提督だって戦います!   作:真紅マフラー

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やっと主人公の提督が活躍します


提督の得意技

カタカタとキーボードを打つ音が聞こえる。パソコンを使って大本営に送る書類を纏めているのはここの鎮守府提督だ。

 昔はあまり、書類仕事をしなくても済んだが、艦娘の保有数が多くなるにつれ書類の仕事も多くなった。幸い、大淀や霧島、加賀などデスクワークが得意な頼れる部下がいるものの余計な仕事をさせたくないのが本心だ。そもそも女の子に戦争を任せたくないのだが。艤装を装備できるのは彼女たちだけだ、人間である自分には装備ができない。いくら生身で深海棲艦を相手にできたとしても、完全に倒すことができないことが分かっている。

 妖精さんのおかげで自分の愛用の武器の日本刀も艦娘の艤装と同じように深海棲艦を浄化する力は手に入れたが、それを使う前に艦娘が十分そろってしまったので自分が戦場に立つ必要性が無くなった。せっかく一晩で海上スキーブーツを乗りこなせるようになったのだが、まあいい。

「司令官、失礼します。吹雪です」

「おう、入れ」

 ノックして司令室に入ってきたのは大和と一緒に鎮守府に配属された駆逐艦の吹雪だ。

「どうした?」

「はい、司令官に聞きたいことがあってまいりました」

「あらあら、どうしたのかしら?」

 今日の秘書官担当の陸奥が首を傾げていった。

「電ちゃんから聞いたのですが、提督さんは分身できると聞いて本当かどうか来たんですけど」

「ブフッ、何だそれは?本気で信じているのか?」

 隣で長門が思わず吹き出している。陸奥もプルプルと震えている。しかし、吹雪は至って真面目だ。

「ふふっ、そんなわけないじゃない。忍者でもないんだから。忍者みたいな川内だって分身の術は使えないわよ。ねぇ長門」

「ふははっ、ああ、まったくだ。しかし吹雪どうしてそんなことを信じたんだ?できるわけないだろ提督」

 いやぁこれだから駆逐艦は最高だな、などとつぶやいている長門を大いに無視して吹雪の質問に答える。

「ああ、できるよ」

「そうそう、できちゃうのよね。……って、え?」

 陸奥が固まる。

「ああ、こう、バッとなってな。……は?」

 長門も固まる。

 吹雪は「ほんとなんですね」と目が輝いている。

「「ええええええ!!?」」

「んだよ、横でうるせぇな」

「な、なに言ってるの提督。執務のし過ぎでおかしくなったわけ!?」

「バケツだ、だれかバケツもってこい!!」

 ビックセブンが何やら慌てているが、しょうがないだろう。今まで見せてこなかったんだから。しかし、少し吹雪も誤解をしているようだからその誤解を解くことにしよう。やかましい戦艦は無視。

「吹雪、電から聞いたと言っていたな。どうして話を聞いたんだ?」

「えっとですね、電ちゃんが暁ちゃんが持ってきた「レディのチョコレート」を食べたらいろいろと提督のことを話してくれました。提督が深海棲艦を倒すくらい強いこととかを」

「深海棲艦を倒せるくらい強い」に一言で思考停止するビックセブン。

――この提督が?

――深海棲艦を倒せる??

――ウソだろ!??

 二人がそんなことを思いながらが黙って提督を見ているが、提督は二人を無視して話を聞く。

「なんだ、レディのチョコレートって」

「司令官も食べますか?」

 吹雪からチョコレートを貰い口に入れる。食べてみると酒の味が舌の上にパッと広がった。ウイスキーボンボンかよ。これで酔っ払ったんだな。

「正確には分身ではないんだ、分身したように見せるだけであってね」

 提督はそう言うと立ち上がって吹雪の前に立つ。そこから部屋の端まで下がる。

「長門、陸奥、よく見とけ。電が言ってたやつはこれだ」

 提督はそういうと上半身を前のめりに倒す。そこで足を踏み出す瞬間、高速のクロスステップを刻む。吹雪、長門、陸奥の三人には提督が三人に分身して吹雪の後ろへと抜けていくように見えた。

「あ……あ」

「な、長門、何今の」

「さ、さぁ、私には本当に提督が一瞬分身して吹雪の横を抜けたようにしか見えんのだが」

 後ろを振り向いてみると三者三様の反応だ。

 まぁ、そうだろうな。電だって初めて見たとき興奮していたんだから。

「司令官今のどうやったんですか!?」

 吹雪もキラキラした目で聞いてくる。

「わかりやすく言えば、上半身を左右に激しく揺らしたんだ。ほら、指を早く振ると残像で2本に見えたりするだろ。あれを両足のステップを交差させて上半身を左右に一瞬で揺らすと残像で分身したように見せることができる。ラグビーとかでも使われたりする技術だからすごいわけでもないがな。昔、電に教えたんだあいつもちゃっかりできるけどな」

