Fateで斬る   作:岳鳥翁

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六十六話

「っ……! この感じは……」

 

エアのペンダントが発動したのか。

 

メイドに案内され、宮殿のチョウリ様の仕事部屋へと向かっている途中だった。

 

「? 如何されましたか?」

 

急に動きを止めた俺を気にして、メイドがそう聞いてくる。

 

「……すまない。少し、やることがあった。またすぐに戻るとチョウリ様に伝えておいてくれ」

 

「承りました」

 

チョウリ様に少し失礼かもしれないが、事態が事態だ。あとで、事情説明で使い魔に手紙でも運ばせるとしよう。

 

メイドに礼を言って、少し駆け足気味に引き返し、その途中で懐に忍ばせておいた無線を耳に取り付けた。

 

「こちらオリジン。聞こえてるか?」

 

『バッチリな。今現場に全員が向かってるところだ』

 

すぐに出たのは、妄想幻像(サバーニーヤ)の中で最も俺とのやり取りが多いあの口の悪い個体だ。

彼らは元々は俺である。そのため、エアのペンダントの反応にも気づいたのだろう。

 

「わかった。到着し次第、エアの安全を確保。他にもいるなら頼んだ。俺もすぐに向かう」

 

『了解。待ってるぜ』

 

分体との連絡を切る。

ちょうどその頃には宮殿の外に出ていたため、すぐに目的地へと駆け出した。

そして、無線に連絡が入る。警備隊本部からだ

 

「こちらセイ。どうした?」

 

『こちらサヨ。副隊長とイエヤスの部隊が、ワイルドハントと接触しました』

 

「詳しく頼む」

 

俺は勢いそのままに宙へと飛び上がり、民家の屋根に着地。屋根伝いに走り出す。道をいくよりも、こちらの方が速い。

 

そのまま俺はサヨからことのあらましを聞く。

どうやらエアやファルもそこにいたみたいで、今は警備隊の隊員がボルスさんの妻子を含めた四人を守ってくれているらしい。

 

対峙しているのはボルスさんに副隊長、そしてイエヤスの三人。

 

「……分が悪いな」

 

相手は帝具使いが二人に剣豪が一人。対してこちらは帝具使いがボルスさん一人。副隊長なら帝具使い相手でも戦えるだろう。

問題はイエヤスだ。

 

確かに強い。今では警備隊でも副隊長に次ぐとさえ噂される程にはなっている。

が、それでは足りない。明らかに実力不足だ。

 

仮にエア達を守る警備隊員を援護に回してもほとんど意味はないだろう。

 

「サヨ、動けるか?」

 

『…私、ですか? 大丈夫です』

 

「なら直ぐに準備して、現場から百メートル離れた場所に移動しろ。イエヤスの援護をしてやれ」

 

『了解しました!』

 

サヨに指示をだし、通信を切る。

これで多少マシにはなる。が、それは多少であって確実ではない。

 

「……仕方ない。あいつらも出すか」

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

ゴウッ! という音が辺りに轟く。

先手を放ったのはボルスの持つ帝具、ルビカンテだった。

 

味方全員を自身の後ろにやり、最大火力で放った炎。

対象を焼き尽くす消えない炎は勢いよくシュラ達三人に迫った。

 

だが、三人はそれをバックステップで距離を取り、おかえしとばかりにチャンプが球を投げる。

ルビカンテの炎をものともせず、真っ直ぐに突き進んでくるその球は目標であるボルスに迫る。

 

「っ! ボルスさん!」

 

それに気づいたイエヤスが咄嗟に前に出ると剣を抜いてガードの姿勢に入った。

そしてそのまま球が剣の腹へとぶつかりーー

 

「うおっ!?」

 

暴風と共にイエヤスを剣もろとも吹き飛ばした。

 

「イエヤス君っ!」

 

慌てて庇ったボルスがその身でイエヤスを受け止めるが、勢いすさまじく、巨体を誇るボルスを数メートル程後退させる。

 

「……なるほど、帝具ですか」

 

「お、俺の天使との時間を邪魔したんだ! テメェら全員、このチャンプ様の帝具で殺す!!」

 

あとで遊ぼぉねぇ~~、と不気味な声と笑顔で警備隊に守られているローグに視線を向けたチャンプ。

それに気づいたのか、ヒッ! と怯えるローグは母の体に顔を埋めた。

 

「…どうやら、君はここで焼いておかないといけないみたいだね」

 

マスクをしているため、表情はわからないが、本当にボルスさんなのかと疑うような低い声に誰もがその怒りを感じ取った。

 

背負ったルビカンテのタービンがゆっくりと回転を始める

 

 

岩漿錬成(マグマドライブ)!!」

 

直後、球状に固められたルビカンテの炎がチャンプに向かって放たれた。

 

「嵐の球!!」

 

しかし、外道とはいえチャンプも帝具使い。

己の帝具であるダイリーガーのうちの一つを前方の地面に叩きつける。

すると、着弾した場所を起点とし、上空に向かって激しい竜巻が発生する。

その竜巻を突き抜ける際、球状の炎はベクトルをやや上へと向けられ、チャンプの遥か上を通りすぎていく。

 

「っ! 往なされた!」

 

自身の奥の手である岩漿錬成(マグマドライブ)を避けられたことに驚くボルス。その隙をついて接近する影があった

 

 

「おお…! 江雪、今食事を与えてやろう…!」

「っ!?」

 

