不思議なヤハタさん   作:センセンシャル!!
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2015/12/19
士郎さんの一人称が「オレ」になっていたので「俺」に修正

2016/09/07 「クロノへの報告」パートを全てカギ括弧で括りました。


五話 決意

 年は明け三が日。オレは携帯電話を持っていない(基本料金がもったいない)ので連絡を取ることがないが、はやてには矢島晶と他二名から「初詣に行こう」とメールがあった。

 はやてが外に出るということは、必然的にオレも行くということである。向こうもそのつもりで送ってきているようだ。

 やはりと言うべきか、田中と田井中の二人は脱落したみたいだな。別に不思議なことではない。どちらかと言えば、それが普通の反応であるべきだろうと思う。

 己が理解できないものを忌避するのは、生物として当然の反応なのだ。それを無理やり抑え込んで触れ合おうとしても、双方にとってデメリットしかない。

 はやてのように許容したり、矢島晶のように自分なりのやり方を見つけるなり、メソッドが必要なのだ。簡単なことではないだろう。二人の選んだ選択肢も、ありえないわけではない。

 そこを行くと、むしろ亜久里と伊藤は要観察だろう。彼女らはまだ見つけられていない。それでいて、オレとの関わりをなかったことにしていない。

 どうなるかは分からない。だが、せっかくその道を選んだのだから、矢島晶とはまた違う答えを見せてもらいたいものだ。それもまた一興だ。

 

 初詣だからと言って着物を着たりするわけではない。さすがに今回ははやても行動を起こさなかったようで、普通に冬物の服とコートだ。

 去年は冷暖房のないアパートの一室で過ごしたわけだが、それに比べて今年は随分と過ごしやすいものだ。まさか八神邸でまで極限の節約をするわけにもいかない。

 厚着をして布団を被らなくても良い。家の中を自由に動き回れる。冬場にこれが出来るというのは素晴らしいことだ。

 ただ、長時間暖房を浴びると眠くなるのだけは、どうにかならないものか。内職をしていたらいつの間にか眠ってしまっていた。起きたときにはやてが隣で眠っていたのには驚かされた。

 ……少し話が逸れた。実はオレも文明の利器のある生活に感動しているのかもしれない。

 さておき、今日の格好は学校に行くときと大差がない。加えて、クリスマス兼誕生日プレゼントとして送られた腕時計と髪留め。髪留めに関しては最近ではデフォルト装備だ。

 起きてベッドから出る際に、はやての手ずから付けられるのだ。はやてにはオレから付けることを求められる。多分これがやりたくてプレゼントしたのだろう。

 まあ、我が相方が楽しそうなので良しとしよう。彼女ならば、オレも鬱陶しいなどとは感じない。

 

「あ! ミコト、はやて! おそいよ!」

「君が早すぎるだけだ。亜久里も伊藤もまだだろうに」

「あはは、あきらちゃん元気やなー」

 

 集合場所は神社近くの郵便局前。参道まで行くと人でごった返しているため、ここで一度集合ということにした。

 パーティの一件以来、矢島晶はオレのことを「ミコト」と呼ぶようになった。合わせてはやてのことも名前で呼んでいる。彼女がオレ達をワンセットで見ていることがよく分かる。

 年が明ける前にも彼女とは何度か会っている。単独で八神邸に遊びに来たためだ。その際にオレの内職を見て、「ぜんぜんミコトのことしらなかったんだなぁ」とこぼしていた。

 彼女はオレが「友達ではない」と断言しても、一方的に「友達だと思ってやる」と宣言している。実際、その通りに行動しているように思う。

 少女はオレ達に駆け寄ってきて、車椅子を押しているオレの後ろに回り、抱き着いてきた。苦しい。

 

「んー! 新年初ミコトだ!」

「早速意味が分からん。というか君はいつから待ってたんだ。顔が冷たいぞ」

「いちじかんっ!」

 

 何故そんなに前から待っていたし。10分前行動で十分だろうに。

 オレの指摘には一切取り合わず、ぐりぐりと冷たい頬を押し付けてくる。やめろ、背筋まで冷えてきた。

 

「この間からスキンシップ過剰じゃないか? はやてでもここまではしないぞ」

「ミコちゃーん、それじゃわたしがお触り魔みたいやないか」

「入浴のたびにπタッチをしてくる君が何を言う」

「ミコトっ! お風呂いこう、お風呂!」

「君は君で対抗心を燃やすな、矢島晶」

 

 そんなことで対抗心を燃やして何になるというのか。ともかく、この間から彼女ははっちゃけるようになっていた。オレ達に対して一切の遠慮というものがなくなった。

 彼女はこれが一方的になることを覚悟している。その上での行動に対し、オレが指摘することが出来るのは、せいぜいがセクハラはほどほどにしろということだけだ。

 矢島晶に軽くチョップを入れ、離れさせる。少し冷えたので、はやてからカイロを受け取り温もる。暖かい飲み物を買え? そんな贅沢、修正してやる。

 それから待つことしばし。

 

「ごめんみんなー! さっちゃん起こしてたらおそくなっちゃった!」

 

 伊藤が亜久里を引っ張って到着した。体力に優れない少女は、大きく息を切らせて汗ばんでいた。

 申し訳なさそうな伊藤に比べ、亜久里の方はのほほんとした様子だ。

 

「やー、めんごめんご。お正月ってとくばん多いから、よふかししちゃった」

「まったくもぅ! きのうちゃんと「ねなきゃダメだよ」ってメールしたのに!」

 

 ともかく、これで全員揃った。伊藤は最近はよく一緒にいた残りの二人に思うところがあるようで、収まりの悪そうな表情だった。

 

「全員揃ったことだし、そろそろ行くぞ。境内は混雑が予想される。はぐれないように注意しろ」

「りょーかーい! じゃあわたしはミコトにだきついてく!」

「重いからヤメロ。普通について来い」

「な、なんかあきらちゃん、まえより八幡さんにベタベタだね」

「せやろー? 妬けてしまいそうやわ。ミコちゃん、浮気は許さへんからね?」

「何の話だ。そもそもオレと君はそういう間柄ではないだろう」

「ふぁー、やっぱりねむいぃ」

 

 何はともあれ、人が集まったことで賑やかな一団となった。

 

 

 

「オレは「はぐれるな」と確かに言ったよな」

「あははー。見事にフラグ回収しよったな、あの二人」

「さっちゃん眠そうだったしねー」

 

 というわけで、オレ・はやて・矢島晶の三人と伊藤・亜久里の二人は、ものの見事にはぐれてしまった。参拝の列に並んでいるだけでどうやってはぐれたのか、甚だ疑問である。

 まあ、そこは自己責任というやつで、オレ達は参拝の方を済ませてしまうことにした。後で探してやれば十分だろう。伊藤がついているなら、何処か分かりやすいところに避難していることだろう。

 さて、オレ達三人というのは年末からよくある組み合わせだ。時間の潰し方もだいぶ慣れてきた。

 

