不思議なヤハタさん   作:センセンシャル!!
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間の日常会。何気に難産でした。

前回の更新で50万文字を超えてしまいました。100万文字行く前には本編を完結させたいですね。物語進行ペースの割に長い作品で、読者の皆様にはご迷惑をおかけします。
今後も「不思議なヤハタさん」にお付き合いいただければ幸いです。


二十七話 騎士甲冑

 親愛なる八幡ミコト君へ

 

 君から手紙をもらえるとは思っていなかったから、届いたときは内容もさることながら、驚いたよ。

 君のことは、はやて君からの手紙でいつも聞かされていた。大好きな「相方」、とね。とても仲睦まじく暮らしているようだね。君達を見守っている私の使い魔達も、いつも羨ましそうにしていたよ。

 

 何故私の正体を知っているのかとか、そんなことは今更聞かない。君ならいつか真実に辿り着くんじゃないかという予感も、なかったわけじゃない。君は本当に不思議な女の子だね。

 こうして私に手紙を送ってきたということは、私の考えもある程度推測出来ていることだろう。弁解はしないよ。君がそんなことで満足する子じゃないことは、はやて君からの手紙で知っているからね。

 こうなった場合にどうするかもちゃんと考えている。そちらから会談の席を設けてくれるというのなら、こちらもスケジュール調整がしやすくて助かるよ。

 ただ、君も分かっている通り、私は時空管理局の顧問官という立場にあるため、すぐに会いに行くのは無理だ。7月の頭までには絶対に調整を終えるから、それまで待っていただけないだろうか。

 細かな日程が決まったら、再度連絡する。使い魔ともども、君達に会える日を楽しみにしているよ。

 

 そちらはこれからだんだん暑くなっていく時期だ。はやて君やフェイト君、アリシア君とソワレ君にも、体に気を付けるよう伝えてくれ。

 

 心を込めて ギル・グレアム

 

 

 

「やはり監視されていたか」

「使い魔がおったんか……全く気付かんかったなぁ」

 

 イギリスにいることになっているギル・グレアムに向けた手紙を送ってから数日、返信を八神家の皆で読んでいる。オレがやったフォーマルな書式に合わせるように、整った文体だった。

 はやてにいつも返って来る手紙はもっと砕けていて、好々爺然とした内容だ。こちらが本当の彼なのか、向こうもまた本心なのか、それは分からない。

 オレ達にはそもそも魔力を感知する術がなかったから、使い魔の存在に気付かなくてもおかしくはない。だが、今はフェイト達もいる。それなのに一月の間全く気付かなかったのだ。

 

「多分、隠密に長けた使い魔なんだと思う。戦闘能力は分からないけど、わたし達で気付けないレベルってなると、単純な魔法の技量はまるで歯が立たないかも……」

「しかも使い魔「達」ってことは、それが複数いるんだろ? 士郎さん達に応援頼んで正解だったね」

 

 交渉というのは、条件を対等に持っていって初めて行えることだ。向こうの戦力が大きかった場合、それを封殺する何かがないと交渉は成立しない。図らずも最適な判断となったようだ。

 ちなみに、士郎さんと美由希については、オレが直接話をして既にオーケーをもらえている。美由希の方は、自分で力になれるかどうかを不安がっていたが、荒事になったら少なくともオレよりは役に立つ。

 オレは剣のことは分からないから自分では判断がつかないが、"剣の騎士"たるシグナムに言わせれば、士郎さんを10とすれば、恭也さんは7、美由希は3程度だそうだ。シグナム本人は、剣だけだと5程度らしい。

 

「長年戦い抜いた私でも敵わぬほどの剣腕とは……御神の剣士とは、本当に面白い存在だ」

 

 恭也さんと模擬試合を行い、惜敗した際のシグナムの言葉だ。恭也さんもライバルを見つけたみたいな顔をしており、満更でもなさそうだった。オレには理解できない世界だ。

 ともあれ、魔導師組に加えてヴォルケンリッターがおり、さらには御神の剣士が3人もいる。これで対処できなければもうどうしようもない。心配はいらないだろう。

 

「7月頭ってことは、あと半月以上あるんだろ? その間はどうすんだ?」

 

 ヴィータの問い。ギル・グレアムとの交渉が未達だからと言って、出来ることがないわけじゃない。ミステールにミッド・ベルカ式の魔法因果を教えることもそうだし、オレ達にもやることはある。

 

「もちろん、管理外世界……特に無人世界で魔法動物を捕まえて、蒐集による延命の確認を行う」

 

 何故無人世界がいいかと言うと、目撃者が発生するリスクが非常に低くなるからだ。不審に思われて管理局に通報されたんじゃ、何のためにギル・グレアムと交渉するのかという話になってしまう。

 リッターの方も、過去の主のせいで管理局と敵対したことがあり、あまり顔を合わせたくはないとのことだ。構成人員はともかくとして、組織としてはとことんオレ達の陣営に嫌われている"治安組織"であった。

 ところで、蒐集を行うにあたって、実はオレ達は準備が出来ていなかったりする。

 

「でも、わたし達の騎士甲冑がまだなんですよね……。もちろん、必要とあらば甲冑なしでも戦いますけど」

「あかん! そんなことして怪我したらどうすんねん!」

 