「えええっ!!電ちゃんもできるんですか!?」

「ああ、なんなら教えようか?」

「はい!教えてください!!」

 よし、んじゃ外へ出な。というと固まってた陸奥と長門が言った。

「ちょっと、ちょっと待ちなさいよ。なんでそんな技を私たちには教えなかったの?」

「そうだ!これがあれば随分戦闘で結果が変わるぞ」

「だって、お前たち聞かないじゃん」

「「聞けるわけないでしょ!!/だろ!!」」

「まぁ、悪かった。んじゃ教えてやるから外へ出な。後吹雪、電呼んできて」

 

 

鎮守府内湾

 

「本当にスクリューシューズ使いこなしているわ」 

 陸奥が唖然と提督を見ている。それはそうだろう。ふつう艦娘しか使いこなせていないんだから。提督の横で顔をピンク色に染めながら電が立っている。

「えへへ、久しぶりの提督との練習なのです」

「おいおい酔ってんなぁ、大丈夫か?」

「大丈夫です、電の本気見るのです!!」

「電ちゃんお願いします」

 吹雪も気合十分。

「まさか提督から戦い方を教わるとはな、ふふっ楽しみだ」

 長門もやる気十分。

 陸では艦娘がギャラリーとして見ている。

「ちょっと提督水上に立っているんだけど!」「提督さん海上移動慣れているっポイ!?」「青葉見ちゃいました。電さんが言ってた通りですね」

「「「ちょっとなにそれ」」」

「えっとですね~、電さんから聞いてたんですけど~」

 青葉が電から聞いたであろう提督の秘密を説明している間、提督はまず手本を見せる。別に秘密にしていた訳でもないが。

「電、真っ向勝負と行こうか」

「なのです。すり抜けるだけでいいですか?」

「ああ、思いっきり来いよ」

「電の練習の成果見るのです」

 二人は向かい合って距離をとる。

「行きます!」

「来い!」

 二人はスクリューをフル回転させて海面を踏むこむ。ドッと水しぶきを上げて高速で距離を縮める。

「なのです!!」

 電がパタタタッと大きくかつ高速でステップを踏む。小さい体なので歩幅も小さいため上半身を大きく揺らすためにはめいいっぱい歩幅を広げなくてはできない。逆に歩幅を広げると勢いあり過ぎてバランスを崩してダイナミックに沈んでしまう。スクリューの加減を間違えばドボン、だ。しかし、電は転倒することなくステップ踏む。ふっと浮かぶ電の残像。その数3つ。それを見てギャラリーから驚きの声が挙がる。

 電の練習の成果に内心驚き感動すらした提督だが、技術を教えた身として弟子に見劣りするわけにはいかない。両足を交差させるクロスステップと急激に方向を変えるカットステップを織り交ぜる提督。

 クロス!カット!クロス!クロス!!

 提督の残像は5人。ギャラリーから驚きの声が挙がる。

「甘い甘い」

「はわわっ!」

 残像を作りながら驚くという電を見てついフッと笑ってしまう提督。 3人の電と5人の提督が交差すると同時に残像がぶつかって消滅したかのようにふっと消えた。

「……いや~、やるようになったな、電」

「司令官は相変わらず強いのです」

「はははっまだまだ負けんよ」

 二人の技術に圧倒されに何も言えない他の艦娘たち。その中で一番最初に口を開いたのは吹雪でも長門でも陸奥でもなく、ギャラリーとして見ていた金剛だった。

「テーイートーク―!!私にも教えるネーー!!」

「バーァニングラァアアブ!!!」

高速で水面を滑ってくる金剛に背中を向けたままその場でステップを刻む。

「what!?」

「はい残念」

「ノオオオ!!」

 提督に抱き着こうとした金剛は提督の残像をすり抜けて海面にドボン……とはならずに体制を整えて水面に着水した。

「よけるとは酷いデース!!」

「いきなり飛びかかってきたお前が悪い」

「ブー!ブー!提督ぅー!!私から目を離さないでっていったのにィ~!!何故素敵な特技を教えてくれなかったのですかぁ~!!」

「素敵な大本営からの書類ばっか目に入ってたからな、すまなかった」

「次はこんなことしたらノー!なんだからね!!」

 はいはい、と返事をしつつ金剛の頭を撫でる。しばらくすると「ムフフ」と上機嫌になった。

「よし、それじゃあ吹雪長門陸奥教えるぞ」

「ちょっと待ちなさいよ、このクソ提督!!」

 声を上げたのは駆逐艦の曙。

「なんで吹雪や長門さんばっかに教えんのよ!!私たちにも教えなさいよ!!」

「僕もできるようになりたいな」

 時雨も声を上げる。というか、全員が内湾へと足を踏み入れていた。

「よし、ならば教えるか」

 提督は一つ課題を提示した。

「よし、それじゃあクロスステップを身に着けたければ、スキップができるようになれ。まずはそこからだ」

「「「「「スキップ!!?」」」」」

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