提督だって戦います!   作:真紅マフラー

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大人になったらダメなものはダメとはっきり教えるのも大切なことです。他人の子供でも言わないといけないこともあります。また他人の子供でもほめるときはほめます。ここの提督や技師長さんはそんな大人です。


提督だって怒ります!

 深夜3時、提督は夜遅くまで書類整理をしていた。明らかにボーキサイトの量が報告された数と倉庫の数がわずかに違っているからだ。

 ここの鎮守府では艦娘に資材の管理を任せてはいるが、間違いがないように深夜零時に技師長が倉庫を確認し報告をする。秘書官は瑞鶴が担当だったが夜も遅いし部屋に帰らせた。「もういい瑞鶴、部屋に戻って休んでいいよ」とはいっても、先日の怖い顔して考え事をしていた事件の影響もあって「提督さんだけ頑張るのよくないもん」とか言ってなかなか休まなかった。気持ちはありがたいが、船を漕ぎながら言われても説得力が無い訳で、半分寝ている瑞鶴の頭を撫でて「もういい、俺ももう寝るからもうお休み」と言ってようやっと部屋に戻って貰った。といってもフラフラして危なっかしいので部屋まで送って行って、部屋の前で「バイバイ」して別れた。次の日の朝瑞鶴が起きて思い出して顔を真っ赤にして、夜更かしして疲れたのか熱を出して翔鶴に看病してもらうことになる。

 さて、ボーキサイトがないのだが、潜水艦のイクやシオイが何度もオリョクルや遠征に行ってもらい貯めに貯めた資材である。おそらく犯人は一航戦くらいだろうし、昔からちょくちょくつまみ食いしているのは分かっていた。だけど、そろそろ「大人の責任」というのも教えなければならないだろう。人間は一人では生きていけない。今の自分が笑ってられるのは、裏で誰かが泣いていることが多い。提督は潜水艦たちが「オリョクルはもう嫌!」という声も何度も聞いていた。そのたびイクがいたずらしても怒る気にはなれなかったし、書類仕事が忙しい時でも膝の上に座るゴーヤを邪魔だとは言えなかった。

 優しさと甘さは紙一重。駄目なものは駄目と子供に教えてやるのが大人の世界。一航戦でも提督から見ればまだまだ子供。加賀だって一見クールだが、実はものすごいさびしがり屋だ。瑞鶴にいちいち煽っては喧嘩をするお子様だ。まぁ、そこがかわいいところなんだけど、たまにごくたまに割と本気でいい加減にしろよって思う時がある。その時は、舌打ち一つすれば二人とも真っ青になって収まるけど。食堂行ったらなぜか艦娘全員が真っ青になっていた。後から間宮さんに聞いたら「いつも少しくらい騒いでも気にしない提督が、舌打ちしたので皆自分に非があるんじゃないかと心配していたみたいですよ」と言っていた。

 自覚してんなら少しは改善しろよ、と思わず言ってしまったら間宮さんは笑って「でも許してしまうのでしょう?」と言われてしまった。まぁそうだけど、そうだけど!

 とにかくそろそろ本気で説教するのがいいだろう。ちょっとあっちゃんにも一つ演技してもらって鎮守府の風紀を一回ビシッと締めなおすのもいいだろう。とりあえず今日は徹夜コースだなと思いながらひたすら失ったボーキサイトを取り戻す遠征作戦を練り始めるのだった。

 

 

 

 朝、間宮食堂。提督も朝食をゆっくりするのが日課だが今日はいささか様子が違っていた。普段は食堂は艦娘と鎮守府職員の使用時間がずれているが何人か出入りしていた。いつもだったら提督と艦娘が談笑しながら食事をするのを皆と距離をとってなんだかせわしなくしている。職員の出入りも激しい周りから「なにかあったのか?」ときかれても、提督も技師長も「悪い、いそがしんだ」とか「ごめんね、話は後で」と机にぶちまけた書類とタブレットを操作して何かをしている。厨房の間宮さんや伊良湖さんも何かがあったのかと作業をしながら様子をうかがっている。とにかく二人が座っているテーブルには緊張感が漂っていた。