刀に血を吸わせることを喜びとする剣豪、イゾウ。

腰に帯刀した刀の柄を握りしめ、今にも抜刀しようとするその姿に、ボルスは反応が遅れてしまう。

 

無防備なその胴体に放たれる銀閃。しかし、ここでまた間に入る影が一人。

 

「そんな好き勝手させませんよ」

 

刀の刃をしっかりと受け止めるトンファー。

先の鋭利な特徴的なそれを両手に構える男はそう言うとイゾウの体に蹴りを放つ。

 

「ぬぅっ!」

「ぷげっ!?」

 

防御から攻撃へ移るその動きには全くの無駄がない。隙をつかれたイゾウはもろにその蹴りを受けてしまうと、勢いそのままに後方のチャンプと衝突する

 

「おいおい、お前ら何やってんだよ…おっ?」

 

メンバーの情けない姿に思わずため息をつきそうになったシュラ。だが、そんな自分に向かって剣を携えてかけてくる少年の姿が目にはいった。

 

「ハァッ!!」

 

「おっと、なんだなんだぁ? お前俺を相手にするってのかよ!」

 

「うるせぇ!!」

 

シュラの言葉に構わず剣を振るう少年ーーイエヤス。

今ではかなりの実力をつけたイエヤスであったが、その相手は世界を旅し、様々な流派を自身のものとし、更には、オリジナルに昇華させた猛者である。

 

故に

 

「あ~~、んな遅い剣に当たるわけがねぇだろぉ?」

 

遊ばれるのは必然と言えるだろう。

剣を避けてはカウンターとして拳が放たれる。

その一発一発がかなりの威力を秘めているのだ。当然ながら、剣を振るうイエヤスに防御の術はない。

急所に当たらないのはシュラが当てないようにしたあるからだ。

格下をいたぶるのを楽しむ。まさに外道である。

 

バカにしたような態度でイエヤスを煽るシュラ。

 

だがその慢心が誤りだった

 

「ラァッ!!」

 

「おっと、当たるかよ!」

 

横凪ぎに振るった剣が体を倒すことで避けられる。が、そこまではイエヤスの予想通りだった。

 

イエヤスが振り切った勢いを利用して一回転。一度無防備な背中を晒すことになるが、構うものかと技を放つ

 

「一閃!!」

 

並の兵士では反応することすらできないであろう速度で剣を振るったイエヤス。

現在のイエヤスが唯一セイを驚かせた技である。

 

……もっとも、驚かせた程度で余裕をもって避けられたのだが。

 

 

 

鋭い一閃が迫る。

丁度体を起こそうとしていたシュラはその攻撃に慌てて後ろへと跳んだ。

身のこなしは流石といってもいいだろう。普通なら直撃し体の上下がおさらばしていたそれを

 

 

腕のかすり傷一つで済ませたのだから

 

 

シュラの視線が斬られた腕に向いた。

 

 

「……殺す!!」

 

プライドの高いシュラが、明らかな格下に傷をつけられた事実を許すはずがない。

慢心しなければ傷を負うこともなかっただろうに。

 

「へ、へへっ……やってやったぜ…」

 

が、イエヤスはシュラによるカウンター攻撃によって既にボロボロである。

立っているのがやっとの状態だ。

 

そんなイエヤスにも容赦なく襲いかかるのがシュラである。流石外道。

 

「てめぇはここで……!?」

 

殺す!! そういいかけたシュラだったが、真正面から飛んでくる飛来物が目にはいった。

 

矢だ

 

赤い光を纏ったようにも見えるそれは迷わずシュラ目掛けて一直線の軌道を描いていた。

 

「チッ、めんどくせぇ」

 

一瞬、顔を歪めたシュラであったが、直ぐにサイドへステップ。矢を避けつつもイエヤスに迫る速度は落とさなかった。

 

普通であるならば、それで問題はない。矢は往なされ、イエヤスは殴殺されただろう。

 

だが、赤い光を纏ったそれは普通ではない。

 

「んなっ!?」

 

矢が横切る寸前、シュラは目を疑った。

 

誰が予想できるだろうか。まさか、飛来中の矢が飛ぶ向きを変えるなどと

 

直ぐに身を屈めて対処しようとしたシュラであったが、その行動すら嘲笑うように矢は軌道を変える。

 

矢がシュラの左腕に突き刺さった。

 

「くそったれがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「…っふぅ、当たってよかった」

 

戦闘の行われている現場から百メートルほど離れた民家の屋根の上。

 

そこにいたのは帝都警備隊の制服に身を包み、ゴーグルを装着した一人の少女の姿があった。

 

「……にしても、セイさんの作ったこれ、凄すぎるわよ…」

 

少女ーーサヨはそういいながら己の弓矢とゴーグルに意識を向けた。

 

当然、これも道具製作のスキルを使って作ったものである。

ゴーグルには遠視、弓には射程と威力を向上させる魔術がかけられている。

更には、矢であるが、これは警備隊でも使用している縄と同じ効果が鏃にかけられているのだ。

それも、鏃の一部に宝石を埋め込んだ特注品である。

 

 

「にしてもイエヤスの奴、強くなってるじゃない。……私も頑張らなきゃね」

 

矢筒からもう一本、同じ矢をつがえたサヨはそう言って敵に狙いを定めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




副隊長の戦闘描写は次回になりそう
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