1組だったじゃねえか! 俺なんてまた別のクラスだよ! ここは俺が最優先だろ!」

「バカやってねえでとっとと席つけ。他のクラスの奴はとっとと帰れ。休み時間は終わりだよ」

『ゲェッ! テッペー!?』

「石島先生と呼べぇ、クソガキどもォ!」

 

 男女平等パンチラッシュが降り注ぐ。あれだけの数を裁くのは大変だろうに。石島教諭、お疲れ様です。

 

「片や純和風のオレっ子美少女。片や儚げな金髪美少女。おまけに二人は義理の姉妹」

「間違いなく海鳴二小で語り継がれる伝説になるわね、これ」

「……解せぬ」

「あ、あはは……」

 

 鈴木の予言通りになるとは露ほども知らぬオレ達であった。

 

 

 

 帰宅すると、アリシアがソファで寝転がりながら、ふくれっ面をして本を読んでいた。

 

「……はあ。しょうがないだろう。君は戸籍上5歳なんだ。皆を一緒に留守番させたんだから、いい加減に機嫌を直せ」

「ぷーん。どーせわたしはミソっかすですよーだ」

 

 彼女を置いてフェイトだけオレと一緒に学校に行き、同じクラスであるということが納得いかないということだ。自分だけ仲間外れだと思っているようだ。

 だが……彼女が読んでいる本を見ると、むしろ自宅学習の方がレベルは合ってるんじゃないかとも思う。量子力学の本って、5歳が読むものじゃないぞ。

 アリシアにはリンカーコアがなく、召喚体らしい特殊な能力もないが、その知能はまさに母親譲りであった。学者的な意味での知能レベルは、間違いなく八神家一である。

 

「もう……アリシア。ミコトおねえちゃんを困らせちゃダメだよ。ほら、ちゃんとこっち向くの」

「むー! フェイトはずるい! わたしだって、みんなといっしょに学校行ってみたいのにー!」

「こればっかりはしょうがないだろう。君の肉体年齢で小学三年生と言い張るのは不可能だ。オレが一年生のときより小さい」

「そーいやミコちゃん、あのときから比べたらだいぶ大きくなったなぁ。さっちゃんよりは大きくなったやろ?」

 

 まだまだ平均的とは言えないが、あのときに比べればだいぶ伸びたのだ。やはり毎日の牛乳は大事だ。カルシウム・イズ・パワーだ。

 ……ではなくて、だ。

 

「一緒の学校というのだったら、あと一年待てば通える。そのときは毎日一緒に通ってやるから、今は我慢しろ。楽しみは後にとっておくものだ」

「いーやー! 今いっしょに行きたいのー!」

 

 ソファの上で手足をバタバタさせるアリシア。……はあ、ここははやての出番か。

 

「任せた」

「了解や。シアちゃん、はやておねえちゃんとお話しよか。シアちゃんはどうしてわたしらと一緒に学校行きたいん?」

 

 この「シアちゃん」というのは、はやてが考えたアリシアのあだ名だ。フェイトが「ふぅちゃん」と呼ばれているのを羨ましがったアリシアが、駄々をこねて付けてもらったのだ。

 召喚体の名前やソワレの技の名前を付けているのがはやてであることからも分かる通り、彼女のネーミングセンスはいい。フェイトのときは田井中のファインプレーにかっさらわれたが、アリシアのは逃さなかった。

 

「……だってー。ミコトおねえちゃんもはやておねえちゃんも、フェイトも楽しそうなんだもん」

「んー、せやね。確かに、皆で一緒に学校行くのは楽しいよ。けどな、楽しいばっかりでもないんよ?」

「そうなの?」

「そうや。授業中はおしゃべりできひんし、じっと座っとかなあかん。そんな風に寝っ転がって好きな本なんか読まれへんよ。シアちゃん、耐えられるか?」

「うっ……が、がまんできるもんっ!」

 

 "命の召喚体"として生まれ直したアリシアであるが、精神年齢は5歳のままだ。限りなくアリシアのまま生み出したのだから、そこが違ったら大問題である。

 小学生が6歳からなのは、平均的な精神の成熟度の問題だ。そのレベルにないと、授業という行為の成立が難しいのだ。そういう意味で言えば、アリシアは知能こそ高いが、精神は歳相応でしかないのだ。

 