「おい、昨日瑞鶴が秘書官だったんだろ、確認したのか」

「ああ、さっき連絡して聞いたよ。瑞鶴は間違ってなかった」

「となると、瑞鶴が報告したのが午後9時で俺が確認したのが3時間後だからその間ってなるな」

「ああそうなるな。……ったくなんでボーキが減ってんだよ!」

 技師長のその一言で食堂にいた艦娘が大体の予想はついた。ボーキサイトが減っていてそれにより何かしら不便が生じていることを。艦娘が一斉になんとなく赤城を見る、赤城はお箸を震わせて真っ青になっていた。

「赤城さん、まさか」

 加賀が批判的な目線で聞いてみた。赤城は涙目になっている。

「……すこし、つまんじゃいました」

 小声で加賀に伝えると絶対零度の目線で返された。赤城の心は大破寸前である。そもそも、提督と技師長があそこまで慌てふためくことは滅多にない。そうとうの問題へと発展しているようだ。

「くっそぉ、なんで大本営もいきなりボーキよこせとか言うんだろうな。頭湧いてんのか?」

「おい、本郷。そんな言葉を使うなんてお前らしくもない。……お前一睡もしてないだろ」

「あたりまえだろ!下手すればボーキ盗まれたかもしれねぇんだぞ、警備問題とか大本営の馬鹿どもにあーだこーだ言われんだぜ!!どっかに見落としてると思って書類一式漁ってこれだもんなぁ。今朝の2時まで瑞鶴が無理して手伝ってくれてよぉ!そのせいでさっき連絡したら熱出たって翔鶴が言ってたし、ほんと腹立つなぁ!!」

「なるほどね、資材運搬船の船長に一応聞いてみる」

「ああ、すまん。俺は大本営にちょっち連絡してみる」

 提督が普段発しない口調に食堂にいる艦娘は完全に怯えていた。それ以上に怯えていたのはボーキをつまんだ赤城。箸をおいてうつむいていた。

「赤城さん、今のうちよ謝ったほうがいいわ」

「で、でも……」

 提督が怖いです。と赤城は加賀に目線で訴えた。加賀は目線で訴えた「ふざけんな、てめぇの責任だろ。おい、アクシロヨ」

 そうやり取りしていると、技師長が電話を始めた。

「あっ、もしもし。おはようございます、技師長の南郷です。いま時間いいですか?……ええ、すいません。えっとですね、今月の遠征で確保した資材の合計を知りたいんですけど、……ええ、すいません。はい?……ええ、今すぐにです。えっ、……あっ今日船長非番でしたか、え~っとそれじゃあ、はい。はい、そうですよね、手元に資料がないですよね。はい?……えっとですね、本日資材報告日なんですけど、倉庫にある量と資料の数がわずかに一致してなくてですね。……ええ、それで、開発で減ったとごまかそうと思ったですけど、開発関連の報告書は先週だして、今週一週間は開発する予定はないと報告したもんですから、ええ、そうです。契約違反でしょっ引かれちゃうんですよ。俺じゃあ無いですけどね。提督がね。ええ、それでもしかしたらそちらの報告ミスかもしれないと思ってですね、連絡した次第です。……ええ、あっはい。すいません、非番なのにわざわざ出てもらって。はいお願いします、失礼します」

「……どうだった?」

「駄目だ、間に合わないかもしれない。そもそも今日は船長が非番だから実家帰っちゃってんだよな、寮じゃないから書類無いんだよ」

「んで、どうすんのさ」

「今からこっち来て調べてもらう」

「そうか、俺はいったん戻って監視カメラを片っ端から調べ上げるわ。盗んだ奴が解るかもしれん。お前はどうする?」

「俺は運搬船の奴ら集めてやれるだけのことをやるよ」

「あっちゃん、ごめん」

「いいよ気にすんな。一番辛いのはお前だろ、2徹だし」

「それじゃあ、頼む」

「ああ、任された」

 そうやり取りすると提督は食堂を走って出て行った。技師長も机の書類をまとめて食堂を出ようとしたとき振り返って「大丈夫だからな、俺たちのミスだからお前たち関係ないからな」と、飛び切りの一言おいて出て行った。