 騎士甲冑。ミッド式の魔導師で言うところのバリアジャケットのことだ。これは、書の主であるはやてが作り、リッターに与えるものらしい。

 だがシャマルの言葉通り、まだ完成していない。作り方は基本的にバリアジャケットと同じく、主のイメージから騎士が魔力を用いて構築するだけだから、はやて自身に専門的な技術は必要ないらしい。

 では何で完成していないかと言うと……。

 

「とりあえずは既製品の道着などで代用すればいいだろう。一度決めたら変えられないというわけではないのだから」

「あかんて! 女の子にそんな格好させられへん! ミコちゃん、ふぅちゃんが道着みたいなバリアジャケット使うてるの想像してみぃ!」

「ないな」

「即答っ!? あ、いや、嬉しいけど……」

 

 つまりはそういうことだ。変なところではやての凝り性が発動し、イメージ作りが難航しているのだ。

 

「だが、あまり時間をかけるわけにはいかないぞ。藤原凱の話が何処までこの世界に適用されるかは分からないが、遅くなるだけ不都合になることは変わらない」

「分かっとるって。けど、ただ可愛い格好やのうて、ちゃんと甲冑らしくせなあかんし」

「私は、主からいただけるものであれば、どのような格好でも光栄です」

 

 忠誠心バカが何か言ってるが、こいつは分かっているのか。はやてが一番難しいと思っているのは、シグナムの格好だ。

 ヴィータはゴシックロリータ調、シャマルはフォーマルドレス調、ザフィーラは甚兵衛と、似合いそうな方向性をささっと提示したはやてであるが、シグナムだけは方向性の時点で迷走したのだ。

 その最大の理由は、外見と中身のミスマッチだ。……オレが言うな? バカを言え、オレは言葉遣いがアレなだけで、中身は普通に女の子だよ。

 見た目だけで言えば、こいつは麗人だ。スタイルもよく、可愛らしい格好をして表情を取り繕えば、声をかけてくる男性で笛吹き状態になれるだろうと推測できる。

 だが、中身が雄々しい。おっぱいお化けのくせに、男よりも男らしい。何せ恭也さんと獰猛に笑いながらガチで斬り合えるのだ。そんな男らしい巨乳美人に似合いそうな正装なんて、パッと思い浮かぶわけがない。

 なんでもっと分かりやすい見た目と中身でなかったのか。言ってもしょうがないことだから言わないが、思ってしまう。こいつだけは剣道着でいいんじゃないか、と。

 

「ん? いまどんなかっこうでもいいって言ったよね?」

 

 何故かアリシアがシグナムの発言を拾い、視線鋭く奴を見る。そんな目で人を見るんじゃない。アリシアに脳筋が伝染ったら大変だろう。

 

「この国にぃ、こんなかっこう、あるらしいよ?」

「んなぁっ!?」

 

 ピッと付けられたテレビに映るのは、大相撲の中継。まわしのみで立ち合いを繰り広げる巨漢たち。アリシアが言いたいのはつまり、「こんな格好でも光栄なんだよね?」ということである。

 

「……あ、主! あの格好だけはご勘弁を!」

「するわけないやろ。シアちゃん、あんましシグナムをからかったらあかんで」

「ごめんなさーい。おもしろいはんのうしてくれるとおもったから、つい」

「っっっアリシアー!」

「キャハハハー!」

 

 アリシアが逃げ、シグナムが顔を真っ赤にして追い回す。あれで二人とも楽しんでいるようだ。

 先日の藤原凱の話で、「蒐集はリッターの使命ではなかった」と気付き、シグナムもまた切り離すことが出来たようだ。オレとの距離感は相変わらずだが、それでも八神家の一員として迎え入れられる程度にはなった。

 この、アリシアがシグナムをからかって走り回るというのは、数日の間に構築した彼女らなりのコミュニケーション方法だ。シグナムも自分から乗っている節がある。彼女なりに、日常に溶け込もうとしているのだろう。

 そうやって皆と上手くやろうとしているなら、特に文句を付けることはない。しいて言うならば、いい加減はやてのことを「主」と呼ぶのをやめろというぐらいだ。

 ザフィーラも「主」と呼ぶが、彼はペット的ポジションだから人前ではしゃべらないし、「はやて」と呼ぶように切り替えることは出来る。シグナムとは違うのだ。

 家の中をドタドタと走り回り、はやてから窘められる。ここまでテンプレ、だ。

 

「冗談は置いておいて、本当にどうする。出来れば明後日の日曜日には、ジュエルシード回収チーム-1と一緒に一度蒐集を試したいと思っているんだが」

 

 言い忘れていたが、今日は金曜日。オレとブランとシャマルはこれから翠屋のバイト(オレは"お手伝い")があるため、あまり長い時間話すことは出来ない。

 明日と明後日は、元々蒐集を試すためにシフトを空けておいた。オレと一緒に入ろうと日曜にシフトを入れていた宮藤(美由希の同級生)が絶望していたが、知ったことではない。

 稼ぎ時的な意味で貴重な休みを潰しているのだ。この際急場しのぎの騎士甲冑でもいいから、出撃できるようにしてもらわなければ困る。

 