「そかー。ほな、試してみよか。ミコちゃん、先生役お願い出来る?」

「いいだろう。教科は何にする」

「んー。算数とかシアちゃん得意そうやし、やっぱ鉄板で国語やろ」

「に、にほんごはちゃんとおぼえたもん!」

 

 そういえばここまで言語関係には一切触れてこなかったが、せっかくなので少し触れておこう。

 当たり前であるが、ミッドチルダと日本で使われている言語は違う。なのに普通に会話が成立していたのは、翻訳魔法のおかげだ。アースラ、及び管理局員の周囲では、相互で自動的に翻訳が行われていたそうなのだ。

 で、現在は管理局とはまるで関係ない八神邸である。アリシアが使っていたのはミッドチルダ言語であり、最初はフェイトを通さないと意志の疎通が出来なかった。

 フェイトは、この世界に来る際に文化と言語を学んでいる。だから、翻訳魔法なしにオレ達との会話が成立するのだ。そうでなければ、ファーストコンタクトのときに会話出来たはずもない。

 なので、アリシアはまずフェイトから日本語を習い、たったの一日で会話できる程度に習熟した。ここはさすがプレシアの娘と感心するところである。

 ……が。国語とは、言葉を話せるようになれば解ける分野ではないのだ。言葉に纏わる文化の習熟も必要なのだ。

 

「で、この段落で筆者が言いたかったことだが、この文が特徴的であり……」

「……ぐー」

「またベタなオチだな」

 

 オレが教科書とノートを広げて行った授業は、アリシアの理解放棄からの睡眠という結果に終わった。

 とりあえずデコピンで起こす。アリシアは「わきゃっ!?」と言いながら跳ね起き、涙目で額を抑えた。

 

「うー……だってわかんなくってたいくつなんだもん」

「そういうものだ。なに、あと一年もすれば否応なしにその退屈の中に入らなければならないんだ。別に急ぐ必要もあるまい」

「そういうことや。今はうちで好きなことしとってええんやから、そうしとき。ブランもソワレもミステールも、アルフもおるんやから。寂しくはないやろ?」

 

 「うん……」と言って頷くも、アリシアは納得していないようだ。……全く。

 

「おいで、アリシア」

「へっ?」

 

 両手を開いてプレシアから託された我が娘を迎える。アリシアは少し困惑したようだが、すぐにオレの腕の中に飛び込んできた。

 抱きしめて、頭を撫でる。アリシアはくすぐったそうに笑った。

 

「アリシアがこうしてほしくなったら、出来る限りこうするから。今は我慢してくれ」

「んー……。なかまはずれはいやだけど、ミコトママにだっこしてもらうのはすき」

「なら、ちゃんと我慢できるよな」

「……ん」

 

 どっちとも取れそうな返答だったが、時間が解決するだろう。甘やかすことはしないが、それまでの時間を満足させてはあげたい。これでアリシアが満足してくれるなら、安いものだろう。

 ……と。フェイトが物欲しそうにこちらをチラチラ見ている。さすがに二人は無理だな。

 

「ごめんな、フェイト。今はアリシアの時間だ。あとでちゃんと、フェイトのことも抱っこしてあげるから」

「! う、うん……」

 

 甘えるという行為がまだまだ恥ずかしいのか、フェイトはゆでだこのように顔を真っ赤にした。

 はやてはオレの隣で、ニコニコと笑ってそれを見ていた。

 

「……子供が母親役を務めて、どうにかなるもんだねぇ。ミコトとはやてだからかな?」

「ふふ。二人とも、とてもしっかりした子ですから。お手伝いさんとしては、ちょっと寂しいですけど」

「そんなもんかい。ま、あたしは気楽にペットやらしてもらうから、別にいいんだけどね」

「アルフ、ふかふか。ミステールのしっぽより、きもちいい」

「元が装備型のわらわと天然の毛皮を比べられても困るのぅ。姉君は母達のところへ行かなくてよいのか?」

「いまは、フェイトとアリシアのばん。ソワレ、おねえちゃんだから、がまんできる。えっへん」

「呵呵っ、えらいえらい。よく出来た姉君で、わらわも誇らしいぞ。それでアルフから手を離していればもっとよかった」

「……ミステール、うるさい」

 

 八神家も随分と賑やかになったものである。……家計は圧迫されているが。

 

 

 

