提督だって戦います!   作:真紅マフラー

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あけましておめでとうございます。




 

 愛情は薬である。人を育て、癒し支える眼に見えない薬。しかし、それは時に猛毒となる。

 

 

 

 

 

 横須賀鎮守府宛の手紙。郵便局で配達員として働いている男がいた。18歳に高校卒業して就職した仕事を25年の間勤めてきた。その間には色々あった。結婚して家庭を築き子供も生まれた。幸せだった。年収は多くはないし、かっこいい外車やスポーツカーを持っているわけでもなかったが、かわいい娘と美しい妻の顔を見れば仕事の辛さなんて忘れることができた。娘はすくすくと育ち、幼稚園、小学校中学校と進学していった。『とうたん』と呼んでいた娘はいつの間にか、『お父さん』に代わり自転車を乗れなくて転んでないていた娘が自転車で中学校に通っていた。このまま娘は大きくなっていつか彼氏でも連れてくるんじゃあないか、そんな風に思っていたこともあった。しかし幸せだった日常はある日突然崩れた。

 

--娘さんが交通事故に遭いました。

 警察から電話があった。学校帰りに余所見運転していた車と正面衝突したらしい。郵便局にいたはずの私は病院にいて、包帯にぐるぐる巻きにされた娘のそばに立っていた。

 妻はただただ泣いていた。私は物言わぬ体となった娘を見下ろすことしかできなかった。

「##中学校の2年\\\\さんは、全身を強く打ち病院に運ばれましたが、死亡が確認されました」

 幸せの崩壊。あっけなかった。父親なのに娘を守られなかった。あれから2年、世の中は深海棲艦やら艦娘やら騒いでいるが、私には関係ないことだと思っていた。

 

 

 

 

--横須賀鎮守府。

 手紙は大本営から鎮守府提督宛の手紙のようだ。私はバイクで横須賀鎮守府に向かった。深海棲艦と戦う艦娘。艦娘は命を落とした少女らの生まれ変わりだと何かの雑誌で読んだ気がするが、それが本当なら私の娘も艦娘になっているのかもしれない。などと思いながらバイクを運転していた。

 門で警備員に挨拶をして玄関まで小走りしていく。ポストに封筒を入れると同時にガチャリと音がなり、少女が出てきた。

「あっ、郵便屋さん。こんにちわ、配達ご苦労様です」

 ニッコリと笑う姿は、あの時死んだ娘と瓜二つで、

「あ……あけ、み?」

「えっ?」

「明美なのか?」

「あ、あのぉ……?」

 何もかもが、あのときのまま変わっていない娘がいた。

 

 

 

 

 

 

「提督さん、吹雪ちゃんが!」

「どうした夕立!」

 司令室に飛び込んできた夕立の姿を見てただ事じゃないことを察する提督。

「吹雪ちゃんを『娘だ』って言い張るおじさんに捕まっていてちょっと大変っぽい~!!」

「何だって!?」

「今技師長さんがおじさんと話しているけど、その人『提督を呼べ』って言い張っていて!」

「分かった、夕立ありがとう。すぐ行く」

 提督は立ち上がり窓を開けて玄関のほうを見る。確かに憲兵が何人か集まっているのが確認できるが、夕立の言ったように、そのおじさんと、南郷の姿は見えない。

 提督は司令室を出て、まっすぐ正面玄関に向かった。

「提督!吹雪が」

「分かっている、お前たちは下がってろ!」

 長門や睦月らが何事かと慌てているのを目線と言葉で黙らせる。

 艦娘たちには建造の仕方は何も話をしていない。人間の少女の亡骸を使って建造していることは知らない。

「面倒なことになったな」

 ドアを開けて外に出た。そこには40代の男と技師長がにらみ合っていた。

「騒がしいな、何事だ」

「提督!」

 憲兵が敬礼をして挨拶をする。吹雪は技師長の後ろに隠れていた。

「そこにいる娘は私の子供だ!」

「ち、違います!私は特型駆逐艦の吹雪です!」

「すみません、話が見えないのですが?説明してもらえますか?それと吹雪下がっていなさい」

 ハイと返事をして吹雪は鎮守府の中へ入っていった。

 

「私はここの鎮守府の提督をしています本郷といいます。艦娘の吹雪に何の用でしょうか?艦娘に面会する際は、大本営に許可を取り、許可証を交付してからの面会となります。そうしなければ罰則対処になりますよ」

 提督は淡々と伝えた。それを聞いて男は吼えた。

「うるさいっ!あの子は私の娘の明美だ!娘を返してもらおう!!」

「艦娘は深海棲艦を倒す兵器です。あなたの娘さんではございません」

「私は知っている!艦娘とは少女の遺体で造っている兵器だと!!