「あ、ミコト時計つかってくれてるんだ。うれしいなぁ」

「オレは携帯を持っていないからな。現在時刻を手軽に知れるのは助かる」

「しかもアナログやから、遭難しても方位が分かる優れものやんな」

「普通に生活していて遭難するような事態には遭遇したくないな」

「そうなんの?」

「おっと、体感気温が2度ほど下がったようだ」

「あきらちゃん……それはないわぁ」

「ごめん、わたしも言ってから今のはないと思った」

 

 こんな具合だ。最初は手探り状態だったが、それほど経たずに会話がかみ合うようになった。もっとも、今のように外すことも多々あるが。

 くだらない会話をして、参拝の順番を待つ。整理員の話によれば、30分待ちのようだ。

 

「長いねー。どうしてはつもうでってこんなに待つんだろう」

「皆が同じタイミングで同じ行動を起こすからだろう。この町にはそれだけの人が住んでいるということだ」

「逆に言えば、町の人達だけやからこの程度で済んでるってことや。お参りスポットとかどんだけ待たされるんやろうな」

「ひえぇ……そうぞうしたくないや」

「この時期だと受験の祈願に来る人たちも多いだろう。学業の神を祀っている神社は大変だな」

 

 何ちゃら天満宮とかはその最たる例だろう。何故オレがそんなことを知っているかというと、ミツ子さんに教えられたからだ。

 その理由というのが。

 

「そういえば、この辺には私立小学校があるらしいな。大学までエスカレーターで一直線だとか」

「おー。ミコちゃんよう知っとるなぁ。実は興味あったりするん?」

「いや、全く。単に小学校に上がる前にミツ子さんに勧められただけだ」

 

 オレの知力がその辺の同年代と比較にならないことは、ミツ子さんも早くに気付いていた。だからこそだろう、名門私立に通いたいか聞いてきたのだ。

 対するオレの答えは、今の状況からも分かるように「ノー」だった。確かに学費はミツ子さんが持ってくれているだろうが、必要以上に借りを作る気はない。

 

「奨学金制度でもあれば話は別だったんだろうがな。それは高校からだそうだ」

「あー。まあ確かに、小学生でこんな家庭事情なんて想定せんわな」

 

 この辺に住んでいる以上、中学まではミツ子さんに学費を払ってもらう他ない。

 では高校には行くのかと言われると、今は決まっていない。とっとと働いて借りを返すというのも考えているが、しっかりと知識と経験を積んでから社会に出た方が、効率がいいかもしれない。

 この辺はそのときになってみないと分からないだろう。周囲の状況次第だ。

 と。矢島晶が無言で抱き着いてきた。

 

「何をする」

「なんか、ミコトをだきしめたくなった。もんくは聞かないもん」

 

 察するに、家庭事情の話でオレの置かれている環境を思い出し、勝手に心細くなったといったところか。彼女には勝手にさせることにしているので、別にいいが。

 

「まあ、わたしら小学一年生にお受験の話は遠い未来やな。早くてあと5年、公立やったら8年やもんなぁ」

「オレに至っては受験を経験するかすら不明だな。状況次第では中卒で働くことになる」

「ダメっ! ミコトはぜったいわたしといっしょの学校に行くの!」

「そう願うなら、オレがそうせざるを得ない状況にすることだな。さすがにそこを君に譲る気はない」

 

 彼女がオレを一方的に友達と思うことに異論はないが、そのことに束縛される気はないのだ。

 

「君が君の意志で選んだ道だ。筋は通せよ」

「うっ……よ、よくわかんないけど、あきらめないんだからね!」

「はいはい」

 

 果たして、この少女がいつまでその意志を持ち続けられるのか。分からないが、その想いが成就される日を楽しみにしているオレもいて、何故だか苦笑が漏れた。

 

「高校、かぁ。わたしの場合、先のことよりまず足を治すことやからなぁ」

 

 まだ見ぬ先のことに思いをはせ、はやては自分の足を見た。オレ以外の前ではあまり触れない話題だった。

 

「えっと……はやての足って、なんでうごかないの?」

 

 言葉を選び、慎重に問いかける矢島晶。今、彼女は一歩はやての方に踏み出した。

 はやては苦笑を返し、「分からないんや」と答える。

 

「石田先生……わたしの主治医なんやけど、その人が色々調べてくれてる。せやけど、正味の話いまだに何も分かってないんよ」

「えっ……」

「医学的見地からは全くの健常者。それなのに足だけは動かせない。それが今のはやての状態だ」

 

 想像以上の病態だったのだろう、矢島晶は金槌で殴られたかのような衝撃を受けた顔を見せた。

 何か言葉を紡ごうとし、結局何も出てこず俯く。はやては彼女の手を掴んで笑った。

 

「あきらちゃんがそんな顔する必要ないねんで。わたしには心強い相方がいてる。そらいつかは足を動かせるようになりたいと思うけど、現状には不満なんかないんよ」

「はやて……つよいね」

「それはちょいとちゃうな。わたしは強いんやなくて、息抜きがうまいんや。ミコちゃんがおらへんかったら、さすがに心折れとるで」

「オレは何かしているつもりはないんだがな」

「そう言ってくれるミコちゃんがいるから、わたしは挫けへんのよ」

 

 車椅子から後ろに立つオレを見上げ、オレの顔に手を伸ばしてくる。その左手をしっかりと掴み、はやての存在を感じる。

 オレは、どうなんだろうな。オレの場合、そもそも強い弱いという評価自体が当てはまらない気がする。その評価をするための基準に当てはめられない、というべきか。

 そもそも強いだとか弱いだとかの言葉は、相対評価だ。比較があって初めて強弱が生まれる。それに対してオレは、自己完結してしまっている人間だ。強さも弱さもあったものではない。

 ……とはいうものの、今のオレは少し違うのかもしれない、と思っている。はやての相方となったとき、オレは間違いなくはやてとの繋がりを感じた。今のオレは、はやてとの関係性の中に生きているのかもしれない。

 だとしたら、オレはとてつもなく弱い人間だろう。はやてのように多種多様な人と関わることのできない、ごく限られた人間としか交流の取れない、非常に弱い人間だろう。

 まあ、そんなものは当たり前か。言うなれば、オレはゲームスタート直後のようなステータスで完成してしまっているのだから。

 だから、今オレがオレでいられるのは、きっとはやてのおかげなんだろう。

 

「ならオレは、挫けないはやてがいるから、変わらずにいられる。ありがとう、はやて」

「……あ、あはは。何やこれ、物凄く照れるわ」

 

 自然と笑みを浮かべることが出来、はやてはキョトンとした後、顔を赤くして照れ笑いを浮かべた。

 横にいる矢島晶から不満の気配。

 

「むー! なに二人のせかい作ってんのよ! わたしだって、いつかミコトに「ありがとう」って言わせてやるんだから!」

「矢島晶は何をムキになっているのか。少し落ち着け」

「あははー……ミコちゃん、実は天然女子キラーやってんな」

 

 何故かはやてから不名誉な称号をいただいた。オレはノーマルであると断言させていただく。

 

 

 

 時間は前に進み続ける。要するに、オレ達のお参りは終わったということだ。待ち時間は長かったのに、用事を済ませるのは一瞬だ。

 