 最近、というかミステールが念話共有を出来るようになってからであるが、毎晩8時頃になのはから念話が入るようになった。

 

「むっ。主殿、高町なのはから念話じゃ」

「繋いでくれ」

≪もしもーし! ミコトちゃん、今平気ー?≫

 

 能天気そうな声が頭の中に響き、反射的にため息が出る。念話の初っ端だけでオレにため息をつかせられるのは、恐らくなのはだけだろう。

 

≪今日は学校であった何の話だ?≫

≪えっ!? 何でなのはが学校のこと話そうとしてるって分かったの!?≫

 

 君の話題はワンパターンだからだ。今日学校でバニングスがどうした、月村がどうした、変態が鬱陶しい、大体こんなところだろう。しかも今日は連休明け、久々の学校でテンションが上がっているのが想像に難くない。

 

≪それで?≫

≪あ、そうそう! アリサちゃんとすずかちゃんに、ふぅちゃんが海鳴二小に編入したって話をしたの。凄く残念がってたよー、なんで聖祥じゃないのかって≫

 

 そんな学費を捻出できるわけがない。公立だってミツ子さんに頼っている現状なのに。

 

≪なのはもミコトちゃんとはやてちゃんとふぅちゃんと、同じ学校に通いたいなー≫

≪その場合、そちらが合わせるしかないぞ。つまり、海鳴二小の学区に引っ越すしかない。そんなことは出来ないだろう≫

≪分かってるけどー。ミコトちゃん、中学は絶対聖祥に来てね! なのは達、待ってるから!≫

 

 気が早すぎる。鬼どころか閻魔大王も大爆笑しそうだ。地獄をお笑いの渦の中に落とす女、高町なのは。それはそれで凄いことなのかもしれない。

 

≪……ん、そうだ。聖祥の中等部には特待生のような制度はあるか?≫

≪え? えーっと、ちょっとわかんない。高等部からはあったと思うんだけど、中等部にあったかなぁ?≫

≪そうか。中等部から特待生制度があれば、学費を抑えられると思ったんだが。それならそちらに行くのもやぶさかではなかった≫

 

 ないなら、中学もやはり公立だな。……また地獄が哄笑しそうな話題を続けている。

 

≪で。どうせ話題はそれだけじゃないんだろう≫

≪凄いねミコトちゃん! なんで分かるの!?≫

 

 分からいでか。行動もワンパターンな君のことだから、ならせめて皆でお茶会をーとか、そんなことだろう。

 

≪うん! 皆で翠屋に集まって、ジュエルシード回収完了お疲れ様パーティをやるの! だから、ミコトちゃん達八神家の皆と、海鳴二小の皆もって思って≫

≪まあ、そういう名目ならオレ達が出ないわけにもいかないか。……フェイトとアリシアは大丈夫だろうか≫

 

 ジュエルシード自体は関係ないかもしれないが、事件の記憶はまだ新しい。二人の感情を刺激しないだろうか。少し、心配だ。

 と、オレが母親としての配慮をしていると、猪突猛進娘から投下される爆弾。

 

≪あ、ふぅちゃんは大丈夫だって。シアちゃんにも確認とってもらって、こっちも大丈夫だって≫

≪……どうして君はそうやってオレの都合をすっ飛ばして話をするかな≫

 

 オレの不満を理解していない気配が念話から伝わってくる。いや彼女も二人の感情は考えた上で行動を起こしたとは思うけどさ。

 

≪まあいい、君には言っても無駄だ。それで、日程はいつだ?≫

≪むー、ミコトちゃんの言葉に棘があるよ。あしたっ!≫

 

 早すぎだろ。あきら達の日程調整をする暇がないぞ。……まあ、参加できなかったらそのときはそのときだ。

 

≪分かった。ちょっと待ってろ≫

「ミステール。5人衆に念話共有。ちゃんとコールは入れてやれよ」

「着替えに遭遇したら悪いものなぁ。呵呵っ」

 

 うるさいよ、思い出させるんじゃない。

 ミステールが因果を組み替え、いつもの5人組に念話を飛ばす。それぞれ他にやっていたことがあるのだろう、バラバラに念話に応じる。

 

