提督だって戦います!   作:真紅マフラー

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青葉と電のお話です。提督主人公なのにほとんど空気。


電の手帳

 ある日、重巡洋艦の青葉は面白い新聞のネタがないかと廊下を歩いていた。最近は戦艦の大和が鎮守府に来たのでいろいろと新聞のネタを仕入れるのが楽だったが、そろそろ新しいネタを探さねば面白くなくなってしまう。そんなこんな考えていると廊下に手帳が落ちていた。

「だれの手帳でしょうか?」

 青葉は手帳を手に取ってみた。手帳の表紙の右下に『電』と書いてある。開いてみると、艦隊の予定や演習、提督の予定などいろいろとメモしてあった。鎮守府の最古参である電が提督の秘書官として働いていた頃のものだろう。びっしりと時間ごとに予定が書いていた。

「すごいですね。青葉もこれほど手帳を使いこなせていません」

 見た目は自分より幼い駆逐艦の電だが女子力ははるかに自分より上なのは間違いない。

「そうだ、手帳の使い方を電さんに教えてもらって。記事にしましょう」

 艦娘の間では『女子力』が流行語となっている。艦娘のほとんどが提督のことを異性として意識している。ある日、雪風が純粋な気持ちで「しれえの好きな女性のタイプってどんな人ですか?」と質問したことがあった。年頃の女の子だったら気にしそうな質問である。雪風は尊敬する上司が彼女とかいるのか気になったのだろう。どっかの英国かぶれや2pカラーのような提督LOVE勢と違って提督を父親のように尊敬しているので雪風らしい質問といえるだろう。艦娘がお昼を食べてる食堂で堂々と聞くのも雪風らしいといえばらしいが、その質問をきいた瞬間、多くの艦娘が提督の答えを聞き逃さないと意識して食事の箸が止まった。まさしく鎧袖一触。提督の答えで轟沈するものも出ておかしくない状況だ。

「ん、そうだなぁ。……好きなタイプとか考えたことがないからうまく答えることができないけど、女子力がないひとは論外だね」

 純粋な心をもつ雪風の質問だから提督もつい素直に答えたんだろう。今まで、金剛や陸奥、青葉もそれとなく聞いたことがあったが、適当に誤魔化されたか、「恋愛に興味を持ったことは無い」と一蹴されてきた。多くの艦娘が提督の攻略することに限界を感じて挙句の果てには「提督はホモなんじゃないか」という説が広まってきた時に、雪風が提督LOVE勢に一つの希望をプレゼントしたことがあった。もちろん雪風は意識していないが。そこで、急激に人気キーワードとなったのが女子力である。明石が経営するアイテムショップに置いてある女性雑誌や料理雑誌が急激に売れ出したりとかなりの影響が鎮守府内に響いている。

 そうだ、女子力ネタだ。新聞はみんなに読んでもらえるし、電さんから手帳の使い方を教わって自分の女子力を磨くチャンスじゃないか。

「よし、それでは電さんに取材です!」

 青葉は歩き出すと手帳から一枚の写真が落ちた。

「おや、なんでしょう?」

 拾って見てみると青葉は固まった。

「こ、この写真は……!!」

 

 

 

「はわわわ、ないのです。手帳が無いのです!」

 駆逐艦の電は気が付いたら自分の手帳が無いことに気が付いた。手帳は初めて提督と出会ってから提督からプレゼントとして使い続けているものだ。使い切るのがもったいなくてシンプルにかつ大切なことを纏めてメモをしているものなので愛着もある。また、手帳の最後のページには鎮守府ができた頃、つまり、提督が着任した時に撮った記念写真がお守りとして貼ってある。提督の写真は鎮守府にいる艦娘にとってはレアアイテム。青葉が盗撮した写真一枚で間宮パフェ無料券3枚の価値がある。無料券はMVPやなにか提督に認められるともらえる券だ。かなりの価値がある。それも写真の内容にもよって価値が変わる。私服の提督の写真が出た際は、長門と金剛と加賀の三竦みの演習が始まったこともあった。手帳に貼ってあった写真は制服でも私服でもなく和服。電しか艦娘がいないときは、提督も自ら海上スキーブーツを装備して深海棲艦を相手に戦った。そもそも、提督に選ばれた理由の一つが「生身で深海棲艦を倒したから」とのこと。元帥直々にお願いしたそうだ。日本刀一本で戦う姿は提督の間では伝説となっているほど。ただ、あまりにぶっ飛んだ話なので信じる新人提督はほとんど居ないが。このことを知っているのは電と工廠で艤装の整備をする提督の親友の技師長と大本営の一部くらいだろう。

 あのかっこいい姿は誰にも見せたくない。誰にも共有したくない。電の独占欲が電の心を埋めていた。

「と、とにかく探すのです」

 今日は秘書官として提督を支えている大和さんと一緒に書類を運んだ。その際落としたのだろう。司令室前廊下あたりにあるはず、大和さんか司令官が拾ってくれればうれしいけれど、青葉さんとかに拾われたら新聞のネタにされてしまう。それだけは避けたい。

 電は急いで部屋を出ると一気に司令室に向かって走り出す。

「電さん!!」 

 後ろから呼び止められて電は前に転びそうになるのをこらえて止まる。後ろを振り返ったら、探し求めた手帳を持った青葉が立っていた。

「これ、落ちてましたよ」

「あ…………」

「ちょっと、手帳を見ちゃいました。すごいきれいに纏めてありますね。青葉びっくりしました」

「……」

「手帳の纏め方が非常に気になるので取材を申し込みたいのですが、よろしいですか?」

「えっと……」

「それと……青葉写真見ちゃいました」

「」

「ああ、もちろん写真のことも聞きたいですけど、新聞の記事にはしないので。ね」

「…………絶対ですか?」

「ええ、約束します」

「……タダで話せと言うのですか?」

「間宮食堂無料券5枚でいいですか?」

「もし破ったら」

「破ったら?」

「提督が絶対にやらなかった解体の任務が成功してしまうのです」

「はいぃ!!青葉了解しました!!!(電さんの本気が怖いよぉお!!!)」

 次の日には明石さんのお店に手帳を求める艦娘が多かったそうな。電ちゃんは報酬として青葉さんに写真を加工してもらってストラップにしてもらい大切にしているようです。

 また、この一件の後青葉と電の仲が良くなったそうな。

 

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