「何事もそういうものだと思うが、もう少し効率がよくならないかと思ってしまうのは間違いだろうか」

「どうなんやろねー。わたしはお話してたからそんなに気にならんかったけど」

「そんなことより、さっちゃんとむーちゃんさがさなきゃ」

 

 それもそうだ。と言っても、二人が携帯を持っているならばすぐに見つかるだろう。

 

「伊藤に電話をかけてどこにいるか聞けばいい」

「あ、そっか。……ミコトはケータイもたないの?」

「基本料金がもったいない。オレが持つとしたら、費用は全部自分で支払うつもりだ。まだそこまでの余裕はない」

「ミコちゃんのスタンスの問題やから、こればっかりはわたしにもどうこうできんわ。まあ基本わたしのそばにおってくれるし、すぐには必要ないんちゃう?」

 

 矢島は納得がいっていないようだったが、今は議論しているときではない。「早くしてやれ」と通話を促す。

 

「……あ、むーちゃん? わたしたちはおまいりおわったよ。今どこ……、うん。……うん、わかった」

 

 短いやりとりで、矢島は通話を終了した。伊藤が簡潔に伝えたのだろう。

 

「あと10分ぐらいでおまいりおわるって。はぐれたあとにならびなおしたみたい」

「ご苦労なことだ。待つ間オレ達は何処にいようか」

「お守りは合流してから買いたいしなぁ。この辺ベンチとかないんやろか」

 

 神社の境内だしな。まあ10分程度なら立ち話でも十分だろう。

 オレ達は参拝客の迷惑にならないよう、隅に寄って待つことにした。

 

「おっと、場所を取っていてごめんね。今空けるよ」

「いえ、お構いなく」

 

 先客の若い男性が退こうとしたが、そこまで場所は必要ない。彼の邪魔にならないよう、少し間を空けて一塊になった。

 

「親御さん待ちかい?」

 

 と、その男性はオレ達に気さくに話しかけてきた。整った顔立ちで人懐っこい笑みを浮かべており、身をかがめて目線を合わせている。

 多分、オレ達に威圧感を与えないためだろう。真っ直ぐ立った時の彼の身長は、子供のオレ達から見ると見上げるほどに高かった。

 それだけでなく、体付きも逞しかった。オレの周囲に大人の男性は少ないが、彼ほどがっしりした体付きの男性は初めて見る。

 

「いえ。今日は子供達だけで来ています。はぐれたクラスメイトが並び直して、今はそれを待っているところです」

 

 代表し、オレが答える。はやてでもよかったが、質問に正確に答えるだけならオレが一番だろうと考えた。

 オレの返答に対し、男性は「へぇ」と目を丸くした。

 

「小さいのにしっかりした子だね。うちの末娘と同じぐらいなのに、そこまではっきりとした受け答えが出来るのは凄いね」

「娘さんがいらっしゃるんですか。とてもそうは見えませんね」

「ははは、褒め言葉と取っておくよ。ありがとう。実はこれでも高校生の長男がいる歳なんだがね」

 

 本当にそうは見えない。この人実際には何歳なんだ?

 オレの受け答えは、仏頂面の棒読みだ。言葉に偽りはないが、この人物に対する興味は含まれていない。実際この男性に対する興味はない。

 それでもこの男性は、気分を悪くした様子がない。人がいいのだろうか。

 

「……あ! 翠屋のおにいさんだ!」

 

 と、今まで黙っていた矢島晶が男性を指差しそう叫ぶ。ああ、あのケーキの店の……。

 

「うちに来てくれたことがあったのかな? ……ごめんね、ちょっと思い出せないな」

「んーん、わたし一回しかいってないもん。それに、さっちゃんたちといっしょだったし」

「クリスマスイブにホールケーキを買いに行ったそうです。覚えはありませんか」

「……ああ! あのときの5人組か! 確かに友達の誕生日だとかで、ケーキを買って行ってた! そうか、あのときの一人だったのか」

 

 記憶が繋がったようだ。彼女らの話からして子供だけで来店したはずだから、それなりのインパクトではあっただろう。

 

「うんうん、思い出した。ということは、君達二人のどちらかの誕生日だったのかな」

「ええ、オレの誕生日でした。あまりに突発的だったので、あのときは呆れましたがね」

「……ははは、中々独特な子だね。君達のお名前は?」

「八幡ミコト。カタカナ三つでミコトです」

「わたしはミコちゃんの同居人の八神はやてですー。よろしゅう」

「わたしはミコトの友達の矢島晶です!」

 

 オレが名前を告げたとき、男性は眉をぴくりと動かした。ほんのわずかではあったが、オレは見逃さなかった。他二人のときには全く反応がなかったのに。

 ……オレの名前に覚えでもあったのだろうか。だが、オレは翠屋に行ったことすらない。この男性も見覚えがない。

 そんなオレの疑問は、彼の自己紹介で氷解する。

 

「ミコトちゃんにはやてちゃん、晶ちゃんだね。ありがとう。俺の名前は高町士郎。喫茶「翠屋」のマスターをやっているよ」

 

 「高町」。その名は、オレがまだ孤児院にいたとき、一度だけ関わった少女と同じ名字だった。

 そうか、この人が。それでオレの名前を知っていたのか。ある意味、オレが「八幡ミコト」となるきっかけとも言えるかもしれない、あのときの出来事だ。

 そのこと自体には何の思い入れもない。ただ過ぎ去っただけの日々に留まる。けれど、オレはそのおかげではやてと出会うことが出来た。

 だからオレは、頭を下げた。

 

「ありがとうございます。ケーキ、大変美味しゅうございました」

「……はは、そう言ってもらえると嬉しい。作ったのは妻なんだけどね。ああそうだ、もう少し待ったら本人が来るから、直接お礼を言ってはどうだい? きっと妻も喜ぶよ」

「いえ、またの機会にしておきましょう。どうやらこちらの待ち人が来たようです」

「ごめんみんなー! やっとおわったよー!」

 

 伊藤が亜久里を引っ張って走ってくる。ほんの1時間ほど前に見た光景の焼き直しだった。

 

「では、オレ達はこれにて失礼します。……亜久里、オレははぐれるなと言ったはずだが」

「えー!? なんであたしだけ!? むーちゃんもいっしょだったのにー!」

「君がふらふらと列を離れて、伊藤はそれを追いかけただけだろう。つまり、元凶は君だ」

「うぅ!? ど、どーしてそれを……」

「ひごろのおこないだよ、さっちゃん」

 

 「それでは」と会釈し、オレは高町士郎氏と別れを告げた。

 

「……今度は皆で翠屋に来てくれ! 待っているよ、ミコトちゃん!」

 

 背に彼の言葉を受けても、オレは一切振り返らずに歩き続けた。

 

 

 

 

 