≪なにー。これからはるかンとこに遊びに行くとこだったんだけど≫

≪あ、じゃあ窓開けておくから勝手に入って来てね。ん、なのはちゃんもいるの?≫

≪はいもしもし、伊藤です。どうかしたの、ミコトちゃん≫

≪おー! ミコトからの念話、これで二度目だ! ってなのはァ! あんたは後でちょっと話あるから、逃げるんじゃないわよ!?≫

≪荒れてますなぁあきらちゃん。はろろーん、なのはちゃん。おひさー≫

≪……なんで皆こんなに小慣れてるの? あきらちゃんの発言からして、これで念話二度目なんだよね?≫

 

 先日魔法に触れたばかりの君と、一年前からオレに振り回され続けているこいつらじゃ、不思議耐性が違うんだよ。それに念話共有と言っても、電話会議みたいなものだ。狼狽えるほどじゃない。

 魔導師である自身が一番経験値が少ないという理不尽をかみしめながら、なのはは先ほどの話を皆にもする。返ってきた答えは、全員OK。ノリのいい連中である。

 用件はそれだけだったのだが、この年頃の女子が(念話上とはいえ)一堂に会し、用件だけで終わるわけがない。そのまま集団での雑談に移行した。

 なのはの相手を連中に任せることが出来たオレは、そのまま内職作業の方に集中したのだった。これまでの会話は、全て内職をしながらだったのである。

 

「食うためには働かなきゃな」

「世知辛いのぉ……」

 

 それが世の中というものだ。

 

 パーティでは、まあ色々とあった。

 フェイトそっくりのアリシアという存在に初めて会った5人衆や月村、バニングスが仰天したり。

 犬好きのバニングスに追い掛け回されて、アルフが辟易としたり。

 ソワレとミステールが翠屋のシュークリームを大層気に入ってしまい、今後定期的に求められることになったり。

 実は小動物でなかったスクライアが、あきら達やバニングスに問い詰められたり。

 変態が変態的にうるさくして、オレとなのはの左ストレートが炸裂したり。

 高町姉から恭也さんの人外っぷりが上昇して稽古が辛いと愚痴られたり。

 まあ、色々と、あったのだ。

 

 

 

 

 

 最後に、ひと時の別れについて語り、終わりにしようか。

 

 

 

 プレシアの葬儀が終了し、翌日のことだ。オレ達――「ジュエルシード事件」の関係者は、海鳴臨海公園に集まっていた。

 八神家。はやてを含めた全員。高町家。なのはと恭也さん。おまけで変態。

 そして、スクライアとハラオウン執務官。それでこの場にいる全員だ。

 この事件についてこちらで出来ることが全て終了したため、アースラは一度本局のあるミッドチルダに帰還することになる。

 それに伴い、管理局員であるハラオウン執務官、それと本来は管理世界に住むスクライアが、第97管理外世界を離れることになる。

 プレシアのときとは違う。永遠の別離ではない。けれど、人はそれを惜しむ生き物だ。

 

「ぐすっ! ほ、ほんとに、レイジングハート、返さなくていいの?」

 

 泣きながら、なのははスクライアに尋ねる。赤く丸い宝石状の待機形態となったインテリジェントデバイスは、今もなのはの胸元にかかっている。

 スクライアは穏やかに笑いながら、首を縦に振った。

 

「彼女はもうなのはをマスターと認めている。僕が持っているより、なのはに使ってもらった方が、レイジングハートも幸せだよ」

「でもでも、わたしほとんど魔法なんて使えないし、上手く使いこなせないかもしれない! レイジングハートに迷惑かけちゃうかも……!」

『Master... Don't worry.(お気になさらず)』

「なのは。君には素晴らしい魔法の才能がある。それは、僕なんかとは比較にならないものだ。君がその優しい心を忘れずに、レイジングハートと力を合わせ続けたら……きっと、素敵な魔導師になれると思うんだ」

「……うんっ! きっと、なるよ! ユーノ君が自慢できるぐらい、立派な魔導師に……っ!」

 

 個人的には何を好き好んでと思うが、彼女には彼女の判断基準がある。きっと、彼女にとってそれは素敵な選択肢なのだろう。

 それに。今回みたいなことがあったときに、無力では後悔することになるだろう。有事に備えて力を蓄えるのは、間違っていることじゃない。

 だからきっと、なのはは今の姿からは想像もつかないほどの魔導師になることだろう。スクライアが、その才覚を認めているのだから。

 恭也さんが前に出る。彼もまた、少し寂しそうだ。

 