「はやての体のためでもあるんだ。この先本番の騎士甲冑を作る機会はあるんだから、今は妥協してくれ」

 

 ちょっと卑怯な言い方になってしまったかもしれないが、彼女を思えばこそだ。……そろそろ時間だな。

 ギル・グレアムからのエアメールを封筒にしまい、フェイトに預ける。立ち上がり、ブランとシャマルとともに玄関に向かおうとしたところで。

 

「……せや! 一回皆で見たらええねん!」

 

 パンッと手を鳴らすはやて。キュラキュラと車椅子を回転させ、オレの方を向く。その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

 そして彼女は、宣言する。

 

「第一回、八神家ウィンドウショッピング大会や! 明日の放課後、皆で隣町のデパートに行くで!」

 

 そういうことになった。

 

 

 

 

 

 明けて土曜日。学校授業は午前中のみのため、家で昼食を食べてから隣町のデパートへ行く……のだが。

 

「「八神家ウィンドウショッピング大会」じゃなかったのか」

「誰も「八神家だけ」とは言うてへんで」

 

 さあ行くぞと玄関を開けたところで、いつもの5人衆が待ち構えていた。どうやらオレが席を外している間にはやてが誘っていたようだ。別にオレに隠れてやる必要はないと思うのだが。

 ……どうにも、何か企んでいる気がするな。あきらなぞ、ニヤニヤ笑いが隠せていない。

 

「何を考えている」

「べっつにー。ヴォルケンリッターの邪魔はしないって。わたしらはわたしらで、ショッピングするのよ」

「そういうことを聞いているんじゃないんだが……まあ、いい」

 

 あきらに関しては、妙なことをしたらアームロックを仕掛けてやればいい。彼女との間に遠慮の二文字は存在しないのだ。

 他の連中は……あきらほど警戒する必要はないだろう。しいて言うならば亜久里だが、平時の彼女ならば軽くあしらえる。彼女が恐ろしいのは怒ったときだ。

 

「隣町なんて滅多にいかないし、あたし達も行きたいよねー」

「ご、ごめんねミコトちゃん。一家の団らんにお邪魔しちゃって……」

「気にするな。そもそも今日の目的は団らんとは程遠い。一応、はやての足関連の延長ではあるからな」

 

 延長距離がかなりあるが。幅跳びでは届かない距離だな。

 むつきがこの様子なら、もし亜久里がうろちょろしても面倒を見てくれるだろう。あとは、田井中とはるかだが……。

 

「さあシグナムさん! 今日こそレヴァンティンを見せてもらうよ!」

「かんねんするのだー、シグナム!」

「だから見せんと言っている! この間ヴィータがグラーフアイゼンを見せていただろう! それで満足しろ!」

「機構が原始的でカートリッジシステム以外にめぼしいところなかったんだもん! その点シグナムさんなら、炎熱の変換資質あるし!」

『...』

「げ、元気出せよアイゼン! あたしは頼りにしてるからな!?」

 

 相変わらずデバイスが絡むとぶっ飛んでいるな。田井中はアルフをもふもふして現実逃避していた。

 

 ――はるかの発言に出てきた「カートリッジシステム」だが、ベルカ式のアームドデバイスに装備されている、魔力の拡張機構だそうだ。ミッド式デバイスとの違いの一つだ。

 予め魔力を溜めこんでおいた「カートリッジ」と呼ばれるもの(見せてもらったが、まるで薬莢のようだった)を「ロード」することによって、自身の魔力以上の出力を可能にするシステムだ。

 ここだけ切り取れば簡単にパワーアップ出来る素晴らしいシステムに思えるが、常以上の力を出せば歪が発生するものだ。デバイスにかかる負荷と、慣れていないと体にかかる負荷も無視できないらしい。

 それでもベルカ式なら実用レベルでの運用が可能らしいが、ミッド式との相性はよくないとのことだ。これについてオレは、「溜め時間と最大出力の差」と推測している。

 ベルカ式は直接攻撃や即時攻撃が主体であるのに対し、ミッド式は遠距離から溜めての砲撃・射撃が主体だ。魔法発動から実攻撃までの時間は、ベルカ式の方が短い。

 ブーストした魔力を維持している時間が長く出力も大きい方が、負担が大きくなるのは当たり前だ。つまりベルカ式は、ブースト維持を短くすることによって、負担を軽減しているということだ。

 ちなみにこの話を魔導師とリッター、アリシアとはるかにしたところ、感心されてしまった。オレは傍観者の推測を語ったにすぎないのだが。

 

 閑話休題。はるかから悪意なくディスられたグラーフアイゼン(ヴィータのデバイスで、ハンマー形状のアームドデバイス。今は待機形態でペンダントになっている)が落ち込んだように明滅した。AIの芸が細かいな。

 まあ、アイゼンもレヴァンティンも、シャマルのクラールヴィントも、ある意味ヴォルケンリッターの一員だ。通常のデバイスよりもAIの感情表現が豊かなのかもしれない。

 

「はるかって、意外とデバイスマイスターの素質があるのかもしれないね」

「少なくともアイゼンが「原始的」と言える程度には見られてるらしいからな。だが、管理外世界においてはデバイスを使える人自体が少ないだろうな」

「あはは……そのうちリンカーコアがない人でも使えるデバイスを作っちゃうかもね」

 

 もしそんなことになったら、この世界が管理世界入りしそうで怖い。管理世界のしがらみに関わりたくない身としては勘弁願いたい。

 ともかく、警戒すべきはあきらのみ。彼女に好き勝手させなければ、特に問題なくウィンドウショッピングを終えられるだろう。

 ……考えてみると、ウィンドウショッピングのためだけに隣町まで行くのか。非効率だな。確かに大きなデパートではあるが、そこまでする必要はあるのか?