「おとーさーん!」

「あなた、お待たせしました。……? どうかしたの?」

「ああ、桃子。「あの子」に会うことが出来たんだ」

「「あの子」? ……!? ほんとう!?」

「ああ。名前は聞いていた通りだったし、名字も「八幡」だった。まず間違いないだろう」

「そう……元気そうだった?」

「背はあまり伸びていないようだったけど、とても元気そうだったよ。気難しそうな感じではあったけれど、友達も出来たみたいだ」

「……本当に、よかったわ」

「?? ねー、おとーさんもおかーさんも、なんのおはなし?」

「ああ、ごめんねなのは。ちょっと、お父さん達の恩人に会うことができたんだ。嬉しくって、ついね」

「そうなの?」

「ええ。私達の大切なものに気付かせてくれた、大事な恩人さんなの。私達は何も返せなかったけど、元気にしているみたい。なのはも会いたい?」

「んー? ……うん! おとーさんもおかーさんも、うれしそう!」

「そう。それじゃ、いつかご挨拶に行かないとね」

「えへへー、おかーさんだいすき!」

 

「(……しかし、あのことはいつなのはに話そうか。絶対ショックを受けるよなぁ)」

「(うーん……いっそ忘れてほしいって思うのは、残酷よね。この子にとっても大事な思い出なんだから)」

「(どうしたもんかなぁ……)」

「あー! またおとーさんとおかーさんがないしょばなししてる! なのはもいーれーてー!」

 

 

 

 

 

 お守りを買い皆と別れた後、はやてが世間話のように問いかけてきた。

 

「ミコちゃんは、士郎さんのこと知ってたん?」

「……どうしてそう思った」

「ミコちゃんが自己紹介したとき、士郎さんがちょっぴり驚いとったやん。ミコちゃんも士郎さんの話聞いたとたん神妙になったし」

 

 あそこまであからさまなら、はやては気付くか。最後にオレだけに声をかけていたしな。

 

「大したことじゃない。オレがミツ子さんに引き取られる前、高町家の子供にならないかって話があっただけだ」

「……それ、大したことないん? その割には士郎さんとは初対面だったみたいやけど」

「当時彼は怪我で入院していたらしい。応対したのは母親の方だったよ。だから、士郎氏とは今日が初対面だ。ついでに喫茶店をやっているのも初耳だ」

 

 あのときは、互いにあまり情報を出しあわなかったからな。第一印象でアウトだったから、こちらもあまり聞く気がしなかったのだ。

 

「それでどうしたんやって、断ったに決まっとるわな」

「ああ。今ならどうか分からんが、当時のオレからしたら最悪な距離感だった。あれこれ気を使われるような生活じゃ、マジで家出る5秒前だ」

「士郎さん、人好さそうやったもんなぁ。ってことは、奥さんの方も相当なんやな」

「あれに輪をかけているな。どうだ、逃げ出したくなったろう」

 

 そして末娘の「高町なのは」に依存されるオプション付きだ。だからオレは断るときにこう言った。

 

『あなた方の責任のスケープゴートになる気はない。贖罪の方法は自分で探せ』

 

 それはもうストレートに言ってやった。そのときの桃子氏のショックを受けた顔は、今でも覚えている。

 

 高町なのはと出会ったのは、公園で彼女が一人でいたときだ。その理由は、桃子氏から聞いている。

 当時の高町家は、士郎氏の怪我に伴って慌ただしくなっていた。桃子氏は家計を支えるために働いており(今から考えれば翠屋だろう)、子供に構う余裕がなかった。

 彼女には他にも二人の子供がいたが、何やら事情があって末妹との距離感が遠く構ってやれない。幼い彼女は、一人の時間を過ごすことを余儀なくされた。

 広い家の中に、子供がたった一人。その環境に耐えられなかった高町なのはは、公園で時間を潰すようになった。何をするでもなく、ベンチに座っているだけで。

 オレが彼女と出会ったのはそんな折だ。そして彼女は何やらオレに興味を持ち、話しかけた。オレが孤児であるという話を聞いた桃子氏は、そんな状況を打破できると考えたらしい。

 確か、こう言っていたな。「あなたがうちに来てくれれば、なのはに寂しい思いをさせずに済む」

 高町家に入った瞬間から何かが体にまとわりつく感じがあったが、それを聞いた瞬間に限界に達した。話の途中にも関わらず、打ち切った。

 そして高町家への養子入りを断り、先の言葉を告げ、孤児院に戻ることにした。

 帰り際、高町なのはとすれ違った。何かを言いたそうに、口をもごもごさせていた。オレはそれに一切取り合わずに高町家を出た。

 

 その後どうなったのか、オレは知らない。だが士郎氏の様子から、恨まれるような結果にはなっていないということなのだろう。世の中分からんもんだ。

 

「まあ、そんな環境だ。贅沢な話かもしれないが、オレにとっての精神の自由がないならただの地獄だ。はやてなら想像出来るんじゃないか?」

「うーん……確かにわたしの知っとるミコちゃんやと、その環境はキツいかも分からんな。ちなみにその「なのは」ちゃん?ってどんな感じなん?」

「大人物の器は持っている。だが、脳筋の傾向が見受けられた。結論を決めてしまったら、あとは突っ走ることしか出来ないだろうな」

「あー。もろミコちゃんの苦手なタイプやん。多分いい子なんやろうけど」

 

 考える素養は持ってたんだがな。ドツボにはまるとどうしようもないタイプだ。はやてのように、話していて楽しいと感じることはないだろう。

 だから、オレは今この場にいられて良かったと思う。相方と楽しい時間を過ごせる偶然の奇跡に感謝している。

 

「んー……。ま、なのはちゃんには悪いけど、わたしもミコちゃんがいてくれて嬉しいしな。なるようになったってことやろ」

「そういうことだ。他人のことを気にしても、何の意味もない」

「あはは。ミコちゃんのそういうドライなとこ、嫌いやないで」

 

 懐かしい出会いはあったかもしれないが、オレはこれでいいのだ。

 

「ところでミコちゃん。士郎さんにおいで言われとったけど、それはどうするん?」

「はやて。贅沢は、敵だ」

「ああ……うん、せやね」

 

 

 

 

 

 冬休みが終わり、一学年最後の学期が始まった。やはり一部の人間達との距離は変わった。それでも、波風が立たないというほど無風ではないが、穏やかな日常が続いていた。

 事件が起きたのは、2月に入ってからのことだ。

 

「……なんや、これ……」

「ひどい……」

 

 オレ達――オレとはやて、矢島晶、亜久里と伊藤の視線が注がれているのはオレの席。

 体育での移動から帰ってきたオレの机は、彫刻刀か何かで罵詈雑言が彫られていた。服もカッターか何かでところどころ切られ、すぐには着れたものではなくなっている。

 オレはそれらを、無感情に眺めていた。対照的に周りの皆はショックを受けたり憤ったり、様々な感情を見せている。

 何故オレが何も思わないかと言えば、納得が大きいことと、むしろ「やっとか」という感覚が強いせいだ。あとは、被害が思ったほど大きくなかったことか。

 

「服がダメになったのは、さすがに少し痛手だな。今日はこの格好のままで授業を受ければいいが」

「っ、ミコトは何でそんなにへいきそうなのよ! こんなの、ゆるせないよ!」

 

 矢島晶が感情を爆発させ、クラスの視線を集める。オレは彼女の肩に手を置き「落ち着け」と宥める。

 