「……色々あったが、貴重な経験をさせてもらった。感謝する」

「こちらこそですよ。正直、恭也さんがいなければ、全てのジュエルシードは集まらなかったかもしれない。そのぐらい、恭也さんには助けてもらいました。……ありがとうございます」

 

 彼がオレ達の最大戦力だったことは、誰の目にも疑いはない。だからこそ、最大の功労者に対して、スクライアは深く頭を下げた。

 次に前に出たのは、変態……もとい、藤原凱。スクライアの直弟子。

 

「あー。長ったらしいのは好きじゃねえんだ。……次会うときは度胆抜いてやっから、覚悟しとけよ。頑固師匠」

「はは、そりゃ楽しみだ。……ちゃんと腕を磨いておけよ、バカ弟子」

 

 言葉少なにハイタッチを交わす。彼らは、それで通じ合えるだけの仲になったのだろう。……別にかっこいいとかは思っていない。本当だ。

 フェイトの背中を軽く叩いてやる。彼女はオレの顔を見て、頷いてやると前に出た。

 

「……ケンカ仲間って、意外と悪くないものだったよ。わたしももっと研鑽しなきゃって思った。……本当に、ありがとう」

「君に頭を下げられると、どうしても調子が狂うよ。……また魔法論で討論しよう。今度も、僕が勝つ」

「ふふ。負けないよ」

 

 最初は険悪だった彼らの間にも、いつの間にか友情が出来ていた。元々方向性は似ていたのだから、波長は合ったのかもしれない。

 フェイトに並ぶように、はやて達八神家の皆が前に出た。オレ以外、だが。

 

「何や、結局わたしは皆にご飯振るまっとっただけやけど……楽しかったで。またな」

「私もです。それに、妹たちがお世話になりました。ありがとうございます、ユーノ君」

「ユーノ、ぜったい、かえってくる。やくそく」

「おや、姉君はいつの間にユーノ少年を許したのやら。……茶化すのはよそう。わらわからも、再会を祈らせてもらおう」

「あんまりおはなしできなかったけど、こんどはゆっくりはなそうね」

「いざとなりゃ転送魔法でいつでも会えるんだ。そう湿っぽくなるもんじゃないよ。……またね、ユーノ」

「っ、はい!」

 

 涙腺を刺激されたらしいスクライアは、少し声を震わせながら、大きく返事を返した。

 はやて達が下がる。……オレで、最後だ。彼が少し浮かんだ涙をぬぐうのを待って、彼の前に立った。

 

「……ミコトさん」

 

 オレの名を呼ぶ。しばし、無言の間。オレは何も返さず、彼を見た。いつもの仏頂面で。

 

「僕は……最初にミコトさんを見たとき、格好のせいで男性だと思ったあのとき……ここまでミコトさんに頼ることになるとは、思ってませんでした」

「……オレも、ここまで深く関わるつもりではなかった。少々深入りが過ぎたように思う」

「だけど、そのおかげで……多分僕達だけだったら出来なかった結果を、残せました。あなたが、いたから……」

 

 スクライアは言葉を切る。何かに耐えるように、波が過ぎるのを待つ。

 

「ジュエルシードの件は……本当に申し訳ありません。"あの件"が管理局に記録されないためには、これ以上お渡しできなくて……」

「気にするな。元々4つという契約だったんだ。最初の契約を違えるほど、自分勝手な人間じゃない」

「っ、……はいっ。ミコトさんは、そういう人ですもんね……っ」

 

 「契約」という言葉に反応したか、スクライアの声がまた震えだす。契約が満了したことで、オレ達の関係性は解消されたのだ。

 今ここにいるのは、赤の他人同士。ただ、かつて同じ目的のために行動を共にしただけの、他人同士だ。

 スクライアは……多分、それを認めたくないのだろう。割り切っていたはずの彼は、過ごした時間というものによって、幼い精神では割り切れなくなってしまったのだろう。

 分からない。……少し前までのオレなら、そう断言できた。だけど今のオレは、少し分かる。の、かもしれない。やっぱりよく分からない。

 

「僕は……。僕はっ……ミコトさんのチームで、ミコトさんがリーダーを務めるチームで、役割を、全うすることが、出来たでしょうか……」

 

