何故俺が、女装してお嬢様学校に入学するのかと言うと、話は今から三ヶ月前のことになる。
あの日、俺は仕事を終えた後、任務完了を報告するために支給された携帯で組織に連絡を取った。
『はい。こちら、アストラル警備会社』
「認識番号63700827、コードネーム・
『はい。声紋及び番号確認しました。任務ご苦労様です』
一息つき、通話を切ろうとすると、オペレーターの焦った声が聞こえる。
『待って下さい』
「なんだ?」
『ボスより特別回線から入電です。お繋ぎします』
ボスからだと?
何故ボスが俺に?
疑問に思ってると、すぐにボスと回線が繋がった。
『やぁ、元気かな?如月君』
「ボス、俺の本名を言わないでください。もし誰かに聞かれたりでもしたら」
『ここ以上に、盗撮されにくい部屋はない。無用の心配だ』
「………で、俺に何の用です?」
『それは私の部屋で話す。今すぐ私の私室に来い』
一方的にそう言い、通話が切られる。
さっきとは違う溜息を吐き、俺は携帯を背後のゴミ箱に投げ捨てる。
数秒後、ボンッ!っと破裂音がゴミ箱からする。
その音を聞き、俺はアストラル警備会社に向かう。
アストラル警備会社は表向きは変哲のない警備会社だが、その裏では様々な仕事をしている会社だ。
会社に着き、俺はパスを受付嬢に見せ、奥のエレベーターに乗り込む。
乗り込むと、五階と二階、十階のボタンを押し、最後に開のボタンを押す。
すると、エレベーターの後ろの壁が上に上がり、壁の向こう側に白い通路が現れる。
白い通路を通り、奥の扉の前に着くとIDカードを使って扉のセキュリティを解除する。
「やぁ、任務ご苦労、如月君」
「ボス、何度も言いますが、本名は止めてください」
「まぁいいじゃないか。私とお前の仲だ」
そう言いボスは煙草を口に加え火を付ける。
「で、俺に話とは?」
「君に頼みたいある仕事がある」
「その仕事とは?」
「ある方の護衛だ」
そう言ってボスは机の中から書類の束を取り出し、読む。
「名前は矢城玲奈。矢城財閥の一人娘で、今年16歳だ」
「矢城財閥?確か、そこは」
「そうだ。我が組織のスポンサーだ。現財閥会長である矢城文人氏からの依頼で、玲奈お嬢様の護衛を頼まれた」
玲奈様ねぇ…………
スポンサーである矢城文人氏の事は知ってるが、娘さんの事までは知らないなぁ。
「しかし、どうして玲奈お嬢様の護衛を?」
「玲奈お嬢様が通われている聖白菊学園の寮近くで、今月だけで三度の侵入者が現れた。幸いにも寮周辺を巡回していた警備員に捕まったがな。その三人の身元を調べた所、殺し屋だった。そして、その三人の殺し屋の狙いは玲奈お嬢様。そのことに文人氏はお嬢様の身を案じて私たちに護衛依頼をして来た」
「何故うちの様な組織に?それに護衛なら学園の警備で十分事足りるかと」
「文人氏も最初はボディガードを雇おうかと考えたそうだが、学園側がそれを許さなくてな。それに何より、お嬢様自身が猛反対なんだ」
まぁ、年頃の女の子だ。
四六時中筋肉ムキムキマッチョマンのおっさんの護衛が居たら折角の高校生活も楽しめないだろう。
「そこで、文人氏は我々に護衛を依頼してきたのだ。で、私はお前がこの仕事に適任だと判断した」
「なるほど、そうですか……………あれ?ボス。俺の記憶が正しければ聖白菊学園はお嬢様学校のはず…………」
「ああ、そうだな」
「では、どうやって護衛をしろと?」
警備員にでもなれって言うのか?
それだと四六時中は不可能があるぞ。
「決まってる。女装だ」
なるほど。
女装か。
それなら、四六時中護衛が出来るな………………って!
「はああああああああああ!!?」
「お前、髪長いし顔も女顔だ。女装すれば絶対絶世の美少女になるぞ」
「ふざけないでください!第一女性のエージェントはどうしたんですか!?」
「お前、三十過ぎた女性に女子高生の役をやらせろって言うのか?」
「………とにかく!女装なんて絶対しませんからね!この仕事も降りさせてもらいます!」
そう言い捨て、俺は部屋を出て行こうとする。
「そうか。残念だな。お嬢様、こんなに小さくて可愛いのに」
その言葉にドアノブに触れようとしていた俺の手が止まる。
「綺麗な金髪と碧眼なのにな~。こんなこと友達になれたら楽しいだろうにね~」
俺はボスの方を向き、ボスの手元の資料を鍛え上げた目で覗く。
身長は140cmで体重は33kg。
胸はAAAで、金髪ロングをツインテールにして、碧眼で、おまけに童顔。
丁寧に書類の端には顔写真もグリップで留められてる。
か、可愛い……………
あれで今年16歳だって!?
嘘だ!あんな16歳いるはずがない!
だが、もし本当にいるとしたら……………
くっ、俺はどてつもないチャンスを逃したことになるぞ…………
俺の馬鹿野郎…………
「なぁ如月。本当に無理か?」
神は俺にチャンスをくれると言うのか!
このチャンス逃してなるものか!
「………わ、わかりましたよ。ボスがそこまで言うならその仕事引き受けますよ」
「お!本当か!」
「た、ただし!女装は無しですよ!警備員として潜入します!」
「女装は嫌か?」
「当たり前です!」
「…………いいだろ」
よし!これで女装しなくて済むし、お嬢様の傍に入れれる。
俺の勝ちだ!
「しかし、流石はロリコン。器がでかいねぇ~」
今 何 て 言 っ た ! ?
「ぼ、ボス?い、一体何を?」
「お前、俺に自分の正体がロリコンだってことバレてないと思ってるのか?」
ば、バレてただと!?
何故だ!?
まさか、俺のプライベート用の携帯の待ち受け画面(とあるジュニアアイドル 年齢:13)を見られた!?
それとも、俺の秘蔵写真集(ジュニアアイドル写真集)が見つかった!?
くそっ……………どれだ!?
俺が墓まで持っていくと決めた俺の秘密。
何故、ボスが知ってる!
こうなったら、ボスを殺して秘密を永久に封印するしか……………
「物騒なこと考えるんじゃない。まぁ、安心しろ。貴様の好みを暴露した所で俺にメリットは無い。だが、私も人間だ。物の弾みでうっかり口を滑らせてしまうかもなぁ~」
「くっ…………!」
「で?どうする?女装の件は?」
「………………引き受けます」
こうして俺の女装潜入護衛が始まった。
「我ながら情けない」
まさか弱みを握られるとは……………
こうなればやるところまでやってやる!
そして、あわよくばお嬢様とお近づきに!
俺は気合を入れるように拳を鳴らし、校門を見上げる。
「よし!行くか!」
AM 9:00 如月薫 聖白菊学園 到着
「