「「異物」を排斥するのは、人として当然の防衛反応だ。これをやった人間は、むしろオレがこの場にいることが許せないんだろうな」

「だからって、こんなのあんまりだよ! ミコトちゃんは何もわるいことしてないのに!」

 

 亜久里は矢島晶ほど強くは爆発しなかったが、遣る瀬無さが顔全体に現れている。

 彼女の言葉に、オレは静かに首を横に振る。

 

「「結論を決めてしまった人間」にその理屈は通用しない。オレが存在すること自体が悪いことだと感じているのだろうな」

「……うそ。うそだよね、八幡さん。まさか、あの子がそんなことするなんて……」

 

 伊藤がオレの言葉から察したようで、顔色を青ざめさせる。つい先日までは行動をともにしていたために、敵方に回ることに耐えられないのだろう。

 だが現実とは非情なものだ。起こったことは起こったことで変えようがない。状況証拠もある。

 

「実行犯かどうかは知らんが、無関係というわけにはいかないだろうな。コレを知っている人間が限られていることは、君達も知っているだろう」

 

 オレが目線をやった先。彫刻刀で彫られたと思われるそこには、「親なし」という言葉があった。

 ちらりと視線をやると、彼女は慌てて目を逸らした。その顔色は真っ青を通り越して最早白い。

 

「再犯をされても困ることだし、一度話は聞いておくべきだろうな」

「……せやな」

 

 後で彼女に話を聞くということにして、この場は散会させた。担任が戻ってきた際、事情を話して机の交換と体操着のまま授業を受ける許可を得た。

 ――その際、オレは見た。とある少女の一団が、オレを見て下卑た笑みを浮かべていることを。彼女達は気付いていないようだったが。

 

 オレが戻った後に、担任から生徒達へ「誰がこんなことをやった」という詰問があった。しかしまあ当然と言うか、こんなことをやらかす心根の人間が自分から名乗り出るわけがない。

 結局無駄な時間を浪費しただけで、犯人が白日の下にさらされることはなかった。

 

 

 

「……ごめんなさいっ! まさか、こんなことになるなんて……!」

 

 放課後。逃げるように下校しようとする田井中を矢島晶と亜久里が捕まえ、オレ達は人気の少ない裏庭に来ていた。

 既に良心の呵責に耐えきれなくなっていた彼女は、あっさりと白状した。どうやらオレの事情をうっかり話してしまったことがあるらしい。

 クリスマスイブのあの日、オレから「友達ではない」「必要ない」と断言された彼女と田中は、大変なショックを受けたそうだ。彼女達は、自分達はオレにとって数少ない友人の一人だと思っていたらしい。

 それは一種の「選ばれた優越感」なのだろう。交流が取れる人間が限られるオレが話せる相手であるという、自分達は特別なのだと思える優越感。もっとも、そんなものは錯覚でしかないのだが。

 その現実を突き付けられ、田中は自分の殻にこもってしまった。そういえば三学期が始まってから、彼女が誰かと会話をしているのを見た記憶がない。幼馴染だという田井中ですらそうだ。

 そして田井中は、救いを求めるように別の女子グループに入り浸るようになり……うっかりしゃべってしまったというわけだ。

 田井中の話を聞いて驚いたのは、田中にしろ彼女にしろ、オレに対する忌避感というものを持っていなかったことだ。単純に気まずくて話しかけられなかっただけらしい。

 

「あたしもはるかも、バカだった! ミコっちのことをダシにして、みんなにかった気になりたかっただけなんだ……!」

 

 人より優位に立ちたいという感情は、オレには分からない。それは多くの人との関係性の中に生きている人間特有の感情なのだろう。逆に、彼女の社交性の証明になると思う。

 田中に関しては……一応ケアの一つぐらいもした方がいいのか。どうでもいい存在ではあるが、今はオレが原因で臆病になっているらしいし、そうするのが筋かもしれない。

 田井中が実行犯でないという事実に、少女達はホッとした表情を見せた。だが矢島晶の感情は、次の瞬間には怒りに変わっていた。

 

「ふざけんじゃないわよ……! ミコトのことなにも知らないくせに、あんな……!」

 

 今にも爆発してしまいそうだ。亜久里と伊藤が必死に宥め、それを見た田井中はまた涙目になった。彼女は、「じぶんがなさけないよ」とつぶやいた。

 

「……ミコちゃん。どうする気なんや?」

 

 冷静な声色――努めて冷静を保っているのだろう、はやての声は震えている。それでも、彼女は他の皆と違って頭で考えようとしていた。

 オレは顎に手を当てて少し考える。服への被害は大きかったが、オレ自身の感情としてはそれほどでもない。孤児院時代とそう変わりはないんじゃないだろうか。報いを与える労力を支払うほどではない。

 だが、再犯をされると厄介なのは事実だ。今回は服だけで済んだが、ランドセルや教科書・ノートなどに被害が及ぶ可能性もある。そうなったときの出費はバカにならない。

 再犯防止をする必要はあるだろう。だが、あの少女達の様子と担任の詰問に対する反応から、言葉で止められる輩ではないだろう。

 やはり行動が必要か。ああ、面倒くさい。

 

「後はオレ一人で何とか出来る。それでこの件はおしまいだ。君達は深入りするな」

「だけどっ!」

「君達は「友達」ではない、「他人」だ。今はこの言葉を有効利用しておけ」

「っ……、ミコトのバカ!」

 

 感情の矛先がオレに向いた矢島晶は、叫んで走り去った。最後に見た彼女は、今にも泣きそうな顔をしていた。

 暗い表情をする他の皆にも、同じように言って帰らせる。この場に残ったのは、オレとはやての二人のみ。

 

「はやて。すまないが明日は学校を休んでもらえないか。君に迷惑をかけたくはない」

「……ダメやで、ミコちゃん。それをやってもうたら、誰も喜ばん。わたしはそんなん嫌や」

「君の頼みでも、それは聞けない。悪因には悪果が必要だ。でないと、いつまでも同じことの繰り返しだ」

「そうかも、やけど……他に方法はないん?」

「より悪い方法なら思いつく。だが、よりマシな方法はない。君には、何かあるか?」

「……」

 

 彼女も分かっているのだ。現実の厳しさというものを。彼女は、この歳で厳しい現実と向き合って生きてきたのだから。

 不安そうに俯くはやて。彼女にそんな顔をしてほしくはないので、少しでも元気が出るように。

 

「極力悪い結果にはならないように努めるさ。そうだな、示談で済む程度に収めよう」

「それ、十分アウトやでぇ……」

 

 物騒なジョークに、はやては弱弱しく笑った。

 

 

 

 翌日。オレの指示通り、はやては学校を休んだ。出来る限り穏便に収めるつもりではあるが、最低でも殺陣は発生するだろう。身軽に動けない彼女をそんな場に置くことは出来ない。

 そしてオレは、いつか以来の格好――ヨレヨレのポロシャツと緩めのジーンズという動きやすい格好で登校した。髪はアップポニーにして、やはりこちらも動きやすさ重視だ。

 教室に入った途端、オレに困惑の視線が突き刺さるのが分かった。一学期の一件以来、身なりは整えさせられてきたので、いきなり格好が戻ったことに戸惑っているのだろう。

 構わず荷物を置き、とある女子の一団の前に立つ。昨日オレを見てニヤニヤしていた女子の三人組だ。名前は――別にどうでもいいか。

 彼女らは、オレが真っ直ぐ来たことに一瞬驚いたが、すぐに下卑たニヤニヤ笑いを浮かべた。

 