 震えを抑えようとして、それでも抑えられない少年の声は、抑えようとしてブツ切れだった。だけど、意味は伝わる。

 もう今更リーダー云々に言及はしない。彼らの中では、オレは間違いなくリーダーとなってしまっているのだ。それは、オレが変えちゃいけないことだ。

 彼の震える問いかけに、オレは答えた。

 

「パーフェクトだよ。誰よりも作戦の要を務めてくれた。お前がダメなら、皆ダメになってしまう。恭也さんでさえ」

「……そう、ですかっ。そう、言ってもらえてっ、本当、に、嬉しいですっ……」

 

 オレの答えは本心からのものだ。彼の補助魔法・防御魔法が、オレ達の最終ラインだった。彼はただの一度だって、それを割らせなかった。吹っ飛ばされたり踏み潰されたりしてた変態とは大違いだ。

 それが正しく伝わったかは分からない。彼は今、自身の感情との戦いで手いっぱいになっているから。

 

「……お前達は」

 

 どうにも昨日のことがあったせいで、オレは少し饒舌になっているらしい。

 

「お前達はオレのことを、最高のリーダーだとか言ってくれる。だけどオレはそうは思わない。もし最高のリーダーなら、最高の結果を出して然るべきだ」

「……ミコトさんはっ、十分すぎるほどっ」

「十分な結果じゃダメだ。最高の結果でないと、最高のリーダーとは呼べない。だから、オレは最高のリーダーではない」

 

 そう、最高なのはオレではない。

 

「最高のメンバーがいたから、オレが最高のリーダーに見えただけだ。オレはそう思っている」

「っ! それ、はっ」

「なのはの砲撃魔法の才。藤原凱の防御魔法の才。フェイトの戦闘魔導師としての能力。アルフの強力な遊撃手としての能力。恭也さんは……少し人外染みていて、判断に困るな」

 

 ふっと笑いが漏れてしまう。恭也さんは今どんな顔をしているだろうか。多分ちょっとムッとした顔をしてるんだろう。思い浮かべて、もう一度クスリと笑う。

 

「そして、スクライア。お前の補助能力。お前の、最後のラインを維持する能力。オレは適材を適所に配置しただけ。あとはお前達が勝手にやって、最高の結果を叩きだしただけだ」

「っっ……僕、はっ……」

「だから……オレはお前に、礼を言わなければならない」

 

 その場で、深く頭を下げる。長く伸びたオレの髪が、パラパラと降りてきた。

 

「ありがとう、ユーノ・スクライア。お前のおかげで、多少はマシな結果を残せた。不出来な指揮官から、最高の守護者に向けて、最大級の感謝を」

「っっっ! う、うあ、ぼ、僕は、僕はっ……!」

 

 彼の瞳から、ボロボロと涙がこぼれ始めた。そうなっては、もう止めようがない。次から次へと溢れ出すものだ。

 

「ご、ごめんなさっ……こんな、もっと、わらって、おわかれ、するつもりだったのにっ……!」

 

 しゃくりあげながら、とぎれとぎれに言葉を発する。

 

「ミコトさんにっ! ほ、ほめてもらえる、なんて、おもってなくって……! わりきらない、と、ミコトさんに、めいわくっ……!」

「割り切らなくていい」

 

 きっぱりと言う。涙を流す彼の頭を両手で抱え、自分の胸に押し当てる。……男にこんなことをしてやるのは、初めてだな。ちょっと恥ずかしい。

 

「お前は、割り切らなくていい。出来ないんだから。オレが割り切ってても、お前は割り切らなくていい」

「そんな、そんなのっ! ダメ、ですよっ! っ!」

「オレとお前は「違う」んだ。オレみたいな割り切り方に、合わせちゃダメだ。割り切れてないんだから、……我慢しなくていい」

 

 その言葉をきっかけに、彼はオレの体にしがみつき、大声で泣き始めた。

 

「いっかげつっ! ミコトさんといっしょに、ジュエルシード、さがして! そのあいだ、ほんとうにたのしくってっ! おわかれ、つらくってぇ!」

「知ってる」

「でも、こんなこと! いったらっ、ぜったい、ミコトさんに、めいわくっかけるって!」

「オレはもっとお前達に迷惑をかけた。オレの都合で振り回してしまった。だから、気にするな」

「でもっ、だけどっ!」

「気にするな。泣きたいときに、泣けばいい」

「うぅぅぁぁぁぁ……っ!」

 