「それはどこからの情報でしょうか?まさか、週刊誌などと言いませんよね?」

 男性はうっ、と言葉に詰まった表情をした。

「ふん、下らん。……おい、追い出せ」

「「ハッ」」

 憲兵は返事をすると男性を引きずって門まで連れて行った。

 

「おい本郷、厄介なことになったぞ」

「ああ、まさか父親が現れるとはな」

「どうする?」

「どうすると言ってもな、『生前の記憶』なんてないんだ、説明しても混乱するだけだ」

「だが、説明しないのも不味いだろ」

「……これは俺一人の問題じゃない、大本営と相談するしかない。最悪『消す』ことになるだろう」

「まぁいい。俺は警備を強化しておこう」

「ああ、俺も対応を考えておく」

 

 

 

 

 

 

--死んだ娘は艦娘となって生きている。私は娘を取り戻す。

 あの後、仕事をクビになった私はインターネットのとあるサイトで書き込んだ。サイト名は『海艦』。深海棲艦を人類の究極進化として崇めているオカルトサイトだ。すると私の書き込みに多くの返事が返ってきた。

『kwsk』

『ちょっwwカッコよすぎワロタw』

『続きはよ』

 ほとんどの返事が信じていないことに怒りを感じたが、ある一通のメールが届いた。

 

『貴方の娘さんを救い出すことができるかもしれません』

 

--深夜零時に○○公園の裏にある2番倉庫に来てください。貴方の娘さんを救う方法をお教えします。

 私は妻とその場所へ向かった。そこには黒服に白い髪の男女が立っていた。目は赤くルビーのような瞳をしていた。

「こんばんわ、こんな夜更けに呼び出して申し訳ありません」

「いえ、私たちに協力してくださりありがとうございます」

「さて、立ち話もなんですから倉庫へ入ってください」

 言われるがまま、私たちは倉庫に入った。中は明るく、暖かかった。

「詳しい話を聞かせてもらっていいですか?」

「ええ、じつはーー」

 私は今までのことを話した。娘のこと、事故のこと、鎮守府のこと。怒りや悲しみがこみ上げてきたものの妻の支えもあって話すことができた。

「なるほど、それは大変でしたね。ところで鎮守府は横須賀ですか?」

「はい、そうですが?どうかしましたか」

「いえ、横須賀の提督には色々とお世話になってですね、貴方と同じ追い出されたことがあります」

 男性は微笑を浮べながら言った。

「なんと、そうでしたか」

「ええ、それでですね娘さんを取り返す方法ですが、ひとつだけあります」

「と、いいますと?」

「娘さんは艦娘の力のせいで本来の記憶が封印されています。それを解くには彼女らを指揮している大将。つまり提督を殺す必要があります。しかし、提督は鎮守府の中、艦娘たちに守っているため普通の人間では憲兵に捕まるのがオチ。そこで一時人間の力を超えた力で暗殺するのです。そうすれば洗脳も解け、本来の記憶も戻りましょう。そうすれば娘さんが戻ってくるでしょう」

「暗殺ですって、人を殺せというのですか?!」

「提督は人ではありません。彼もまた彼女たちと同じ作られた人間なのです。……私は失敗しました。がしかし、あなた方はまだチャンスがある。伸ばせば届く未来があります。さぁ、掴み取りませんか、未来を」

 そういって手を伸ばす男の目を見るとなんだかぼうっとしてきて妻も私も男の手を取った。

「すばらしい、親の愛が成せる決断です。……この注射を打ってください。そうすれば未来は開かれます」

 女性から渡されたペンのようなもの。糖尿病患者が使う注射と似ている。

 妻と私は頷いて自分の首筋に注射を打った。すると体が熱くなり、動悸が激しくなる。それを見た男女はフフフと笑い出した。

「ナニガ……オかしイ」

「フフ、人間モロイモノヨ」

「コレデ貴様ラモ、深海棲艦ダ」

 そこで私の意識は途絶えた。

 

 

 

 

---敵ヲ潰スニハ頭カラナノハ定石ダロウ?

---コロシテヤル!

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