 いつぞやか、オレがファッション矯正をされた駅前の店でいいんじゃないだろうか。……とはいえ。

 

「ソワレ、デパート、たのしみ!」

「ここいらにはスーパーぐらいしかないからのう。わらわも年甲斐もなくわくわくしておるわい」

「ミステールちゃん、あなた0歳でしょう。……わたしもそうですけど」

 

 今から言うわけにはいかない、か。彼女らの楽しみに水を差すのは、オレも望むところじゃない。どうせ今日はシフトを外しているのだし、気にすることはないか。

 

「あまりグダグダして見る時間が少なくなってももったいない。そろそろ出発しよう」

「なんや、ミコちゃんも意外と楽しみにしとったんか?」

「……そうかもな」

 

 ニヤニヤしたはやての言葉に、オレは小さく笑って、肯定の言葉を返した。

 

 

 

 甘かった。チョロ甘だった。

 

「はい、ミコトちゃん! 次のお洋服はこれだよー!」

「まだまだミコっちに着せたい服はあるからねー! むーちゃん、パパッと着替えさせちゃってー!」

「う、うん! ごめんねミコトちゃん!」

「……はあ。今日はヴォルケンリッターの服を見る日のはずだろう。何でオレまで……」

 

 オレは学習能力のない阿呆なのだろうか? いやいや、そんなことはない。彼女らの行動力が無駄に成長しすぎていたのだ。

 デパートに着き、一直線に婦人服売り場へ。そこでオレは、唐突にあきらと田井中に羽交い絞めにされた。回避する猶予すら与えられなかった。

 ずるずると引きずられるように試着室へ放り込まれ、亜久里とはるかが持ってきた衣類と一緒にむつきを置いて行かれ、宥めすかされ着せ替えショーをやらされる羽目になったのだった。

 あまりに鮮やかな一連の手腕に思わず「ワザマエ!」と言いたくなってしまう。無論、皮肉である。この分でははやても共犯なのだろう。一体何をやっているのか。

 

「や、やっぱり嫌だった……?」

「嫌というわけではない。合理性が感じられないだけだ。……だから君が泣きそうになるな、こっちがいたたまれなくなる」

 

 若干涙目気味のむつきに、なるべく優しい声色となるように語りかける。以前のオレなら泣こうが喚こうが知ったこっちゃないだっただろうが、今のオレはそれを良しとしない。

 まだ彼女達を「友達」と呼べるほどの友情を持っているわけじゃないが、それでも感じてはいるのだ。知人以上友達未満、と言ったところか。

 それだけの繋がりを持っている相手が泣きそうなのを放置出来るほど、今のオレは非情になれないのだ。必要とあらばなれるだろうが、日常の中ではもう無理だろう。

 我ながら、甘くなってしまったものだ。

 

「とりあえず、ゴスロリは二度と着たくない。重いしゴワゴワするし、脱ぐのも一苦労だ」

「あ、手伝うよ」

 

 亜久里から「絶対似合うから!」と言われて渡された黒のゴスロリ服は、確かに似合ってはいたのだろう。ギャラリーの反応は上々であった。

 だが、オレが衣服に求めるのは、ファッション性を失わない範囲での動きやすさだ。最重要項目を潰してどうするという話だ。

 むつきに手伝ってもらって、ようやくという思いで上を脱ぐ。白のキャミソールのみとなり、肩が軽い。ふうと一息ついた。

 

「むつきも、オレの着せ替えには反対しなかったんだな」

「う、うん。迷惑かもしれないと思ったけど、やっぱりわたしも見たかったから……」

 

 少々凝った肩をほぐすためにグルングルンと肩を回す。何故かむつきの顔が少し赤くなった。

 

「み、ミコトちゃん! 胸、見えてるっ!」

「ああ、そういうことか。同性に見られて恥ずかしがるものでもないだろう。フェイトもそうだが、何故恥ずかしがるのかが分からん」

「女の子同士でも恥ずかしいものは恥ずかしいよぅ!」

 

 そういう種類の人もいるということか。覚えておこう。

 むつきの指摘を聞いて、はだけたキャミソールを直して胸を隠す。彼女は「はぅ……」と安心したようなため息をついた。

 

「もう……ミコトちゃんは可愛いんだから、あんまり無防備じゃ危ないよ。男の子の前でまでこんなことはしないでよ?」

「するか。さすがにオレだって男に見られたくはない。……あれは本当に嫌なものだ」

 