 彼の涙に、もらい泣きする者も何人かいた。

 なのはは当然のように号泣して恭也さんに慰められている。フェイトとアリシアも、互いに抱き合ってブランに包まれている。ソワレは、はやてに抱かれて体を震わせていた。

 オレは……多分、無表情だったんじゃないかな。正直、意識が彼に集中していたため、自分の表情がどうだったかなんて覚えていない。

 ――ハラオウン執務官の証言によれば、「まるで母親のような微笑みを浮かべていた」そうだ。……だとしたら、オレも少しは成長出来たのかな。

 

 彼の嗚咽が止まるまで、オレは抱き続けた。離してやると、彼は恥ずかしそうに顔を朱に染め、それ以上に目は赤くなっていた。

 

「男がなんて顔をしている。そういうのは女の子がする表情だ。……まあ、お前の場合は似合ってなくもないな」

「うぅ……やめてくださいよ」

 

 軽口に反応出来る程度には回復出来たか。まあ、オレも昨日はやての胸の中で泣きはらしたわけで、人のことは言えないんだが。

 胸の辺りが彼の涙でグッショリ濡れている。……帰ったら着替えるか。今は気にしないでやろう。

 

「……ごめんなさい。本当は、ちゃんと笑顔でお別れするつもりだったのに、こんなグチャグチャで」

「気にするなと言っている。オレ達と離れるのが辛い時点で、割り切れていないお前には無理なんだから」

「うっ。……達、じゃなくて、ミコトさん、なんだけど……」

「独り言は心の中で言ってくれ。……で、もう行けそうか?」

「はい。……本当にありがとうございます。あなたの指示で動けた一ヶ月、本当に楽しかったです。多分、これまでの人生で、一番」

 

 8年の人生ならそんなこともあろう。今後、新しい思い出で塗り替えていくといい。

 彼はしばしの間、沈黙をする。何か言いたいが、まだ踏ん切りがつかない。そんな感じの沈黙。

 まあ、当然意を決して口を開くわけだ。こんなシーンを今まで何度か見てきたなぁと、場違いに思い出した。

 

「あのっ! 次に会うときまでに、もっと逞しく、男らしくなってきます! だから、そのときはっ……!」

 

 かなり早口に、顔を真っ赤にしながらそこまでまくしたてた。……おいおい、そういうことなのか?

 オレの中にとある直感が湧く。女の子が自分に向く視線に敏感であるという事実を、我がことながら他人事のように理解した。

 そして、彼は最後の一節を紡ぐ。

 

 

 

「また、あなたのチームで指揮を受けたいですっ!」

 

 ……。こいつ……。

 ため息が出そうになる。脱力しそうになるのさえグッと堪えた。女の子にここまでさせるとは、実に罪深い男だ。

 だから、少し意地悪したくなった。

 

「ほう。お前はまた今回の事件みたいな荒事を望むか。いやはや、修羅の道を行くとは男らしい。恭也さんに弟子入りしてみてはどうだ?」

「えう!? あ、いえ、そういう意味じゃないんです! そういう、物騒な意味じゃなくて!」

 

 分かっているとも。分かっているが、誰が素直に受け取ってやるか。男を磨いて出直して来い、ヘタレ。

 藤原凱は、双方の意味が分かったらしく、「あちゃー」と言いながら顔に手を当てている。まあ、お前なら分かるだろうな。この方面においては、彼の方が師匠のようだ。同じヘタレだけど。

 ……まあ、あれだな。一応勇気は出したわけだ。そこは評価してやっても、いいだろうか。

 

「……事件の有無に関わらず、お前が本当に逞しく男らしくなって、またオレの前に現れたら、だ」

 

 ショボくれた顔で疑問符を浮かべる少年に、オレは小さく笑って言ってやった。

 

「そのときは、考えてやるよ。「ユーノ」」

「……あっ! はい! 絶対ですよ!」

 

 オレとユーノは握手を交わし、彼はハラオウン執務官の方に歩いて行った。心なし、その歩調はスキップを踏むように見えた。

 だからだろう。

 