「あら、一組のアイドルサマじゃない。なんかよう?」

「ぷっ! ダッサいかっこう。オトモダチがおせわしてくれなかったの?」

「あっはは、そういやさいしょこんなカッコだったわね。そっちのがにあってるんじゃない? ククク……」

 

 どうやら隠す気もないようだが、オレはあえてクラス全体に聞こえるように言葉を発する。

 

「その態度、昨日の服と机の件を自分達の所業だと認めているものとみなすが、よろしいか?」

「ぁあ? なに? あたしらのせいだっての?」

「しょーこみせなさいよー、しょーこー」

 

 群体という印象を受ける女だ。一人一人に個性がない。誰がどの言葉をしゃべっているのか、全く認識が出来ない。

 まあ、どうでもいいか。所詮はオレにとって雑多な存在でしかないのだ。彼女達とは、違う。

 

「まず初めに、昨日の状況を鑑みて、犯行は体育の時間の前に行われたと考えられる。何せ体育の前は無傷で、戻ってきたらボロボロだったからな」

「それがなにィ? あたしらがやったしょうこにはなんないでしょ」

「いいや。教室を移動する授業中は教室に錠がかけられる。その仕事は日直がこなすものだ。そして昨日の女子の日直は、今発言した君だったな」

 

 小児を狙った犯罪が多発する昨今、不審者の侵入を防ぐために、この学校ではそのような措置がなされている。故に、アリバイの特定は意外にも簡単だ。

 

「男子の日直には昨日の時点で既に確認済みだ。体育の授業の時に錠をかけるのは、君がやったとな」

「はァ!? そいつがかんちがいしてるだけじゃないのォ!?」

「オレの記憶と照らし合わせても、体育館に最後にやってきたのは君達だったはずだ。まだ昨日のことだし、何人かの記憶にも残っていると思うが?」

 

 ここに至って、何のためにオレが声を大きめにしゃべっているのか理解したようだ。「そういえば……」という声がクラスの各所から上がり、目の前の女達は見るからに狼狽える。

 所詮は小学生の考えることだ。人に見られないようにすることばかり考えて、状況証拠を残さないという思考が全くなかったのだろう。

 

「証拠を見せろ、と言ったな。君達にアリバイがないという証拠なら、どうやらその辺りに大量に転がっているようだ。教室に錠がかけられている以上、最後に教室を出た君達以外に犯行は不可能、ということになるな」

「……だったらなに? かりにあたしらがやったからって、なんかもんくあんの?」

「そ、そうよ! たかが服がちょっと切れてつくえにちょっときずがついたにだけでしょ!? アリバイとかはんこうとか、おおげさなのよ!」

 

 今度は開き直り。分かりやすい行動をありがとう。おかげで調べてきたものが役に立つ。

 

「刑法261条、器物損壊罪。前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する」

 

 「刑法」という言葉が出てきた瞬間、女達の顔から血の気が引く。

 

「さっきの発言は自白と認めるが、君達がやったことは立派な犯罪だ。大げさなものか、本来ならば警察に届け出るレベルの被害だよ」

 

 ただ、面倒だしまともに取り合われないことが明白なので、この場で収めているだけだ。学校側としても、こんなことで騒がれてニュースになるのは困るだろう。

 これで女共は理解出来ただろうか。現在の自分達の立ち位置が。彼女達は今、糾弾される側なのだ。

 

「別にオレは君達のことを通報するつもりはない。謝罪も求めていない。今後このようなことはしないと誓約し、遵守してもらいたいだけだ」

 

 オレの要求は伝えた。一定以上の知能を持つ相手ならば、この言葉の意味が分かるだろう。次はないぞという脅しであると。

 そして悲しいかな、この女達にそれほどの知能はなかった。そも、あるならばこんな行動には出ていない。

 

「こ、の! ちょーしのんなよ、チビが!」

 

 女の一人が立ち上がり、オレに向けて平手打ちをしようとした。逆ギレからの暴力だ。

 本当に、分かりやすくて……。

 

 

 

「助かる」

「は? あ? ……え?」

 

 女は何が起こったか分からないでいるようだ。オレと、自分の腕を交互に見ている。

 

 肘から先が異様に伸び、あらぬ方向に曲がった腕を。

 

「あ、あ……あああああ゛あ゛あ゛あ゛!?!?」

 

 遅れてやってきた痛みでか、女は絶叫を上げる。構わずオレは女の頭を掴み、床に叩きつけた。

 

「い゛!? い、いだいぃぃぃ! いだいよぉぉぉぉ!!」

「脱臼程度で騒ぐな、見苦しい。全てが終わったら元通りにしてやる」

 

 昨日調べたもう一つ。腕がらみという技だ。平たく言ってしまえば、ひじ関節を破壊する関節技の一つ。

 それをオレの「プリセット」を使い、効率的に、破壊ではなく関節を外すという効果に特化させたものを仕掛けたのだ。

 残った女二人に一睨みすると、奴らはすくみ上って身動きが取れなくなっていた。これで無力化は完了か。

 

「これは正当防衛だ。君が逆上し暴力を振るおうとしたのは、クラスの全員が見ている。悪因には相応の悪果が返って来る。身をもって理解出来たか?」

「う、うぅぅぅぁぁ……」

 

 痛みなのか恐怖なのか、女は涙と鼻水を垂れ流している。やり過ぎとは思わない。こうなることは、初めから見越していた。

 この女のような手合いが、言葉だけで理解出来るとは思っていなかった。実際このような結果になっている。オレは最初から、痛みを持って刻み込もうとしているのだ。

 

「別に人を痛めつけて楽しむような趣味は持っていない。オレの要求はさっき言った通りだ。オレに関わろうなどと思うな。そうすればオレは君達に関わらない。分かりやすい話だろう?」

「うああ、わ、わかった、わかったよぉ。だ、だからたすけて……」

「その言葉、忘れるなよ」

 

 ガキッという音を立てて、女のひじ関節をはめてやる。声にならない悲鳴が上がった。治すときに痛みがないなどとは言ってない。

 ふぅと一息ついて、立ち上がる。クラスは息を飲み、静まりかえっていた。これで見せしめは完了した。

 これが、オレに出来る最善の自己防衛法だ。「オレに手を出したらただでは済まされない」と見せつけることで、こちらへの被害を未然に防ぐ。

 皆が皆話し合いだけで済ませられるほど、世の中甘くはない。この女達のように、「自分は悪くない、悪いのはあいつだ」と決めつけてしまっている奴らは、何を言っても通用しない。

 そういう手合いには、どうしてもこういう手段が必要なのだ。痛みがなければ、人は覚えない。

 

「保健委員。こいつを保健室に連れて行ってやれ。看護教諭には「一度ひじ関節を脱臼した」と伝えれば分かるはずだ」

「あ……は、はい! だれか、手をかしてくれ!」

 