 一月ほど前のことを思い出してしまい、顔に血が上るのを自覚した。確かにあれのおかげで交渉はスムーズにいったのだが、出来ることなら二度と経験したくない。

 

「そ、そういえばクロノ君?に、着替え見られちゃったんだっけ……」

「しかも折悪く何も着ていない時にな。キャミソールを手に持っていたのが不幸中の幸いだ」

 

 彼には何処まで見られてしまったんだろう。映像取得位置がウィンドウ出現位置と同じだった場合、最悪全部見られている可能性も……考えるな、オレ。考えてはいけない。

 背筋にゾクッと走る寒気。上がキャミソール一枚だからとかいう物理的な冷たさではない。目の前のむつきから放たれたプレッシャーだった。

 

「……一度そのクロノ君とは、ちゃんとお話しなきゃね。女の子の裸を見るなんて、そう簡単に許されることじゃないよ」

「一応、既に二つほど要求を呑ませることで貸し借りなしにしているのだが……」

「ダメだよ! ミコトちゃんは可愛いんだから、そう簡単に許しちゃダメ! 付け込まれちゃうよ!」

「お、おう」

 

 何故だかむつきが熱い。これはちょっと説得の仕方が分からない。彼女がハラオウン執務官と顔を合わせる機会があるかどうかは分からないが……そのときは、彼の冥福を祈らせてもらおう。

 

 

 

「そういえばミコっち、ユーノから告られたってほんと?」

 

 またしてもごっちゃりした衣装だったため、田井中がヘルプに加わる。そんな折、彼女はそう尋ねてきた。

 瞬間、再びむつきからプレッシャーを感じたが、気にしないことにした。

 

「告白まがいだな。なのはあたりから聞いたか?」

「やがみんの誕生日パーティのときに、ミコっち達が散歩言ってる間にね。もう知らないのって、シグナムさんとザッフィーぐらいしかいないんじゃないかな?」

 

 ザフィーラはすっかり愛称で呼ばれることが定着してしまった。人型は美丈夫と言って差し支えない成人男性の姿なんだがな。

 しかし、オレは気にしないが、人の告白を本人確認なしに拡大するのはどうなんだろうか。まあ……今更か。

 

「そうだよね……あのフェレットもどきも、人畜無害そうな姿でミコトちゃんを油断させて……どうしてあげようか」

「田井中、むつきがダークサイドに落ちているんだが」

「ほっときゃ戻ってくるよ。もし戻って来なかったら、さっちゃんに任せりゃ大丈夫っしょ」

 

 まあ、むつきと亜久里はコンビみたいなところがあるからな。

 

「けど、言われてみればユーノの態度って割とあからさまだったよね。ジュエルシード回収お疲れ様パーティのときも、何かあればミコっちに話しかけようとしてたし」

「作戦がどうとかそんな話だったがな。あれが彼の精一杯の話題振りだったということか」

「まーヘタレだよね」

 

 バッサリといく田井中。だがそれが事実である。逆の立場ならば、オレも同じことを言っただろう。

 

「しかし、オレとしては一体どこでそうなったのか、皆目見当がつかん。最初の頃は、彼もビジネスライクな付き合いで割り切れてたはずなんだが」

「恋心ってのは割り切れないもんですよぉ。あたしは恋したことないけど」

「ダメダメじゃないか」

「ミコっちもしたことないっしょ?」

「……まあ、な」

 

 オレ達の中で恋をしたことのある女子と言ったら、勘違いでなのはがしたぐらいか。ああ、歳は離れているが美由希も実らなかったと言っていたな。

 

「そもそも8歳で恋だの何だの、マセ過ぎだろう。オレ達の方が一般的だ」

「んー、初恋は幼稚園の頃って子、結構いるらしいけどねー」

 

 その歳の頃はオレは孤児院だったし、ミツ子さんに引き取られた後も内職一辺倒だ。そもそも他者に向ける感情がほとんどなかった。

 田井中の場合、はるかとつるんでいて男には見向きもしなかったのだろう。亜久里はあの性格だし……むつきはどうなんだろう?

 

「むつきは、男子を好きになったことってあるのか?」

「……へぅ!? ど、どうしたの急に!?」

 

 今までダークサイドに落ちていたむつきが現実に引き上げられ、途端顔を真っ赤にする。

 おや? この反応は……。

 

「あるのか」

「おお、マジで!? こんなとこに甘酸っぱい話が転がっていたとは! やりますな、むーちゃん!」

「あぅっ! そ、そそそそそ、そのっ!」

「落ち着け。聞かれたくないのなら詮索する気はない。……その反応では自白したようなものだが」

 

 そういえばむつきはオレとはやての関係を邪推したこともあったな。つまり、そういうことだったようだ。

 オレは詮索しないと言ったのに、火の付いた田井中が根掘り葉掘り聞こうとする。

 

「で、いつなのよ、むーちゃんの初恋って!」

「い、いちこちゃん、やめてよぅ……」

「あまり深入りしてやるな、田井中。人には聞かれたくないことの一つや二つ、あるものなんだろう」

 

 オレにはないが。交渉のために隠すことはあっても、感情の問題で話さないということはない。まだオレが「違う」部分なのだろう。

 聞き出して誰が得をするわけでもない……いや、田井中の気分は満足するのかもしれない。コイバナは糖分と同様、女の子のエネルギー源だ。それはオレも分かる。

 だが、そのためにむつきが損をするなら割に合わないとオレは思っていた。のだが。

 