「あいたっ!? 何するんだよ、クロノ!」

「知るか。何かイラッと来た。あの程度で浮足立ってんじゃないよ、淫獣」

「誰が淫獣だッ! このムッツリーニ執務官!」

「君が僕をそう呼ぶんじゃあない! スケベフェレットもどき!」

「僕は人間だ! フェレットもどきじゃない!」

「スケベは否定しないのか……」

 

 オレは言いたい。「二人とも、そのケンカは女の子に見せたら、評価ダダ下がりだぞ」と。

 

 そんな感じで、最後は全く締まらずに、オレ達はユーノとハラオウン執務官と、別れを告げた。

 

 

 

 これで本当に、「ジュエルシード事件」の一連の流れは、全て終了した。

 全てが終わり、元通りとはいかないだろう。八神家の環境は変化し、オレ自身の心境も変化した。それでも、オレの目的は変わらない。

 はやてと笑顔で過ごし続けられること。そのために、はやての足を治すこと。事件の前と後で変わらない、唯一の目的。

 だからオレは、明日も奔走するだろう。差し当たっては、火の車になっている八神家の財政を立て直すために。

 ……足の件は、しばらく先になりそうである。

 

 

 

 

 

「なーミコちゃん」

「どうした、はやて」

「あのときユーノ君が本当に言いたかったこと……分かってるやろ?」

「分からいでか。あんなあからさまで分からない女がいるなら見てみたい」

「せやな。で……ほんとに考えるん?」

「そのときが来たらな。まあ、オレは当たるも八卦程度で考えてるよ。OKするとも言ってない」

「うわぁ……魔性の女やで、ミコちゃん」

「はやてはOKしてほしいのか?」

「んー……あのユーノ君は、やめてほしいなぁ。ヘタレ過ぎてミコちゃん任されへん」

「そういうことだ。あれならまだハラオウン執務官の方がマシだ」

「クロノ君? 何でそこでクロノ君が出てくるん?」

「……なんでだろうな。自然に出てきた。別に彼に対して思うところはないはずだが……最後のやり取りのせいか?」

「わたしはあんまりしゃべってへんからなぁクロノ君。判断できんわー」

「何にせよ、ユーノ少年にはもう少し気張ってもらわないとな。恭也さんレベル、は高望みしすぎだが、その欠片程度でも手に入れてもらわないことには、箸にも棒にもかからんよ」

「お? ひょっとしてミコちゃん、恭也さんのこと好きなん?」

「……分からん。魅力的な人だというのは分かるんだが……あの人がオレのことを妹としてしか見てないせいか、そういう目で見たことがないというか、そもそも見方が分からないというか」

「……ユーノ君、かなりの無理ゲーに手を出してもうたんちゃうかな」

「そこは彼の自己責任ということで。まあ、あれだ。女の子に生まれたんだから、一度ぐらいはしてみたいじゃないか。恋、というやつをさ」

「せやねー」




プレシアさんは助かりませんでした。既に病気が末期まで進行しており、管理世界の医学でも太刀打ちできないレベルでした。この世界には、どんな病気も治す不思議な万能薬は存在しないのです。
それでも、プレシアさんは満ち足りて逝きました。狂気に魅入られ、小数点以下の確率の希望にすがりながら最期を迎えるのではなく、納得のいく結果を胸に生涯を終えることが出来ました。
それでもミコトは、もっと上手くできたんじゃないかと思ってしまう。それが、残されたものに課せられた命題なのです。

フェイトとアリシアはハラオウンではなく八幡となりました。プレシアから託されたのはミコトであり、リンディ提督ではないのです。
実際のところ、母親としての能力はリンディ提督の方が上でしょう。息子を一人立派に育てて来ていますし、年季が違います。
だけどミコトには、管理世界というしがらみがありません。そして彼女は、一人ではありません。だからきっと、新たに加わった二人の娘を、立派に育て上げていくことでしょう。

最後の最後でNLをぶち込んでみました。しかしミコトちゃん、気付いているけど気持ちは動かず。ユーノ君、残念! 野球で言えばまだ一回表ですしま、多少はね?
今のミコトは、そもそも「男を恋愛対象として見る」という視点を持っていません。もちろん女の子も同様。感情が足りていないため、恋愛という感情が生まれるレベルではないのです。ある意味でユーノよりもなのはよりも子供なのです。
それでも、恋に興味を持っているのは、少しは成長した証なのではないでしょうか。

つまり、ここからが本当の百合だってことですね(白目)





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