 保健委員の男子が、協力を募っていまだ泣き続ける女を抱き起こし、保健室へと連れて行く。奴の仲間であった二人は、こちらをチラチラ見ながらそれを追った。目には多分に怯えの色が見えた。

 クラス全体を見やる。こちらも大体同じだ。

 

「教諭にはオレから事情を話しておく。騒がしくして悪かったな」

 

 一応声をかけておき、オレは職員室に向かうために教室を出ようとした。

 

「……ミコトッ!」

 

 オレの背に、矢島晶が声をかける。それでもオレは振りかえらず、手で軽く「気にするな」と返して去った。

 

 担任教諭に事情を説明すると、「さすがにやり過ぎだ」と軽い説教を受けた。だが、オレの意図は理解出来たようで、難しい顔をしながら納得した。

 彼としても、あの女子生徒達がやったことは見過ごすことのできない犯罪行為であると認識していたようだ。

 

「……一昔前だったら、ああいう輩にはゲンコくれて叱ってやったんだがな。今は体罰がどうとかで、教師も身動きがとりづらい」

 

 中年男性の石島教諭は難しい顔のまま愚痴をこぼした。小学一年生の生徒の前でする話ではないと思うのだが。

 

「お前と八神のコンビは小学一年生離れしてるからな。お前だって、そう扱われるのは本意じゃないだろ?」

「まあ、その通りですが。はやては子供らしい一面もありますよ」

「それを見せてるのは多分お前の前だけだ。大事にしてやれよ。で、あー……まあ、連中にはお気の毒だけど、お前はお咎めなしだ。喧嘩両成敗って成り行きでもないしな」

 

 実際オレがやったのは、器物損壊の指摘と正当防衛だけだ。関節を外したのは過剰防衛気味かもしれないが、オレは体格に優れないので、本当に身を守るためにはあのぐらいはする必要があるのだ。

 これが子供のたどたどしい報告なら、教諭も判断に困ったかもしれないが、オレは簡潔に事実のみを伝えた。状況を正確に把握出来た結果だろう。

 

「……ところでお前、あいつが何であんなことしたか、分かってるか?」

「想像でしかありませんが。オレの性格が気持ち悪いとか、そんなところでしょう」

 

 理解できないことを忌避する。それを感情的に表せば、大体こんなものだろう。

 だが教諭は「分かってねえなこいつ」と言わんばかりにため息をついた。別の理由があるのだろうか?

 

「あのな。お前は見た目はめっちゃ可愛いし、頭はやたらいいし、スポーツも平均以上に出来る。女から見たら嫉妬の対象なんだよ」

「そうでしょうか。仮にそうだったとしても、性格が伴っていなければ無価値なのでは?」

「あいつらが性格のことまで考えてるかよ。たとえお前が軽く不思議ちゃん入ってなくても、あいつらは同じことをしただろうよ」

 

 担任教諭としてこの発言はどうなのだろうか。まあ、奴らの日頃の行いをしっかり見ているともとれるが。

 

「断言するけど、今回の件でお前の周りからの評価、下がるどころか上がるからな。事後処理完璧すぎんだもん。俺の出る幕ねーじゃん」

「砕けすぎです、石島教諭」

「生徒はお前しかいないからいいんだよ」

 

 担任からの信頼が重い。本当に変わった教師である。

 

 その後、田井中と田中が謝りに来たり、教諭の予言通りクラスの男子から「すげーっす!」と尊敬されたり、まあ色々とあったが割愛。

 例の連中はもう懲りたらしく、突っかかってくるようなこともなかった。目線が合ったときに露骨に逸らすのはどうかと思ったが。

 

 

 

 

 

 八神邸に帰宅すると、真っ先に右手首に氷嚢を当てられた。はやては、オレが関節技を極めた代償に痛めた手首にちゃんと気付いていたようだ。

 こういうのは痛めてすぐに冷やさないと意味はないと思うが……まあ、気持ちだろう。利き手の方ではないから、あれ以降使わないようにはしていたし、完全に無意味でもないか。

 

「ミコちゃんはおバカさんや。大バカさんや」

 

 顔を悲しげにゆがめ、はやてはそう言った。今は学校であった顛末を全て話し終えたところだ。

 オレとしては予想以上に上手く行ったつもりだったのだが。「手首怪我してるやろ」と言われたら、何も返せなかった。

 

「他に方法が浮かばんかったわたしには何も言えないかもやけど、ミコちゃんが怪我するなんて悲しいわ」

「それについては悪かったとしか言いようがない。これも織り込み済みだったんだ」

「……そうやろな。ミコちゃんは自分本位のくせして、自分を切り売りしすぎや」

 

 そうなのかもな。オレにとって自分自身は不動の基準だが、同時にオレが持つ道具の一つでしかない。

 極端な話をすれば、右腕一本で命が助かるなら、迷わず右腕を捨てる。常にその判断をしているような状態だ。はやての表現はまさに的を射ている。

 

「この件に関しては、はやてを悲しませた一点だけは申し訳なかったと思っている。本当にすまない」

「……はあ。もうええよ。全部、上手くやれたんやろ」

「ああ。想定外の事態も少しあったが、もう大丈夫だろう」

 

 そう。あれだけのことをしたのに、教諭の言った通り――加害者のグループを除いてだが――まるで避けられることがなかったのだ。どころか若干祭り上げられている感じがして、それはそれで気持ち悪い。

 

「孤児院のときとはまるで勝手が違う。担がれているわけではないと思うが、疑念は残るところだ」

「そらそうや。小学校と孤児院じゃ、環境が全く違うやろ」

 

 それもそうか。孤児院と違い、小学校は四六時中一緒にいなければならないわけではない。学校を出れば途切れてしまう程度の関係性しかない。

 それならば、対岸から眺めて他人事として騒ぐことも出来るということか。

 

「あとは、きっと皆ありのままのミコちゃんを見始めてるんやと思う。最初の頃言うてたレッテル張りやのうて、ちゃんとミコちゃん自身を見てるんや」

「……それは、むしろ人が避けるような気がするんだが。人は、「異物」を避けるものだろう」

 

 オレの言葉に、しかしはやては首を横に振った。

 彼女は、オレが今まで気付かなかったもう一つの真実に辿り着いていた。

 

「たとえ「異物」やったとしても、安全な取り扱い方さえ分かれば、そばにおっても平気やろ?」

 

 衝撃的な一言だった。それはまさに、つい先日矢島晶がやって見せたことだ。

 人とは「違う」オレと交流するためのメソッドを得ること。それをクラス単位で出来ていると、はやては言ったのだ。

 

「もちろん、わたしやあきらちゃんみたいな感じやないと思うけど。それでも、クラスメイトとしてやってけるだけは、きっとあるんよ」

「そう、なの……か? だが、一体どうやって……」

「わたしやあきらちゃん、さっちゃんにむーちゃんがやって見せてたやん。お手本見たら、子供は真似出来るもんやろ」

 