「そ、その……幼稚園のときに、わたし、トロかったからいじめられてて……」

「結局話すのか」

 

 「やめて」と言った割には、顔をにやけさせながら、むつきは話し始めた。何のかんの言いながら、彼女も話したかったようだ。

 ……まあ、オレのコイバナ(オレが恋をしているわけではないが)ばかり聞かれるのも不公平というものか。話すというなら、聞こうじゃないか。

 

「そのとき、助けてくれた男の子がいて……」

「その子に恋しちゃった、と?」

 

 ゆでだこのように顔を真っ赤にしながら、こくりと頷くむつき。頭から蒸気が出ているように見えるのは、さすがに気のせいだろう。

 

「で、で。告白とかしちゃってたり?」

「む、無理むりムリ! わたしなんか可愛くないから、しても断られてたよぅ!」

「そうか? さすがにフェイトのように文字通りの次元違いと比較することは出来ないが、君達もそう悲観する容姿ではないと思うが」

「さり気に親バカ入ってますぜ、ミコっち」

 

 知ってる。だが事実として、フェイトの容姿は5人衆と比べて何段階か上のレベルで整っている。ただの親バカと切り捨てることも出来ないだろう。

 それはそれとして、むつきも決して可愛くないということはないだろう。オレよりは大きいが、小柄な彼女の気弱な印象は、庇護欲をそそるものがある。思い切って告白すれば、チャンスはあるのではないだろうか。

 

「ちなみにその男の子って、海鳴二小?」

「う、ううん。学区は同じだったんだけど、聖祥に行っちゃったから……」

「ならばまだ縁は切れてないな。オレ達の知り合いには、変態だが聖祥に通う男子がいる。奴に取り次いでもらえば、会うことも可能だろう」

「あの変態かぁー。ミコっちも大変だよね。あれで魔導師だから、何かあったらミコっちはどうしても顔を合わせなきゃならないし」

 

 真面目モードのときはいいが、変態時は確かに気分的に重い物がある。忌避するほどのものでもないが。

 5人衆はあの変態との接点が薄いせいで「ただの変態」という印象しかないのだろう。実際に「ただの変態」ではあるんだよな、奴は。

 

「むつきにその意志があるなら、オレから話を付けるが。どうする?」

「……ううん。やっぱりいいよ。今更言ったって、向こうも迷惑だろうし」

 

 諦め顔で引く意志を見せたむつき。……無責任に何かを言うことは出来ないな。まだまだ感情に疎いオレでは、人間関係に口出しを出来るほどのノウハウはない。

 彼女がそう決意しているのならば、オレから言うことは何もない。そう思ってこの話を終わらせようとしたのだが。

 

「ダメだよ、ダメダメダメ! なに行動起こす前から諦めてんの! やらないで後悔するぐらいなら、やってから後悔した方がいいでしょ!?」

 

 田井中に火が点いた。彼女は自身の衝動に従ったようだ。

 

「い、いちこちゃん?」

「さっきのむーちゃん、完璧に恋する女の子だったよ! まだ好きなんでしょ!?」

「う、……うん」

 

 消え入りそうな小さな声ではあったが、はっきりと首を縦に振るむつき。最低でも二年以上は想い続けているのか。

 なのはのときも、勘違いではあったが、四年間だった。女の子の恋とは、一度火が点いたらそう簡単には消えないものなのか。オレにはまだ分からない。

 

「だったら、告白しなきゃ! オーケーもらえるならそれが最高! そうじゃなくても、決着つけなくちゃ次に進めないでしょ!?」

「い、いちこちゃん……」

「深入りする気はないが、田井中にしては理に適ったことを言っていると思う。君の意志がそうだというなら、彼女から勇気とやらをもらってもいいんじゃないのか?」

「ミコトちゃんも……」

 

 田井中の言葉ではまだ迷いの表情だったが、オレからの発言を受けた途端、むつきの瞳に強い意志が宿り始めた。……ここでもオレはリーダー扱いなのだろうか?

 彼女はパシッとオレの手を取り、決意を決めた。

 

「ありがとう、ミコトちゃん、いちこちゃん! わたし、やってみるよ!」

「その意気だよ、むーちゃん! へへ、さっすがミコっちだね!」

「オレとしては、君の功績を横からかっさらったみたいで、微妙な気分だよ」

 

 田井中曰く、「最後の一押しは自分じゃ出来なかった」そうな。まあ、オレの押し方は田井中とは逆方向だったからな。

 ともかく、むつきはその彼――剛田猛という少年に、三年越しの想いを伝えるそうだ。明日の蒐集実験の際に、変態に話を付けようと思う。

 

「まあ……やるというなら、オレからも激励しておこう。自分の気持ちに正直にな、むつき」

「うん! ありがとう、ミコトちゃん!」

 

 そうしてオレ達は、少し止まっていた着せ替えショーのための着付けを再開した。

 