 嵐からの解放。食堂にいた艦娘はあまりの緊張で食事ができず、みそ汁もすこしぬるくなっていた。そして一斉に赤城に向かって絶対零度の目線を集中攻撃する。

「うわあああああああああああああああああああああんん!!!!!!」

 赤城は一航戦の誇りなんかドブに捨てて泣き叫んだ。

「ちょっと、何泣いてんのよ!!こっちが泣きたいんだけど!!」

 曙がバン!と机をたたいて叫んだ。

「赤城さん、さすがに今回は私が鎧袖一触で殺されますので何もできません」

「うわぁあああああああああああああ!!!!どうじよぉぉおおおお!!!」

「落ち着いて赤城さん、私が一緒に提督とお話します」

 そういったのはお艦こと鳳翔。食堂にいた全員が彼女が仏のように見えた。

「大丈夫です、提督は優しい人ですからちゃんと話して謝罪をすれば許してくれますよ」

「ぐずっ、本当ですかぁ?」

「ええ、私も一緒に謝りますから、ね?」

「ううっ、ほーしょーおがあさん」

 赤城が鳳翔に勇気づけられている頃、提督たちはというと、別室で食堂をモニターしていた。

 

「赤城ガチ泣きだね」

「そりゃそうさ。すいませんね、船長さん。朝早くから」

「いえいえ非番は明日ですし、いいですよ提督さん。たまにはきついお灸も必要です」

「お灸というか溶岩押し付けるレベルですけどね」

「でも、タイミングがずれてたらこういうこともなったかもしれませんね」

「ええ、イクたちや船長さんが命がけで採掘して運搬してもらった物ですからね、ある意味ダイヤモンドと同じくらい価値がありますよ」

「まぁあれだな、慢心」

「ダメ」

「絶対」

「赤城だけでなく、みんなにも肝に銘じてほしいものだな」

「そうですね、社会に出たら泣いて許されるほど甘くはないですからね。さて、提督さんそろそろ仕上げといきますか」

「はい、船長さん。じゃあ、俺とあっちゃんと船長さんの三人で赤城を呼び出して『つまみ食いは、メッ』とか言って終わりにしましょう」

「はい」

「いやいや『はい』じゃないですよ船長さん。本郷は絶対呼び出すまで激おこぷんぷん丸ってやつですから。……うし、んじゃあ本郷、船長さん行きましょう」

 

 

「おちつきましたか?」

「はい、大丈夫です」

「それじゃあ一緒に行きましょう」

 刑事ドラマで犯人が自首を促されているワンシーンみたいなことが起きている食堂、朝からシュラバヤ海戦勃発したため食堂にいた全員が疲労困憊状態だ。これで事件は終息に向かうと思った矢先。食堂の入り口付近が爆発した。

 一同何事かと身構えるが「あかぎはいるのかなぁ♪」の声で硬直する。第二次シュラバヤ海戦勃発。白煙の中からflagshipのごとく黄色いオーラを纏いながら現れたのは提督、本郷豪その人。

「あれ、赤城いないのかなぁ?あっいたいた。鳳翔の背中に隠れてなにやってのかな?」

(ぜったい本郷の奴のりのりだよ)

(これがうわさに聞くヤンデレというやつですか)

(いや船長さん違うでしょ)

 提督の殺気に怯えて他の艦娘は何も言えない。そんな中、鳳翔が言った。

「提督、この子が提督に謝りたいことがあるそうです」

「ん、なにかな?」

 赤城は鳳翔の背中から一歩出て提督の目をまっすぐ見て言った。

「ボーキサイト、私が少しつまみ食いしました!すみませんでした!!!」

 流れるように土下座をする赤城。提督はしばらく黙ってから口を開いた。

「赤城、知ってるか?ごめんなさい、すいませんでした。これですべてが解決するなら憲兵なんていらないんだぜ」

「ひっぐ、えっぐ。ごべんなさいぃぃ!!!」

「提督私からもお願いです。赤城を許して下さい」

 鳳翔も深々と頭を下げる。すると他の艦娘も土下座をしている。

「提督お願いします、赤城さんを許して下さい」

 加賀も土下座をしている。

「司令官、赤城さんはものすごく反省しているのです。大本営にも謝りに行くので許して下さい」

 電も土下座している。皆にここまでされてしまってはどうしようもない。

「赤城、次やったら……わかるな?」

「はいぃ!!!すみませんでしたぁ!!!!」

 

 この日以来、ここの鎮守府からの無駄な資源の減少は一切無くなったそうです。

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