 ……ああ、そういうことか。何のことはない。オレは「知っていた」くせに、それを「形にしていなかった」のだ。

 子供の可能性を「知っていた」くせに、見向きもしなかった。勝手に限界を想定し、それ以上伸びないものと決めつけていた。

 彼らだけではない。レッテル張りをしてちゃんと見ていなかったのは、オレもそうなんだ。

 

「……なんだ。オレもただのガキだってことじゃないか」

「やっと気付いたんか。ミコちゃんは、わたしとおんなじ。小学一年生の子供や」

「ああ、その通りだ。はやての言う通りだ。オレは、大バカ者だな」

「そうや。ミコちゃんは、大バカもんや。わたしの大好きな、愛しい愛しいおバカさんや」

 

 覆いかぶさるように、はやてはオレを抱きしめた。……衝動的に、オレははやての体を抱き返した。

 ああ、今分かった。これが、この感情が、はやてがいつもオレに言ってくれている言葉なんだ。

 

「オレも、だ……」

 

 言葉にしなければ。この大切なヒトに、伝えなければ。

 だけど言葉にしようとすると、口が上手く回らなくなる。心拍数が上昇し、体がコントロールできない。上手く言葉にならない。

 

「オレも……はやて……」

「……なぁに、ミコちゃん」

「オレも、はやてのことが……」

 

 言うんだ。言わなければならない。今までオレは、はやてにばかり言わせてきた。今度はオレの番だ。だってそうじゃなきゃ、貸しと借りのバランスが取れない。

 気付かなければ、それでよかった。だけど芽生えてしまった。過去には戻れない。オレはもう、この感情を消すことが出来ないんだ。

 言え、八幡ミコト。お前の大切なただ一人のために、言葉を紡げ。

 まるで自分でない自分自身に背中を押される感覚。はやてを抱く腕にギュッと力がこもる。

 

 そして、オレは。

 

「オレは、はやてのことが……大好きだ……」

 

 彼女に、想いを伝えた。

 

「うん……」

「大好きだ」

「……うんっ」

「もう、離したくない……」

「うん……うんっっ!」

「ずっと、一緒にいてくれ……はやて……」

「わたしも、わたしもや! わたしもミコちゃんが大好きっ! もう、一生離さへん……!」

 

 それから長い時間、オレ達は互いを抱きしめあい、互いの体温を感じた。

 ……本当に長い時間だった。時間の感覚も薄れ、どれぐらいそうしていたのかも覚えていない。

 ふっと、はやての力が抜けた。自然とオレの腕も力が抜ける。

 互いに顔を見合わせる。オレの大切な彼女の頬は、暖かいナニかで濡れていた。

 

「どうして泣いているんだ……?」

「嬉しいから。ミコちゃんに好きって言ってもらえて、天にも昇る気持ちや」

「そうか……」

「それに、ミコちゃんも人のこと言えへんで」

「え?」

「ミコちゃんも、ほら」

 

 そう言ってはやてはオレの頬をぬぐう。そこにはたしかに、涙があった。

 

「な? おそろいや」

「そうか。……おそろいだな」

 

 お互いの表情は、きっと泣き笑いなのだろう。嬉しさで溢れた感情が、互いの頬を濡らしている。

 おもむろに、はやてはオレに顔を近付けた。それを拒むことなく、受け入れる。

 

「……ん」

 

 視界いっぱいにはやてを感じる。唇に、柔らかく暖かい感触。

 はやては目を瞑る。オレもまた、はやてをより強く感じるため、目を瞑った。

 

 生まれて初めてのキスは、少ししょっぱかった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「おい、何顔を真っ赤にしているんだ、ムッツリ。ああ、否定は結構。お前がムッツリだということはちゃんと理解してやっているよ。はは、オレは良き理解者だと思わないかい?

 いいからとっとと話を進めろだって? バカを言うな。彼女との大切な思い出を語らずして何を語れというのだ。こんなものはまだ序章だよ。

 ……ふむ。まあ、確かにこれは報告であって惚気話ではなかったな。いや失敬。童貞のお前には刺激が強すぎたか。

 分かった分かった。そうムキになるな。全く、可愛い奴だな、お前は。

 

 ……こほん。まあ、長々語った通り、八神はやてという少女は、オレにとって欠くことのできない存在となったわけだ。

 散々非生産的だなどと罵ってくれたが、オレがいかにして彼女を想うようになったか、さすがに疑問の余地はないと思うが。

 ああ、よかった。ようやく分かってくれたか。もしこれで分からないなどと言われた日には、お前の頭を物理的に柔らかくしなければならなかった。

 そして、これで分かっただろう? オレが、お前達が言うところの"魔法"を"作った"理由が。

 

 一生はやてと一緒にいたい。そうは思っても、現実は非情だ。彼女の足の麻痺は残ったままだった。しかもいつ広がるかも分からない、爆弾みたいな病気だ。

 だからオレはそれを治したいと思った。石田医師が医学的見地から治療法を探してくれていたから、オレは別方面から、な。

 以前説明したと思うが、オレの「プリセット」は普遍的な事象の全てがストレージされている。もちろんその中には、お前達が使うような「魔法」の基盤も含まれている。

 まあ、それが原因とは分からなかったから、もっと広範囲に渡って調べる必要があったがな。そう、それこそあらゆる現象を網羅するレベルで。

 だからオレは、事象そのものをコントロールできるような力を欲し、それを確立しようと奔走した。色々文献を漁ったりして、大変だったんだぞ?

 お前達はこの世界に"魔法"は存在しないと言っていたな。だけど調査を鑑みる限り、「魔法」が存在しないだけで"魔法"は何種類か存在したようだ。

 で、オレはそれらの理論を基礎まで分解し「プリセット」とケミカルドッキングさせて、"魔法"を完成させた。簡単に聞こえるかもしれないが、それこそ血のにじむような研鑽の末に完成したんだ。

 詳細は……まあ、別の機会でいいな。どうせオレ以外には扱えない。これは「プリセット」を保有していなければ使えないモノだ。理論は流用できても、そのままでは使えんさ。

 何を意外そうな顔をしている。報告しろと言ったのはお前だぞ。……そんな努力の結晶を簡単に教えていいのか、か。

 最初に言った通り、これはオレにとって「はやての足を治すためだけの"魔法"」だ。それ以外の用途なんて全部おまけだ。理論ぐらい好きなだけ教えてやるさ。

 ……よし、いい加減「そういうものだ」と理解出来たようだな。話が早い男は好きだぞ。……くくく、お前は本当に可愛い反応をしてくれるなぁ。

 ああ、分かった分かった、からかって悪かったよ。

 

 

 

 さて、と。"魔法"の作成とはやてとの日々を語ってもいいところだが、ここまでに時間をかけ過ぎたな。少し時間をスキップするぞ。

 ここからはお前も知っているはずだが、一応情報をすり合わせるということで、報告をしておこう。

 はやてとの想いが結ばれてから、さらに一年ちょっと。オレの"魔法"も一応の形になった頃、オレはあの青い宝石と出会った。

 そう。ロストロギア「ジュエルシード」。歪んだ願望機。力任せに世界を改変してしまう、素晴らしくも忌まわしい、あの"魔法の結晶"に」




次回から無印編です。





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