「しかし、何でこんなものが置いてあるんだこの店は。買う人はいるのか?」

「ネタグッズじゃないの? それが普通に似合いそうなミコっちも大概だよ」

「でも、わたし達じゃ手に余りそう。お店の人呼んでくるね」

 

 結局、「ミニ十二単」なる衣装はオレ達だけでは着ることが出来ず、店の人に手伝ってもらった。途中まで着たオレを見たときの女性店員の呆けた表情が印象的だった。

 

 

 

 

 

 試着室から出ると、ギャラリー勢から感嘆の吐息が漏れた。既にある程度のイメージが出来ているヴィータとシャマルもギャラリー側に回っていた。ザフィーラは言わずもがな。

 隣の試着室が閉まっていたので、恐らくシグナムが入っていたのだろう。だから何だというわけでもない。今この場にいないのはシグナムだけだというだけのことだ。

 

「ほわー! やっぱミコちゃんの和服姿は最高やな!」

 

 携帯のカメラを起動し、シャッターを切るはやて。試着した服を撮るのはマナー的にどうかと思うが、デジカメじゃないだけマシか。保存用にする気はないみたいだし、まあ大目に見よう。

 

「黒髪ロングってのがいいよね。ミコトは和装をするために生まれてきたと言っても過言じゃないわ」

「過言だ。それなら、日本人のほとんどは髪を伸ばせば似合うだろう」

「ミコトちゃんは顔が純和風って感じだから、和服が映えるんだよー。ゴスロリもめっちゃ似合ってたけど」

 

 どっちなんだ。まあ、オレの顔が和風であるという意見には賛成だが。フェイトの洋風とは似ても似つかない顔立ちだ。

 そのフェイトだが、顔を真っ赤にしながらにやけていた。女の子がそんなだらしない顔をするんじゃない。

 

「えへへ……とっても可愛いよ、おねえちゃん」

「さすがは海鳴二小の美少女姉妹の片割れだよねー。シアちゃんが入学したら海鳴二小三大美少女の完成だよ!」

「アリシアもミコトおねえちゃんみたいにきれいになれるかな?」

「なれるなれる!」

 

 アリシアとはるかは親友と言ってもいいぐらいの仲になれたようだ。ちゃんとアリシアに友達が出来てよかった。留守番だけじゃ友達を作る機会が限定されるからな。

 視線を転じる。ヴィータが口をポケーっと開けて固まっていた。どういう反応だと問いたい。

 

「あらあら、ヴィータちゃんったら、ミコトちゃんが可愛すぎて処理落ちしちゃったみたいね」

「こんな仏頂面の何がいいんだか」

「ミコトちゃんは無表情でも可愛いですよ。これは真理ですっ!」

「「まことのことわり」と申したか。じゃが、確かに似合うておるぞ、主殿」

「ミコト、かわいい! ソワレも、おんなじの、きたい!」

 

 とてとて駆け寄ってきたソワレを抱き上げる。オレが似合うのなら、オレと同じ顔立ちのソワレも似合うだろうな。このサイズのはあるだろうか……って違う。

 

「シャマルとヴィータは試さなくていいのか。今日のメインは君達のはずだろう」

「まー実際シグナム以外の騎士甲冑はイメージ詰めるだけなんよね。それも大体終わったから、ギャラリーやっとるんや」

 

 つまり、今日のメインはシグナムとオレ、と。……何故オレが巻き込まれているのだろう。

 

「そらミコちゃん、そこに可愛い女の子がおったら着せ替えたいってのは、女心っちゅうもんやで」

「オレにはまだ理解出来ない類の女心だな。……シグナムが出てきたみたいだ、な――」

 

 彼女の使っていた試着室が開き、そちらを見て、オレは固まった。

 

 なんだ、これは?

 

「あ、あるじぃ……」

 

 顔を真っ赤にして服の裾をキュッと掴んでいる、女性陣最大の身長を誇る"剣の騎士"。彼女は、純白の衣装に身を包んでいた。

 レース生地を丹念に重ね、豪華なドレスに仕立て上げた珠玉の一品。それは、世の女の子たちの憧れの極地である。

 俗に「ウェディングドレス」と呼ばれるものに身を包んだシグナムがそこにいた。

 

「おー! シグナムも可愛いやん! なんや、意外とこういう方面も行けるな!」

「あ、主っ。ど、どうかお許しくださいっ! このような格好で戦場に立つなどっ……!」

 

 戦場に立つ予定はないのだが、この格好を騎士甲冑に使うのはさすがにないな。似合う似合わないで言えば似合っているのだが、何処の戦乙女だという話になってしまう。

 

「というか、この店はこんなものまで取り扱っているのか……」

「品揃えの豊富さが当店のウリですから!」

 

 オレの着替えを手伝ってくれた店員が胸を張る。シグナムが思いっきりはやてのことを「主」と呼んだが、特に気にしていないようだ。そういうプレイだと思っているのかもしれない。何でもいいか。

 普段強気のシグナムが顔を真っ赤にして若干涙目になっているのを、はやては楽しそうに弄っている。再起動したヴィータが大爆笑して、シグナムはさらに顔を真っ赤にして怒鳴った。

 本来の目的を外れている気がしないでもないが、中々に充実した時間を過ごしていた。

 

 

 

 それを打ち破ったのは、女性の悲鳴。

 

「どろぼー!!」

 

 全員が弾かれたようにそちらを見る。かなりの距離の向こう、サングラス・マスク・ニット帽といういかにもな格好の男が、身なりのいい婦人からバッグをひったくったようだ。

 何でこんな白昼の屋内でひったくりなんぞ、と脳内で突っ込みを入れつつ、オレは即座に指示を出す。

 

「アルフ、ザフィーラ!」

「おうよ!」

「承知!」

 

 人型となっている二匹は駆け出し、男を追う。……だが、距離が開きすぎている。人目があって魔法を使えないこの状況では、いかに彼らとて逃がさないのは困難を極める。

 そのための、次の一手。

 

「シグナム、当てろ!」

 

 ウェディングドレス姿のシグナムに、オレの衣装にオプションとしてついてきた扇子を投げ渡す。既に意識が戦闘モードに移行していたのだろう、オレの意志は正確に彼女に伝わる。

 手の中で扇子を回転させて持ち替えながら、大きく後ろに引く。体を弓のように引き絞り、戻す反動で扇子が矢のように解き放たれた。

 

「ゲペッ!?」

 

 それは過たず逃げようとする男の後頭部に命中し、大きくつんのめる。さすがに弾が軽すぎるため、気絶させるには至らないが……時間は十分に稼げた。

 シグナムが稼いだ時間でアルフが男に追いつく。彼女の拳が男の顔面を殴り飛ばし、バッグが宙に投げ出された。後続のザフィーラが落とさずキャッチ。

 そのまま男はアルフにタコ殴りにされ(さすがに哀れだった)、最終的に警備員にしょっ引かれたのだった。

 

 なお、犯行の動機は「金をたくさん持っていそうで衝動的にやった、今は反省している」だそうだ。あの格好も、店にあるものを適当に拝借したものだったらしい。品揃えが良すぎるというのも考え物だな。

 

 

 

 

 

 シグナムが投擲した扇子は壊れてしまっていたため、オレが買い取ろうとしたところ、助けた婦人がお礼をしたいと申し出てきた。

 婦人は近所の会社の社長をやっているらしく、ひったくられた鞄の中の財布にはそれなりの額の現金が入っていたそうだ。オレ達のおかげで全く被害がなく済んだのでお礼を、ということらしい。

 そういうことなら断る理由はなく、扇子の代金だけ支払ってもらおうとしたところではやてが一声。ミニ十二単と、シグナムに着せたウェディングドレス(のような衣装)も購入してもらうことになった。

 ……正直、両方とも使う機会はないと思うんだが。ミニ十二単は着るのが大変だし動きづらい。ウェディングドレスもどきも、シグナムは二度と着たくないようだ。

 が、はやてのことだ。必ずどこかのタイミングで着させてくるんだろう。半ば諦めの境地で、オレも首を縦に振ったのだった。

 

 その後、デパート内で軽くウィンドウショッピングをして(ヴィータが呪いうさぎなるぬいぐるみを気に入ったため購入した。これではただのショッピングだな)、本日は解散となった。

 はやても、三人の騎士甲冑はほぼイメージが決まったし、シグナムもいくつかの案が出たようだ。それなりに成果はあったか。

 

 帰り道、シグナムがオレに話しかけてきた。

 

「……先ほどはつい貴様の指示に従ってしまったが、勘違いするなよ。私は貴様を認めたわけではない」

「勘違いも何も、あそこで動けなかったら貴様の評価を下方修正しただけだ。想定通りに動いてくれたよ」

「減らず口を。……まあ、私も、即座にザフィーラとアルフに指示を出した貴様の判断は、評価している」

「ちゃんとオレの話を聞いていたか? 想定通りと言っただろう。オレから貴様に対する評価は変わらんよ。有事に動かせるというだけだ」

「貴様っ、褒めてやっているのだから素直に返せんのか! ええい、少し見直したのが間違いだった! やはり貴様は認めん!」

「自分で最初に言った言葉も忘れたのか。そんなことは知っている。何度も同じことを言うのは阿呆の証拠だぞ」

「そこに直れェ! 今日という今日こそ、レヴァンティンの錆にしてくれるわ!」

「二人ともええかげんにしぃ!」

 

 大体、いつも通りの光景だ。




ヴォルケンリッターの騎士甲冑は、バタフライエフェクトの影響下にあるため、原作とは異なるものとなる可能性が高いです。特にシグナム。
ミコトが和装を手に入れましたが、使う機会って来るのかな……? いつか日常会でどうでもいいタイミングで使いそう。本筋には絡まないでしょう。

オリジナルモブの再利用。むーちゃんの好きな剛田君は、ガイ君とド突き合いをしている剛田君です。下の名前は「たけし」ではなく「たける」です。
彼女の告白話を作る予定は特になかったんですが、流れで作ることになりました。どうしてこうなったし。
なお、4~6歳で初恋をする女子は25%程度だそうです。男子は21%程度で、やっぱり女子の方が早熟みたいですね。

『そう簡単に』『二人が和解すると思った?』『甘ぇよ』

『だがその甘さ』『嫌いじゃないぜ』

(和解するとは言ってない)


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